楽譜さんへのお返事が長くなったので記事にしました。
🔳 物質消費の拡大を嫌うダボス会議 🔳
従来の経済は「消費」を前提に成り立っていました。「経済成長=消費の拡大」です。当然、人口は生産と消費の両面で経済を支えます。
しかし、70年台のローマクラブの「成長の限界」や、同時期に発足したダボス会議は、常に「資源の過剰消費=悪」というスタンスをとり続けています。SDGsが世界の合言葉となっていますが、コレを本気でやると消費を抑制する。(実際には消費を不効率にしてコストを増やすだけ)
🔳 機械化や自動化が進んでも、人間は労働からは解放されない 🔳
世界は産業革命以降、機械化によって生産性が飛躍的に向上し、IT革命によって知的生産性も向上しました。しかし私たちは労働からは解放されていません。(失業していない)
実は機械化による大量失業は製造業では既に達成されています。かつては多くの人が工場に勤めていましたが、今は多くの人がサイビス業に就いています。製造業は生産性が高く、サービス行は生産性が低いので、所得は伸びないから、むしろ減る傾向にある。サービス業は生産性の低さを、個人の労働量の拡大で補うので、私たちは労働からは解放されません。
🔳 IT化とAI化の違い 🔳
ではIT化とAI化の違いを考えてみましょう。金融のトレーダーを例に取ってみます。
IT化によってトレーダーは市場データを以前よりも効率良く手に入れ、トレーダーは自分の知能と経験によって取引を決定して利益を得ていました。この「知能と経験による決定」を自動化するのがAIです。以前からHFT(ハイフフリックエンストレード)の様な自動化は進んでいましたが、コレは値動きを観測して、高速に売り買いを繰り返すだけの単純な取引で、コンピュータの持つ高速性に依存するだけの自動化でした。
一方、AIは経験の蓄積によって、トレーダーの「判断や決定の法則性」を学習します。トレーダーは様々な経済統計を分析して投資判断を下しますが、基本的には法則性を持って判断します。この部分はAIが学習し易く、ビックデータの処理でトレンドを把握する能力はAIの方が人間よりも長けています。実際に多くのBOTがネットワークを徘徊して、SNSなどからキーワードとなるトレンドを漁っています。
優秀なトレーダーは「先読みと勘」が優れていると思いますが、「先読み」はビックデータによるトレンド収集で代替えされ、「勘」はパターンニングで学習可能です。
🔳 AIの苦手な「センチメント」 🔳
AIは人間的な感情を持たないので「センチメント」や「空気」を読む事が苦手でしょう。例えばAIが経験した事のないイレギュラーな状況に対して決断する事が出来ない。「恐怖指数」などという統計が考案されていますが、これが危機を必ずしも予測出来る訳ではありません漠然とした市場の空気を読むこともAIは苦手かも知れません。尤も、この様な「不測の状況を先読みする」事が出来るのは一部の優れたトレーダーだけなので、一般的な取引はどんどんAIに代替えされて行くでしょう。
この様にAIにも得意、不得意はありますが、パターン化出来る判断は人間よりも高速に処理します。要は「ワンパターンな思考」の人材は駆逐される。
🔳 リーダーは残るけれどスタッフが消える 🔳
様々な分野で、パターン化をAI に学習させる試みが進行する事で、情報収集や分析を仕事としていた人達はAIに駆逐されます。プロジェクトリーダーは残りますが、スタッフはAIに置き換わる。
この様に「知的労働の一部」をAIに代替えさせる事で、多くの失業者が生まれます。「AI以下」と判断された人材は、失業しても同種の職業には付けず、より生産性の低い仕事に流れて行きます。
🔳 単純労働も自動化される 🔳
単純労働の多くも自動化されるでしょう。スーパーやコンビニのレジは既に自動化が進んでいますし、ファミレスのウェイトレスも一部がロボットに置き換わっています。(嬉しくありませんが)
人件費よりも自動化のコストが低ければ、機械やAIのによる労働の代替えは進行します。駅の改札は現在ではほぼ自動改札です。
この様にAIや自動機械の進歩は、労働を人々から奪い、失業者の群れを生み出します。多分、ヨーロッパは法律でAIや自動化をある程度規制して雇用を守りますが、アメリカは野放しにする可能性が高い。日本は「雇用法」を改正しなければ、企業は雇用を維持する義務を負っているので、余剰人材を抱えたままAI化が進み、新規採用の抑制で調整が行われるでしょう。結果、若年層が失業したり、低所得になる可能性が高い。尤も、コレは現状と大差無いとも言えます。
🔳 AI 化を抑止する動き 🔳
「AI化で6割の人が失業する」という予測は、政府が無策ならば起こりうる未来です。一方で「AI失業」が現実的になれば、必ずコレを止める動きも出て来ます。
EUは「AI規制」を打ち出しました。現状はAI によるリスクに対応した内容が主ですか、規制の大好きなEUの事ですから、将来的には雇用を脅かすAIの過剰な活用にも規制を掛けると思われます。
ダボス会議でもAIの規制問題は取り上げられています。イーロン.マスクもAIを規制すべきだと発言しており、「AI規制」は近い将来避けて通れない課題となります。
一方で、AIを最大限に活用した企業が競争に勝つという事実は変わりません。タックスヘブン同様に、AI 規制の掛からない国や地域にAI を移転すれば、企業は規制をすり抜ける事が可能です。製造業の空洞化同様に、知的労働の空洞化は必ずや起こる。
🔳 街が丸ごと消える未来 🔳
「AI化と人口削減」の問題を昨日は与太話として書きましたが、実際のAIによる失業は止める事が難しい。日本は労働人口がどんどん減ってゆくのでAI化による労働の代替えは、緩やかに進行するならばプラス要素も多い。
日本人の人口(在日外国人を除く)は2023年度で前年比で80万人減少しました。。コレは新潟市や浜松市の人口を上回ります。人口減少は年々増えているのでやがて政令指定都市の基準となる100万人に達する。1年間に政令指定都市が無人になってゆくというのはショッキングな事実ですが、大都市近郊に住んでいる人には実感が湧きません。
しかし、地方に行けば人口減少を目の当たりにする事が出来る。子供を見掛けない。若い人もほとんど見かけません。そして高齢者ばかりが目立つ。人口の50%以上が65歳以上の村を「限界集落」と呼びますが、かつては山間の小さな集落に多かった。現在では平野部や、地方都市の近郊にまで分布が広がり、現在日本には2万ヶ所を超える限界集落があります。限界集落はコミュニティーやインフラの維持が難しく、若い人から移住を選択して「限界化」はさらに深刻化します。
能登半島地震の被災地にも限界集落が多く、復興した後に集落が維持出来ない可能性が高い事から、復興すべきかどうかネットを中心に議論が高まっています。
限界集落は東京にも15ヶ所あります。若い時に集合住宅に入居して、そのまま住民が高齢化した地域です。この様な地域は、都市近郊でも増えるでしょう。交通の便が悪い所から限界集落化して行きます。
最近、郊外を自転車で走っていて気付くのはコンビニがどんどん無くなっている事。閉店したコンビニの建物は「デイケアー施設」になっている場所が多い。少し前まではコンビニでお惣菜を買う老人を良く見かけましたが、それらの高齢者は今は介護を受ける立場となっています。
コンビニは地域の小売店を淘汰して利益を独占していましたが、高齢化が進んだ地域ではコンビニを維持する購買力すら失います。いずれは、大都市近郊でも限界集落化する地域が増えて行きます。
🔳 少子化対策というナンセンス 🔳
「少子化対策」は政治的にはポイントが高いので、与党も野党も「少子化対策」を前面に押し出します。しかし、少子化対策の成功例は海外を見てもほぼ皆無。何故ならば、教育費負担に家計が耐えられないからです。親は子供の将来を少しでも有利にする為に、可能な限りの教育費を支出しようとします。子供が多いと子供一人に掛けられる教育費が減るので、余程経済力がある家庭以外では子供は一人か二人というのが一般的です。生活コストの高い都市部では一人っ子家庭も多い。
政府や自治体は教育無料化などで教育費負担を軽減して子供を増やそうとしていますが、親は浮いたお金で、子供を増やす選択はしません。そもそも、現在の教育無償化が将来的に続く保証が無い状況で、子供を増やすという判断は出来ません。教育費の無償化の財源は税金や健康保険なので、コレは現役世代の所得再配分に過ぎない。
尤も、仮に出生数が増えたからといって、AI化の時代に彼らの職業が保証されているかは疑問です。将来的な失業者を増やすだけかも知れません。
🔳 人口減少の過渡期を外国人労働力で補完して乗り切る 🔳
日本人の人口は年間80万人減っていますが、在留外国人は2023年度は全年比で29万人増えています。彼らの多くは低賃金労働の担い手として日本の経済を支えています。日本の入国管理法は厳しいので彼らの多くは5年未満の短期就労しか出来ませんが、国連の統計では1年以上の在留外国人を移民と定義しているので、日本は世界有数の移民大国となっています。
しかしヨーロッパの例を見ても移民はやがて社会的コストを増大させます。彼らも失業したり、高齢化して社会保障の負担となるからです。移民に寛容だった欧州各国ですが、移民に反感を持つネオナチの台頭や、移民との文化的軋轢など「移民のコストとデメリット」が表面化しています。
オランダでは政権交代で移民に不寛容な政権が誕生しました。移民の在留年限を制約するなど日本型の移民政策を掲げています。
現状は「安い移民の労働力の脅威」に対処した政策ですが、AI化でホワイトカラーの失業が増えれば、今以上に安い賃金の仕事を移民と奪い合う事になります。結果、移民政策は失業者を増やすだけになる。
日本はシタタカで、定住出来ない移民で、人口動態の過渡期を乗り切る政策をステルスに進行中です。出産適齢女性の人口は減る一方ですから、日本は無理せずとも、やがて加速度的に人口が減少します。コンパクトな国家に生まれ変わる可能性は高い。
🔳 デジタル時代のインフラ 🔳
AIはコンピューターの中でしか活動出来ないのでAIの主戦場はネット環境の中になるでしょう。高速大容量回線や、大容量のサーバー、安定した電力供給などが重要になります。道路や鉄道や橋など従来のインフラは人と物の移動に有効でしたが、経済がネットワークの中に移行すると、人の移動は少なくなります。
ダボス会議辺りが主導して「15分都市」の実験が各国でスタートしています。15分で行ける圏内で生活と仕事の全てが完結する都市計画で、極力町から出ない事が推奨されています。様々な反対運動で実験は妨害されていますが、移動を制限する事でエネルギー消費を抑えた社会の実現を目指している。
この様な社会が実現するならば、移動を前提にしたインフラ整備は将来無駄になる可能性も有ります。現にネットによる在宅ワークやリモート会議の普及は在宅勤務を可能にし、通勤から解放された人達も多く現れました。リモート会議によって出張から解放された人も多いでしょう。
東京都心は高層ビルの建設ラッシュですが、サンフランシスコの様にオフィス需要が激減する未来は起こり得ます。AIの本格的な稼働を前にして、既に社会は大きく変化しようとしています。
🔳 デストピアか、ユートピアか? 🔳
AI化の時代、失業者になれば、その社会はデストピアと感じられるでしょう。
一方でAIを駆使して高い生産性を上げた人は、高収入を独占してユートピアと感じるでしょう。
極端な話しとして、コウロギを食べる生活になるか、優雅な生活を満喫するかは、結局は個人の能力に依存しています。中途半端なエリートは存在を許されない世界がAI化の時代だと私は認識しています。
では普通の人がユートピアを得られる職業は無いのか?
私は第一次産業、特に農業を候補として挙げたい。。日本は大規模耕作地が少ないので、農業の自動化は余り進まないでしょう。規模を縮小して行けば自給自足的な生活も可能です。都会でコオロギを食べるよりは、精神的に豊かな生活が送れそうです。今から地方に生活基盤を確保する事は、庶民のサバイバルとしては有効ではないでしょうか。(現金収入や医療アクセスは制限されますが。
いつもながら最後は極論となってしまいましたが、森永卓郎さんが、自給自足の様な農業をなさっているようです。彼は庶民の「小さな幸せ」のあり方を常に提案していました。
誰もが理想の未来に辿り着けるか怪しい時代に、個々人の生存戦略が大きく問われていると私は妄想しています。