■ アニメネタではありません ■
先日の記事、
「日本の需給ギャップはどうして埋まらないのか?・・・日本は世界のトップランナーなのでは?」には、沢山の方からコメントを頂きました。ありがとうございます。
記事を拝借した、「ひろ」さんからもコメント頂き、感激しています。
http://green.ap.teacup.com/applet/pekepon/20120425/archive
さて、いきなり「ヘタクソ」なガンダムの絵が出てきて、
今日はアニメネタかと思われたでしょうが、
前述の記事のコメント欄に幾つか「規制緩和が現在の受給ギャップを生み出したのでは?」
というご意見を頂いておりますので、それについて考察してみたいと思います。
冒頭のガンダムの意味は、読んでいただくと分かると思います。
■ 「規制緩和」は善か悪か? ■
規制緩和には良い面と悪い面があると思います。
「自由競争」を促す事で「弱肉強食」の世界が出現するわけですから、
当然、体力の弱い個人や中小企業が犠牲になります。
「大店法改正」などがその顕著な例でしょう。
グローバル化が進む世界では、大企業の競争相手は国内よりも国外の企業になります。
ソニーとアップルの命運を分けたのは、音楽ソフトの配信に対する考え方ですが、
法律のグレーゾーンにあえて足を踏み入れたアップルが圧勝する結果となりました。
規制は往々にして古い技術や商習慣を温存する役目も果たしており、
新たなビジネスの芽を摘む効果を持つ事もあります。
■ 日本のアニメ産業は「保護」もされなかったけれど、「規制」もされなかった ■
例えば、日本のアニメがどうして面白いのかと言えば、「規制が緩いから」でしょう。
アメリカの子供向けの放送コードに日本のアニメはことごとく抵触します。
しかす、ある程度「自由」が許された環境で、政府の保護など無い「極貧」の環境の中から、
圧倒的な国際競争力を持った作品が次々に誕生しています。
アニメの世界では80年代に既に、韓国への作業の外注が始まり、
国内のアニメーター達の低賃金化が始まっています。
これは同一労働同一賃金の法則に従えば当たりませんの結果で、
現在の日本の製造業の労働者は同じ問題に直面しています。
アニメ業界の特異な所は。「低賃金でも働きたい若者」に支えられてきた事です。
彼らは「夢」を喰って生きていたとも言えますが、
政府がアニメ業界など無視して保護せず、その一方で規制も掛けなかった為、
現在の状況が実現しました。
現在のアニメの製作体制は、話題性もあり収益が期待される作品は国内で製作され、
普通の作品は韓国や中国に作業の大部分が外注されているのでは無いでしょうか。
その為、「作画崩壊」などという非常にクオリティーの低い作品が出来る事もありますが、
作品の魅力はストーリーや世界観、そして脚本にあるので、
多少の作画わ悪くても作品が面白ければ受け入れられてヒットします。
国内の労力は「どうしたら面白くなるか」というコンテンツの根幹の部分に集約されます。
冒頭の画像は、世紀の名作「機動戦士ガンダム」の本放送に一シーンです。
「作画崩壊」の典型的例として良く引き合いに出されますが、
この当時、サンライズは政策が間に合わずに、(多分、安彦氏の入院も重なり)
こんなクオリティーの低い映像を放映してしまいました。
しかし、ガンダムを語る時、作画に拘る人は居ません。
オリジナルガンダムの中で、異彩を放っている「ククルス・ドアンの島」という一話があります。
ザクを駆るジオン兵ドアンが、戦闘中に子供達の親を殺してしまい、
彼は贖罪の為に無人島で子供達を育てながらジオンの追っ手と戦い続けるという話です。
比較的シリアスなオリジナルガンダムの中にあって、
少し肌合いの異なる「ドアンの島」は評価も両極端に分かれていますが、
実は、この「ドアンの島」の作画は相当酷い。
しかし、ファンはそんな事はお構い無く、作品の内容の議論をヒートアップさせます。
アニメにおいてはテクニック(技術)よりもコンテンツ(ソフト)が優位なのです。
■ 作画崩壊を逆手に取った演出 「鉄腕バーディー」 ■
上の動画は「ゆうきまさみ」の「鉄腕バーディー」のアニメのある1話です。
完全に作画崩壊している様に見えるでしょう。
実は、これは作為的な演出の様です。
良く見ると、絵が動きまくっています。
それも、とてつもないクオリティーの動き方です。
しかし、これを細かく書き込んで、週1放送にアニメで放映することは
スケジュール的にも、予算的にも不可能です。
ですから、こんなデフォルメした簡略化した作画になったのでしょう。
当然視聴者はこれを「作画崩壊」と判断します。
そして、「DVDになる時に修正されるだろうから、DVDを買わなくちゃ・・・」となる。
こんなアバンギャルドな事が許される(ファンが許したかどうかは不明)程に、
日本のアニメは既製の概念から遠い地平まで到達しています。
「エウレカセブン」のサッカー回、「アクエリオン」でも同様な意欲的な作画崩壊が見られ、
当然、製作サイドにスケジュールと予算の問題があって発生する作画崩壊を、
イベント回のストーリー的面白さに昇華したり、
夢の中の話という設定にして、作画崩壊を物語の展開に意欲的に取り込むなど、
規制からも、既製からも開放されたアニメという世界の生命力には脱帽するしかありません。
その最たる例が、TV版「エヴァンゲリオン」の最終話なのでしょう。
■ アップルはアメリカの雇用を生み出していないが、経済には貢献している ■
話を既製緩和に戻します。
日本では既製緩和で業界が淘汰され、自由競争の結果、雇用が海外に流失すると心配されています。
アメリカの産業の状況が、この事実を裏付けています。
アップルはアメリカの企業です。
その製品の多くは、中国の工場で、
自殺者を多く出るという過酷な労働条件の上で製造されています。
アップルの製品は「メイドイン・ジャイナ」である事は皆さん周知の事実だと思います。
一方でアメリカの株価は、アップルやFacebookの株価に左右されています。
これらの企業の高収益や評価が、アメリカの株価を牽引し
世界からの投資を呼び込んでいます。
アメリカの株価はアップルの高収益に一喜一憂していますが、
アップルの製品は中国の工場から出荷されますから、
アメリカの雇用に寄与する率は低くなります。
アメリカにおけるアップルの従業員の労働は、
より魅力的な製品やコンテンツを作る事に集約されています。
この点について、アメリカ国内でアップルを非難する人は居ません。
これが日本ならば、「製造業の海外流出」として問題視されるのでしょう。
■ 「雇用」を守って「企業戦争」に負ける ■
確かに「製造業の開学流出」で、「外需」と「雇用」が消失するのですから、
悪影響が無い訳ではありませんが、
これらを守った結果、企業の国際競争力が奪われ、
結果的に工場閉鎖などで雇用と外需は失われてゆきます。
ソニーの株価は低迷しており、優秀な技術者の流出も止まりません。
あるボーダーを越えると、ソニーは全く魅力の無い企業になり、
外資に買収されるなどの末路を迎える事になります。
■ 内需産業も安い労働コスト無しには成り立たない ■
建築業や国内の物流、小売業など、海外に流出しようの無い産業は
比較的規制によって国内秩序が保たれます。
しかし、小さくなるパイを奪い合う為に、その労働力の多くが外国人に置き換わっています。
日本の若者は低賃金の労働を嫌うので、
結局、この様な労働市場の雇用を外国人に奪われています。
これも労働の国債化の一面だと思われ、同一労働は賃金に収束して行きます。
日本のGDPの縮小は、贅沢な消費の縮小と、中間階級の転落という二面から進行しておいます。
、
労働賃金は上方硬直性を持っていますので、
景気が回復しても一度下がった賃金が上昇するまでには時間が掛かります。
多分、現在の日本で労働力の需要が高まれば、
その需要を満たすのは外国人労働者になると思われます。
■ 労働市場の変化を認めたくない国民 ■
問題は現在の若者の多くが、この労働環境の変化を受け入れられないことで、
大学さえ出れば好きな職業に就職できると勘違いしている事です。
本来大学教育を必要とされるのは3割程度というのがヨーロッパなどの常識で、
共通試験で一定の学力に達しなければ、受験資格も得られません。
グローバリゼーションは過度に進行した為に、その悪い面が噴出していますが、
遅かれ早かれ世界は均質化していく訳で、その中で競争力を維持する事は、
「日本の多くの人が世界標準並みに貧困化」するという事実を、
そろそろ日本人は認めなければいけないのでは無いかと思います。
「世界標準の貧しさ」の中で、「精神的な豊かさ」を得られるかどうかが、
これからの多くの人に求められる事では無いでしょうか。
これは「大量消費社会」の価値観の延長線上には存在しない事だけは確です。
■ 夢と誇りと充実感、そして生きて行くための最低限の保障 ■
アニメ産業は多くの月5万で長時間働く様な若者の労働によって支えられています。
彼らの多くは、その過酷な労働に耐えられずに、
夢半ばにして、その仕事を離れてゆきます。
都会で月5万では、アパート代にもなりません。
ところが、考えてみればアニメのスタジオが都会にある必要はありません。
ネットの環境があれば、田舎でも成り立つ職種の一つです。
多分、今後、多くのアニメスタジオがコストの安い地方に拠点を移すでしょう。
半分、自給型の社会に上手く溶け込めば、
アニメ製作と精神的に豊かな暮らしが得られるかもしれません。
これは極端な例ですが、デザインは始め夢を食べるような職業は今後収益性は低下します。
建築設計業も、以前は花形の職業でしたが、最近は物件が減って生計が危ぶまれる職種です。
ヨーロッパでは1970年代以降、新しい建築が建たない時代が続きました。
多くの優秀な建築家達が、「アンビルト・アーキテクツ」と呼ばれる、
建築予定の無い、架空の建築のデザインなどをしていました。
現在、ヨーロッパの建築家達は、アジアの新興国で大活躍しています。
自国内だけに需要を求めていたのでは、仕事がありませんが、
ネット環境は、ヨーロッパに居ながらにして、アジアの物件の設計を可能にしました。
■ 日本の国内の仕事を奪うTPP ■
農業ばかりが注目を浴びますが、
TPPの真の目的は、弁護士や会計士、医療、建築設計などの国内資格に守られた業界で、
海外の資格がそのまま通用する様にする事だと私は見ています。
日本人はアメリカばかりに目を奪われますが、
アジアの新興国の多くの若者が、海外留学して海外で就職し、
知識とスキルと語学を学んでいます。
アジアの国々は、英語が堪能な国が多いので、
日本よりも語学的障壁が低く、既にグローバル化した存在です。
その様な、国際化した労働力が流入してくるのがTPPです。
■ 日本語という最大の非関税障壁にしがみ付いて滅びる日本 ■
日本の英語境域が成果を挙げないのは、
文部科学省に「その気」が全く無いからです。
少なくとも、大学の授業を英語で行えば、
それなりの英語力は卒業するまでに身に付きます。
しかし、日本語こそが日本の雇用と市場を守っているので、
文部科学省は、英語教育に本腰を入れる事はありません。
多くの大学教授達も英語を話せないので、
授業が英語化すれば、失職する教授が沢山出てきます。
その穴を、外国人で生めれば生の英語が学べて一挙両得ですが、
このような規制緩和を日本が選択する事はありません。
結局、日本は日本語がある限り、ソフトな鎖国が可能ですが、
それは同時に、ビジネスチャンスの喪失にもつながります。
確かにアメリカのサービス業が本腰を入れて日本に上陸したら、
日本の多くの人が失業するかも知れません。
一方で、今後、アニメ産業がハリウッドに匹敵する様なパワーを持ちうるならば、
規制と保護が、産業の国際成長力を奪う事を証明する事象になるかも知れません。
何でも極端は弊害は多いので、官僚は「緩やかな変化」を好みますが、
世界のスピードから日本は既に遅れ初めています。
■ 若い人は世界と現実に目を向けよう ■
「いつかは景気が回復する」という事が、儚い夢に過ぎない事に
日本の若者はそろそろ気付いています。
そして一部の若者は海外に目を向け、
多くの若者は、その事実から目を背けて、雇用機会を失ってゆきます。
これは「勝ち組」とか「負け組み」という様な問題では無く、
「戦略」の問題です。
むしろ、大学など行かない学力の子供達の方が、
現実をしっかり見つめて、
高校卒業までに自分の将来に繋がる選択をしていう様に見えます。
偉そうな事を書いてきましたが、
最近、アジアの建築設計者達と仕事をしていて、
彼らの優秀さとバイタリティーに自分は負けていると実感する
オタクオヤジからの、若者へのエールだと思ってください。
最後に私の英語力ですが、・・・勉強が嫌いだったので・・・・。
でも、気合があれば、日本語8割の英語だって相手に通じます。
さすがに、ビジネスこれヤバイのですが・・・
(雑感記事なので誤字を修正していません。
正しい文章を推測しながら読んで下さい・・・って、手抜き記事だぁーーー)