■ 娘の体育祭で大量被曝した ■
先々週の土曜日は娘の体育祭でした。
幸運にも晴天に恵まれ、日陰の無い校庭に一日居たので、大量に被曝しました。
エーー?何で被曝?? と、お思いでしょう。
実は「紫外線」に大量に被曝して、5日程してからは死滅した表皮が、ペリペリと剥がれてきます。
■ 紫外線もγ線も単なる「光」 ■
何故「紫外線による日焼け」を被曝と表現したかと言うと、「紫外線」も、「X線」も、「γ線」と同じ光で、波長が異なるだけなのです。
ですから、γ線によって細胞が損傷を受ける事を被曝と言うならば、紫外線によって細胞が損傷を受けるのも同様に被曝と呼んでも何ら問題は無いはずです。
■ 「光子」の発生メカニズムの違い ■
私達が「光」として知覚する「可視光」も、日焼けの原因になる「紫外線」も、レントゲン撮影やCTスキャンに用いられる「X線」も、放射性物質から放出される「γ線」も、素粒子レベルでは「光子」に分類されます。
① 「光」は「波」と「粒」の性質を持っています。
② 「粒」の性質として、最小のエネルギー単位以下には分離出来ません。(1粒のエネルギ粒子)
③ 「波」の性質としては、波の長さ「波長」を持っています。
④ 波の性質として、プリズムや回折格子によって曲げる事が出来ます
うーん、ちょっと分からなくなってきましたね。
頑張って、ついて来て下さい。
⑤ 可視光の波長は360(nm)~780(nm) 1(nm)=10-9乗(¥m)
⑥ 紫外線、可視光の紫色より波長の短い光。
⑦ 紫外線は波長によってUVA・400~315(nm)、UVB・315~280(nm)・UVC・280~1(nm)に分類
⑧ X線の波長は1~0.01(nm) = 10~0.1(A)
⑨ γ線の波長はX線波長と一部重なっている
⑩ X線は電子遷移(電子軌道の移動)による光の放射
⑪ γ線は原子核内のエネルギー順位の遷移による光の放射
■ 光の持つエネルギー ■
光の持つエネルギーは、光の振動数νに比例します。
E=hν・・・・(hはプランク定数)
これを波長λで表すと
E=h/λ
となり、波長が短い光程、エネルギーが高い事が分かります。
■ 物質と光の作用 ■
光はエネルギーを持つ素粒子(光子)ですから、光が当たった物質、光のエネルギーを吸収して、何らかの変化をします。
赤外線は可視光よりも波長の長い光なので、エネルギーは低いのですが、赤外線が吸収されると分子の振動エネルギーに変化します。赤外線を温かく感じるのはこの為です。
赤外線はエネルギーが低いので、物質を化学反応させる様な効果はありません。
可視光より波長の短い紫外線は、可視光よりもエネルギーの高い光です。
紫外線のエネルギーは、原子中の電子の軌道を変化させます。(電子遷移)
電子の持つエネルギーは、原子核から遠い軌道の方が高くなります。
これは、電子の軌道と原子核の間に働く引力によって、位置エネルギーが存在する事に起因します。
紫外線を吸収して、電子のエネルギー順位が高くなる事を「励起状態」と呼びます。
励起状態にある原子は、受け取ったエネルギーを化学反応のエネルギーに変化させる場合があります。この反応を、光化学反応と呼びます。
印刷物の色が光が当たる事で薄くなったり、紙が黄ばむのは、光化学反応の影響です。
ビンに色が付いているのは、光化学反応を防ぐ為ですし、ポテトチップの袋がアルミ蒸着されているのも、光化学反応による油の酸化を防ぐ為です。
■ 紫外線によるDNAの損傷 ■
紫外線によるDNA破壊は、光化学反応による効果です。
紫外線はDNAの特定の分子に化学反応を起こさせます。
光化学反応は、反応に順ずるエネルギーの光が選択的に吸収されます。
紫外線によるDNA損傷の主だった反応は、重体の生成ですが、この反応には250(nm)付近の光が吸収されます。
<http://www.jst.go.jp/pr/announce/20050506/zu1.htmlより引用>
上の図は、同一のDNA鎖内で連続した2個のピリミジン塩基(シトシンまたはチミン)が、共有結合によって二量体を形成しています。(ここではチミン二量体の化学構造を示した)。このような損傷が生じると、DNA複製や転写の妨げとなり、細胞死や突然変異、染色体の不安定化など、様々な弊害を細胞にもたらします。dR:デオキシリボース残基 P:リン酸基
<引用終わり>
■ γ線やX線と物質の相互作用 ■
γ線やX線は紫外線よりもエネルギーの高い光です。
γ線やX線を吸収した原子や分子からは、電子が弾き飛ばされ、原子や分子が電離します。
この電離によってDNAの分子結合が直接切断される事で、DNAが損傷を受けます。
さらにγ線やX線は、水の分子を電離して、反応性の高いOHラジカルをはじめとするいくつかの活性種(水和ラジカル、Hラジカル、H2O2)が生成し、これらがDNAと化学反応を起こし損傷を引き起こします。
紫外線がDNAの特定の箇所を選択的に破壊するのに対して、γ線やX線の破壊は、より多様な損傷をDNAに与えます。
この点に注目すると、紫外線よりもγ線やX線のDNAの破壊力は高いと言えます。
■ 放射強度の影響 ■
強い紫外線に当たると、日焼け(サンターン)を通り越して、火傷様な症状(サンバーン)を引き起こします。最後は皮が剥けてきます。
これは、紫外線によってDNAが破壊され、細胞が死滅する事によって引き起こされます。
福島原発事故現場で、高濃度に汚染された水に触れて作業員が足を被曝したが、その時の報道では、作業員の症状は、「表皮が剥ける程度」と報道されています。これも紫外線によるサンバーン同様に、表皮のDNAが破壊された事によって起きる急性障害です。
ところが、現在心配されている20(mSv/年)などという弱い放射線では、表皮が剥けるなどの顕著な症状は現れません。
家内が乳癌の放射線治療を行った時も、2(Sv/1回)x25セットという高い放射線を照射しましたが、表皮が剥ける様な事は無く、色素沈着た多少起こる程度でした。
放射線と紫外線を比較する場合、放射線のエネルギーが紫外線に比べて高い事が注目されますが、実際には「放射強度」の影響が非常に大きく、エネルギーの低い紫外線が大量に放射されるのと、エネルギーの高い放射線が少量放射されるのでは、前者の方がDNAに与える被害は甚大です。
紫外線強度の瞬間値(W/㎡.S)の実測データ、下記のサイトのデータを拝借します。
http://yama-yaku.or.jp/gakuyaku/houkoku/20051010%20.pdf
「校内における紫外線測定結果と今後の対応について」山口県学校薬剤師会
サンバーンを引き起こすUV/Bの夏場の放射エネルギーは実測例によれば下記の通りです。
UV/B ・・・・・ 1.3(W/㎡) = 1.3(J/㎡・S)
= 1.3(J/㎡)(但し1秒当たり)
UV/Bの相対影響度を50%とするばらば
約 0.65(J/㎡)
この内の全てがDNAの破壊に寄与する訳ではありませんが、一応の参考にはなります。
一方放射線のエネルギーは・・・
1(Sv)=1(J/kg・㎡・S_2乗)・・・1Kg、1秒当たりなら 1(J/㎡)
とまあ、1秒当たり、1Kg当たりで強引に比較すれば、ディメンションを揃える事が出来るので、紫外線と放射線を強引に比較が出来ます。
仮に年間20(mSv/年)の外部被曝をγ線によって受けるとして、1秒当たりのエネルギー量を計算してみます。
20(mSv/年)=0.02(J/㎡)/(365(日)x24(時間)x3600(秒))
=2x10_-2乗 x 3.1x10_-8乗
=6.2x10_-10乗(J/㎡)
紫外線Bの1秒辺りのエネルギを0.65(J/㎡)と仮定すると、夏場の紫外線の強度は、20(mSv/年)の放射線の強度の、実に10の9乗倍となります。これは10億倍です。
私達の細胞は、危険だと言われる20(mSv/年)の放射線(γ線)の、実に10億倍のエネルギーの紫外線に照射されても、普通は癌にならない程の、DNAの自己修復力と、アポトーシスや免疫細胞の働きを持っているのです。
「紫外線と放射線ではDNAの破壊の仕方が異なる」という反論もありそうですが、酷い日焼けによって皮膚が死滅して皮が剥けるのですから、紫外線による被曝は低線量率放射線による被曝よりもDNA破壊が甚大である事は、疑う余地もありません。
次回は、DNAの修復機構について、調べてみます。
<追記>
紫外線は浸透力が弱いので、その影響は表皮に留まります。
表皮は細胞の再生能力が高いので、日焼けによって表皮が一部死滅しても、生命の危険は生じません。
しかし、γ線やX線は浸透力が高いので、同じエネルギーを照射すれば、体の内部までコンガリと焼けます。しかしながら、10億倍のエネルギーの差は圧倒的な違です。
実際に、放射能事故などで、高線量被曝をすると、体中の組織が破壊されて死に至ります。しかし20(mSv/年)と、急性障害が発生する様な被爆量では圧倒的な隔たりがあります。
さらに現在恐れられているのは、将来的な発癌という確率的な危機です。
確率的な危機において、紫外線による皮膚癌の発生と、放射線による発癌の間に、それ程大きな差異があるとは、私には考えられません。
<訂正>
紫外線実測値が間違っていたので、訂正しました。