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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

アニメが2次元の世界である事の幸せ・・『北極百貨店のコンシェルジュさん』

2023-10-25 04:27:09 | アニメ

映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』より

 

■ 劇場チラシでアニメファンのアンテナがビンビンに! ■

8月に部長になった久美子ちゃんが心配で(親心です)、思わず劇場版『特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト』を観に行きました。最近よくある事ですが、シアターで最年長の観客でした。久しぶりの映画館でしたが、待ち時間にロビーのチラシを見ていて興味を引いた作品が三作。岡田麻里監督の『アリスとテレスのまぼろし工場』、板津匡覧監督の『北極百貨店のコンシェルジュさん』、P.A WORKSの「働く女の子シリーズ」の最新作の『駒田蒸留所へようこそ』

特に『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、現代のアニメーションらしくないシンプルなキャラクターと、柔らかな色彩に、アニメオタクのアンテナがビンビ反応してしまいました。しかし、劇場予告を観る限りは、あまりピンと来なかった。むしろ、『アリスとテレスのまぼろし工場』と『駒田蒸留所へようこそ』の予告版は鳥肌ものでしたが・・・・。

それでも、『北極百貨店のコンシェルジュさん』の劇場チラシを観た瞬間のアンテナはビンビンに立ったままだったので、上映がはじまったので劇場へGO!

■ アニメが2次元の世界である事の幸せ ■

結論から言います。上映開始直後から、終始頬がニヤニヤと緩み放しでした。他人から見たら、「このオヤジ、なんでアニメ映画で恍惚の表情を浮かべてんだよ、キモーー」と思われたでしょう。

昨今、手描きアニメですら3次元を意識して作られる時代に、「2次元のシンプルのキャラクターが動き回るアニメって、何てプリミティブで素敵なんだろう」。キャラクターの3次元的な動きや、角度変化の描写を捨て去る事で、こんなにもキャラクターは自由に動き、表情を変え、そして背景の空間の中を縦横に動き回れるのか・・・

『魔法使いサリー』や『ド根性カエル』の時代からアニメを観ている私達の世代には、一種の懐かしさを伴いながらも、緻密な背景や、カメラワーク(実際には絵コンテを元にした作画ワークや撮影ワーク)にただただ圧倒されるばかり。「3次元で構成された百貨店の中に、2次元のキャラクターを置き、それを移動カメラを縦横に動かしながら撮影した感じ」と表現すれば伝わるだろうか・・・。

監督は『電脳コイル』の総作画監督の板津匡覧(よしみ)。原画マンとして数々の名作を支え、監督作品としては『ボールルームにようこそ』があります。作画出身の監督の作品は、宮崎アニメを始め、絵作りに並々ならぬ拘りを感じますが、この作品は、アニメが2次元の絵である事をハンデでは無く、メリットとして最大限に活用した頂点に存在すると言っても過言では無い。

■ シシンプルだが筋の良いストーリー ■

原作マンガは、イラストレーターでもある西村ツチカさんの作品。かつて百貨店に勤務していた事のある彼女が、まばゆいばかりの売り場を薄暗い職場から眺めていた時の印象を元に描かれた作品ですが、文化庁のメディア芸術大賞の優秀賞を受賞しています。この作品のファンだった板津監督が、スタジオI.Gの企画要望に対して提案したのがこの映画です。

脚本はテレビドラマ『凪のおいとま』を観て監督がオーファーした大島里美さん。70分という短い時間の中で、自然にストーリーが流れて行き、しっかり盛り上がりもあり、良い脚本です。細田守や新海誠の最近の作品は、脚本を監督自らが書く事で破綻しています。作画出身の監督が、頭の中にギッシリ詰まったアイデアを詰め込むと、だいたい作品は破綻します。きちんとした脚本家が、捨てる所は捨て、広げる所は広げ、整理するところは整理した脚本を元に、作画系の監督は、その持ち味を最大限に発揮した方が良い作品になります。『北極百貨店のコンシェルジュさん』はその最良の例の一つです。

70分という短い尺に幾つかのエピソードを収める為に原作の複数のエピソードを同時進行させるという荒業を使っていますが、劇場で観ていて、ちょっと、せわしない感じはしましたが、それでも最後にきちんと感動のピークで物語を終わらせる辺り、脚本家としての力量はナカナカです。大河ドラマ『花燃ゆ』の脚本家でが、マンガ原作のドラマ脚本も多く手掛けられていて、私はこういう実写系の脚本家に、どんどんアニメ脚本を書いて欲しい。

■ 色彩の魔法 ■

筋の良い脚本を得た事で、板津監督は絵作りに専念出来ます。パンフレットに絵コンテがありますが、「アニメのカメラワークの指示って、絵コンテで、こうやって表現しているんだ」って感動してしまいました。そして、コンテに色が付いています。

これはコンセプトカラーデザインの広瀬いずみさんの提案だそうで、とにかく背景の色彩計画が素晴らしい。淡いトーンながらもカラフルで、百貨店が持つ「華」の部分を見事に表現しています。これを観るだけでも、この映画は価値があります。

 

■ 絶滅した動物と、百貨店という絶滅しそうな業態 ■

ストーリーは百貨店の新人コンシェルジェさんが、お客様の様々な要望を解決しする中で成長するというシンプルなもの。一見、「ほんわか」としたトーンの作品ですが、私は終始「不穏な気配」を感じずには居られませんでした。背中に何か冷たいものを押し当てられている様な・・。

多分、それは「百貨店の雑踏」の背景音の影響だと思います。普通、多くの客のどよめきに満ちた百貨店の店内は、音楽を小さな音で流す事で、雑踏の音を消していますが、この作品では音楽が流れていな時が多い。すると、背景の雑踏の音は、多くの動物達、それも画面に描かれていない物達の息遣いとして、その存在感は私を威圧して来ました。

何で、こんな音響処理をしているのか・・・それは、物語の後半を観て納得します。この百貨店は、絶滅した動物達に、人間が奉仕する為に建てられたものだったのです。言わば「ゴースト百貨店」

百貨店という業態自体が、現在は絶滅危惧種です。かつては、休日のファミリーで賑わった百貨店は、その座をショッピングモールに奪われ、スーパーブランドに場所貸しするだけの業態に変わりました。客層は小金持ちに限定され、大食堂や屋上遊園地などがあった時代は過ぎ去りました。この物語に登場する百貨店は、百貨店が衰退する前の、かつての華やかさと活気を持っていた時代のもので、ある意味、この百貨店も絶滅しているからこそ、絶滅した動物達の憩いの場として存在しているのかも知れません。

 

■ アニメを観る幸せ ■

学生時代から結婚するまで、私はミニシアター系の実写映画を観まくっていました。休日は映画をハシゴしていた。そんな私も今では実写映画は年に1本か2本しか観ません。何故って、「どれを観ても同じに感じる」からです。たまに、「オオーー新しい、スゴイ」と感じる作品はありますが、それはメジャー系の作品で、ミニシアター系の作品はどれも、自己満足の世界に耽溺している。純文学に近い状態で、そこから新しい物は生まれない。

一方、アニメやマンガやラノベは新鮮な驚きに満ちています。多くの読者や視聴者を相手に、日々、新しいアイデアや表現手法を競う事で進化を続けています。多くの才能が、この世界を目指す。仮に、現代に夏目漱石が生きていたら、絶対にラノベ作家になっていたし、現代に北斎や写楽が生きていたらマンガ家かアニメ監督になったでしょう。

アニメやマンガには制約が少ない。動きや表現のデフォルメは自由自在ですし、ある意味表現のタブーのハードルも低い。首が飛ぶ様な残酷描写も、残酷さを薄める事も、或いは強調する事も自在ですが、実写ではこれが出来ません。この、自由で広大な表現空間に、様々な才能が集まる事で、現在の日本のマンガやアニメやラノベは、コンテンツとして、世界の最先端つ突っ走っています。それを日本語で堪能できる私達は、その幸せに感謝するしかありません。

 


世界大戦は「リセット」を容易に達成させる….「戦時下」と言う最強カード

2023-10-17 13:15:47 | 時事/金融危機

◾️安い労働力を提供する移民 ◾️

先の記事で楽譜さんが紹介して下さった様に、アメリカの治安悪化はひどい。資本主義の帰結として貧富の差は避けられません。特に「自己責任社会」のアメリカは顕著。先進国の中に途上国を抱え込んでいるのがアメリカですが、国内の貧しい人たちは安い労働力としては魅力的なです。

ヨーロッパは移民にもある程度の社会保障を提供するので貧困化した移民は社会の重荷になります。中東やアフリカで絶えず紛争が起きるのは、移民を生み出す為と私は妄想していますが、企業は安い労働力の恩恵だけ受けて、移民のコストは国家に付け替えている。まあ、法人税や社会保障のコストも負担しているので丸投げというのは語弊があるかも知れません。

日本は国連の基準に則れば世界4番目の移民大国ですが、「研修生」「留学生」と言った「すり替え」で、移民の定住を制限しているので、「ズルい」と海外から言われますが、移民の安い労働力はヨーロッパ同様に一部の国民の仕事を奪ったり、賃金上昇を阻むので、これらの人達の社会的コストが増大します。

 

◾️戦後システムが限界に達した西側世界 ◾️

先進国は様々な制度疲労を抱え、高齢化によってどの国の財政も日本同様に悪化して行きます。人口や消費に頼る社会は、限界を迎えているので「リセット」が計画されてるのでしょうが、リセット後の世界がなかなか見えてこない。

 

◾️「封建社会2.0」と言うよりは「スマートなファシズム」◾️

一説には「封建的な世界」にななるとも言われていますが、これは「資産保有を限定」すると言う意味ならば、社会主義に近い。さらに「国家資産の最適化」と捉えるならば「統制主義=ファシズム」と呼ぶ方が相応しいかも知れない。ファシズムを独裁と勘違いしている方が多いが、一部のす優れた人達が国家を正しく管理すると言うのがファシズムの本質。「AIという統治者を戴くファシズムは」、SF小説が何度も描いてきた未来です。

ソ連など旧社会主義の失敗を踏まえ、ある程度の格差を残して、ランクアップを向上心維持に利用するならば、チラホラと噂される国民のランク分けは有効かも知れません。ベーシックインカムと、電子マネーによる徴税を組み合わせれば、コンパクトな行政システムを構築出来ます。

旧共産圏の失敗は、強権と監視によって国民を管理したので国民の不満が高まった事も原因です。そこで、デジタル監視と国民のランクを結び付けると、人々はランクアップする為、あるいはランクダウンを防ぐ為に、自発的に国家の方針に従う様になります。それを如何にソフトにスマートに実行するかが成功のカギですが、メディアで洗脳すれば難しい事では無いでしょう。

 

◾️国家資産の最適化の為に資産保有を制限する?◾️

尤現在の資産を手放すとなると国民は反発します。

預金は通貨の崩壊で無価値化すれば簡単に資産を国家が接収できますが、不動産などの保有の放棄は難しい。そこで、新しいデジタル通貨と引き換えに国が資産を国有化してゆくと言う方法もあり得る。

国民ランクによって資産保有に制限を掛ける方法もあるでしょう。

◾️社会の大変革に戦争は便利◾️

いずれにしても、世界の経営者は、新しい社会システムを既にデザインしていると思われるので、それを「実験」する国家では、既存の社会システムが一回、完全に破壊されます。

その破壊に最も有効なのが戦争です。非常事態宣言や戒厳令など、戦争を口実に、国家の強権を行使した改革を強行する事が可能です。

何故、今イスラエルで戦争?が起き、下手をするとイランの参戦で世界大戦に発展する事態になっているのか…「.ハマスとパレスチナ人の我慢が限界に達した」などという説明で納得しては危険です。


ガザ紛争はヨーロッパへの兵糧攻めか?・・・ガザ沖のガス田

2023-10-16 06:29:44 | 時事/金融危機

東地中海ガス田の行方―欧州向けガス輸出ルートの可能性と課題―より

 

■ イスラエル沖のガス田からエジプトへのガス供給が絶たれた ■

今回のハマスの大規模なイスラエル攻撃と、それを受けたイスラエルのガザ地区への反撃は、イスラエル沖のカリシュ・ガス田からエジプトを経由したヨーロッパへの天然ガスの輸出に影響を与えます。カリシュ・ガス田の権益は、イスラエルとレバノンの間で争われています(一応、話し合いで)。

現在、イスラエルが米シェブロンのカリシュ・ガス田の操業許可を与えて、採掘船が創業を開始しています。ここで採掘されたガスは、パイプラインでガザを経由してエジプトに運ばれ、エジプトのLNG工場で液化された後、ヨーロッパに輸出される計画でした。エジプトは地中海沿岸のガス供給のハブ国を目指して、地中海地域で唯一のLNP工場を建設して、ヨーロッパへの輸出を計画しています。しかし、ガザ沖を通るパイプラインの安全が確保出来なくなったので、計画を変更してヨルダンを経由するを検討している。

今回の戦闘で、イスラエル政府は安全が確保出来ないとして、シェブロンに創業停止命令を出しています。これでイスラエル政府やエジプト政府が目論んでいた、ヨーロッパへの天然ガスの輸出で一儲けという計画が、しばらく中断します。

 

■ ハマスを排除して、海底油田を開発? ■

イスラエルはガザへの地上攻撃に先立ち、ガザ地区の北部からの住民の退去を呼び掛けています。ガザ北部の沖合には別の海底油田が有ります。ここはイスラエルに近いので、明らかにイスラエルの権益となります。ただ、パレスチナ自治政府も当然権利を主張しています。

今回のハマスの攻撃とそれを受けたイスラエルのガザ攻撃を、「イスラエル政府がハマスを裏で操って、ガザ北部からパレスチナ人を追い出して、ガス田の権利をイスラエルが一人占めるするものだ」との憶測が出ています。イスラエルが「わざわざ」ガザ北部からのパレスチナ人の退去を要求している事から、素直に考えればこの読みは正しいかも知れません。ガザ沖の油田からヨルダンへのパイプラインはガザ北部の近くを通っているので、ハマスがこれを攻撃する可能性は否定できない。

 

■ 短期的にはヨーロッパへのガスの供給を絶つ ■

私は、もう少し穿った妄想をしています。短期的にではあれ、創業が開始されようとしていたカリシュ油田の操業を止める事で、ヨーロッパ諸国はガスの供給先の一つを失います。ウクライナ戦争以降、米英は裏で、ヨーロッパへのエネルギーの兵糧攻めを画策している様に見えるます。ロシアからドイツにガスを供給するノードストリーム1,2の破壊の背後には米英の影が色濃くチラつく。

但し、カリシュ油田の操業停止が、国際世論や中東諸国を敵に回してのガザ侵攻と吊りあうかと言えば・・疑問です。長期的に見れば、ガス田やパイプラインからハマスを遠ざける目的と考える方が自然です。

 

■ イスラエルの地上侵攻をイランは見逃すのか ■

イスラエルは期限を切ってガザ北部から住民の退去を宣告しています。今の所、期限を過ぎても地上戦力を投入していませんが、退去が完了する前に地上戦力を動かすと、ガザ地区の一般人の被害が拡大するので、中東諸国を必要以上に刺激します。イスラエルとしては「ハマスとの戦闘」に限定する為にも、一般人の非難完了を待つ必要があります。

アメリカは完全にイスラエルを支持して、空母を地中海に配備しています。流石に直接戦闘に参加する事な無いと思いますが、イランへの圧力にはなります。イスラエルのガス田で操業するのは、アメリカの石油大手となるでしょうから、ここはイスラエル政府を前面バックアップです。G7では日本とカナダを除く5か国がイスラエル支援を明確にしています。ここら辺にも利権の影がチラつく。

問題はイランがイスラエルのガザ地区の侵攻にどう反応するかですが、ヨルダンのヒズボラがイスラエルを攻撃しして、ハマスを支援するでしょう。ヒズボラの後ろにはイランが着いています。しかし、イランが直接イスラエル軍と衝突したら、イスラエルやアメリカのイラン攻撃の口実を与える様なものなので、イランは動きが取れない。

イランがイスラエルやアメリカやNATOに攻撃されたら、中露は黙って観ている訳には行きません。中国はイランとの関係が深く、そこを起点に中東の石油利権に喰い入っていますし、ロシアとしても、関係の深いイランを見殺しにしたら、面目が立ちません。さらにドサクサに紛れてシリアを攻撃されて、租借してるシリアの軍港を失うのは戦略的な損失が大きい。

イランの参戦は、第5次中東戦争や、第三次世界大戦の引き金を引きかねないので、無いのでは無いかと・・・・。但し、イランが参戦するかも知れないと考えられるだけで、原油価格は上昇します。私はイランが口先でイスラエルを「口撃」して、中東の緊張を高めると妄想しています。イランはそういう役回りなのだと。

■ 対岸の火事では済まされない西側諸国 ■

アメリカを始め、ヨーロッパ諸国や日本では、中東は対岸の火事の様で、人々の議論は「人道的」な内容に終始しがちです。「今回はハマスが先に手を出したけど、イスラエルもガザ地区の住人を殺すだろうから、双方が悪い」という不毛な議論を繰り返すでしょう。

しかし、原油価格次第では、西側諸国のインフレ率はさらに上昇して、金利の上昇はバブルの息を止め、米国債金利の上昇は、米地銀を危機的な状況に追い込みます。実はガザ地区の紛争で尻に火が着くのは、西側諸国の可能性が高いと私は妄想しています。

問題は、バブルが崩壊して経済が大混乱に陥った時に、戦争が起こされて、全てがウヤムヤにされるケースです。世界大恐慌の後の、第二次世界大戦の様に、「強引なリセット」が計画されていないとも限りません。核兵器を保有する世界で、核保有国同士の戦争は、基本的には起こらないハズですが・・・フォークランド戦争の様に、イギリスは意外に血の気が多い。自分の得物に手を出されるとマジ切れします。


中東戦争で紙切れになるドルと米国債

2023-10-12 13:01:02 | 時事/金融危機

楽譜 さん

楽譜さんへのお返事が長くなったので記事にします。似た様な内容を以前「最後に笑うドル」という記事で書きましたが、コレは中東戦争を起こしてドル需要を高めるという内容でした。しかし現状は、中東戦争こそがドル終焉のセレモニーになると私は妄想しています何故、今、イスラエルがハマスを使って自国をワザと攻撃させたのか?(モサドがこんな大規模攻撃を見逃すのはおかしいと、イスラエル国民の多くが考えています)

 

 

ドルも米国債もアメリカの負債ですが、同時に世界中が欲しがる金融商品でもあります。

アメリカは米国債を海外に売ることでドルを発行してきましたが、過剰発行によって金融商品としての価値は希釈化してゆく。コレは資産市場のインフ(バブル化)として観測されていましたが、コロナ以降は実体経済のインフレとしてドルの希釈化が進行しています。

他通貨も同時に過剰発行されるので、相対的にドル安は起きていませんが、ドルの魅力を損なう様な事態が起きると一気にドルが売られます。リーマンショック後のドリ安は、ドルの流動性が枯渇した事によってドルのサスティナビリテーに疑問が持たれた事でドル売りが加速しました。FEBの狂った様な信用供給でドルは延命しましたが、結果はリーマンショック以上のバブルの生成と、ドルの希釈化が進みました。

この様にドルに依存したシステムは、バブルの発生と崩壊を繰り返していますが、その裏側で米国の債務残高が巨大に膨らんでいます。

過剰に発行された米国債の価値は、どこかで疑問が持たれる様になりますが、今後はBRICS陣営のドル離れで、米国債の価格が下落し、米国債金利がどんどん上昇してゆきます。既に先週だったか米国10年債が史上最大の下落を記録しました。2022年のピークに比べ、米10年債価格は46%も値下がりしています。(日本は米国債を大量に保有していますが、円安による為替差益が値下がりを見え難くしています。円高に触れたら、金融機関やGPIFはパニックになります)

イスラエル有事で、久しぶりに「有事のドル買い、米国債買い」が発生して、米国債金利も一息ついていますが、金利上昇圧力は今後も継続します。

FRBは利上げ姿勢を崩していませんが、コレはドルと米国債防衛とも言えます。ドルが安くなったら、米国債の実質金利も下がるので米国債売りが拡大します。

なんだかドルと米国債はアルゼンチンの様な状態に見えますが、人々は未だドルや米国債を「特別視」して、リスクを軽視しています。

しかし、米国債金利の上昇(価格の下落)は、それを保有する金融機関や年金基金に含み損を発生させており、そろそろ米地銀が含み損に耐えられなくなるでしょう。「米国債保有=リスク」と認識される様になると、世界中で米国債が売られて、米国債の暴落が起きる可能性が高まります。これに合わせてサウジアラビアや中国が売り浴びせると、米国債はかなりヤバイ事になる。

アメリカはロシアにした様に、サウジや中国の海外資産を凍結して米国債の売却を防ぐでしょうが、コレを見たBRICS諸国は、ドルと米国債保有をリスクと認識して、一気に売ります。

ロシア一国をドル決済から締め出しただけで多くの国のドル離れを起こしたのですから、事ここに至ってはドルや米国債の信用喪失は避けられません。

ニクソンショックの時は、第四次中東戦争による原油価格の高騰が巨大なドル需要を産んで、ドルは延命しましたが、仮にイスラエルとアラブ諸国が大規模な戦争になった場合、アラビアやその他の産油国は自国通貨や元による石油決済を要求するでしょう。

こうして眺めると、「イスラエルがガザに地上軍を派遣して住民を虐殺し始めたら、ドル資産は売り」と私は考えます。

パレスチナ人を虐殺するイスラエルをイランもサウジアラビアもトルコも看過できないでしょう。既にイスラエル軍はモスクを空爆していますが、イスラム教徒にしてみれば、宗教戦争が始まった様に見えるはずです。