人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

今期アニメ・ベスト・・・きっちりとした構成の強さ

2014-12-31 04:42:00 | アニメ
 



■ 今期アニメは良作は多いけれど、突き抜けた作品が無い ■

今期アニメは一言で言うと「水準以上の作品が多くて見る時間を作るのが大変」でした。特に金曜日が辛い・・・。

一方で突出した作品が一本も無い事が不満。『Gのレコンギスタ』『クロスアンジュ』がある意味において突き抜けていますが、前者は富野監督が突き抜けているだけで作品としては色々とトッチラカッタ感じがします。後者は「悪乗り」が過ぎて「悪目立ち」しただけの作品。

ただ、次に挙げる3作品には好感が持てました。「きちんと物語を構築しよう」とする姿勢を感じたからです。


第一位 『サイコパス2』



制作がプロダクションIGからタツノコに何故か変わったシリーズ第二弾。実は前作はあまり好きでは有りませんでした。作画もプロットも、キャラクターの魅力も圧倒的に前作が優れていると思えるのですが、結局色々と凝った設定や事件の先に在ったものが、集合的知性による統治という少々古臭いテーマであった事が失望の原因かと思います。

一方、2期目は虚淵が抜けて『天地名察』『マルドゥック・スクランブル』の作家としても知名度の高い冲方丁がシリーズ構成。

前作は事件に絡めて丁寧に人物描写を積み上げていましたが、今作は11話構成という事もあり人物描写は極めて雑です。作画のクオリティーも極めて低く、がっかりされた方も多かったと思います。

ただ、前作で積み上げた「集合的知性による統治」に対して「集合的サイコパス」の存在を突きつける内容はSF作品としては前作を遙かに凌ぐ面白さがありました。「前半はエエエーー?!これがサイコパス?!・・・凄い劣化じゃん」ってビックリしましたが、話が進むにつれてグイグイと引き込まれて行きました。

1期目は色々と話を捏ね繰り回した割には、「集合的知性」が犯罪者と認識出来ない「潜在犯」を追跡する警察物に収束してしまった感じが強かったのですが、2期目は「完璧な集合的知性は、自らの罪を裁けるか」というやや哲学的な命題が中心になっており、SF的な魅力が格段に高まっています。

11話という限られた話数で複雑な命題を追及する為に、個々の捜査官のキャラクターの描きこみを省きながらも、中心人物達の描きこみはしっかりしていたと思います。

ただ、2期の魅力の土台になるのは、やはり世界感をしっかり構築した1期の存在であり、そういった意味においてはサイコパス2は単独では評価できない作品とも言えます。


2位 『ソードアート・オンライン 2』



「エエーー??」とPCの前で声を上げた方もいらっしゃる事でしょう。こちらも2期目ですが、1期目の面白さは片鱗も有りません。

前半の「ファントム・バレット編(死銃)」を評価されるファンは多いかと思いますが、私は後半の「マザーズ・ロザリオ編(絶剣)」を圧倒的に支持します。

そもそもソードアートオンラインという作品はゲーマーのユートピア的な内要でゲームをプレイしない私的には魅力の乏しい作品なのですが、シリアスな設定や細かなギミックが良く出来ていると関心する作品でも有ります。第一期はゲーム世界を攻略する面白さが際立っていましたが、やはり根底にあるバーチャルシステムの開発者の思惑が気になる作品でした。尤も、ゲームの開発者である茅場晶彦が2000人のプレーヤーをゲーム世界に閉じ込めた理由は、「バーチャル世界での生死がリアルな世界の生死に直結する」という設定の為であって、そこに大した意味合いは存在しません。

ただ、「マザーズ・ロザリオ編(絶剣)」はバーチャルMMOのシステムを応用して末期の患者の緩和ケアーを行うという非常に社会的な内要に発展した事を高く評価したいと思います。「ゲーマーのユートピア」に終わりがちな作品世界ですが、現実世界との繋がりを大切にしている点を評価しました。とって付けた様にヒロインと母親の確執も描かれますが、ゲームに没頭する娘を心配するのは親として当然です。こういう当然の描写が現在のアニメには欠けています。親や大人が丁寧に排除された作品がほとんどです。

「ゲーマーのユートピア」的作品の後半数話は、現実世界が中心に描かれており、病床の少女にフルダイブシステムを通して現実世界を再体験させる内容になっています。原作者が絶えずバーチャルワールドと現実世界を対比している点が、ソードアートオンラインの最大の魅力なのかも知れません。

第三位 『selector infected WIXOSS』



カードゲームの販促アニメですが、岡田麿里が作り出す少女達のドロドロの閉塞世界が他の凡百のアニメと一線を画す作品です。カードバトルの爽快感など微塵も無く、いえ、カードバトルそのものがほとんど無い「異色カードバトルアニメ」。

流行りのカードゲームの「WIXOSS」に多くの少女達が熱中していますが、その中からカードの声が聞こえる娘達が現れます。彼女達セレクターは、セレクター同士のカードバトルに何回か勝てば「願が叶う」とカードの中の少女に教えられます。「友達を作りたい」とは「双子の弟への恋を成就させたい」など、少女達は切実な願いを掛けて戦います。しかし、実はカードバトルに3回負けると願いは逆転してしまう事を、カードの中の少女達はセテクターに教えては居ません。こうして数多の少女達の願は逆転し、そしてバトルに勝った少女達にはさらなる悲運が待ち受けている・・・・。実に救いの無い話です。

話の展開のテンポも悪く、重々しくドロドロとした雰囲気が支配します。ただ、そういった重々しい空気は、少女達が生活している中で現実に感じているものを上手く表していて、私的には評価すべきポイントだと思っています。

このあまりにも救いの無い設定に対して、岡田麿里は最終話で最高の救済を用意しています。「キレイに終わった」という感想を多くの方が持たれた事でしょう。(この作品、しかも2期構成を完走された視聴者は少ないと思いますが)じっくり世界設定をして、そしてじっくりと最終話に向けてエピソードを積み上げる手腕に脱帽です。

アニメという枠組みよりは「ダーク・ファンタジー」に分類されるべき作品で、ジョナサン・キャロルの小説にも通じる世界を感じます。

カードゲームの収益があるあからこそ出来る贅沢な作品でした。


残念賞 『異能バトルは日常系の中で』



「オタクアニメの限界」を越える事の出来なかった残念な作品です。ただ、7話目だけは、今年のアニメのベストの出来に一つかと・・・。

「おさな馴染みのマジ切れ」というアニメ市場に残る名シーン・・・『異能バトルは日常系の中で』



今回は「オタクアニメ」に飽きた感じがして、「内容が面白い」作品を推してみました。




2期作品なので今期ベストからは外れますが、この2作品も注目。

『四月は君の嘘』



ピアノを弾けなくなった少年の再帰の話ですが、瑞々しい演出が最大の魅力。今期の家族枠です。

『SHIROBAKO』



アニメの制作現場の日常をリアルに描く作品ですが、エンタテーメントとしての完成度も高い。「万策尽きた!!」には大笑い。

アニメってどうやって作るの?・・・『SHIROBAKO』 


その他の今期アニメ


『寄生獣』・・・面白いしクオリティーも高いのですが・・・驚きが少ないかな。
『テラフォーマーズ』・・・素晴らしい演出の回が多いのですが、ゴキブリが気持ち悪い。
『甘城ブリリアントパーク』・・・失速。最終話のオマケ回くらいのパワーが欲しい。
『神撃のバハムート』・・・「神作画」に対してあまりに驚きに欠けるストーリー。
『棺姫チャイカ』・・・チャイカ可愛い。トール、カッコイイ。ボンズ、イイネ・・・・
『白銀の意思 アルジェヴォルン』・・・リアルと見せかけてリアリティーの無い戦争?
『魔弾の王と戦姫』・・・キャラの魅力は高いのだけど・・・もう終わりなの?!
『アカメが斬る!』・・・実は影の今期アニメベスト1。アニメの面白さに溢れている。
『俺ツインテールになります』・・・惜しい。この手の作品に飽きたのかな・・・。
『Falte Stay Night』・・・ストーリーを知っているとさすがに・・・・。

『七つの大罪』・・・岡村天斎監督じゃないですか。実は面白い。『マギ』の舛成孝二監督と合わせて、少年漫画の王道作品にしてあまりにも贅沢。『マギ』は原作がサンデー誌上で陰謀論を思い切り展開していますが、マンガ的には「バルバット編」でピークを過ぎた感じがします。『七つの大罪』は、鳥山明の絵で描かれた陸上版『ONE PEICE』って感じ。



今期アニメ、大杉。睡眠時間を削って見た感じ・・・・。
尤も寝つきも寝起きも良くて、3時間寝れば元気一杯の体質なので、時間は沢山あるのですが・・・。TVも持って無いし。

日銀の当座預金の拡大が意味する事・・・手段なのか目的なのか?

2014-12-29 07:05:00 | 時事/金融危機
 

■ 日銀の東西預金残高の拡大は「良い事」か「悪い事」か? ■


「ひろのひとりごと」さんの所で面白い議論をさせていただいたので、少し考察します。

ひろさんは「日銀の当座預金に量的緩和資金が滞留してもリフレ政策の目的は達成される」と主張されています。

「日銀当座預金」は「マネタリーベース」で、物価に影響を直接与えるのは「通貨供給高(マネーストック)」なのだから、「マネタリーベースの拡大が予想インフレ率に作用して結果的にマネーサプライが拡大する」というリフレ論的にはから日銀当座預金残高の増加は問題にならない」という主張かと思います。

これ、リフレ論の根幹に関わる問題なので、少し掘り下げてみたいと思います。


■ マネタリーベースの拡大と予想インフレ率 ■

日銀の異次元緩和の目的は、緩和的金融政策を長期に継続する事で予想インフレ率を引き上げ、デフレ脱却する事です。

1) マネタリスト(貨幣数量説派)的には通貨量が増加すれば物価が上昇する
2) マネタリーベースを長期に拡大すれば予想インフレ率が上昇する
3) 予想インフレ率が上昇すれば、将来的な金利上昇予測が起こり資金需要が拡大する

平成の大バブルの崩壊以降、日銀は量的緩和を実施して来ましたが、マネタリーベースの拡大にも関わらず予想インフレ率は上昇せずに、むしろデフレが進行しました。

そこで「量的緩和の規模が足りなかったからデフレになったのだ」との主張が高まり、異次元緩和が実行されました。

■ 増え続ける「日銀の当座預金残高」 ■

リフレ派の主張は「マネタリーベースの拡大=信用創造の拡大」です。実体経済に投入する資金量が増えるのだから、当然インフレが発生するだろうと言う訳です。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

インフレに直接作用するのは「貨幣流通高」の内でも金融機関が保有する流通量を除いた「マネーストック(マネーサプライ)=通貨供給量」です。ですから異次元緩和の目的達成の為には「マネーストック」を増やす必要が有ります。

マネーストックは金、金融機関と中央政府を除いた経済主体が保有する現金通貨(紙幣を含む広義の貨幣)、普通預金、当座預金、定期預金、外貨預金、譲渡性預金の総合の流通量で、マネタリーベースを元に信用創造で増やす事が出来ます。


しかし、何故か日銀は異次元緩和以前の量的緩和時代から「日銀当座預金残高」の増加を量的緩和の目標の一つにして来ました。これはバブル崩壊で不良債権を抱えた銀行に対して現金預金を厚くさせて不測の事態に備えさせたとも言えます。流動性を日銀当座預金で確保したのでしょう。

異次元緩和ではこの目標値を80兆円に設定しています。



2012年12月末時点で47兆円であった日銀当座預金残高は、2014年10月20日現在では165兆円にまで達しています。日銀の目標以上に日銀当座預金残高は増えています。

1) 銀行から国債を日銀が買い上げる
2) 銀行の日銀の当座預金残高
3) 銀行が資金運用の為に当座預金を取り崩さなければ当座預金残高が増える
4) 資金需要が低迷しているので当座預金残高は増える

現時点で日銀の目標値を上回る日銀当座預金残高が積み上がっているので、異次元緩和は思い通りに進んでいないという指摘が有ります。

■ 「日銀の当座預金残高もマネタリーベースだから問題無い」と主張するリフレ派 ■


リフレ政策が効果を発揮する為には、マネタリーベースの内の「貨幣流通高」が拡大して物価を押し上げる事が必要です。「貨幣数量説」を元にするリフレ政策の根幹です。

一方、現在拡大してるのは「日銀当座預金」です。

リフレ派は「日銀当座預金もマネタリーベースの構成要素だから、それが増えれば予想インフレ率が上昇して「マネーストック」が拡大して、デフレを脱極するのだから問題は無い」と主張します。

1) マネタリーベースの拡大が予想インフレ率を上昇させる
2) 予想インフレ率の上昇が資金需要を生み出し、マネーストックが拡大する
3) 日銀当座預金もマネタリーベースの一部なのだからこれが増えてもデフレ脱却に問題は無い

こういう論法でしょうか・・・・。
しかし、インフレ率に直接作用するのは「日銀当座預金」では無く、「マネーストック(通貨流通高の一部)」のはずです。反リフレ派は、「日銀の当座預金に資金が滞留して、貨幣流量が思うように増えていないのでリフレ政策は失敗だ」と指摘しているのです。



マネーストックの推移を見ると、異次元緩和後に顕著に増加した傾向はみられません。

これに対するリフレ派の反論は「マネーストックの拡大が始まるにはタイムラグがある」というものです。現状で判断してはいけない・・・そう言っています。

■ 確実に達成されたのは「円安」と「輸入物価の上昇」 ■

異次元緩和でも思うように資金需要が増えないので「マネーストック」が拡大せずインフレの達成がモタツイテいます。

一方で、「マネタリーベース」の拡大は通貨市場では確実に「円安」を生み出しました。長期的には為替相場は通貨量の比で決まる傾向があるので、当然「円」が増えれば円安になります。「円安」は「輸入物価」の上昇を促し、結果的にインフレ率の上昇に寄与しています。

結局、異次元緩和によるインフレ率の上昇の原因は、資金需要の拡大による「マネーストック」の増加では無く、「円安による輸入物価の上昇」によって達成されています。

■ 日銀当座預金を日本国債で運用する日銀 ■

ここで興味深いのは、日銀が日銀当座預金を日本国債で運用している事です。

1) 日銀が銀行から国債を買い上げる
2) 日銀当座預金残高が増える
3) 日銀当座預金を日銀が日本国債で運用する

これ、日本国債のリスクが民間銀行から日銀に移っただけの気がします・・・。日本国債の市場価格が下落した場合、含み損が発生しますが、日銀は満期保有を前提としているので含み損は問題に成りません。一方、民間銀行はバランスシートが痛むので、日本国債を手放さざるを得ません。

・・・・何だか、リフレ論を隠れ蓑にした日銀の財政ファイナンス以外の何物でも無い様な・・・。

■ 日銀当座預金の利付けを無くせという主張 ■

「マネーストック」が増えないのは、日銀の当座預金に0.1%の金利が利付けされているからだ」
と反リフレ派は主張し始めています。

これに対してリフレ派の反論は、「マネストックは信用創造で拡大するので、日銀の当座預金に超過準備が積み上がっていても、資金需要が高まれば信用創造のに歯車が回転してマネーストックは拡大する」と反論しています。

これ、私も勘違いしていたのですが、現在の日本の預金準備率は非常に低く、超過準備を取り崩さなくても信用創造の拡大で「通貨流通高(マネーストック)」の拡大は容易に達成されます。

ですから、日銀当座預金残高の利漬けは、「マネーストック」の拡大を阻害するものでは無い様です。やはり、資金需要の低迷の影響の方が大きいのでしょう。

それでもヨーロッパ中央銀行(ECB)の様に、中央銀行の当座預金金利をマイナスに引き下げれば、当座預金残高を減らして市中に強引に通貨を流通させる事は可能です。

■ 短期市場の維持の為に日銀の当座預金の利付けは必要 ■

実は日銀の当座預金の利付けの理由は、短期のコール市場などの流動性確保が目的の様です。

銀行勘で短期に資金を融通しあるオーバーナイトなどの短期のコール市場が機能するのは、金利が存在するからです。この金利がゼロになってしまうと短期のコール市場の流動性が枯渇し、銀行は資金調達が難しくなります。

量的緩和を実施している状況では市場に資金が余っているので短期市場の金利はゼロに近付きます。これをゼロにしてしまうと流動性が枯渇するので、日銀の当座預金の金利をボトムとする事で、短期市場の流動性を確保するというのが日銀の説明です。

ただ、当座預金金利をマイナスにしたEUで短期のコール市場が機能を失ったかと言えばそうでは無いので、日銀の0.1%に利付けに本当に意味があるのかは・・・疑問も持たれています。

■ 堂々巡りのリフレ論 ■


リフレ論を考察すると、どうも堂々巡りに陥ります。

「マネタリーベースの拡大 → マネーストックの拡大」

これがリフレ論の根幹ですが、実際にはマネタリーベースを拡大すればするほど、日銀当座預金に超過準備が積み上がり、信用乗数が下がっる傾向が続いています。

緩和をすればする程、資金循環の回転が低下しているのです。

これは、量的緩和が資金需要を低下させていると言うより、少子高齢化や空洞化などの金融政策以外の外的要因が強く作用している様に思われます。

「日本の経済成長は構造的要因によりマイナスのバイアスが掛かっていますが、量的緩和によってそれを緩和している」というのが現状の正しい認識なのかも知れません。

リフレ政策が無ければ、日本経済はもっと失速しているというのは納得できる主張です。
一方で、大規模な金融緩和は様々な副作用を伴うので、FRBなどは出口を模索しています。日本の量的緩和は既に「異次元」の領域に突入しているので、その副作用も異次元のものとなるのでは無いかという漠然とした不安に襲われます。


ただ、日銀のバランスシートの中身はFRBやECBに比べればキレイなものとも言えます。日本国債という国民の将来的な負担とバランスしています。訳の分からないMBSで膨らんだFRBのバランスシートよりはマシだとも言えます。

尤も、国民は日本国債の負担から逃げる事は出来ませんから、最後はインフレによってバランスされる事になるのでしょう。


アメリカ経済のアキレス腱・・・ジャンク債市場とサブプライム層の自動車ローン

2014-12-27 03:02:00 | 時事/金融危機
 

■ シェールガス開発はジャンク債市場で資金調達していた ■

私はアメリカの「シェール革命」にはブームの初期から懐疑的でした。採掘コストが高過ぎる事も理由の一つですが、「メディアが騒ぎ過ぎるブームには裏が有る」という陰謀論者の理論で、シェールガスブームを検証して来ました。

シェールガスの開発会社はウォール街で資金調達していましたが、ジャンク債市場が多くの資金を提供しています。エネルギー企業が発行したジャンク債は市場の18%を占める様ですが、原油価格が長期的に65ドル/バレルで推移すれば、40%がデフォルトするとも予測されています。

FRBが供給した大量の資金は、本来金利の高いリスクの高い会社の債権=ジャンク債の金利をリスクに見合わない水準まで低下させました。金利上昇はこの様なリスクを無視した市場に最初に影響を与えるので、ジャンク債の金利が上昇し始めればシェール企業の多くは資金調達コストが増大します。

シェールガス企業はジャンク債市場で資金調達する事で「自転車操業」を繰り返していたので、資金調達コストが上昇すれば自転車操業が出来なくなり、一気に資金繰りが出来なくなり倒産する企業が続出するでしょう。

市場はシェールガス企業の破綻を先読みして動くので、来年実行されるであろうFRBの利上げに先だって、ジャンク債市場でエネルギー関連企業の社債が暴落し、ジャンク債市場事態が混乱する事は想像に難くありません。

■ サブプライム層への自動車ローンも相当怪しい ■

アメリカの好景気を演出している自動車売上の好調ですが、こちらも緩和マネーに支えられています。現在アメリカでは所得の低いサブプライム層がほとんど審査もされずに自動車ローンを組んでいます。「顧客離れを食い止めるために米大手自動車販売店では、最大6年の自動車ローンを組んで高級車を購入する消費者にゼロ金利を保証している所が多い」というのですから、相当不健全です。

これらの自動車ローンは自動さローン担保債権として金融市場で流通しています。リーマンショックの元凶ともなった住宅ローン担保債権(MBS)同様に、ごった煮債権の安全性に気付いた人達は、この市場から資金を引き揚げ始めています。

14年4-6月期の米自動車ローン残高は、前年同期比+11.7%の8390億ドル(約87兆円)とすでに過去最高を更新しています。この内デフォルトするのは一部のローンですが、合成債権に加工されていた場合は、自動車ローン担保債権全体が一時的に信用を失います。

■ 金融緩和の副作用=リスクに対して低すぎる金利 ■

多分、シェールガスや自動車ローン以外にも金融緩和の副作用を溜めこんでいる市場があるはずです。

FRBは米株のIT関連株が高過ぎる水準にあると警告しています。フェースブックやアップル、アリババなどの株式の相場がはたして適正なのか・・・。

これらの潜在的危機は、FRBの量的緩和政策の副作用です。あまりにも金利が低下した為に、リスクを無視した金利の投資でなければ金利が稼げなくなっているのです。デフォルトリスクを考えれば本来もっと高い金利を要求すべきですが、市場が適正金利を形成する能力を緩和的金融政策を奪っています。

■ ブラックスワンは別の場所に居そうだ・・・・ ■

ジャンク債市場の暴落や、自動車ローン担保債権市場の暴落がリーマン級のショックを生むかと言えば・・・・多分NOでしょう。

サブプライムローン危機からリーマンショックを生み出したのは、ヘッジファンドを中心とする高すぎるレバレッジでした。リーマンショック以降はヘッジファンドもかつての様なレバレッジを掛けてはいません。自動車ローン担保証券の市場もMBS程の規模は有りません。

では何がブラックスワンに変貌するのかと言えば、私は案外「利上げの失敗が作り出す次なるバブル」では無いかと思います。

もし、仮にアメリカが利上げに失敗して市場が混乱し、FRBが再びゼロ金利に金利を引き下げざるを得ない状況が生まれた時、市場には「失敗したらFRBが助けてくれる」という甘え生まれます。これが次なるバブルに繋がるのでは無いか・・・。


FRBが利上げに成功しても失敗しても、バブルの芽が膨らみそうな予感がします。ただ、市場は様々な脆弱性を積み上げているので、バブルの花が開く前に根が腐る可能性も否定は出来ません。

映画並みのクオリティー・・・『野狐禅』の初期作品PV

2014-12-26 15:21:00 | 音楽
 



野狐禅の記事を書いたついでにネットを徘徊していたら、竹原ピストルがメジャー再デビューを果たした事を知りました。ついでに最新アルバムをポチットしてしまいました。



冒頭のRainは「え、これが竹原ピストルル?!」って驚く程スマートな曲調とアレンジ。70年代に活躍したフォークシンガーが、シャレたエレクトロニックなアレンジでお化粧直しされてヒットを飛ばした80年代のアメリカを思い出してしまいます。ただ、彼らはMTVブームが去るとギター一本のシンプルなステージに戻って行きましたが・・・。

『カモメ』や『不完全燃焼』など過去の名曲が散りばめられたベストアルバムですが、軽いノリの曲も多いので、かつての野狐禅のアルバム程、お腹イッパイにならない点は一般受けするのかなとも思います。


ただ色々と人生経験を積んだであろう彼の歌を聴いているうちに、やはりデビュー当時のPVを観たくなってしまうのは何故なんだろう。

PVの監督は「ぴあ」のフィルムフェステバルでデビューした熊切和嘉(帯広出身)。海外の映画祭で評判の高い監督です。日本映画のエッセンスが凝縮された様なPVは再編集されて短編映画の『遡河魚』としてDVDとして発売された様です。

この3本のPV、凄いですよ。下手な映画なんて目じゃない。

特に『カモメ』は、短編映画賞を差し上げたい程の出来栄え。
主演は寺島進さんですね。このヤサグレタ感じ・・・たまりません。小物のチンピラを演じさせたら彼の右に出る人は居ないのではないでしょうか?

共演は私のNO1日本映画、『帰郷』(監督:萩生田宏治)で西島秀俊と共演していた片岡玲子。

『ぐるぐる』



『かもめ』



『東京紅葉』



誰か、高画質でお願いします!!



ちなみに短編映画の『遡行魚』はこちら。

http://nviewer.mobi/player?video_id=sm1804783


「鮭」を「タイ」と読み違えたシーンが、前半の映像に繋がっていて・・・涙腺を直撃します。上のPVは時系列で並べてみましたが、『遡行魚』は現代から過去に時間と川を遡って行きます。


「低金利の罠」・・・本業が赤字化する銀行

2014-12-26 09:45:00 | 時事/金融危機
 

■ 「総合金利ザヤ」がメガバンクでもマイナス ■

「総合金利ザヤ」とは銀行が調達した資金を貸出しでどのくらい金利が得られるかを表す数字ですが、銀行の本業の利益率とも言えます。実はこの「総合金利ザヤ」が多くの銀行でマイナスにうなっています。三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行というメガバンクですら、マイナスという事態・・。

■ 貸出金利が下がり過ぎた結果 ■


「総合金利ザヤ」がマイナスになった原因は、貸出金利が下がり過ぎた為です。

日銀の異次元緩和によって銀行には資金がジャブジャブに余っています。その資金が民間にどんどん貸し出されて景気を刺激するというのが「リフレ論」者の主張ですが、実際には全く逆の事が起きています。

1)大量の資金が住宅ローンなど担保の取れる融資先に集中する
2)貸出しの過当競争が発生して優良貸出先の金利が極端に低下する
3)一方、リスクのある投資案件では十分な金利が確保出来ないので投資が滞る
4)貸出しによる金利ザヤがマイナスで、日銀の当座預金の金利0.1%が魅力的に映る
5)ゼロリスクで金利が稼げる日銀の当座預金に資金が積み上がる

「リフレ論者」の主張とは裏腹に、金利が下がれば下がる程、リスクに見合った利益が確保出来なくなる銀行は、担保の充分でない案件の貸し出しを渋ります。結果的に日本経済は成長するどころか後退している様に感じます。

さらに

6)リスクが同程度ならば海外投資の方が金利収益が圧倒的に高い
7)円安によって為替差益も期待できるので国内資金がどんどん流出する

結局、異次元緩和による円安によって、国内で運用されるべき資金はアメリカなどの国外で運用され、日本国内の経済を刺激出来ないのです。儲かるのは金利収益の得られる資産家だけで、国内経済の落ち込みは庶民の生活を圧迫します。

これが「低金利の罠」です。


■ 「リフレ政策」や「異次元緩和」といった超緩和的金融政策はデフレを引き起こす ■

日本は平成バブルの崩壊以降、緩和的金融政策や量的緩和など秘伝統的金融政策を続けて来ました。

その結果はデフレ脱却どころか、デフレを長引かせただけというのは現在の日本の状況が証明しているのでは無いでしょか?

「いやいや、異次元緩和以降インフレ率は上がっているじゃないか!!」と突っ込まれそうですが、これは円安による輸入価格の上昇が原因で、国内経済の成長率は低いままです。昨年前半の景気回復は「期待」と補正予算の効果が表れただけで、その後「期待」は剥離しています。

緩和的金融政策がデフレを招く傾向は日本に限った事では無いかも知れません。リーマンショック以降、狂った様にマネタリーベースを拡大したアメリカでもインフレ率は鈍化しており、ヨーロッパもデフレに突入しつつあります。

■ 資産市場の過熱が実体経済を冷ます ■

海外における緩和的金融政策の弊害は「資産市場の過熱感」の副作用だと私は考えます。

ジャブジャブに供給された資金によって崩壊しかかった市場は復活し、ダウに至っては史上最高値を更新しています。

これは緩和資金がてっとり早く金利を稼ぐ為に資産市場に集まって来た結果です。本来は実体経済に回るべき資金が資産市場でインフレを引き起こしているのです。

現物市場に流入していた資金は原油価格や鉄鉱石や銅などの価格を需給バランス以上に押し上げていました。原油は40(ドル/1バレル)が均衡点とも言われていましたが、リーマンショックでこの水準に下落した後、再び100ドル台を続けていました。ところが、アメリカの利上げを意識したリスクオフで現物市場から資金が逃避した瞬間に原油価格は適正価格に向けて下降しています。これは緩和資金が資産市場でインフレを起していた事を裏付けます。

同様にジャンク債市場や株式市場もインフレ状態です。ただ、お金は儲かるうちは一番勢いのある市場に集まるので、何かの切っ掛けがあるまではダウは強気な値動きを続けると思われます。(18000ドルに乗せても調整は限定的でした。クリスマスという事も有りますが)

一方、資産市場のインフレが過熱すれば過熱する程、実体経済に流れる資金は減少します。アメリカの景気回復が弱弱しいのはこれが原因かと思われます。実体経済への投資で得られる金利が、資産市場への投資に比べて低すぎる事が景気の回復を遅らせている原因では無いでしょうか。

■ そろそろ「低金利の罠」に気付き始めた人達が居る ■

伝統的な経済学では金利が下がれば資金需要が増えて景気は回復すると信じれられ来ました。非伝統的に思われがちな「リフレ論」や「マネタリスト」は、伝統的な経済学を過剰に解釈した延長戦上に存在します。ですから彼らの思考では、量的緩和で実質金利をマイナスに誘導すれば景気は回復するはずです。

しかし、実際には実体経済を回復軌道に乗せる事が出来ていません。(貨幣現象としてのインフレは起こせますが・・・)

低金利になればなる程、投資のリスクが貸出し金利に見合わなくなる「低金利の罠」は、実際の銀行の貸し出し業務をやられている方ならば薄々気づかれているかと思います。「闇株新聞」さんなど、一部の実践派の経済評論家も最近では「低金利の罠」を主張されています。

この様に現場の感覚や生活実感を持った人達は「低金利の罠」に気付き易いのですが、一方で従来の経済学にドップリ浸かった経済学者の方々は、異次元緩和の効果を疑問視する事はあっても、なかなか異次元緩和こそがデフレや景気低迷の原因だとは思い至らない様です。

私の様な素人が何を言っても説得力は無いのですが、日本や世界の現状と将来が、きっと「低金利の罠」を証明する事になるのでしょう。尤も、その前に金融市場が崩壊して原因がウヤムヤにされてしまう可能性が高いかも知れません。


ダウが大台に乗った事で、クリスマス休暇明けの米株の動きが皆さん気掛かりかと思います。アメリカの利上げまでは調整はあっても崩壊は無いと予想しますが、いつも外れる人力予想ですから・・・。