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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「実存主義」とアニメ・・・実存とは他者の承認によって確立する

2017-06-30 03:00:00 | アニメ
 



『アリスと六蔵』より



■ 近代化と実存主義の登場 ■

「実存主義哲学」などというと堅苦しいけれど、「自分とは何か」という問いは現代人にとっては大切な問題です。

自我が確立する頃にちょっと賢い若者ならば、誰でも考えるであろう「自分とは何か」という問題。「オヤジとオフクロがチョメチョメしたから今の自分が在るのだけれど、ではオヤジとオフクロが出会わなければ自分は存在しなかった・・・」、この程度の思考は誰でもするでしょう。

哲学は「世界とは何か」を問う学門でしたが、近代になって科学が発達すると世界の在りようは一変します。「神が創造した世界」がダーヴィンの進化論によって「自然の気まぐれと淘汰によって出来た世界」になってしまってのですから、「神の創りし世界の有り様を追求する」旧来の哲学はその根幹を大きく揺さぶられます。

「神は死んだ」と言ったのはニーチェですが、神と個人の関係を再構築しようとしたキルケゴールも、近代科学の影響を無視する事は出来ませんでした。サルトルに代表される「実存主義」と呼ばれる哲学は、近代化によって人々が二度に渡る大戦を経験した事の反省として「国民国家」と「個人」の関係を再定義する過程で注目を集めますが、実はニーチェやキルケゴールやハイデッカーなどにその起源を求める事が出来ます。

「実存主義」とは「神との繋がり」を絶たれた人々が、「神の存在無くして自分を確立する」為の思考実験であったとも言えます。これを現代的に捉えるならば「神=社会」となるのかも知れません。

近代化は神を殺しただけでは無く、旧来の「帰属集団」をも崩壊させます。日本では「個人と神との契約」は希薄ですが、「ムラ社会と個人の契約」は確固として存在しました。それは「掟」として個人を規制すると同時に、「個人の存在理由」を決定するものでもありました。「ムラの為に存在する個人」という関係は「ムラに帰属する個人」という存在を確固なものにしていたのです。

しかし、近代化はムラ社会は解体し、都会という「帰属性の希薄」な社会を出現させます。それでもバブルの崩壊頃までは「会社」という単位がムラの代替として機能し、多くの人は「自分とは何か」などと問う事も無く、妄信的に「会社というムラ」に帰属して生きて来ました。

アイデンティティーの崩壊に直面していたのは家庭に孤立してしまった主婦だったのかも知れません。しかし主婦は主婦で、家庭を最小単位のムラとして再定義し、「夫と子供に奉仕する」事で、アイデンティティーの崩壊を食い止めました。

■ 構造主義の登場 ■

「実存主義」は古い共同体の崩壊によって個人を再定義する為の生まれた哲学ですが、「構造主義」が台頭する事によって「古い哲学」或いは「哲学未満」的な位置づけに追いやられます。

構造主義は「実存主義が肥大化してしまった個人を解体し無化」する事で社会と個人を再定義しようとしたと私は捉えています。個人の枠に閉じこもってしまった哲学を、再び「世界とは何か」という問いかけのフィールドに引き戻そうとしたのだと・・。

但し、そこには既に世界を創りし神は不在だったので、「世界を形作る不変のルール」を見つけようとした。その方法論はソシュールの言語学にも見られる様に、一旦現実をバラバラに分解し、社会を形作る基本構造を見つけた上で、それがどの様に構成される事で社会が形成されるのかをシミュレートしようとした。これは近代科学の手法と同等です。

「実存主義」は個人を肥大化する事でニーチェの超人や、その劣化版コピーである「かもめのジョナサン」を生み出し、さらには「涼宮ハルヒ」を生み出しますが、一方で現代人は自分の狭い六畳間を一歩出れば、超人でも何でも無い70億人の内の一人である事を痛感させられます。

「構造主値」は、徹底的な相対化によって「自分とは70億人の内の一人」である事を再定義しているに過ぎず、現代の個人を救済する哲学には成り得ません。

現代人はこの様に「個人と世界の関係の危機」の上に存在していすが、多くの人はこれを「人間関係は難しい」とか「社会で生きるのは難しい」という概念で認識しています。(ナンチャッテ・・・)

■ アニメはいつも哲学的だった ■

アニメや漫画というジャンルは、実は昔から意外に結構哲学的です。

そのルーツは手塚治に求める事が出来ますが『鉄腕アトム』はロボットやAIのアイデンティティを問うものとしてアシモフなど黄金期のSF小説に共通するテーマを秘めていますし、『火の鳥』などは「実存主義の思考実験の場」と定義する事も出来ます。

手塚治が切り開いた世界は『風の谷のナウシカ』や『機動戦士ガンダム』や『攻殻機動隊』や『ボトムス』などのアニメや漫画に引き継がれます。「世界と個人の関係」を描いた作品では永井豪の『手天童子』も忘れる事が出来ません。世界は精神を病んだ母親の夢だった・・・これはフィリップ・K・ディック的な実存主義で、その流れは『エヴァンゲリオン』など「世界系」と呼ばれるアニメや漫画やラノベに引き継がれています。

■ AI時代だからこそ生まれた『アリスと蔵六』 ■



『アリスと蔵六』より


今期アニメは名作、秀作が目白押しでしたが、その中でもダークホースだったのが『アリスと蔵六』。

漫画原作のこの作品、「アリスの夢」と呼ばれる「異能」を持った人達が世界に出現して、その帰属を巡り日本政府やアメリカが争うという「異能バトル」ものとして始まります。何だか『極黒のブリュンヒルデ』みたいだなと思って1話切しようと思いましたが、OPはEDがあまりに素晴らしいので、ついつい視聴を続けていました。

不思議の国のワンダーランドで生まれた女の子が、現実の世界に逃げ出す所から始まりますが、ワンダーランドはアリスの夢と呼ばれる超常現象が作り出した空間。そして逃げ出した「赤の女王」と呼ばれる女の子は、ワンダーランドが生み出した存在。そう、彼女は人間では無く、初めは人の形すらしていなかった。それが段々と人を模して女の子の形に収束したモノが「赤の女王=紗名」なのです。

研究所を逃げ出した紗名を保護したのは頑固ジジイの蔵六。彼は見かけによらすフラワーアレンジメントの世界では名が通った存在ですが、曲がった事が大嫌いです。そんなジジイがコンビニに行くと、一人の少女がお弁当を食い入る様に見つめています。そして彼女は目の前から突然消えてします。

普通なら関わりを持ちたく無い存在の紗名ですが、蔵六は彼女を放っておく事が出来ません。彼女が不思議な力を持ち、誰かに追われている厄介者である事よりも、蔵六には「小さな女の子が行く当ても無く困っている」事の方が重要だったのです。

物語の前半こそは紗名を奪還しようとする組織との異能バトルが繰り広げられますが、物語は次第に紗名ちゃんの日常アニメは豹変してしまいます。

ワンダーランドしか知らない紗名は、現実の世界は見る物、聴くもの全てが新鮮です。一方で現実世界のルールに戸惑います。ワンダーランドでは彼女は「創造主」が如く、思う事が現実化します。現実世界でも彼女の能力は健在で、様々な物を瞬時に生み出す力を持っています。そんな神にも等しい紗名が、一人の人間の女の子になる・・・これが『アリスと蔵六』という作品のテーマなのです。

実はこれは非常に現代的なテーマで、「AIが自我を持ったら・・・」とか「肥大化した実存(自我)が現実の社会に出たらどうなるのか」など、哲学的な要素が満載です。

全能の紗名はワンダーランドに一人で居る時は「世界=紗名」です。これは「世界系」の主人公とも言えますが、世界系の主人公は自分と世界が同化してしまう事で、個人の存在は希薄化してしまいます。

要は六畳間に閉じこもっていたら自分が誰だか分からなくなってしまい、ただ、六畳間に居る間だけは彼は全能で、食事も定時にドアの前の現れる・・・。そんなオタクの肥大化した自我の反映こそが世界系の全能の主人公であるならば、紗名は部屋から出たオタクだとも言えます。

紗名は蔵六に社会のルールを教わります。朝はきちんと挨拶する。寒くても新聞受けから新聞を持て来る・・・そういった小さなルールを守る事で、紗名は蔵六や周囲の人達に「認められ」て行きます。

このかわいらしい物語は、実は「自己=世界」として実存が希薄だった紗名が、周囲に認められる事で、「樫村紗名」という確固とした実存を獲得する物語なのです。

「実存主義」はともすると「自己の肥大化」という落とし穴に落ちてしまいがちですが、実は「自己」とか「実存」というものは周囲から「観測」される、或いは「認められる」事によって確立するのです。

アニメは大人になった紗名=実存を完全に回復(確立)した紗名が六蔵に感謝するモノローグで終わりますが・・・ちょっと感動しちゃいました。





■ 作品やキャラクターはファンの承認によって実存出来る ■




『recreators』より

『Fate zero』の「あおきえい」の新作『recreators』は、今期アニメで一番オタクの心を鷲掴みにした作品では無いでしょうか。異なるアニメや漫画やラノベの登場人物たちが、現実の世界に顕現してバトルを繰り広げる・・・そんな妄想にオタクなら一度は浸った事があるでしょう。

『Fate』シリーズは歴史の登場人物が魔法によって召喚されて戦う物語でしたが、今回は「軍服の姫君」という謎のキャラクターの力で、物語の登場人物が現実世界に召喚され闘います。

魔法少女とファンタジーの主人公とロボットがバトルする作品・・2次創作では在りそうですが、商業作品としてTV放送されるとワクワクします。特に魔法少女が強い所がGOOD!!

さてさて、実はこの作品も非常に哲学的です。

キャラクターや作品を作り出すのは作家や制作スタッフで、彼らはキャラクターや作品世界から見れば神の様な存在。

一方で、世界には自称作家やクリエーターを含まれば神は無数に存在し、無数の物語世界が日々増殖しています。しかし、その中で一般の人達に認識され、ある程度の数のファンを獲得した作品は少ない。

『recreators』で面白いのは、作品世界の中で確固とした実存を獲得していたキャラクター達が、現実世界に顕現する事でアイデンティティーの危機に陥るというのがこの作品の面白い所。

ただ、顕現したキャラクター達は、最初は戸惑うもののアイデンティティが崩壊する事はありません。それは、ファンが彼らを確固とした存在として「認識」しているからで、「認識」されている限り、彼らの実存は揺らぐ事が無い・・・。

かなり強引ではありますが、『recreators』はキャラクターや創造物の実存を問う意欲作であり、これを拡張すると「キュラクター=神」となる訳ですね。神様は人間が作り出した神話のキャラクターですから。



■ 古典的なテーマの『ID0』 ■



『ID0』より

黒田洋介のオリジナル脚本作品の『ID0』も「自分とは何か」をかなりストレートに問うSF作品。

記憶とIDを失い、さらには肉体をも失ったイドは機械の体に意識をトランスさせた存在。肉体すら無い彼は「自分が何者」なのかを探しています。

イドはエスカベーターと呼ばれる鉱物採掘業者の一員ですが、クルーの多くは肉体を失い機械の体の意識を移したエヴァートランサーと呼ばれる存在。

しかし、エヴァートランサーは記憶も意識も肉体を持っていた時と変わりが無いので、「自分とは何か」という問題に悩む事は有りません。ただ、かつてレーサーだったニックは、実は意識と人格のバックアップで、本人は死んでいます。彼も実は「自分とは何か」という問題を抱えていますが・・バカな?彼はその事を深く考えて悩む事はありません。自分を自分として素直に受け入れています。

「実存」があいまいなイドとニックですが、彼らの大きな違いは「記憶」が在るかどうか。記憶を有するニックはコピーと言えども自分の実存にあまり疑問を持ちません。一方、記憶の無いイドは実存に疑問を抱き続けています。

実はイドは有名が科学者であった事が物語の後半で判明し、彼は記憶の一部を取り戻しますが、最終的に彼は採掘屋のイドである事を選択します。イドという存在は、採掘屋仲間からの「認識」によって形作られたものですが、ここでも「実存とは他社の認識によって生じる」というテーマが貫かれます。なーんちゃって・・・。


■ 認識できない物を固定化して失敗した『正解するカド』 ■



『正解するカド』より

今期一番期させて、見事に外れだった『正解するカド』。

「異方」と呼称される高次元の高度な科学技術を有する知的存在が日本に表れ、外務省の交渉官が彼との交渉に当たるというポリティカル・サイエンス・フィクション。

実はこの作品、一番面白かったのは、経営が傾いた町工場を救うプロジェクトXの様な0話だった。そこから一気のSF的な展開に入るのですが・・・これが何故か面白く無い。

高次元体であるヤハクイ・ザシュミナは人間の形を模して現れますが、この事で一気に物語が陳腐化してしまいました。高次元体は認識出来ない存在なのだから、一定のキャラクターを付与する必要は無かったのでは無いか・・・。

見る人によって様々な姿を取ったりしたら、結構面白い作品になったのかも知れません。この作品、「神の具現化」という「実存の獲得」によって失敗したのかも・・・なーんちゃって。



本日は「実存主義とアニメ」について強引にこじつけてみました。
過去にも似た考察をした事が在りますが、こちらの記事の方が真面目です。

揺らぐ「実存」に対するアニメ的な回答・・・『ゼーガペイン』は『エヴァンゲリオン』への回答


MTVj世代の懐メロ大会・・・Beth Dittoのソロアルバムは必聴

2017-06-22 12:15:00 | 音楽
 



■ アメリカの渡辺直美? ■


iTunes Music に月々980円を払いながらも、ほとんど聞いていません。娘がアパートから帰って来た時にK-Popsばかり聴くので、いつしか「オススメ」にはK-Popsアイドルの曲ばかりが並ぶ様になりました。

昨日、久しぶりに何か新しい曲でも聞いてみようと新曲のジャケットを眺めていたら、こんなアルバムに目が止まりました。



何だか色合いがジョン・ケールの『Even Cowgirls get the bluse』に似てるな・・・なんて思いながらプレイボタンを押していました。

ちなみにジョン・ケイルおジャケットはこんな感じ。改めて見ると全然似ていませんね。このアルバム凄いですよ。今でこそオシャレ系伊達男になってしまたケールですが、この頃のステージは激しかったみたいです。狂暴な音の塊が襲って来ますが、同時に強烈なデカタンスを感じる。



ところでBeth Dittonのアルバムはどんな感じかと言うと...




あれあれ、なかなかイイじゃないか・・・。

ポップだけれど、演奏は何気にエグイ事をやっています。そして何より録音が素晴らしい。(最近はまともな録音のCDが少なくなりました。別の音がイイ事に拘りはありませんが、良いに越した事はありません)

まあ、映像を観ると何ともキャラ立ちまくりの人ですが、「The Gossip」というバンドのボーカルとして1999年から活躍していた様で、「20年に一人の声の持主」などと評されていた様です。バンド活動は近年停止していた様ですか、今回、初のソロアルバムを発表した様です。

姿だけ見ると渡辺直美ですが、実はそれなりに凄い人らしい・・。


■ MTV世代の懐メロ ■


アルバムを通しで聞いてみましたが、外れの曲が無い。とにかく、私達MTB世代にはどこかで聞いた事のあるメロディーやアレンジが満載。
シンディー・ローパーやバングルズ、ブロンディーだったり、トーマス・ドルビーや復活後のフィビー・スノーやリッキリー・ジョーンズみたいだったり、ストーンズのアンダカヴァーの丸パクリだったりするのですが、どれも現代風に良くアレンジされています。

本来、私はこういうアルバムは好きでは無いのですが、やはりこの歌唱力は凄い。同じ巨体でも、アデルより格段の余裕を感じます。ヤサグれた感じなんかも実にイイ。

楽曲のクオリティーも高い。聞いていて楽しい。大学生の頃を思い出します。

MTV世代の方にお勧めのアルバムです!!


安倍政権を牽制しているのは誰か?

2017-06-21 03:25:00 | 時事/金融危機
 
■ 潮目が変わった ■

文科省の内部文書の存在が正式に明らかになった事で、加計学園問題の「潮目」が明らかに変わりました。

松野文科相は萩入田官房副長官に謝罪するという異例の展開となっていますが、この騒動に国民は萩入田氏の発言があったという確信を強めていると思います。そして、「総理のご意向」もあったと。

どうやら加計学園問題は、トカゲの尻尾切では終わらない気配が漂ってきました。安倍政権の支持率も急落し始め、「敵無し」の安倍政権に動揺し始めています。

安倍総理も従来の様な強気な発言で押し通す事が出来ないと悟ったと見え、「丁寧な説明」を心掛ける様です。菅官房長官も「怪文書なんて信用できない」というスタンスを取る事が出来なくなっています。

■ 中曽根大勲位がご立腹? ■

一部では中曽根元首相が安倍首相の暴走にご立腹なのが今回の一連の情報リークの現況とも噂されています。中曽根元首相の息子の中曽根弘文氏は文科大臣や科学技術庁長官を務めるなど文教族の議員です。

オリンピックのメインスタジアムは文科省主導で計画が進められて来ましたが、ザハ案が撤回されると同時に仕切りは国交省出身の和泉首相補佐官に代わるなど、文科省の利権に安倍政権が横やりを入れています。

加計学園問題では、文科省の聖域とされる「学校の許認可権」が首相の横やりで侵されています。

安倍首相の限度を超えた利権拡大に、文教族議員達は煮え湯を飲まされた思いで、中曽根元首相、もご立腹というのが噂の根拠。(噂に根拠などあるのかという問題はありますが・・・)

■ 獣医師会と関係が深い麻生財務大臣の陰謀? ■

麻生太郎財務大臣は獣医学部新設に反対していた一人です。彼は獣医医師会と関係が深く、「獣医の質の低下を招く」として新設に反対していた様です。

獣医師会としては、「限られたパイを食い合う業界に、今以上の獣医が増えたら分け前が減る」というのが反対の理由でしょう。加計学園が新設する獣医学部の定員は160名。現在、国公立私学合わせて930名程の定員の獣医学部に、さらに160名の定員が加わる影響は少なくありません。(尤も、国家試験に合格するかは別問題ですが)

いずれにしても、「次の首相」の座を狙う麻生財務大臣の存在は気になる所・・・。

■ 経産省潰し? ■

私は今回の事件の背後にはアメリカの意思が働いていると妄想しています。

安倍政権は短命だった第一次安倍内閣の反省を踏まえ、アメリカと対立する事を極力避け、TPP交渉では甘利氏もアメリカに大幅な譲歩を示しました。

ただ、これは「面従腹背」的な要素が強く、国内の規制緩和はあまり進んでいません。第一次安倍内閣から安倍首相を支える今井 尚哉首相秘書官は経産省の出身です。

経産省の前身は通産省ですが、戦後の日本の産業の発展に通産省の果たした役割は大きい。

官庁的には大蔵省や旧内務省の警察庁、国土交通省、厚生労働省、総務省よりも格下とされた通産省ですが、自由闊達な雰囲気で、業界団体を統制して技術向上を推進し、自動車や半導体を始めとする産業の育成に貢献します。

しかし、日米貿易摩擦が発生すると、アメリカは崩壊した旧ソ連よりも日本を敵視します。そして通産省は当然攻撃の対象となります。「通産省解体論」「経産省解体論」を主張する人達も多いのですが、「経産省の業界支配が日本の産業の発展を妨げている」と彼らは言います。要は「経産省の影響を排除して規制緩和と構造改革をもっと進めろ」というのが彼らの本音。

■ 岸信介元首相は商工省出身 ■

実は通産省の前身は商工省ですが、安倍首相の祖父である岸信介元首相は商工省の官僚でした。彼は満州で活躍(暗躍)した後、後に首相にまで上り詰めます。

戦後創設された通産省は資源確保と産業育成を目的として白洲次郎が発案した組織だと言われています。その為に旧来の役所に比べ、横断的組織で自由闊達だった。一方、発足当時から「外交派・通商派」の吉田茂ラインと、「産業派」「統制派」の岸信介ラインには確執があった様で、これは現在も省内に残っているとか・・・。

岸元首相のブレーンが経産省出身の今井秘書官というのは偶然では無いのかも知れません。

■ 憲法改正とアメリカからの独立? ■

安倍首相はアメリカに従順である面と、日本会議に代表される「古い時代の保守」の相反する二面を持ち合わせています。どちらが素顔かと言えば、私は後者かと妄想しています。

自民党設立時からの悲願は、自主憲法制定とアメリカからの独立ですが、安倍政権はようやく憲法改正に取り掛かろうとしています。

一方、アメリカにしてみれば、日本が普通の国になってアメリカから離れてしまうのは喜ばしくありません。だから憲法を改正するにしても「程々」が良いと思っているはず。自衛隊の存在がきちんと憲法にうたわれ、集団的自衛権を日本が認める程度で良い。

この改正によって自衛隊をアジアの集団安全保障体制の中に組み込み、米国の戦力は徐々にアジアから撤退させたい・・・アメリカの本音はこんな所では無いでしょうか。

「憲法改正まではやってもらうけど、その後に変な方向に突っ走らないでね・・・」といった所でしょう。

■ 山口県と天皇家 ■

アメリカが危険視しているのは日本会議に代表されう「日本の古い保守主義」ですが、これは明治維新に起源を持つと思われます。

明治維新は薩長が共同で幕府を倒しますが、その後は長州藩が薩摩藩を政権から駆逐して実権を握ります。明治維新で重要な役割を果たした伊藤博文や山形有朋らは山口県出身です。

岸信介、佐藤栄作兄弟、安倍晋三現首相も山口県出身。

これが偶然かどうかは歴史の裏に隠れて良く見えませんが、明治維新政府はそれまで政治の表舞台に立つ事のなかった祭祀長である天皇を、西洋的な国王に仕立て上げます。そして「天皇教」とも言える「国家神道」を作り出し、教育勅語によって国民にそれを浸透させてゆきます。これは西洋のキリスト教の代用として「近代国民国家」の重要な要素となっています。

伊藤博文は一方で天皇機関説を主張するなど、「天皇を利用する」という姿勢も明確です。

どうも山口閥は明治維新以来、天皇を国政に利用する伝統があるのでは無いか・・・・そんな観点から見ると、一見時代遅れに見える「古い保守主値」の復活こそが、彼らの権力の原点なのかも知れません。

アメリカはそれの増長を警戒している・・・。


加計問題のゴタゴタから要らぬ妄想が膨らんでしまいました。





「もりそば」とか「かけそば」の陰謀論的楽しみ方

2017-06-16 08:58:00 | 時事/金融危機
 

■ 全く異なる絵を思い描いていたのかも知れない ■

文科省のパソコンから「ご意向」文章が複数見つかり、加計学園問題は一見進展した様に見えます。しかし、私は前川前事務次官の次の発言が気になります。

<引用開始>

「森友問題も加計問題も地方と国が同時に関わり、国の中でも複数の省庁にまたがる案件。そういった多くのプレーヤーをうまく組み合わせて全体を調整する司令塔がいないと、うまくいかない。役所のどこを押せばどう動くかということを熟知した人間がいなければなりませんし、そういう才能を持った人なんて、そう多くはいません。官邸の中でも、私には今井尚哉首相秘書官(叔父は安倍首相と近い今井敬経団連名誉会長)、和泉首相補佐官くらいしか思い当たりません」(

<引用終り>


前川前次官の仇敵は菅官房長官の様に見えていますが、彼が今回実名を挙げたのは「今井尚哉首相補佐官」と「和泉洋人首相補佐官」

私にはこの実名告発は陰謀センサーに引っかかるものがあります。

私は以前の記事で官邸内での今井尚哉補佐官の影響力の低下が森友学園問題などの根底にあるのでは無いかと書いています。要は安倍政権内での権力闘争の結果、劣勢になった今井派が自民党の反安倍勢力と組んで菅官房長官一派を揺さぶっているのでは無いかと妄想していました。

しかし、前川前次官が今井補佐官を実名で名指しした事で、全く違う妄想がムククムと湧き上がって来ました。



■ 前川氏はどうして堂々とリークを続ける事が出来るのか? ■


そもそも以前から気になっていたのは、前川氏がどうして堂々とリークを続け、それをNHKを含めメディアが取り上げる事が出来たのか。

今までであれば、安倍政権に忖度してメディアは森友問題も加計問題も大々的には報道しなかったはず。それが、何かタガが外れたかの様に安倍首相にまつわる疑惑を報道し、前川氏のインタビューを放送、或いは掲載しています。

当然、安倍政権にダメージがある訳ですから政権側がこれを許しているとも思えず、ならば日本の政権よりもさらに高位の権力の力が働いていると妄想していました。そして、その目的は「恫喝」であると・・・。「共謀罪」や「憲法改正」や「日米貿易協定」などを強行に進めなければ政権を崩壊させるぞという恫喝。

前川氏の攻撃に対して応戦していたのが菅官房長官だったので、そういった印象がさらに強まっていたのですが、今回前川氏が実名を挙げて攻撃したのは今井氏と和泉氏。

今井氏は経産省出身ですが安倍首相の片腕として菅長官と共に安倍政権を支えて来た人物。そして和泉氏は国交省出身で民主党の野田政権の時から首相補佐官を務め、安倍自民党内閣においても協力を仰がれた人物。

この二人を名指しする理由は表面的には文科省の聖域を犯した事への恨みだと世間は解釈するでしょう。特区を名目にして文科省の許認可権を無効化し、オリンピックのスタジアムでは文科省主導のザハ案を廃止に追い込み和泉氏が調整役となって新案が決定された。ここら辺に前川氏の個人的、いえ文科省全体の怨恨があったのでは無いか・・・。そう考えるのが自然です。

要は、前川氏の発言を素直に受け取れば、官邸主導によって奪われた省益と官僚のプライドを取り戻す為の闘い。

しかし、陰謀論的には釈然としません。いくら前川氏が正義のヒーローを気取った所で、国家権力を相手に個人の力を弱い。この場合「国家権力=国家の暴力」です。警察や公安を始め、反社会勢力も含めて、前川氏を黙らせる手段を国家は沢山持ち合わせています。

それなのに、前川氏が自由に発言し、メディアが自由に報道しているのは何故か・・・。それは前川氏が安倍政権とグルだから・・・今回の実名告発でこんな妄想がムクムクと・・・。

■ 得をしたのは誰だ? ■

陰謀論の作法に従えば、「誰得の理論」で読み解けば陰謀論的結論が見えてきます。

今回の騒動で一番得をしたのは誰か・・・

それは、「共謀罪」を国会通過あせた安倍政権では無いのか?

本来であれば「共謀罪」に関する報道はもっとされるべきです。ところが、自民党の強硬採決という手段に際しても、世間の注目は「文科省のPCにデータは残っているのか」と言う方向に向いてしまった。


実は森友問題にしても、加計問題にしても、これを政治事件化する事は非常に難しく、ましてや安倍首相を刑事訴追する事は絶対に不可能です。ですから、安倍政権内の誰かをスケープゴートにすれば世間は次第に関心を失ってゆきます。

報道も新しい事実が見つからなければ、新鮮さが失われ、ワイドショーが取り上げる時間も減って行きます。

では今回の一件でダメージを負うのは誰か・・・・。安倍首相や菅氏のイメージはだいぶ悪くなりましたが、仮に前川氏の矛先が今井氏や和泉氏に向かった場合、これらの事件の裏で各省庁を動かし調整したであろう彼らの立場が一番危なくなります。

まあ、真相などは最後まで闇の中でしょうが・・・・何となくこの事件、私の中ではストンとある場所に収まった気がします。

全くの陰謀論的妄想ではありますが・・・。


カタールの不思議・・・敵の敵は友?

2017-06-14 04:49:00 | 時事/金融危機
 

■ 中東の小国カタール ■

カタールはペルシャ湾に位置する中東の小国でせすが、豊富な石油と天然ガス資源を有しています。日本では1993年サッカーワールドカップ予選での「ドーハの悲劇」の場所として記憶している方も多いのではないでしょか。

このカタールがサウジアラビアとUAE、バーレーン、エジプトなど中東6各国から国交を断絶されるという状況に陥っています。

原因はカタールがシリアでアサド政権に攻撃を繰り返すムスリム同胞団を支援した事です。カタールは中東の春では反政府勢力に積極的に肩入れし、中東の反米政権の崩壊を裏で仕掛けていました。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)も同様に反政府勢力(アルカイーダなど)を支援していたので、同じ穴のムジナだとも言えます。

■ かつてはムスリム同胞団を支援し、最近は敵視するサウジアラビア ■

ムスリム同胞団はエジプトで結成された組織です。結成当時からイスラム教スンニ派の厳格主義(サラフィー主義)の影響が強いムスリム同胞団は、エジプトで社会主義政権を樹立したナセルに弾圧を受けます。サウジアラビアはアラブでの社会主義の台頭を阻止する為にムスリム同胞団を支援し、彼らを国内に受け入れます。ムスリム同胞団はサウジアラビア国内でイスラム大学を設立し、エジプト国内で彼らの思想を支持する国民も増えています。

サウジアラビアはムスリム同胞団同様にイスラム教スンニ派の厳格主義ですが、宗派は異なりワッハーブ派です。かつてイスラム原理主義として弾圧されていたワッハーブ派をサウジ王家は保護し、国教とします。しかし、サウジアラビアの東部油田地帯にはシーア派の住民が多く、さらにムスリム同胞団の影響力が国内で強まると、サウジ王家にとっては脅威となります。

同じスンニ派の厳格主義(原理主義)ではありますが、ムスリム同胞団は現実的な一面も持ち合わせており、でシリアを始めアラブ各国で勢力を伸ばしています。一方、ワッハーブ派はサウジ王家によって国民に押し付けられた宗教とも言えます。

そこで、近年、サウジ王家はムスリム同胞団を敵視し始め、エジプトでアラブの春によって政権を取ったムスリム同胞団のモルシー政権を敵視し、その崩壊を仕掛けます。

■ モルシー政権やシリアの同胞団を支援するカタール ■

サウジアラビアがムスリム同胞団を敵視する一方で、カタールはエジプトやシリア内戦で同胞団を支援し続けました。これが両国関係を悪化させ、2014年には両国が大使を引き上げるという事態が発生しています。(カタール国王がサウジ王家打倒を画策したとも噂されています。)

その後、両国関係は改善したかに見えましたが、今回、トランプ大統領がサウジアラビアを訪問した直後に、サウジを始めとする中東6各国が突然カタールとの国交を断然します。

■ 不思議の国カタール ■

実はカタールは不思議な国で、豊富な石油・天然ガス資源の輸出で国民一人当たりのGDPは世界1位です。近年はアラブの金融センターを目指すなど、天然資源が枯渇した後の対策も初めています。アメリカとの関係も良好で、中東最大の米軍基地を擁しています。

一方でアラビア語放送のアルジャズィーラ放送はカタール政府が設立しました。湾岸戦争当時、米軍のPRを垂れ流すCNNに対して、アルジャズィーラは戦火に苦しむアラブの人々の姿を放送して中東の人々の支持を得ますが、実はアルジャズィーラにはロスチャイルドの資本が入っていると言われています。要はCNNとアルジャズィーラが現在の宗教戦争を煽ったのだと・・・。

さらにアルジャズィーラ放送はサウジ王家の独裁や、エジプトのムバラク政権を批判する番組を放映するなど、中東の団結に亀裂を入れる様な番組を作っていました。サウジアラビア王室がカタールを敵視するのには、それなりの訳が在るのです。

いずれにしても米英を敵に回して金融センターが成立するはずも無く、カタール王家は米英の傀儡国家だとも言えます。

■ イランに急接近するカタール ■

中東6各国から断交され、物資の流通もままならないカタールが泣きついたのは何とイランです。

本来、スンニ派(ワッハーブ派)のカタールとシーア派のイランは犬猿中のはずですが、近年は両国地下で繋がるガス田を共同開発するなど、独自の外交政策を取り始めています。

イランと犬猿の仲のサウジアラビアとしてはイランに接近し始めたカタールは許しがたいが、イランに融和的政策を取っていたオバマ政権にあからさまに敵対する事も避けたかった。

今回、トランプ大統領がサウジを訪問した直後にサウジなどが国交を断交した事から、トランプのイラン制裁強化の意思を受けてサウジはイランに接近するカタールを制裁のでは無いかと言われています。

ところが、これによってカタールとイランの関係が急接近します。カタールはイラン経由で食料などの物資を調達し、イランもそれを支援しています。

■ 複雑化する中東の政治地図 ■

イランはシリアのアサド政権を支援しています。しかしカタールはアサド政権打倒を画策してシリア国内の同胞団やISを資金援助してきました。

カタールがシリアに拘る理由は、シリアが中東からヨーロッパ大陸に伸びるパイプラインの要衝にあるからで、そこにカタールと対立するシーア派のアサド政権が存在する事はカタールにとっては大変な不都合なのです。何故ならば、シリア国内でパイプラインのバブルを閉じられてしまったら、中東からヨーロッパへのガスの輸送が絶たれてしまうからです。

同様にイランからのパイプラインもシリアを経由するはずで、シリア内戦とは実はパイプラインの覇権を巡る戦争だとも言われています。



シリアのアサド政権の後ろにはロシア、中国、イランがおり、イラクも今やシーア派のイランの影響が強い。ここにカタールが加わると・・・中東の政治地図が一気に複雑化します。カタールの背後に居るのは米英だからです。

■ 追い詰められたのはサウジアラビアでは無いのか? ■

どうも今回の事件、追い詰められたのはカタールでは無くサウジアラビアの様な気がしてなりません。

サウジアラビアはオバマ政権の邪険にされていましたが、同様にオバマ政権から疎まれていたイスラエルのネタニヤフ政権と接近する気配を見せていました。今回のカタールとの断交の理由の一つにカタールがイスラエルと敵対するハマスを支援している事を挙げています。

イスラエルはかつて中東において四面楚歌の状況でしたが、現在はイラクもシリアもリビアもエジプトもイスラエルと敵対するだけの国力は有していません。後は中東の両雄のサウジアラビアとイランをどうにかすれば良い。

中東の政治原理は「敵の敵は味方」です。国内にシーア派勢力を抱えるサウジアラビアにとっては、目下の敵はイスラエルでは無く、シーア派革命の輸出を画策するイランです。むしろ対イランにおいてはイスラエルは味方となります。

■ 次回の中東戦争は変な組み合わせになるかも知れない ■

かつては中東戦争はイスラエルとアラブ諸国の間で戦われました。

しかし、次回の中東戦争はイランとサウジアラビアの間で勃発すると私は妄想しています。その為の下準備が今回のカタールとの断交。

尤も、ロシアとイスラエルが関係を改善しているなど・・中東の政治地図は複雑怪奇で予想を裏切る事が多いのも事実ですが・・・。