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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ドルの流動性の確保・・・ドイツ銀行と世界の命脈

2016-06-30 05:17:00 | 時事/金融危機
 

■ イギリスの国民投票で暴落したドイチェバンク(ドイツ銀行)株 ■

イギリスの国民投票の結果を受けてヨーロッパの株式市場は大荒れでしたが、最も注目されたのはドイチェバンク株の下落。これ実は「狙われた感」がMAXで、ジョージ・ソロスが空売りをしまくったとか。



昨年辺りから注目を集めているドイチェバンク。デリバティブ残高が67兆ユーロ(8710兆円)とドイツのGDPの20倍に達している事から、信用収縮の流れが起きたら一たまりも無いどころか、リーマンブラザーズ破綻以上の影響を金融市場に与えると言われています。

■ デリバティブって何? ■

リーマンショックで注目を集めたデリバティブ取引。複雑な金融商品で私の様な素人にはイメージし難い。

デリバティブなどと呼称すいると「何だかイカガワシイ取引」の様な見えますが、一般的には次の様な手法とその組み合わせで出来た金融取引です。

1)先物 (株価指数・通貨予約・商品先物)

2)オプション (株価・金利・通貨)

3)スワップ (金利・通貨)


デリバティブ取引の目的は二つあります。


1)リスクを軽減する

2)利益を拡大する


一見相反する内容ですが、例えば日本の輸出企業などが将来的な円高を予測して現在の為替レートで為替予約を行うケースは「リスク軽減」に当ります。

逆に日本の投資家が将来的な円高を予測して将来的に実行されるドル売り円買い取引の円の価格を現在の価格に設定する様なケースは「利益拡大」に当るでしょう。

「リスクヘッジ」と「リスクテイク」で正反対の様に思われますが、やっている事は同じなので、相場が予想に反して動けば利益が減少したり損失が発生します。「リスクヘッジ」的な使い方をしている場合は利益の減少で済みますが、「リスクテイク」の取引では往々にして損失が発生します。

為替予約を絡めた取引では、リーマンショック時に日本の多くの中小企業が銀行や証券会社に売りつけらて大損をした、為替が予想範囲を超えて動いた場合にリスクが急拡大する様な商品もありました。



■ 複雑なデリバティブが危機を拡大した ■

デリバティブによる危機の顕著な例がリーマンショックです。当時はアメリカの住宅担保証券(MBS)などを原料にした様々な「債務担保証券(CDO)」が売られていました。債権の組み合わせでリスクが軽減されると考えられていました。

さらに「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」という一種の保険を取引に掛ける事でさらにリスクが軽減されると信じられていました。

CDSは他人の金融取引に勝手に保険を掛ける様な商品で、取引する本人が購入すればまさに保険として機能します。契約者は一定の金利を払いますが、取引が無事終了すれば払い戻しを受けられます。一方、それを他者に転売する事も可能で、誰がやっているのかも分からない取引に掛けられたCDSを買っても取引が無事終了すれば金利が得られました。一方で、その取引が不調に終われば取引をしている当事者には保険が支払わせれますが、CDSを保有している人のCDSは紙切れになります。こんなヘンテコなCDSも様々にブレンドされて金融商品として流通していました。

元々はリスクを低減する為に開発された様々なデリバティブですが、もうごった煮のグツグツ状態にななった金融商品に格付け会社がAAAやAA格を付けていました。「何だか分からないが投資をすれば金利が儲かる」商品に、ヘッジファンドなどが巨大なレバレッジを掛けて投資していたのです。

ところがアメリカでサブプライム層の住宅ローンが破綻し始め、その債権が紛れ込んだ住宅担保証券(MBS)の信用が傷付きます。自分の保有するデリバティブ商品にサブプライムローンが組み込まれているかもしれないと人々は考えました。要は自分のデリバティブ商品は「傷物」かも知れないと恐怖したのです。

「傷物の金融商品を手元に持っていると損をする」と人々は考え、我先にそれを売ろうとしました。結果的に様々なデリバティブ商品の価格が一気の暴落し、流動性も枯渇してしまいました。一時的に「紙切れ」になってしまったのです。

■ 危機を加速したドルの流動性の枯渇 ■

当時、デリバティブ商品の6割をヨーロッパが保有していまいた。顧客に販売した金融商品の解約に備える為に世界中の銀行がドルを手元に置こうとしました。これによって短期で銀行間でドルを融通し合うコール市場の金利が跳ね上がります。

銀行は様々な巨大な取引を常に行っていますが、その取引に必要な現金をいつも持っている訳では有りません。そこで足りない分を金利を払って短期的に市場から調達するのがコール市場です。例えば最短では一晩だけ借りる(オーバーナイト)などという取引もされています。

各銀行が手元のドルを手放さないので、コール市場のドルが枯渇して金利が跳ね上がったのです。そうなると明日の決済が出来ない銀行も出て来ます。これによって「銀行が潰れるかも知れない」という恐怖が市場で加速しました。

これに対してFRBを始めとする各国中央銀行は大量のドルを市場に投入してドルの流動性を保とうと試みます。

■ ドイチェバンクは第二のリーマンブラザーズになるのか ■

話題をドイチェバンクに戻しましょう。

デリバティブ残高が巨大な事で「危ない」と囁かれるドイチェバンクですが、現在の金融取引では何等かのリスクヘッジをするのが当り前ですから、「デリバティブ残高が多い=金融取引が巨大」程度の意味しか持ちません。要は、即危険という事にはならないでしょう。

但し、そのデリバティブの中身が問題で、ギリシャ国債のCDSを大量に保有していたり、或いは中国投資関連のデリバティブを大量に保有している場合、ギリシャや中国で経済破綻やデフォルトが発生すると一気に状況が悪くなります。

ドイチェバンクが危ないと囁かれる理由の一つに、これらの投資にドイチェバンクが積極的だったとの「ウワサ」があるからです。

■ イギリスの捨身の攻撃でダメージを被ったのはドイツ? ■

私はイギリスの国民投票とEU離脱という結果はシティーを始めとするイギリスの支配層の「仕込み」だと信じて疑いませんが、これによってダメージを被ったのはヨーロッパの株式市場、特に金融株です。

今後、ヨーロッパの金融機関はリスクを減らそうと必死になるでしょう。今でも相当進んではいますが、投資部門の人員を大幅に削減し、売却出来る資産は減らして自己資本を厚くするでしょう。

ドイチェバンクの格付けは現在はジャンク級から3つ上ですが、ムーディーズは格下げを検討しています。今後、ドイチェバンクは資金調達が段々と難しくなって来て、どこかの時点で格付けを「ジャンク級」に落とされるかも知れませ。

そうなるとドイチェバンクと取引の多いフランスのソシエテジェネラルやBNPパリパなどの銀行に危機は波及する恐れが有り、ヨーロッパ発の金融危機が現実味を帯びて来ます。

■ リーマンショックで学んだ世界 ■

「とても危険」に見えるドイチェバンクですが、○○ショックは「見えている危機」からは起こり難いものです。リーマンショック時に危機を拡大したのは巨大なレバレッジでしたが、現在のレバレッジの水準は当時に比べればカワイイものです。

又、各国中央銀行もドルの供給量を拡大して、リーマンショック時の様にドルの流動性が枯渇する事態を防いでいます。現在は多少混乱している市場ですが、次第に安定を取り戻すでしょう。

■ ボディーブローの様に効いている ■

しかし、昨年から始まった世界経済の収縮はボイディーブローの様に金融市場にストレスを与えています。各国中央銀行が異次元の緩和政策を継続する間は持続可能ですが、それが収縮に向かう時点で世界経済は崩壊を迎えます。

既にジョージ・ソロスやジム・ロジャースらは株式などのリスク資産を減らし、現物にシフトしています。一方で、様々な危機を利用しては市場に揺さぶりを掛けて利益を拡大しています。既に世界の市場は、一部の者にとっては下落で利益を生む市場に変質している事には注意が必要です。薄商いの中で値を吊り上げてから大きく落とす事で彼らは利益を拡大しています。


金融市場の潮目は完全に変わっていますが、緩和資金で水膨れした市場は、必ずや思わぬ所から破綻を来すはずです。

筋書的には「ドイチェバンク危機」ではヒネリが少ない気がします。もっとサプライズが無ければ市場は崩壊しません。次なるブラックスワンははたして何なのか・・・水面がざわつき始めてはいますが、姿は依然として見えません。

ヤンキーが日本を救う・・・人口を増やす裏技

2016-06-28 07:41:00 | 時事/金融危機
 

本日の記事は少し不謹慎なので、お叱りは覚悟の上で・・・


■ 人口と経済成長 ■

リフレ政策の実験が日本で不調に終わり、クルーグマンもとうとう金融政策だけでインフレを達成出来ない事を認めています。

なんで経済学者は人口成長を気にかけるの?

1)日本の長期停滞は労働人口の現象が原因に見える
2)経済は「自転車」に似ていて、成長には「勢い」が必要だ
3)新規投資の需要を左右するのは経済の成長率であって,目下の産出水準じゃない
4)人口増加の鈍化によって成長が鈍れば,投資需要も減少する。
5)上記の理由から人口が減少する社会は永遠に近い不況に追い込まれる

6)この様な社会で投資を活性化させる為に十分に金利を下げるとマイナス金利が発生する
7)マイナス金利を避ける為には高いインフレ率が必要になる
8)高いインフレは「庶民の生活を苦しめる」というイデオロギーの問題に突き当たる

リフレ論者の敗北宣言の様な発言ですが、日本を例に取るならば、少子高齢化で成長率が低下した社会では金融政策でインフレを達成する事は相当に難しい。ただ、極端な金融緩和や財政拡大によって破壊的インフレを作る事は容易で、最後はこの手段に頼る事になるのでしょう。

■ 人口ボーナスと人口オーナス ■

何故、経済の継続的な発展に人口増加が効果的なのか考えてみます。

「人口ボーナス」と「人口オーナス」という言葉が在ります。

「人口ボーナス」とは若い人口が増えて税金や年金の負担世代が沢山居る状態の事。高度成長期の日本はこれに当ります。

逆に今後の日本の様に人口が減少してGDPの大きな部分を高齢者福祉が食いつぶす様な状況を「人口オーナス」と呼び、国家は衰退します。

結局、人口の多い少ないでは無く、人口動態がバランス良くて、ある程度の経済規模を支えられる人口を抱えた国家が長期的に反映するのだと思います。

■ 人口は少なすぎてもいけない ■

豊かさは「一人当たりのGDP]で判断すべきという意見も有るでしょう。これは尤もな事で、生産性が高く一人当たりのGDPの高い国では国民一人当たりの所得も高く、税収も豊富で財政も余裕があります。

ただ、アイスランドの様に国民が少なく教育レベルの高い国は一人当たりのGDPも高いのですが、社会に厚みが無いので、何かを切っ掛けに歯車が狂うと一気に衰退の道を歩む可能性が有ります。

これはシンガポールなども同様で、金融危機などで金融産業が衰退すると国力が一気に衰退するかと。こうなると食糧をほとんど輸入に頼っているだけに苦しい。

■ 高齢者が政治を支配する事で少子化が加速する ■

日本の人口動態がここまで悪化した原因は政府の無策ですが、選挙に行かない若者にも責任があります。高齢化が進んだ国家は選挙に足しげく通う高齢者が政治の支配者となりますからどうしても高齢者福祉が子育て支援よりも優先されます。

■ 豊になった国家は子供が減少する ■

以前、ロックフェラー財団などはプエルトリコやブラジルで人口コントロールの実験をしていました(子供を生んだ若い女性の避妊手術を推奨する)。しかし、人口抑制には「豊に
なる事」が一番効果的で、GDPが伸びるに従ってどこの国でも子供の数が減少しています。

これは育児や教育にお金が掛る為に子供の数が減る事が大きな原因となっています。日本のみならず、教育熱心な韓国や台湾などでも少子化が急激に進行しています。

ある程度の豊な生活を送る為には、お金の掛る子供の数が制約されるのです。

■ 増殖するヤンキー ■

面白い事に、言葉は悪いですがヤンキーの家庭は子沢山の傾向が或る様に思えます。これは結婚出産年齢が若い事も有りますが、教育にあまりお金を掛けないので3人位の子供を育てる事が可能なのかも知れません。

逆に高学歴の女性の場合、結婚、出産年齢が高く子供が一人、或いは子供が居ない世帯が多くなります。当然、子供に多額の教育資金と投じるケースが増えます。

ここからは私の妄想ですが、高学歴の人達が2世代の内に所謂ヤンキー系の方は3世代に達し、さらに増殖率も高い・・・。人口を増やすだけを目的とするならば「ヤンキー、チョー・カッケーーーーェ!!」という風潮を作り出せば少子高齢化問題の解決になるかも知れません。


■ 「誰もが大学に行ける社会」が国を滅ぼす ■

現実的には「誰もが大学に行ける」という制度の見直しが一番効果的かと思います。ヨーロッパなどでは大学資格試験が在りますが、日本も同様な大学資格試験を作り2割~3割の子供しか大学に行けない様にすれば、自ずと無駄な教育費が抑えられ子供の数も増えるかと。

現在の日本の多くの大学は、大学の体を成していない。AO入試や推薦入試を使えば名前さえかければ(お金さえ払えれば)誰でも大学に行けます。結果的に分数の割り算が出来ない大卒を量産しています。

東大生と言えども入学してしまえばバイトと遊びに明け暮れます。こんな所から国家の力は衰退して行くのでしょう。

■ 平均的な教育水準の向上が国家の成長に繋がらない ■

戦後、日本の教育は「平均的な学力の向上」を目指し、結果「詰め込み教育」が問題になりました。国家の主産業が工業の場合は、労働者の平均的な質の向上が生産性の向上に繋がります。QEサークル活動などを通じて、現場レベルでの改革が実現したのも労働者の平均的学力が高い事に由来します。

一方で脱工業化した社会では「突出したアイデア」や「先端の技術」が利益を生み出します。マイクロソフトやグーグルの様な企業は「平均」の中からま生まれません。ビル・ゲイツが大学をスピンアウトした話は有名ですが、ちょっとクレージーな天才が社会をリードする時代に私達は生きています。

■ 高学歴は結婚出来ない ■

少子化の主要因の一つに「結婚適齢期の男性の所得の低下」が挙げられます。「名ばかり大学」を卒業しても就職できるのはサービス業の場合が多い。飲食チェーンなどがそれに当りますが、店長を任されると夜も日も無く働かされて給料は低い。

22才で就職して30才になっても所得はあまり上がりません。これはサービス業の生産性が低い為で、それに嫌気して仕事を辞めてしまう人も大勢居ます。

一方、女性の高学歴化によって結婚相手のハードルは高くなっています。年収は少なくとも400万円以上でないと・・・というのが一般的な基準では無いでしょうか。

ところが、高校をヤンチャに過ごして、高卒で働きに出た様な人達は意外に収入が多い。真面目に仕事をすれば25才位にはいっぱしのお金を稼いでいます。この様な人達に魅力を感じる女性はあまり裕福な家庭で育った方で無い事が多い。結果的にそこそこの所得でも結婚相手として魅力的に見えます。

■ アメリカの人口を支える貧困層 ■

アメリカは日本と異なり人口が増えています。ベビーブーマーのリタイアで一時的に高齢化が進みますが、若い人口も多いので、人口動態の悪化は緩やかです。

この若い人口の多くは移民など貧困層です。アメリカの白人女性の妊娠率はマイノリティーのそれに比べて低い。アメリカでは白人などの富裕層の数は減り、一方でマイノリティーの数が増え続けています。

これは一国の中に支配的な先進国と、発展途上国が或る状況に近い。富裕層はマイノリティーを搾取する事で富を独占しているとも言えます。

■ ヤンキーが日本を救う ■

日本でも小泉改革以来格差が拡大しています。しかし、アメリカと違う所はヤンキーに誇りと元気が或る事。

先日、浦安で祭りが在りましたが・・・物凄い熱気でした。ヤンキー系の方達と神輿で肩を並べながら「ああ、これならば日本の未来は大丈夫だ」・・・そう思わせる何かがあった!!

つまらない大学を目指すより、誇り高きヤンキーを目指せ!!

そう学校で教えれば日本の未来も安泰かも知れません。当然教科書は「少年チャンピオン」




・・・・本日は悪乗りし過ぎですね。


【追記】

真面目な話として、日本は格差が拡大したとは言え、アメリカの様に「絶望的な格差」に達しては居ない事が強みかと思います。ヤンキー系の家庭の子供でも真面目に学校に通いますし、部活で汗を流して高校にも一応入学します(中退するケースも多いですが)社会もアメリカやヨーロッパ程は差別的では無く、ヤンキー文化を「カッコイイ」とか「粋」と感じる文化も持っています。

日本の未来には二通りの道が或るかと思いますが、一方は10%、1%の人が富を独占する欧米型の社会、もう一方は格差をそれ程拡大せずに皆がそこそこに幸せな世界。農耕民族でで「出る杭は打たれる」日本では、GDPが減少しても、皆がそこそこに幸せな社会が適していいるのかも知れません。

絶望的な格差が生み出すのは「貧困の再生産」です。日本がそういう社会にならないようにするにはどうしたら良いのか・・・。政治の「所得再配分」の役割は極めて重要です。

世界は少しずつ気付き始めていますが、貧困層に溜まったストレスはトランプやイギリスのEU離脱の様なガス抜きで臨界に達する事が出来ません。




移民によって長期衰退を防いだイギリス・・・移民排斥の表と裏

2016-06-27 04:34:00 | 時事/金融危機
 

■ EUと移民 ■

イギリスのEU離脱の原動力となった「移民排斥」意識の高まり。日本に居てはその実体は今一つ理解出来ませんが、イギリスでは社会的に切実な問題となっていました。

EUは人と資本と商品の移動を域内で自由にしました。EU加盟国であればビザ無しで入国出来るシステムは従来の「国境で仕切られた国家」の定義を大きく覆すものでした。

その結果、ユーゴスラビアやハンガリーといった後進ヨーロッパから大量の移民がドイツやイギリスに流入します。イギリスでは学校の生徒のほとんどが移民系になった地域も出てきます。

■ 移民による経済効果 ■

移民の悪い面がクローズアップされがちですが、移民による経済効果は確実に存在します。

1)企業は安い労働力を確保できる
2)若い労働力は同時に消費者として旺盛な購買力を生む
3)イギリスでは人口増加を受けて住宅価格などが上昇した(ロシアからの投資も有るが)

イギリスはリーマンショック後も2%前後のインフレ率を維持しており、FRBと同様に出口戦略に舵を切っています。





老いた大国のイメージの強いイギリスですが、移民の流入で人口は徐々に増加し、一方で高齢化の影響は日本などに比べたら非常に緩やかです。中長期的にはイギリスに移民した人達が経済成長の一翼を担って行きます。


■ 移民に職業を奪われる・・・ ■


(世界経済のネタ帳 より)

「移民に仕事を奪われる」というのがイギリスを始め労働者の恐怖する所ですが、失業率推移を見ると「イギリス病」などと言われた時代に比べ改善しています。リーマンショック後も2012年頃から失業率は顕著に低下しており、現在の5%は自然失業率に近いレベルでしょう。

イギリスでは既に製造業は衰退していますから、移民の多くがサービス業に従事していると思われますが、賃金の低い仕事をイギリス人労働者と奪い合う結果となります。

ただ、大量の移民、それも労働者の流入は国の中に新たな発展途上国を取り込む様なものですから、市場というパイも同時に拡大して行きます。極端な例で言えば、移民が一地域に集中した住んだ場合、そこに新たな街が生まれ需要が創出されます。

■ ある程度の移民を確保したからEU離脱 ■

国家というのは若者が少なくなれば衰退し、国家内で競争が減れば衰退します。かつてのイギリスはこの道を歩んでいました。その後、金融立国への転身で表面的には復活したかに見えますが、地方経済は日本同様に衰退しています。

一般的に言われる様に移民は社会保障コストを増大させます。特に移民したてで英語もろくに話せない様な人達はまともな職に就けません。それでもスーパーのレジ打ちや、飲食店の店員など比較的簡単な職種から彼らは職を得て行きます。この様な人達の持つ「ハングリー精神」は国家にとってプラスに働きます。

ただ、限度を超えた移民の流入は社会を不安定化させますから、イギリスとしては「安い労働力も確保したし、そろそろEUに残留するメリットも少ない」と判断したのかも知れません。

■ シリア難民はドイツの企業にとっては安い労働力 ■

ドイツにとっても同様です。ドイツの経済発展の原動力はEUやユーロの拡大によって後進ヨーロッパの安い労働力を確保出来、同時に市場が拡大した事に在ります。それでも後進ヨーロッパの人件費が上昇すれば、もっと安い労働力を欲する様になります。

シリアや中東からの難民は明らかにブローカーが仲介してヨーロッパに送り込まれていますが、彼らは一番安い労働力として、行った先々の国で労働力を提供する事になるのでしょう。

■ 不法移民を受け入れたオバマ政権 ■

移民を使役する国家としてはアメリカはさらに上手です。メキシコ国境から大量に移入する移民はアメリカ社会に安い労働力を供給しますが、「不法」故に社会保障の対象にはなりません。そして邪魔になれば強制送還されます。

オバマ大統領は大統領令によって不法移民が一定の条件を満たせば就労許可を与えています。

1)アメリカに5年以上滞在していること。
2)アメリカ国籍あるいはグリーンカード保持者の子供がいること。
3) 犯罪歴調査に通過すること。
4)金を支払うことに同意すること。

アメリカ社会の底辺はこれら不法移民の安い労働力で支えられています。一見人道的に見えるオバマの決定は、実はかなりシタタカな計算が働いているのです。

■ 隠れ移民の巣窟、日本 ■

アメリカ以上に姑息な移民政策を実施している国が在ります。それは日本です。最近、コンビニの店員に南アジア系の人が増えています。これはコンビニが外国人実習生の職種に加えられた影響です。

一時期多く見られた中国人実習生は、中国の賃金の上昇によって日本を敬遠する様になっています。安い賃金でも喜んで?働く人材として、ミャンマーやバングラディシュやインドから人材を日本に送り込む日本人の業者が沢山あります。

彼らは明らかに移民労働者ですが、「研修生」の名で呼ばれ、低賃金の労働をさせられています。研修生ですから研修期間が終れば速やかに帰国しなければなりません。

最近、我が家の近くのファ○マでも、早朝や深夜の店員は南アジア系の人達です。一方、駅前の西友から中国人研修生の姿は大幅に減っています。

バブルの時代から日本は入国規制を意識的に緩めるなどの方法で、不法な外国人労働者を密かに使役して来ましたが、彼らは定住出来ないので、景気が悪くなると知らぬ間に消えていました・・・・。

こんな日本やアメリカの「隠れ移民政策」に比べ、ヨーロッパは「モラル」が存在します。移民は正規に国家として受け入れているのです。


■ 移民の負のコストを国家に押し付ける資本家 ■

移民問題は中期的には国家の衰退を食い止めますが、彼らが高齢化して社会負担となる頃に移民政策の悪い面が噴出します。ヨーロッパはこの問題から逃れられません。

しかし、移民を安く使役した企業や資本家はこのコストを国家や国民に押し付けます。本来は税金という形でコストを負担すべきですが、グローバル化の時代に企業への課税をいたずらに高くする事は出来ません。

さらにはタックスヘブンなどを利用して利益の一部は国家や国民に還元されません。

■ 経済成長の源は人口だけれど・・・ ■


クルーグマンも「最近は人口の増加こそが経済発展の言動力」的な発言をする様になり、リフレ政策を主張していた頃よりはマシな事を言う様になってきました。

一方で、不健全な人口拡大は将来的な社会不安の要因となり国家を衰退させます。アメリカなどは表向きは健全な移民政策を成功させていますが、それでも裏では不法移民を便利に使役しています。

日本の少子化に歯止めが掛らない事は明らかですから、政府はどこかの時点で移民を受け入れざるを得ないのですが、移民問題の「最適解」は世界中探してもなかなか見つかりません。日本の外国人研修生制度は一見上手い方法に見えますが、彼らが社会保障費を負担したり、充分な所得を裏付けにして消費を拡大しない限り、単に「企業の為の安い労働力」のみの存在で、経済発展には繋がりません。

TPPを切っ掛けにどの様な労働市場の開放が要求されるか分かりませんが、日本の移民問題も外圧をテコに動き始めるのでしょう。


<追記>

上出のイギリスの人口動態予測はコンスタントに移民が流入する事を前提としていると思われるので、EUを離脱して移民をシャットダウンすると高齢者の比率が増大しはじめるでしょう。

そこでイギリスはEUと移民受け入れ制限の交渉を始めるのでは無いでしょか。EUにイギリスが残留する条件として、移民の年間受け入れ制限を提示するのでは無いか。

国民投票の結果は賛成反対が拮抗していますし、離脱賛成派は移民問題でEUが妥協すれば離脱反対に回る国民も多いでしょう。

今回のイギリスの国民投票はトランプの最初の切り札を出しただけなのかも知れません。未だ手元には何枚もチートなカードが温蔵されている?

イギリス国民はメディアに良いように踊らされている・・・・そんな気がする月曜日の朝。


危険なソフトバンク・・・アローラ副社長退任の裏を妄想する

2016-06-23 07:52:00 | 時事/金融危機
 

これは妄想記事

■ 突然のアローラ副社長の退任 ■

googleから年俸80億円(年俸7300万ドル)でヘッドハントされたソフトバンクのアローら副社長が突然退任しています。「社長交代の時期の想定のズレ」が原因と発表していますが・・・何だかな???


■ 経営方針の違い? ■

ネットでは、現在のソフトバンクの「行き当たりばったり」な投資をアローラ氏が修正しようとした為に孫社長との間に食い違いが生じた・・・などの憶測を呼んでいます。

アリババやガンホーなど孫社長の投資は「当り」を引いていますが、それがいつまでも続くとは限りません。アローラ氏はソフトバンクの資産を整理して巨大な有利子負債を圧縮しようとしていた様です。これが孫社長の機嫌を損ねたとも・・・。

ソフトバンクは孫社長のワンマン経営企業ですから、後継者候補と言えどもアローラ氏の裁量は制限されていたはずです。多分そこら辺の窮屈さが退任の理由なのかも知れません。

■ ヤバサに気付いて逃げたのでは? ■


東洋経済より

ソフトバンクはアメリカで巨額買収以来、有利子負債が急拡大しています。日本の金利がほぼゼロになっているので社債の発行条件が良い(金利が低い)とは言え、売り上げ8.9兆円に対する比率は非常に高い。

さらにスプリントネクステルの経営は改善せずに、日本の携帯電話事業で稼いだお金をアメリカでドブに捨てる様な状況になっています。

今までは閉鎖的な日本の携帯電話事業で高収益を上げる事が出来ましたが、安倍首相の一言で状況は変わっています。「ゼロ円携帯」の規制の影響も有り、ソフトバンクの新規契約者数は伸び悩んでいます。ソフトバンクの収益環境は悪化していると言えます。

アリババの上場で一気に資産が拡大しましたが、これも株価が下落する様な事になれば目減りします。

そんなソフトバンクの内状を知ってアローラ氏は「逃げるなら今の内」と考えたのかも知れません。


何れにしてもソフトバンクは陰謀論者の好奇心を刺激して止まない。

イギリスのEU離脱・・・目的は何か?

2016-06-23 05:35:00 | 時事/金融危機
 

■ 大陸ヨーロッパとは一体では無いイギリス ■

イギリスがEUを離脱するかどうかの国民投票が本日行われます。日本とは時差が在るので、開票結果は日本では明日から徐々に分かるのですが、その影響をモロに受ける日本の市場参加者は戦々恐々としているでしょう。

ところでイギリスは何故今頃EU離脱などと言い出したのでしょうか?

地政学的にはイギリスとアメリカを「シーパワー」、大陸ヨーロッパを「ランドパワー」と分けて考える事が一般的です。要はイギリスはヨーロッパでありながらヨーロッパには属さない。

大陸ヨーロッパと戦争を続けて来た歴史や、海賊が王となった歴史にイギリスと大陸ヨーロッパの対立の根源を見出そうとする方達の多いのですが、私はむしろイギリスが制海権を奪って大英帝国を設立し、世界の覇権国家となった以降の世界システムにイギリスと大陸ヨーロッパの溝の原因が或ると考えています。

制海権をスペインから奪った後のイギリスは植民地から莫大な利益を吸い上げ巨大な資本を手中にします。そして第二次世界大戦以降、国力を失った様に見せかけて傀儡国家アメリカを通じて世界を支配し続けています。アメリカ企業の多くは株式によって銀行や投資家の影響を受けますが、アメリカの銀行でも大元を辿ればイギリスのシティーに行きつきます。巨大なファンドなどもイギリス周辺のタックスフリーを拠点にした物も多く、これらはイギリスの貴族や大資産家の資産を運用する事で世界を支配しています。

この様に影ボス的なイギリスに対して、大陸ヨーロッパの国々は一見対立している様に見えますが、資本的にははロスチャイルドなどのユダヤ金融によって裏で利害が繋がっています。

■ EU加盟のメリットとデメリット ■

イギリスがEUに加盟した目的は二つあります。

1) EU経済圏によって生まれる利益
2) EU内の情報を得る

経済的メリットは関税の撤廃や労働力の移動が挙げられます。ただ、国内産業が衰退したイギリスで関税を廃止すると当然国内産業はダメージを受けます。工業に限らず、安い輸入品に漁業なども苦戦しています。イギリスのEU加盟はメリット・デメリット半々なのでしょう。

今回の国民投票は中東からの移民受け入れが原因の様にも報じられていますが、キャメロン首相はこの国民投票を実施する事を公約として首相に就任していますから、EUからの離脱を支持する声は以前よりイギリス国内ではある程度勢力を持っていたと言えます。

■ EU離脱を選択するのは実は国民では無い?! ■

「イギリスがEUを脱退する訳が無い」と言うのが良識派の見方でしょう。尤も、結果は国民投票に委ねられているのですから安心は出来ません。国民は移り気で、その時の空気に支配されます。

尤も私は「国民投票の信憑性」には疑問を持っています。これを言い出すとあらゆる選挙を疑う事にもなるのですが、選挙の集計システムはどの国もかなり怪しい要素が含まれています。もし仮に国民投票の結果「EU離脱」が選択された場合、それは国民の選択では無く、イギリスの支配者の選択なのだと私は妄想しています。

■ ユーロ危機や財政統合から距離を取る? ■

もし仮に国民投票の結果が「EU離脱」を選択するとすれば、その目的が有るはずです。

私は次の金融危機でユーロ危機が再来し、今度はギリシャのみならずスペインやポルトガルやイタリア、場合によってはフランスも危機の当事者となる事で「ユーロ崩壊の危機」が訪れるのでは無いかと妄想しています。

その時注目されるのが「ユーロ加盟国の財政統合」です。ユーロとは「拡大マルク」以外の何物でも有りません。南欧諸国はマルクの信用力を得る事が出来、ドイツは経済圏を事実上拡大出来、ユーロを通して利益を吸い上げて来ました。

しかし、ユーロには欠点があります。をれはユーロ加盟国の財政が独立しているので、ドイツからの資本の再分配が働かない点です。その結果、ドイツと南欧諸国の格差が拡大します。

ギリシャなどは先般の危機でユーロを離脱して独自通貨のドラクマに戻れば、1~2年の混乱の後には経済が回復出来たのですが・・・ユーロ安の道具にされていたのでユーロ離脱をギリシャ政府は選択できませんでした。ただ、何だかんだ行ってEU加盟国はギリシャを支援してくれますから、ギリシャとしては悪い取引では無かったのでしょう。

この様に財政によるユーロ圏内の再分配という機能の無い「欠陥通貨」のユーロは、金融危機が発生する度に危機に陥り、その都度、EU圏内の財政統合の動きが強まって行くでしょう。

そしてEUと言う意味において、EU加盟国も相応の負担を強いられる・・・・。イギリスがEUを離脱するとすれば、これが原因となるはずです。

要は、ドイツ経済圏の為に金は出したく無い

これがイギリスの支配者達の本音では無いのか・・・・。


もし仮にイギリスがEUを離脱するならば・・・世界的な金融危機が発生する予兆なのかもしれません。(EU離脱を決定しても、それが実行されるまでには2年程度掛る様ですが)

・・・最後はNEVADAブログの様になってしまった・・・・。