■ 今期アニメは良作は多いけれど、突き抜けた作品が無い ■
今期アニメは一言で言うと「水準以上の作品が多くて見る時間を作るのが大変」でした。特に金曜日が辛い・・・。
一方で突出した作品が一本も無い事が不満。『Gのレコンギスタ』と『クロスアンジュ』がある意味において突き抜けていますが、前者は富野監督が突き抜けているだけで作品としては色々とトッチラカッタ感じがします。後者は「悪乗り」が過ぎて「悪目立ち」しただけの作品。
ただ、次に挙げる3作品には好感が持てました。「きちんと物語を構築しよう」とする姿勢を感じたからです。
第一位 『サイコパス2』
制作がプロダクションIGからタツノコに何故か変わったシリーズ第二弾。実は前作はあまり好きでは有りませんでした。作画もプロットも、キャラクターの魅力も圧倒的に前作が優れていると思えるのですが、結局色々と凝った設定や事件の先に在ったものが、集合的知性による統治という少々古臭いテーマであった事が失望の原因かと思います。
一方、2期目は虚淵が抜けて『天地名察』や『マルドゥック・スクランブル』の作家としても知名度の高い冲方丁がシリーズ構成。
前作は事件に絡めて丁寧に人物描写を積み上げていましたが、今作は11話構成という事もあり人物描写は極めて雑です。作画のクオリティーも極めて低く、がっかりされた方も多かったと思います。
ただ、前作で積み上げた「集合的知性による統治」に対して「集合的サイコパス」の存在を突きつける内容はSF作品としては前作を遙かに凌ぐ面白さがありました。「前半はエエエーー?!これがサイコパス?!・・・凄い劣化じゃん」ってビックリしましたが、話が進むにつれてグイグイと引き込まれて行きました。
1期目は色々と話を捏ね繰り回した割には、「集合的知性」が犯罪者と認識出来ない「潜在犯」を追跡する警察物に収束してしまった感じが強かったのですが、2期目は「完璧な集合的知性は、自らの罪を裁けるか」というやや哲学的な命題が中心になっており、SF的な魅力が格段に高まっています。
11話という限られた話数で複雑な命題を追及する為に、個々の捜査官のキャラクターの描きこみを省きながらも、中心人物達の描きこみはしっかりしていたと思います。
ただ、2期の魅力の土台になるのは、やはり世界感をしっかり構築した1期の存在であり、そういった意味においてはサイコパス2は単独では評価できない作品とも言えます。
2位 『ソードアート・オンライン 2』
「エエーー??」とPCの前で声を上げた方もいらっしゃる事でしょう。こちらも2期目ですが、1期目の面白さは片鱗も有りません。
前半の「ファントム・バレット編(死銃)」を評価されるファンは多いかと思いますが、私は後半の「マザーズ・ロザリオ編(絶剣)」を圧倒的に支持します。
そもそもソードアートオンラインという作品はゲーマーのユートピア的な内要でゲームをプレイしない私的には魅力の乏しい作品なのですが、シリアスな設定や細かなギミックが良く出来ていると関心する作品でも有ります。第一期はゲーム世界を攻略する面白さが際立っていましたが、やはり根底にあるバーチャルシステムの開発者の思惑が気になる作品でした。尤も、ゲームの開発者である茅場晶彦が2000人のプレーヤーをゲーム世界に閉じ込めた理由は、「バーチャル世界での生死がリアルな世界の生死に直結する」という設定の為であって、そこに大した意味合いは存在しません。
ただ、「マザーズ・ロザリオ編(絶剣)」はバーチャルMMOのシステムを応用して末期の患者の緩和ケアーを行うという非常に社会的な内要に発展した事を高く評価したいと思います。「ゲーマーのユートピア」に終わりがちな作品世界ですが、現実世界との繋がりを大切にしている点を評価しました。とって付けた様にヒロインと母親の確執も描かれますが、ゲームに没頭する娘を心配するのは親として当然です。こういう当然の描写が現在のアニメには欠けています。親や大人が丁寧に排除された作品がほとんどです。
「ゲーマーのユートピア」的作品の後半数話は、現実世界が中心に描かれており、病床の少女にフルダイブシステムを通して現実世界を再体験させる内容になっています。原作者が絶えずバーチャルワールドと現実世界を対比している点が、ソードアートオンラインの最大の魅力なのかも知れません。
第三位 『selector infected WIXOSS』
カードゲームの販促アニメですが、岡田麿里が作り出す少女達のドロドロの閉塞世界が他の凡百のアニメと一線を画す作品です。カードバトルの爽快感など微塵も無く、いえ、カードバトルそのものがほとんど無い「異色カードバトルアニメ」。
流行りのカードゲームの「WIXOSS」に多くの少女達が熱中していますが、その中からカードの声が聞こえる娘達が現れます。彼女達セレクターは、セレクター同士のカードバトルに何回か勝てば「願が叶う」とカードの中の少女に教えられます。「友達を作りたい」とは「双子の弟への恋を成就させたい」など、少女達は切実な願いを掛けて戦います。しかし、実はカードバトルに3回負けると願いは逆転してしまう事を、カードの中の少女達はセテクターに教えては居ません。こうして数多の少女達の願は逆転し、そしてバトルに勝った少女達にはさらなる悲運が待ち受けている・・・・。実に救いの無い話です。
話の展開のテンポも悪く、重々しくドロドロとした雰囲気が支配します。ただ、そういった重々しい空気は、少女達が生活している中で現実に感じているものを上手く表していて、私的には評価すべきポイントだと思っています。
このあまりにも救いの無い設定に対して、岡田麿里は最終話で最高の救済を用意しています。「キレイに終わった」という感想を多くの方が持たれた事でしょう。(この作品、しかも2期構成を完走された視聴者は少ないと思いますが)じっくり世界設定をして、そしてじっくりと最終話に向けてエピソードを積み上げる手腕に脱帽です。
アニメという枠組みよりは「ダーク・ファンタジー」に分類されるべき作品で、ジョナサン・キャロルの小説にも通じる世界を感じます。
カードゲームの収益があるあからこそ出来る贅沢な作品でした。
残念賞 『異能バトルは日常系の中で』
「オタクアニメの限界」を越える事の出来なかった残念な作品です。ただ、7話目だけは、今年のアニメのベストの出来に一つかと・・・。
「おさな馴染みのマジ切れ」というアニメ市場に残る名シーン・・・『異能バトルは日常系の中で』
今回は「オタクアニメ」に飽きた感じがして、「内容が面白い」作品を推してみました。
2期作品なので今期ベストからは外れますが、この2作品も注目。
『四月は君の嘘』
ピアノを弾けなくなった少年の再帰の話ですが、瑞々しい演出が最大の魅力。今期の家族枠です。
『SHIROBAKO』
アニメの制作現場の日常をリアルに描く作品ですが、エンタテーメントとしての完成度も高い。「万策尽きた!!」には大笑い。
アニメってどうやって作るの?・・・『SHIROBAKO』
その他の今期アニメ
『寄生獣』・・・面白いしクオリティーも高いのですが・・・驚きが少ないかな。
『テラフォーマーズ』・・・素晴らしい演出の回が多いのですが、ゴキブリが気持ち悪い。
『甘城ブリリアントパーク』・・・失速。最終話のオマケ回くらいのパワーが欲しい。
『神撃のバハムート』・・・「神作画」に対してあまりに驚きに欠けるストーリー。
『棺姫チャイカ』・・・チャイカ可愛い。トール、カッコイイ。ボンズ、イイネ・・・・
『白銀の意思 アルジェヴォルン』・・・リアルと見せかけてリアリティーの無い戦争?
『魔弾の王と戦姫』・・・キャラの魅力は高いのだけど・・・もう終わりなの?!
『アカメが斬る!』・・・実は影の今期アニメベスト1。アニメの面白さに溢れている。
『俺ツインテールになります』・・・惜しい。この手の作品に飽きたのかな・・・。
『Falte Stay Night』・・・ストーリーを知っているとさすがに・・・・。
『七つの大罪』・・・岡村天斎監督じゃないですか。実は面白い。『マギ』の舛成孝二監督と合わせて、少年漫画の王道作品にしてあまりにも贅沢。『マギ』は原作がサンデー誌上で陰謀論を思い切り展開していますが、マンガ的には「バルバット編」でピークを過ぎた感じがします。『七つの大罪』は、鳥山明の絵で描かれた陸上版『ONE PEICE』って感じ。
今期アニメ、大杉。睡眠時間を削って見た感じ・・・・。
尤も寝つきも寝起きも良くて、3時間寝れば元気一杯の体質なので、時間は沢山あるのですが・・・。TVも持って無いし。