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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

一時的な正常化とさらなる崩壊・・・グリーンスパン氏の「予言?」

2016-08-30 10:30:00 | 時事/金融危機
 

■ 不気味なフリーンスパンの「予言」 ■

投資をされている皆さんの興味はFRBの9月利上げの可能性に集中しているでしょう。しかし、投資など興味の無い陰謀論者の私の興味は、短期的な利上げよりも、グリーンスパン氏の先日の発言、「近い将来に金利は想像以上のペースで上昇するだろう」という発言に引っ掛かっています。

この「予言」は、はたして何を意味するのか・・・。


■ FRBは3%の成長がニュートラルと示唆 ■

ジャクソンホールの講演で、FRBのイエレン議長はは当面のインフレターゲットを2%としていますが中期的には3%程度がニュートラルだとの見方をイエレン氏は示しています。

先進国の金利は5%前後が定常状態というのがリーマンショック前までの定説でしたが、先進国の成長率が構造的に低下する中でFRBも中長期的な成長率を下方修正しています。

これは下がり過ぎた金利の資産を保有する投資家にとっては安心材料となります。

■ 金利の急上昇は起こるのか ■

先日、「グリーンスパンは将来的には短期的に金利は人々の想像以上に上昇する」との予測を示していましたが、彼はその根拠に米経済統計にインフレの兆候が見られ、将来的にはスタグフレーションが発生すると発言しています。

実はこの発言とFRBの予測は相反します。グリーンスパンは「インフレが発生し、その率も想像以上に高い」と言い、FRBは「インフレ率は中長期的には3%台で安定するだろう」と予測しています。

アメリカ経済のファンダメンタルはそれ程強く無く、世界的にも経済を牽引する国が存在しない中で、どうやってインフレが起こるのか・・・常識的にはFRBの見方や、サマーズらの長期停滞論の方が正しく思えます。

■ 戦争というインフレ装置 ■

先日mジョージ・ソロスのメールがハッキングされ、彼とその仲間達のやり取りが漏えいしました。内容は目新しい物は無いのですが、イスラエルの新聞がジョージ・ソロスの資金援助を受ける団体を俯瞰すると、国家の力を弱体化させる団体ばかりだと評論しています。

ジョージ・ソロス氏が左派系の団体に資金援助している事は公然の事実で、アメリカの黒人団体であたり、地球温暖化の団体であったり、シリアの難民の移住支援団体だったりします。

これらの一つ一つはリベラル派と言え、人道的な団体なので、「金の亡者」が資金援助するのは「不思議」とも「贖罪」とも捉えられています。

しかし、アメリカの黒人団体は、警官の黒人射殺事件が発生すると猛烈な抗議を行っていますし、シリアのヨーロッパへの難民はドイツを始めとする諸国の内政を不安定にしています。

どうも、ジョージ・ソロスを始めとする「世界の一部の人達」は世界を不安定な方向に導こうとしている様に感じられます。ロスチャイルド系のドイチェバンクが莫大なデリバティブリスクを抱え込んでいるのも「自爆攻撃」の準備の様で不気味です。

「シリアのロシア軍機を攻撃しろ」というアメリカ軍内の発言と、それに対応するかの様なロシア、イラン、トルコ、サウジアラビアの結束強化も不気味です。

これらの動きが何の為の準備なのかと考える時・・・グリーンスパン氏の発言は重要な意味を持って来ます。

「スタグフレーション=不景気とインフレの同時進行」が先に先進国で発生したのはオイルショックの時でした。

先進国の成長力は弱くインフレなど発生しそうが無い、むしろ金融緩和で発生しそうなのはバブル崩壊なのに、グリーンスパンはインフレを警告する。この違和感を解消する手立ては戦争では無いか・・・。


1) 中東で大規模な戦闘が発生する
2) 原油価格が高騰してコストプッシュインフレが発生する
3) インフレによって金融危機が発生する

まあ、こんな最悪なシナリオも想定し得る訳で、安倍政権が憲法改正に積極的なのもこれと無関係では無い・・・。


■ ガラガラポンで成長力を取り戻す ■

仮に戦争から金融危機に突入した場合、アメリカや日本、その他の先進の経済は崩壊的な痛手を被るばかりか、通貨の信用危機が発生します。

成長力の低下したこれらの先進国は石油ショック時と同様に、スタグフレーションで国家が疲弊しますが、中国を始めとする新興国は早々に経済が回復し、今までのアメリカの座を脅かす様になります。

イギリスがEUを離脱しようとしたり、中国に肩入れする理由はここに在ると私は睨んでいます。10年後の世界は現在とは大きく異なる姿をしている・・・陰謀論的にはそう考えるとワクワクします。

日本がその時どうなっているか・・・過去の大国と呼ばれない様に頑張りましょう。

9月利上げに一票・・・無責任な予測

2016-08-30 10:21:00 | 時事/金融危機
 
■ イエレン発言はいつもながら玉虫色 ■

ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演は、「玉虫色」でした。

「労働市場の堅調さが続いていることや、経済活動とイン フレに対する当局の見通しを考慮すると、フェデラルファンド(FF)金利引き上げの論拠はこの数カ月で強まったと考えられる。」

1) 利上げの方針は変わっていない
2) いつ利上げするかは決めていない

大方の予想通りの発言でしたが、市場はこれ各自勝手に判断してポジションの調整が行われています。「9月利上げが有る」という勢力と、「9月利上げは無い」という勢力がバランスして現在の相場となっています。

これによって仮に9月に利上げを行っても、若干の市場へのインパクトはあったとしてもパニックに陥る様な事は起こり得ないでしょう。

FRBの市場との対話とは、「言質を与えず、市場がニュートラルとなる様に調整する」事なのです。

■ 副作用が分かり易い利上げと、副作用が分かり難い金融緩和の長期化 ■

利上げの副作用は容易に想像できます。低金利の資産の価値が減るので、これらを売却しようとする事で市場価格が下落します。ただ、「FRBの市場との対話」が成功している間は、極端なリスクの偏りは解消されているので、短期的な混乱の後は、市場価格は徐々に安定に向かいます。この様に利上げの影響は短期的に発生するので分かり易く、予測し易い。

一方、極端な金融緩和の長期化の副作用は分かり難いものです。量的緩和など供給過剰の金融政策では金利が必要以上に低下します。株式などは株価が上がるので「加熱感」が分かり易いのですが、債権市場では「金利が下がる」ので資金調達コストの低下というメリットが、金利収益の減少の効果を相殺する方向で働きます。

例えば、安い社債発行コストを利用した自社株買いによって企業の財務体質が改善するので、企業収益も改善し、結果的に社債金利を下げる方向に力が働きます。

このままの状況が永遠に続けば良いのですが、実体経済にはファンダメンタルな波が在りますから、景気はどこかの時点で縮小傾向に転じ、企業収益も悪化します。この時、社債金利も上昇に転じますが、あるポイントを境に、低金利の社債を保有している投資家に「損切」のインセンティブが働きます。こうなると金利はポンと跳ね上がります。

債権市場と株式市場は表裏の関係にあるので、債権金利が上昇すれば株価は下落します。

1)債権その原因は金利上昇で株式投資による収益(金利)が見劣りするのもとなる
2)社債金利の上昇は企業の資金調達コストを上昇させ業績を悪化させる
3)自社株買いのスキームが崩れるので、株価下落の圧力も高まる

この様に実体経済を反映しない低い債権金利は中長期的なリスクを拡大しますが、その影響はテールリスクに属する物で予測が難しい。

■ 9月に利上げは可能 ■

市場は利上げによる短期的リスクに敏感ですが、これは「市場との対話」で在る程度ショックを緩和させる事が出来ます。

一方、金融緩和の副作用であるテールリスクを意識し出すとFRBは打つ手を失います。再び量的緩和などに追い込まれるのかも知れませんが、市場は不安定さを増して行きます。

テールリスクが顕在化する前にFRBとしては利上げによって「低金利のリスク」をなるべく低減させておきたいでしょうし、リスクが顕在化した時の金利の下げしろも確保したい。

ですから、現状の米経済と世界経済の状況ならFRBは9月利上げに踏み切るのでは無いか。


一方、日銀の黒田総裁は量的緩和の拡大に踏み切って、FRBを援護する可能性が高まります。日本財政の継続性を考えるならば、40年国債当りを発行してこれを間接的に日銀が買い取るという手法が取られるかと思います。国債金利が底にある今がチャンスですから。


まあ、外れる事で有名な人力予測ですから、投資は自己責任で。

「良い映画」と「悪い映画」・・・私的映画感

2016-08-29 11:08:00 | 映画
 
『君の名は。』の感動が冷めやらないので・・・もうちょっと・・・。








■ ハリウッド映画って面白い? ■

先日の『君の名は。』の記事で、「間違い無く今年公開される実写も含めた映画の中ではNo.1確定でしょう。構成からシナリオに至るまで、この映画を超える作品は、今のハリウッドでは作れない。」と書きました。

「日本のアニメ映画とハリウッド映画を比べるなんて・・・」と思われた方も多いかと・・。確かにハリウッドの諸作は映像も脚本も完成度が高く、エンタテーメント性が極めて高い。全世界の人達をワクワクさせる魅力に溢れています。

しかし、最近のハリウッド映画やディズニー映画は「完成度」は高いのですが、「新しい驚き」に乏しい様に感じます。どこかで見た事のあるストーリーを派手なアクションで強引に見せているだけに感じられます。

■ CGの完成度や演出の技術に頼り過ぎる『ズートピア』 ■




評判のディズニー映画『ズートピア』をDVDで観ましたが、これ、典型的な刑事物(エディー・マーフィーが出てきそうなヤツ)の動物版リメークって感じでした。だから『ズートピア』はストーリーが先読み出来てしまいますし、「出来過ぎ」ていて・・・感動に至らない。(技術や演出のテクニックには感動するのですが)

「人種差別問題を動物に置き換えている」という何となく取って付けた様なテーマは在りますが、実際にはCGによって動物をイキイキと描く事を目的にしています。極論すると「CGならではの映画を作る」事が目的であって、ストーリーや感動というものが技術に従属しています。

アメリカ社会の人種問題は根深く、それに起因する貧困も現実的な問題です。これを正面から描く事は難しいのですが、動物にしてオブラートに包む手法はアメリカのアニメの伝統的な手法です。

それを完成度高くやっただけ・・・なのですが、製作者が人種問題を本当に告発する意図を持って映画を製作しているかと言えば・・・その「ヤバさ」を私は感じません。「動物のアニメーションを作る」という目的が先に存在し、動物アニメの隠れたテーマである人種問題を後からくっ付けた感がしてならないのです。

ある種の「偽善」ですが、アメリカ社会のダブルスタンダードを良く表しています。だからこのアニメは気持ち悪い・・(と言うより、ディズニーアニメ全体が気持ち悪い。)

実はウォルト・ディズニーは白人至上主義者の批判を浴びる事が多かった。実際に彼の作品の中の黒人やインディアンの表現は差別的ですし、職場でも彼が黒人や女性を軽視していたとの話は沢山あります。

近年のディズニーアニメは時代の流れに従って、マイノリティーや外人の扱いには神経質です。「ポカポンタス」や「リロ&スティッチ」の様に「白人至上主義」のレッテルを払拭する為の映画を作ったり、「ムーラン」の様に中国をマーケットに取り込む為の作品を作ったりしています。

ディズニーは巨大なメディア企業であり、そのマーケティングは徹底しています。「夢の様なストーリー」はマーケッティングの結果であり、だからこそ作品がヒットします。ディズニーアニメは個人のクリエーターの作品では無く、大衆向けの「完璧な商品」なのです。

「何分に1回観客を笑わせれば良いか」「涙を誘うシーンはどのタイミングで入れれば良いか」など、綿密に研究して映画造りに反映させています。

これはハリウッド映画全般に言えます。投資家から資金を集め、世界レベルでヒットさせて投資家に還元する目的で作られる映画・・・私達は映画を観て「感動している」のでは無く「強引に感動させられている」のです。

(中には『セッション』の様な「私的」な映画も有り、それらは素晴らしいのですが)

■ 『君の名は。』にみなぎる「個人のテーマと新しい物語」を追求する意思 ■

これまで極私的製作を続けていた新海誠ですが、『君の名は。』は大規模な劇場公開作品なので、これまでの様な「自分の為」の製作は許されず、「多くの人に受け入れられる物語」が要求されます。

彼は「分かり易さ」の道具として「男女入れ替わり」という日本人が好きなベタな設定を選択しています。観客は展開を何となく予想出来きるので物語に入り込み易くなります。

ところが、中盤で物語は「一般的な入れ替わり」を逸脱して、全く違う展開を始めます。観客は不意打ちを食らうと同時にグイグイを物語に引き込まれて行きます。

ここから先は、新海誠の個人テーマである「出会いとすれ違い」がグイグイと前面に押し出されて来ます。新海監督は「個人のテーマ」を捨てていなかったのです。

ただ、「出会いとすれ違い」を「個人レベル」で追及していた旧作と比べ、『君の名は。』は「物語としての強さと普遍性」を獲得しています。

最近、新海監督は「日本昔話し」などの日本に魅力にハマっている様ですが、アイデアの宝庫だと語っています。「物語のステロタイプ」に対する新海監督の理解が深まった事が、「多くの人に受け入れられる良質な物語」の源泉になっているのかも知れません。

■ 『オーロラの彼方へ』という隠れた良作 ■



実は『君の名は。』に似た時空トラベル物の良作が2000年のハリウッド映画に在ります。『オーロラの彼方へ』という題名で日本でも公開されています。

オーロラの影響で30年前の父親と無線で交信する息子(消防士)の話。消防士だった父親は30年前の火災で殉職しています。息子は父親が死んだ火災に疑念を抱き始め、無線の向こうの父親と一緒に事件の核心に迫って行きます。

仕掛ばかりが大掛かりになったハリウッド作品の中で、アイデア一つで勝負した作品として私的には非常に評価の高い作品です。

■ 新しく無い『バケモノの子』と、新しい『おおかみこどもの雨と雪』
 ■


新海監督が今後どの様な作品を作って行くのか未知数ですが、「誰もが分かる映画」の罠には注意が必要です。

新海監督より先に「世間的な知名度」を獲得した細田守監督ですが、彼のバケモノの子』は面白く無い。

何故面白く無いかと言えば、『カラテキッズ』の様な「既成のプロット」を「異世界」という小手先の「変換」で作り直したからで、これは『ズートピア』にワクワク出来ない原因とも同質です。「子供にも分かる映画」を要求された結果とも言えますが、作家性が薄まると作品はたいがい魅力を失います。

その点、同じ細田作品でも『おおかみこどもの雨と雪』は作家性が際立っています。話が難解になったり、演出的に若干破綻してしまっても、「個人の物語、新しい物語」意思によって、その作品の魅力は損なわれる事は有りません。(自己満足にならない最低限の表現力は必要ですが)

同様に『君の名は。』は、「個人の物語、新しい物語」を創造しようとする決意が感じられる、素晴らしい映画だと思います。


■ 『シン・ゴジラ』は「背景」であって「物語」で無い ■

私が否定的な『シン・ゴジラ』ですが、庵野総監督は少なくとも「個人の物語」は捨てていない様です。「エヴァの様な・・・」は「個人の物語」の裏返しかのかも知れません。

しかし、私は『シン・ゴジラ』に否定的です。理由はあの作品が描こうとした「無駄な会議シーンや日本の矛盾」が「背景」であって「物語」で無いから。

「物語」のステロタイプは「神話」に在りますが、どうも人間は「神の与えし試練にひたむきに抵抗する姿」に感動する様に出来ている様です。

『シン・ゴジラ』において神の与えし試練はゴジラですが、どうも物語的には試練は「無駄な会議や、歪んだ日米関係」にも在る様です。

この両方を敵として戦う姿を描こうとした事で、両方が消化不良を起こしてしまった・・・そんな映画なのだと思います。

『場版パトレーバー』や『エヴァンゲリオン』が成功した理由は、「上の事情」をあまり描かなかった事にあります。「上が言っているから・・・」みたいな表現で、その部分は視聴者の想像に任せています。

「上の事情」をメインに描こうとするならば、それはそれで「ポリティカル・フィクション」として成り立つのですが、その場合は現場サイドを描かない事が重要になります。「上の争い」と「下の争い」は異質ですから、それを同列で描くと陳腐になってしまうのでしょう。

絶賛する声が多いので、私程度が酷評しても興行成績には影響しないと思いますので、あえて言うならば、「シン・ゴジラ」は「製作会議のホワイトボードに書かれたプロット」がそのまま映像化されただけであって、その後に続くべき「脚本」や「物語」がスッポリと抜け落ちています。

要は「シン・ゴジラ」は「物語」としての体を成していない・・・。大勢の俳優陣と、ゴジラの迫力ある映像で何となく誤魔化されていますが、特撮シーンがショボイバージョンを想像すれば、あの映画の問題点は容易に理解出来るかと思います。


ただ、庵野監督の映画らしく「使徒」は登場します。それはラストに映るゴジラの尻尾の人型の物では無く、怪しい日本語で脳内を直接浸食して来る「イシハラサトミ」。こいつは手強い・・・。




今年の最高傑作確定!! 新海誠『君の名は。』・・・細田守を消化した新海誠

2016-08-27 07:22:00 | アニメ
 



■ 今年最高の作品だと断言しよう ■

新海誠の最新劇場用作品『君の名は。』を、初日最終回に家内と観て来ました。50歳以上の夫婦だと二人で\2,200で観れてしまう。歳を取るのもたまには悪くない・・・しかし、明らかに劇場でダントツに最年長のカップルでした。

ネタバレを含めた感想は、しばらくしたらアップしますが、とりあえず感想など。

間違い無く今年公開される実写も含めた映画の中ではNo.1確定でしょう。構成からシナリオに至るまで、この映画を超える作品は、今のハリウッドでは作れない。


最大のサービスは『言の葉の庭』の雪野先生が再び教壇に立つ姿が見られる事。ここ、テストに出るから良く見ておくように!!

至高の雨が降る映画・・・新海誠『言の葉の庭』 


■ 繊細(ナイーブ)過ぎて大衆受けしない新海誠 ■

今までの新海誠の作品は『秒速5センチメートル』を観れば分かる通りナイーヴ過ぎて一般受けしませんでした。そこがファンにはたまらない魅力なのですが、電車に乗って中学生が小学校時代の初恋の相手に合いに行く、その電車の中のシーンを延々と見続けられる人は、余程の鉄道マニアかアニメオタクしか居ません。

早く彼女に会いたくて仕方無いのに、雪で電車は遅れ途中の駅で延々と待たされる。主人公も待たされるけれど、視聴者も同じ時間だけ待たされる。このなんともモドカシイ時間に魅力を感じなければ、初期の新海作品は見れません。

映画としてどうかと聞かれたら「エンタテーメントの映画としては成立していないけれど、映像表現としては孤高に到達している」と答えるでしょう。

そんな新海誠も『言の葉の庭』のヒットで、ポスト細田守との呼び声が高くなります。しかし、新海誠の作風は良く言えば「淡々としている」、悪く言えば「抑揚に欠ける」ので、観客動員を競う映画になる為には、やはり一皮も二皮も剥ける必要が有りました。

そんな彼ですが、TVコマーシャルを監督する事で、短い時間でメリハリの有るシーンを演出するテクニックを磨いた様です。

■ Z会のCMは短編映画として傑作だ ■

『言の葉の庭』の劇場で同時上映されていた野村不動産のCMは、新海誠の個人製作の『彼女とかの彼女の猫』の延長線の作品です。この頃までは、未だ過剰にナイーブでナルシスティックな作風です。

大成建設や濃毎日新聞マルコメ味噌の一連のCMでだんだんと表現が力強くなり、「Z会」のCMは『君の名は』に繫がる魅力を感じます。短編映画の傑作と言っても過言では有りません。




この映像にピンと来た方は劇場に足を運んでみてください。

■ 細田守の『時をかける少女』を200回見た新海誠?! ■

『言の葉の庭』までを新海誠の第一形態だとすると、『君の名は』は第二形態の始まりだと言えます。

ちょっとラフな評論をするならば「細田守の『時をかける少女』を200回見た後に新海誠が作った映画」なんて勝手に妄想してしまう映画です。

先ず動きや演出にリズム感を獲得しました。今までは「実写的演出」を得意としていましたが、アニメーションの魅力はやはりデフォルメされた動きや表情です。感情を内に秘めた表現より、ジブリアニメの様に動き感情を表現する方が魅力が高まります。

尤も、低予算でキャラクターを動かす事は難しいので、新海誠が始めて潤沢な予算で映画を作ったら細田守の様になった・・・のかも知れません。『時をかける少女』と『サマーウォーズ』は徹底的に研究した感はありますが。

■ ポストジブリの細田守と、ポスト細田守の新海誠 ■

スタジオジブリが活動を休止した今、ポストジブリとしてその穴埋めを期待されているのは細田守です。『バケモノの子』は明らかに「良い子のファミリー映画」です。

一方、『時をかける少女』を期待するファンは行き場を失っていました。ところが、その穴を埋める様に深海誠の第二形態が降臨しました。

これは二人のファンとしては少し複雑な気持ちでは有りますが、はたして新海誠が『おおかみこどもの雨と雪』の領域まで到達できるのか・・・期待は膨らむばかりです。




ちなみに家内はセリフの「高山弁」に大喜びでした。高山出身なので。」




<追記>


思わず「今年最高傑作」と書いてしまいましたが、まだまだ侮れません。『声の形』の上映が控えていますね。別冊マガジンの読み切り作品だった『声の形』。週刊連載が始まった時はあまりの反響に、マガジンが書店から消えてしまった。私も娘の友人経由で貸してもらって読みました。脚本・吉田玲子、監督・山田尚子(『けいおん』『たまこまーけっと』)、製作・京アニ・・・これは期待出来ます。

『ゼーガペイン』の10周年劇場版も10月に公開予定で、こちらはコアなファンには涙が止まりませんね。



<追記>

マルコメ味噌のCMをてっきり新海作品だと勘違いして記事を書いていました。訂正してお詫びします。(娘に夜食を作る父親がプラウドのコマーシャルの雰囲気に良く似ていたので・・・)

こちらは「ロボット」という映像制作会社と、「スタジオコロリド」というアニメ制作会社のコラボだそうで、「料亭の味 たっぷりお徳 母と息子」編はジブリ出身の新井陽次郎が監督している様です。新井監督とスタジオコロリドと言えば、最近『台風のノルダ』が話題になったと思います、





マルコメのCM,泣けます!!


日本の不景気の原因・・・高すぎる住宅取得コスト

2016-08-25 06:44:00 | 時事/金融危機
 

■ 日本の住宅は高い ■

日本の消費の落ち込みの一因に、「住宅コストを除いた後の可処分所得が低い」という事があるのではと・・。

1) 狭い国土に人口が密集しているので土地の価格が高い
2) 耐震基準が厳しい為に建築コストが諸外国に比べて高い
3) 新築志向が強く、結果的に住宅取得コストを押し上げる
4) 賃貸住宅も同様の理由で家賃が高い

住宅取得世代の消費常用を見れば明らかな様に、マイホームを買った途端に家計は厳しくなり、消費や娯楽が抑制されます。

■ M6程度の地震で崩壊したイタリアの住宅 ■

イタリア中部でM6程度の地震が発生しましたが、住宅が崩壊して多数の死者が出ています。煉瓦を積み上げて漆喰を塗っただけの建物は地震で簡単に崩壊します。

日本の耐震基準を満たした建造物は、戸建て住宅にしろ、鉄筋コンクリートのマンションにしろM6程度の地震で倒壊する様な事は有りません。(耐震基準が低かった時代の建物や手抜き工事は別ですが)

海外の鉄筋コンクリートの住宅を見ると、地震が多いロスアンゼルス近郊ですら、柱や梁が細く、こんなので地震に耐えられるのか心配になります。(おまけにコンクリートの施工が酷い・・)

日本は巨大地震が発生する度に耐震基準が強化され、建築コストは当然上昇してきました。

■ 一生を縛る「リコースローン」 ■

住宅を取得すると30年以上に渡りローンに縛られます。この間、リストラに合ったり、会社が倒産してもローンは払い続ける必要が有ります。

日本の場合はリコースローンなので、担保になっている住宅を手放しても担保割れになっている部分の返済義務から逃れる事は出来ません。

日本は「新築志向」が強いので中古住宅の価格は極端に低く、マンションも入居したその日から値下がり始めます。結果的に、ローンを払えなくなって住宅を手放しても手元に1000万円程度の借金が残ります。

この様な事態を避ける為に、ローン返済者はなけ無しの可処分所得から、万が一に備えて貯蓄に勤しみます。

アメリカなどではノンリコースローンが一般的ですから、住宅を手放した時点で借金はのこりません。これが中古住宅市場に潤沢な在庫を供給する事になり、結果的に中古住宅市場の流動性が高まり住宅取得コストを下げる結果に繋がります。

■ 銀行がリスクを取らないノンリコースローン ■

リコースローンとノンリコースローンの違いはリスクの所在にあります。リコースローンの場合は、銀行は一度お金を貸せば、ローン返済者が住宅を手放しても銀行は損をする事がありません。

一方、ノンリコースローンの場合は銀行は損をする事が有ります。ですから、住宅ローンをMBS(住宅担保証券)に加工してリスクヘッジするシステムが発展しています。

MBSなどのリスクヘッジでは、住宅債権のリスクは銀行単体ではヘッジされますが、金融システム全体のリスクは減りません。「大数の原理」で何となく誤魔化されていますが、リスクは存在し続けます。

どちらが良いかは一概には言えませんが、債権者である住宅取得者にとっては多少金利が高くともノンリコースローンの方がリスクは少なく、生活状況に応じて住み替えが出来るというメリットもあります。

■ 借家という選択 ■

所為の低下や、雇用環境の悪化で「持家信仰」は次第に薄れて来ています。

従来は「借家=木造アパート」というイメージもありましたが、鉄筋コンクリートの賃貸物件や、分譲物件の賃貸化などにより良質な借家が増えています。こうなると、持家と借家でどっちが得か、真剣に考える必要が生じて来ます。

「家は資産」というのは一昔前の考え方です。実際に住宅に住み始めた途端に資産価値が減少し、25年程度で上物(建物)の価値はゼロと見なされます。

マンションを買うと毎月管理費と修繕積立金を払い、築20年程度で内装や設備の更新時期がやってきます。水回りのリフォームは結構高いです。

賃貸住宅の場合や契約金や敷金・礼金などが在りますが、賃貸市場がダブついているので、敷金礼金ゼロなんて物件もチラホラ。

今後、人口減少に伴って日本の空家率はどんどん上昇します。(但し、古い一戸建てや古い木造アパートから空家になります)。そうなると賃貸物件の家賃はどんどんと低下して行きます。こうなると「一生借家」という選択をする人も増えるでしょう。

■ 所得、家族構成、に合わせた住み替え ■

終身雇用が崩れた現代において、住宅を取得する事は「求職する地域が限定される」というデメリットも見過ごせません。「関西の景気が良いのに、東京近郊から離れ慣れない・・・。」こんな事態も生まれて来ます。

実際にリーマンショック以後、アメリカでは中古住宅の価格が低下したので、住宅を手放す事が出来ず、地域間の雇用の流動性が損なわれた時期が在りました。

この様に「持家信仰」を捨てる事で様々なメリットも生まれて来ます。

■ 老後の家賃 ■

問題は所得が無くなり年金生活となった後の家賃です。

借家では一生家賃支出の心配が付きまといます。しかし、考え様によっては、借家によって浮いたお金を貯蓄に回したり、運用に回せば、老後の家が買えなくもない。夫婦二人ならワンルームで十分でしょう。

介護付マンションが人気ですが、その為の資金を「賃貸住まい」で貯めるのは合理的は発想かも知れません。

■ 「持家信仰」を捨てると日本は豊になる? ■

思い付に過ぎないかも知れませんが、「持家信仰」を捨てると可処分所得が増えて消費が増えるかも知れません。「持家信仰」を捨てると、貯蓄が増えて老後の心配が減るかも知れません。

いっその事、住宅をインフラとして整備すれば、国民は「住宅」という呪縛から解放されるかも知れません。

「持家の方が得」というのは右肩上がりの経済成長で、住宅価格が上昇する時代の考え方かも知れません。