■ 日本の空気が変わった ■
今年程、「日本の空気が変わった」と実感した年は有りません。
安倍政権は数々の「疑惑」が発覚して、従来の日本であれば政権維持は不可能です。ところが、メディアが森友問題や加計学園問題を連日報道しても、安倍政権の支持率は大幅に低下する事はありません。
1)堅調なアメリカや途上国の消費が輸出産業の好業績を生み出している
2)異次元緩和バブルが経済を下支えしている
3)労働人口の減少が失業率を低下させ、雇用環境をタイトにしている
4)ゼロ金利国債という打ち出の小槌が教育無償化などの人気取りの政策を可能にしている
5)民主党政権時よりも景気は確実に改善している
これらは「安倍政権の経済政策は悪く無い」というイメージを国民に与えています。
5)北朝鮮の核ミサイル開発により、日本の安全保障に重大な問題が生じている
6)中国の軍事力の拡大が東アジア地域の脅威になっている
7)日本の安全保障の為には憲法改正が必要である
安倍政権を支持する方の多くは、安倍首相でなければ憲法改正が実現出来ないであろうと考える人も少なくないでしょう。
前者は消極的なが安倍政権の継続を望んでおり、後者は積極的に安倍政権の継続を望んでいます。
■ 立憲民主党が戦後リベラルの最後の拠り所となった ■
解散総選挙を自公の勝利で終わらせた原動力は民進党の崩壊です。
社会主義の衰退によって欧米の左翼政党は「市民政党」へと変貌し、「境問題」や「生活の充実」といった政治目標を掲げる様になります。これは左翼政党の活動目的が「労働者の待遇改善」から、「国民の生活の質の向上」に移った事を意味します。
一方、日本の左翼政党は「憲法9条」に縛られてしまい、市民政党への脱皮に失敗してしまった。一見、環境問題の様に見える「脱原発」も、根源的な所では「戦争反対・核兵器廃絶」という戦後リベラルの「お花畑平和主義」と結びついています。
安倍首相という分かり易い戦前主義的な対立軸の存在が、立憲民主党という時代遅れのリベラル政党を生み出したとも言えます。
■ 「リアルな平和」と「フェイクの戦争」に気付けない人々 ■
安倍首相を積極的に支持する人々の多くは「日本人は平和ボケしてしまって、北朝鮮や中国の脅威に無関心だ」と考えています。
これ、ガンダムの富野監督が作品の中で何度も訴えて来た事ですが、ガンダム世代が社会の中心世代になるにあたり「富野イズム」が「ネトウヨ」の温床になったと私は感じています。ところが「富野イズム」に潜む危険性の彼らは無頓着です。
富野イズムは「平和を疑う」事からスタートします。「日本はアメリカの属国」「世界の国々の利害は対立している」「日本以外の国は戦争という選択肢を放棄していない」・・・。これらはある意味、「当たり前の世界観」です。
「本当の保守=現実主義」は、この様な構造の上に構築された平和を「リアルな平和」と捉え、それの継続に力を注ぎます。従来の自民党政治と官僚達の思考がこれです。
一方、富野イズム的な「似非リアリズム」は、「偽りの平和を壊す事で世界のリアルを証明」しようとします。これはテロリストの思考パターンで自分の正当性を立証する為に現実の変化を望むという「幼稚な思想」と言えます。
私にはネトウヨなどと呼ばれる富野イズムの落とし子達が、「本当は世界や日本は平和じゃない」と証明する為に、無意識に北朝鮮の暴発を望み、無意識に中国の台頭を望んでいる様に思えてなりません。そして彼らの無意識の集合体として安倍首相が存在する。
従来の日本では退陣しているであろう「疑惑のデパート」の安倍政権ですが、これを支えているのは「ガンダム」の亡霊だった・・・・。アニメファンの私はそう妄想しています。
<追記>
富野監督の名誉の為の書き足すならば、彼は過激が言動ばかり注目されますが、最後は良識的な大人です。『逆襲のシャー』では、シャー・アズナブルが地球の人々を殲滅する為に地球に隕石の落下を試みますが(テロ)、これをアムロを始めとする敵味方の無名なモビルスーツパイロットが阻止します。彼らは最後で平和を守る決断をします。『リーンの翼』でも迫水王は最後は東京を守る選択をします。
この様に、現実の世界に苛立ちを覚えながらも、富野監督は最後にリアルな平和を守る決断をしています。
この様な富野監督のジレンマをネトウヨの方達は理解していませんが、これはマルクスの真意を理解しなかったかつての社会主義者に通じる所が有ります。