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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

確実に存在しながら、存在しないもの・・・『PSYCHO-PASS』に見る警戒心の麻痺

2013-01-31 10:03:00 | アニメ
 



■ 「近未来の管理社会」というSFのステロタイプ ■

前期と今期の2期連続アニメ『PSYCHO-PASS・サイコパス』。
Production I.Gが制作するスタイリッシュな近未来SFアニメです。

無類のアニメ好きとして知られる『踊る大捜線』の監督、本広克行が
現代版『パトイレイバー』を作りたくて、Production I.Gとタッグを組み、
『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄を脚本に迎えた話題作です。

『パトレイバー』の劇場版と言えば、『攻殻機動隊』と共に
押井 守の名を、一躍世界レベルに押し上げた名作中の名作です。

『踊る大捜線』の劇場版『レインボーブリッジを封鎖せよ』は、
その『機動警察パトレイバー the Movie』への熱い思いが込められた作品です。
(『踊る大捜線』の劇場版は、スピンオフも含めて良作だと思います)

本広克行が描く「現代版パトレーバー」とは如何なる作品か・・・
興味深々で見始めましたが、実はツマラナイ作品でした。


「エーーー、人力さん、『PSYCHO-PASS』がツマラナイのなら、
 世の中に面白い作品って無いんじゃないの!!」
という鍛冶屋さんの突っ込みが聞こえてきそうですが・・・。

実は、『PSYCHO-PASS』は非常に良く出来た作品です。
ストーリー、作画、キャラクター、SF的ギミック、
どれ一つとっても、水準を遙かに超えています。

では、何故私がこの作品を評価し兼ねていたのか・・・・
それは、あまりに「良く出来過ぎている」から。

高度に管理された近未来社会の歪と言えば、SFの題材の定番です。
これまでも、海外国内問わず、映画やアニメに何回と無く取り上げられたテーマで、
SF作品のステロタイプとも言えます。

そんな題材を豪華な制作スタッフでアニメ化するのですから、
面白く無くない訳が無い。

しかし、一方で、あまりにも「表現され過ぎた」世界感なので、
どの場面もどうしても「既視感」みたいなものが付きまといます。

さらに、サイコ(猟奇的)な犯罪がクローズアップされる事で、
虚淵玄のエグイ面がどうしても前面に出てしまいます。

そう、カッコイイけど、新鮮で無い。
第12話までは・・・・。


■ シビュラシステムに管理された平和と繁栄 ■

ネタバレ御免!!

シビュラシステムが人間の心理状態や性格傾向を管理しる近未来。

サイマティック・スキャンという装置でシビュラシステムは人々を管理しています。
サイマティック・スキャンは人々の感情の起伏を絶えずモニターしています。
精神的不安やストレスが高まると、サイコパスと呼ばれる人々の感情や心理の指数が上昇します。

すると、シビュラシステムは適切なストレスケアーを指示する事で、
人々は健全な精神状態を維持する事が出来ます。
健全な精神は、社会に安定と平和をもたらします。

シビュラシステムはサイコパスの数値が高い人間を「潜在犯」と認定し、
実際に犯罪を行う前に、この様な人々を社会から隔離して犯罪を未然に防ぎます。
さらには、性格や適性を判断して、個人の職業を決定する役割まで担います。

この世界では、全てがシビュラシステムによって決定され、
人々は、安全で平穏な日常を送っています。

人々の平安を守るのは、公安の仕事です。
公安の捜査官は、「管理官」と「執行官」に分かれています。

「管理官」は一瞬の官僚で、「執行官」を管理しています。
そして、「執行官」は実は、サイコパスの濁った「潜在犯」です。
「執行官」は、犯罪予備軍として日常の自由な外出も禁止されています。
しかし、「犯罪者の心理が予測出来る」という理由で、犯罪捜査にたずさわています。

新任管理官の常守 朱(つねもり あかね)は、
執行官の狡噛 慎也(こうがみ しんや)と、征陸 智己(まさおか ともみ)とチームを組みます。

執行官を「人間」として扱う朱に、先輩管理官である宜野座 伸元(ぎのざ のぶちか)は、
彼らを人として扱うなと言います。
彼らは、管理官の猟犬だと・・・。

しかし、宜野座自身は、それを自分に言い聞かせている様にも見えます。
何故なら、狡噛はかつての宜野座の同僚の監視官でした。
ある犯罪捜査の過程で、部下の執行官を無残にも殺された事から、
狡噛は犯人を追いつめる為に、自分を追い詰めてしまいます。
その結果としてサイコパスが濁り、
管理官という立場だけでなく、「潜在犯」になる事で普通の人間性をも喪失します。

一方、年配執行官の征陸は、実は宜野座の父親です。
征陸は、古い考え方の刑事です。
シュビラシステムがサイコパスだけを判断基準に犯罪者を認定する事に納得が行きません。
そうしたワダカマリが日々蓄積していった結果、
いつしか、征陸のサイコパスは曇り、「潜在犯」として執行官へと落ちてしまったのです。

宜野座は彼らを「猟犬」と言いながらも、
彼らの推理や捜査に信頼を置いています。
素っ気ない素振りを装いながらも、彼らの意見に耳を傾け、
彼らの身を案じまています。

新米管理官の朱は、そんな先輩達に助けられながら、
犯罪捜査という世界に身を投じます。

■ 1話目にして、既に下手な映画を軽々と凌駕する出来 ■

冒頭で「ツマラナイ」と書きましたが、
『PSYCHO-PASS』は一話目から下手な映画など軽々と凌駕する出来栄えです。

街頭スキャンでサイコパスの濁りが発見された容疑者が、
人質を連れて、雑居ビルに逃げ込みます。

新人管理官として初めて現場に出た朱の前に
執行官達が「護送」されてきます。

「彼らを同じ人間と思うな」とい言う宜野座の助言とは裏腹に、
執行官達は、ごくごく一般的な人達の様に見えます。
緊張する朱を気遣って、「俺たちに任せとけばいいんだよ」と言う細やかさも持っています。
しかし、捜査官達が手にするドミネーター(犯罪者だけを撃つ銃)は、
執行官達が「潜在犯」である事を朱に告げます。

一方、犯人に連れ去られた若い女性はパニック状態に陥り、
彼女のサイコパスも異常値を計測します。
「サイコハザード」という現象です。

犯人に至っては、サイコパスは極めて高い数値に上昇し、
ドミネーター(銃)は犯人を「殺害対象」と判断します。
既に、犯人は社会から必要とされない、いえ、抹消すべき対象と判断されたのです。

目の前で射殺された犯人を見て、人質の精神も限界に達します。
本来、麻酔銃で人質を眠らせて安全を確保する所ですが、
朱が躊躇する間に、人質のサイコパスは、「殺害対象」にまで上昇します。

何の感情も見せずに人質に銃を向ける狡噛に対して、朱の取った行動とは・・・。

「とんでもねえじゃじゃ馬が来たもんだ」と征陸はボヤキます。


・・・・イヤー、凄い作品ですね。
30分の一話が一時間にも感じられます。

そして、たった一話で、だいたいの社会背景をサラリと描き出しています。
素晴らしい脚本です。さすがは虚淵玄といった所でしょうか。

でも、この作品、出来過ぎです。
何だか、あまりに完成度が高過ぎて、かえってドキドキしない。
作者の意図が先読み出来るというか・・・。

2話目以降は、様々な犯罪と執行官の過去が描かれて行きます。
どの話も安定して面白いのですが、
ある意味、この手のSF作品の予定調和の中から出る気配はありません。

■ 繋がった点と線 ■

物語は中盤から俄然面白くなってきます。
今までバラバラに発生していたと思われた犯罪は、
一人の犯罪者が計画した物だという事が分かって来るのです。

槙島 聖護(まきしま しょうご)
こそが、事件の点と線を繋ぐカギだったのです。

槙島は、犯罪性向のある者達をたきつけ、
その犯罪をバックアップします。

そうして彼が目を付けたのが、執行官の狡噛です。

かつて、同僚の命を無残にも奪った事件の背後に槙島の存在を嗅ぎつけた狡噛に、
槙島は、自分と同じ者の匂いを感じ取ったのかも知れません。

■ シビュラシステムが人々から奪ったもの ■

槙島は朱達を嘲笑うがごとく、残虐な犯罪を繰り広げます。
そして、朱の友人を誘拐し、彼女を朱の目の前で殺害します。
朱が槙島に照準したドミネーターは彼を、「潜在犯」と判定する事はありませんでした。
凶悪な犯罪を実行しつつも、槙島のサイコパスは曇る事が無いのです。

槙島は朱に猟銃を渡し、それで自分を撃ってみろと迫ります。
しかし、朱には彼を撃つ事が出来ません。
シビュラシステムが犯罪者と認めない者を、彼女は撃てなかったのです。
例え友人の命がの前で断たれる事になっても・・・。

この回から、この作品の主題が明らかになり始めます。
人々に平和と安心を与えると思われていた神にも等しいシュビラシステムも絶対では無いのです。

ところが、人々はシュビラに全ての判断を託しているので、
自分で判断し、行動する能力を失ってしまったのです。

■ 目の前で行われる殺人に、「何が起きているか分からない」と答える人々 ■

14話の「甘い毒」では、さらに主題が掘り下げられます。

シュビラシステムを欺くヘルメットを装着した犯罪者が、
群衆の前で女性を殺害します。
ハンマーで滅多打ちにするという、極めて異常な犯行です。

しかし、シビュラシステムは被害者女性のストレス値の高まりにしか反応しません。
そして、群衆も、ただただ、目の前で行われている凶行をポカンと眺めています。
中には、携帯で動画を撮影する者も居ますが、
助けようとする人は誰も居ません。
それどころか、通報すらしないのです。

誰もが口をそろえたように「目の前で何が起きているのか分からなかった」と言います。

高度なセキュリティーによって犯罪が事前に排除され、
社会の中から暴力が隠蔽された世界に住む人達は、
目の前で行われる殺人に対して、正常な恐怖感を持つ事が出来ないのです。

日常的でない事が行われている事は理解できても、
それが自分や誰かの身に危険をもたらすという当然の認識が欠如しているのです。

これは、生まれてから一度も熱い物を触った事の無い子供が、
平気でストーブを触って火傷する事に似ています。

本来、人間には本能的に危機を察知しますが、
極度な安全に身を置く人達は、生き物としての当然の本能を失っているのです。

作品は今後、「人間とは何か」という主題を掘り下げて行くのでしょう。
シュビラシステムに支配された存在を果たして人間と呼べるのか、
槙島は様々な恐怖を人々に突きつけて、人々に問うて行くのでしょう。

■ 安全に慣れ過ぎた現在の人々 ■

シュビラシステムに管理される人々の姿は、
そのまま、現代の私達の姿に重なります。

TVや新聞が疑われるようになったとは言え、
私達の想像力は、メディアによって大きく損なわれています。

経済危機が表面化しても、アナリストや経済学者がTVに登場して、
尤もらしく、いずれは経済は落ち着きを取り戻すと言えば、それを信じます。
今は危機の直後だから混乱しているが、
世の中のシステムが崩壊する事は無いと言われれば、何となく納得してしまいます。

FRBが金融緩和を続ければ、米経済は回復すると言われればそれを信じます。

一方で、実際のアメリカのGDPは、FRBのQE3にも関わらずマイナスに転じています。
その理由は冷静に考えればいたって単純で、
米経済は80年代以降実体経済では無く、
バブル経済の連続で成長していたに過ぎないのです。

ですから、新たなバブルを作らなければ、実体経済が回復する事は不可能なのです。
ところが、米国民がいくら楽天的とは言え、
職も安定しない状況では夢を見る事すら出来ません。

ヨーロッパにしても、中国にしても似たり寄ったりです。
ただ、ヨーロッパは財政規律が日本やアメリカよりも守られていますから、
財政統合によってユーロが安定すれば、回復は早いはずです。

この様に、報道とは裏腹に、世界はゲームセットに向けて着実に歩んでいます。
ただ、誰も「そこから先は崖から落ちる」と言わないので、
多くの人達が、崖の存在にすら気づきません。


『PSYCHO-PASS』というアニメが我々に警告しているのは、
精神異常者の猟奇的な犯罪の危機では無く、
考える事を放棄した人々の陥るであろう危機なのかも知れません。

バブルとは意図的に作られて、そして潰されるもの・・・金融緩和の行く末

2013-01-30 11:35:00 | 時事/金融危機
 


Wikipediaより 

■ アメリカのダウ平均株価の推移 ■

上のグラフはアメリカのダウ平均株価の長期的推移です。

1929年の世界恐慌の発端となったNY株式市場の暴落は有名ですが、
その当時と比べて、現在の株価がいかに拡大しているかが一目瞭然です。

特に1980年以降に急上昇しており、
これは、1972年にニクソンがドルの金兌換を停止した事と無関係ではありません。

金の鎖から開放されたドルは、大量に発行する事が可能になりました。
本来は、通貨を大量に発行すると通貨価値は下落するのですが、
ドルは基軸通貨として貿易決済の利用されていたので、
世界の経済の拡大に伴って、ドルの需要は増えて行きます。

大量に発行されたドルは、利益を求めて株式市場にも流れ込みます。
その結果、アメリカの株価は急激に上昇し始めます。

■ リーマンショックの影響は小さい? ■

日本はバブル崩壊で、株価が1/4程度に下落しました。
それに比べて、アメリカはリーマンショックの直後こそ株価が下落しましたが、
その後、金融緩和の影響もあって、株価はリーマンショック前の水準を突破しています。

バブルの崩壊で株価が暴落した日本と、
株価を維持しているアメリカの違いとはいったい何なのでしょうか?

一つには、平均株価の算出方法の違いが上げられます。

日経平均株価は、東証一部上場企業の内225銘柄の株価の平均
ダウ平均は、ダウジョンズが選定した30企業の株価の平均です。

ダウジョンズが選ぶ30企業は、アメリカの代表的なグローバル企業で、
各業界の世界的トップ企業が居並びます。

アメリカンエキスプレス、ボーイング、バンカメ、デユポン、ウォルトディズニー
GE、インテル、ヒュレットパッカード、マイクロソフト、IBM
コカコーラ、マクドナルド、ウォールマート、ベライゾン

ざっとピックアップしただけでも、錚々たる顔ぶれです。

これらの企業は、世界の業界トップに君臨すると言って過言では無く、
リーマンショック後も、アメリカ国内の経済状況の悪化を尻目に、
新興国市場の急拡大で売り上げを伸ばすことが可能な企業だとも言えます。

米国企業と言えども、それは本社が米国内にあるというだけで、
全世界に生産拠点と販売網を構築し、
安い労働力を駆使して、企業収益を拡大し続けています。

マスコミはアメリカの株価と言えば、真っ先にダウ平均を報道しますが、
ダウ平均はグローバルの巨人達の業績を繁栄しているのであって、
アメリカの景気を正確に反映している訳ではありません。

しかし、ダウ平均が上層すれば、つられて他の銘柄も買われますので、
アメリカの株価は、国内の実体経済の不調とは無関係に、
「ただ上昇するから」買われ続けています。

■ ダウ平均に連動する世界の株価 ■

日経平均が良い例ですが、世界の株価はダウ平均株価にやんわりと連動しています。
ダウが上昇すれば、世界中で株が買われ、ダウが下落すれば売られます。

これは一見するとダウが株式相場の指標となっている様に錯覚されますが、
株式市場のメインプレーヤーが誰かと考えるならば、
実は、同じ連中が、株式市場から資金を引き揚げて、
コモディテー市場に移動させたり、さらに債券市場に移動させているだけとも言えます。

相場は絶えず連動していなければ儲けが出ません。
そして、相場を動かす程の資金力を持った集団が、
自分達の都合で、資金を移動する事によって、
相場を自在に上下させ、逃げ遅れた投資家達の資金を巻き上げてゆくのです。

市場は経済指標や政府の発表する統計に連動して動いている様に見えます。
しかし、これらの統計のデータをいち早く知る事が出来れば、
市場の動きを先読みする事も可能です。
これはインサイダー取引に当たりますが、こういう疑念は拭えません。

こうして、リーマンショック後の世界の株価は、
潤沢に供給される緩和マネーを取り込んで、
順調に回復している様に見えています。

本当の危機が来るまで、株式市場は利益を生み続ける事が出来るのです。

■ 日経平均は出遅れたのでは無く、ドルベースでは連動していた ■

リーマンショック後、日経平均だけが回復が遅れました。

しかし、日経平均をドルベースで換算すれば、
対ドルで円が値上がりしていたので、日経平均も順調に値上がりしていたとも言えます。

東京為替市場のプレーヤーの半分は外国投資家と言われる勢力です。
これは、単純に言えば、世界のマーケットで資金を循環させている張本人達で、
彼らはドルベースで取引を判断しますから、
東京市場は円高によって充分利益の出るマーケットだったのです。

■ 株高では無く、円安の調整 ■

現在日本の多くの人達が、株価の上昇の恩恵を受けています。
個人投資家達も、長い冬篭りからようやく目覚めた様です。
株価上昇を目の当たりにして、新規に株式投資を始めた方も多いでしょう。

東京市場では30%を超える勢力が、個人投資家と言われています。
残り20%弱が、証券会社や銀行、そして年金などの資金です。

海外勢力は、円安では同じドル資金で、より多くの日本株を買う事が出来ます。
ですから、円安時には、株価は上昇し易くなります。

この円安調整の株高に、個人投資家達が乗って来るので、
日経平均には上昇バイアスが掛かります。

■ バブルの定義は簡単だ ■

私達は「バブル」と言うと、1990年頃の「大バブル」を想像しがちです。
しかし、経済の実態を無視した株価や不動産価格の上昇もバブルとも言えます。
私はこれを「プチバブル」と呼ぶ事にしています。

経済の状況が「バブル」なのか「好景気」なのかは、
バブルが弾けて初めて分かると言われます。

しかし、私はこれは全くのデタラメだと思っています。

バブルをバブルたらしめるのは、潤沢な低利の資金供給がされているという状況です。
この低利の資金供給が絶たれた時に、成長が縮小に急反転するのがバブルです。

個人が企業が自分の投資状況を鑑みた時、
低利の資金供給が絶たれたら、現在のポジションを解消しようと思えるのなら、
それは既にバブルが発生していると考えて良いのでしょう。

逆に、多少金利が上昇したとしても、経済成長による需要拡大が見込めるから、
このままの投資ポジションを維持しようと思える状況が、好景気です。

■ 時間軸というトリック ■

現在、世界の中央銀行はほぼゼロ金利の資金を無尽蔵に放出しています。
しかし、ゼロ金利という事は、いつかは金利が上昇します。

ですから、投資を行う人達は、現在の金利がいつまで維持されるかが気になります。
中央銀行が金利を上げるという予測下では、資金は中央銀行にブタ積みになります。

そこで、中央銀行は「失業率が6.5%になるまで緩和を続ける」とか、
「インフレ率が2%になるまで緩和を続ける」という表現で人々の不安を払拭します。

所謂「時間軸」と呼ばれるテクニックです。

中央銀行が潤沢に低利の資金を供給し続ける間は、
投資家達は安心して、マネーゲームを繰り広げる事が出来るのです。

■ 金利は延々に上昇しないのか? ■

ここで問題なのが、金利が永遠に上昇しない事は有りえないという事実です。

一般的には景気が回復して、実体経済で資金が回転し出すと、
市場に潤沢に供給されっていたマネタリーベースの何倍ものマネーストックが発生します。
これは、人々や企業が、借金をして消費や投資を始める事によって発生します。

中央銀行の通常の金利政策では、好景気でマネーストックが拡大した時点で、
金利を引き上げ、市場から資金を吸い上げて、インフレを抑制します。

ところが、現在の様に、世界のあらゆる国々で、
低金利を前提に投資が行なわれている場合、
金利上昇は、資金の大逆転を引き起こします。

日本の「大バブルの崩壊」は日銀の金利引き上げが発端となって発生します。
そして、不動産投資の総量規制がこれに拍車をかけました。
資金供給を断たれた途端に、借金で不動産投資をしていた企業や個人が破綻したのです。

■ リーマンショックも同じ理由で発生した ■

リーマンショックも同じ構造で発生します。

FRBはITバブルから米経済を脱出させる為に低利の資金を大量に放出しました。
この資金が住宅市場に流れ込み、住宅価格は右肩上がりに上昇します。

住宅を買えば値段が確実に上昇し、
新たに生まれた担保価値が、新たな借金を可能にする為に
アメリカ人は借金をして住宅を買い、さらに借金をして車を買いました。

そして、アメリカ人の住宅債務は、MBSという証券に加工され、
世界中に売りまくられたのです。

FRBのグリーンスパン議長は、「これは住宅バブルでは無い」と言って、
金利引き上げをせずに、資金を供給し続けました。

一方、日銀はバブル後の不況打開の為にゼロ金利の資金を潤沢に供給していました。
しかし、日米の金利差がポンプの役目を果たし、
日銀の供給するマネーは、円キャリートレードという形で
アメリカに低利の資金を供給する事になり、
住宅バブルは本来、住宅を購入すいる事の出来ないサブプライム層にまで拡大します。

この時点で、多くの人達が、「住宅バブル」の崩壊を指摘し始めます。
そして、日銀が金利を引き揚げた途端、資金の流れが逆転します。
アメリカで、金利が上昇した為に、サブプライム層はローンが払えなくなったのです。
こうして、アメリカの住宅バブルが崩壊し、
サブプライム危機は、MBSを介して金融危機に発展し、リーマンショックを迎えます。

■ 自在のバブルを発生させ、自在にバブルを崩壊させる事で儲ける人々 ■

中央銀行は「バブルの発生は予想できない」と言い訳します。

しかし、中央銀行が実体経済の実力以上に資金供給を続ければ
遅かれ早かれバブルが発生します。

日本の大バブルは、プラザ合意後の円高不況からの脱出の為に
日銀が金融緩和を実施した事で発生しました。

「内需拡大」の掛け声と、日銀が潤沢に供給する資金が
不動産市場と、株式市場に一気に流れ込みます。

円高によって輸出産業を初めとした設備投資は低調でしたから、
資金は手っ取り早い利益を得る為に、不動産と株に最初に流れ込んだのです。

これに目を付けたのが、外国人投資家達(国際マフィア)達です。

彼らは日本の株式市場を買上げ、株価を極限まで吊り上げました。
その後、ロスチャイルド銀行や、ソロモンブラザーズが中心になって、
日本の株が売り浴びせられました。

彼らは、日本株暴落で儲かるデリバティブ商品を予め海外の投資家達にばら撒き、
それらの投資家達は、日本の株価を吊り上げた後に、一斉に売り浴びせたのです。
これで、日本の株価はピークの4万円から大暴落します。

日本株が暴落した所で、外国人投資家達は底値で日本株を買い漁りました。

この時、不動産バブルが崩壊した穴埋めに、
日本の金融機関は、持株を安値で手放さざるを得ませんでした。
さらには、BISの基準が強化される事で、
銀行の貸し剥がしが行なわれ、企業は持ち合いしていた株を手放さざるを得なくなります。

こうして、株の持ち合い制度によって守られていた日本企業の株式の多くが、
海外の投資家達の手に渡ることになります。


それ以降の日本は、かつての輝きはありません。
リーマンショック以前は、円安も手伝って輸出企業は空前の収益を上げていました。

しかし、外国人に半分乗っ取られた輸出企業は、
利益の多くを株主に還元し、社員の給料は上がりませんでした。
それどころか、企業はリストラを進め、正社員を非正規雇用に切り替える事で、
利益をさらに拡大してゆきます。


世界恐慌でアメリカの土着の企業の株は、
ロスチャイルド傘下の銀行家達に買占められてしまいます。
独立国家アメリカは、この期を境に、金融資本家達の支配する国家となったのです。

同様に日本も、第二次大戦とバブルの崩壊という二回の敗戦によって、
国際金融資本家達に乗っ取られたと言えます。


バブルの生成と崩壊が巧みに仕組まれた結果です。

■ 日銀は誰の味方か? ■

世界のバブルの歴史を遡ると、
その裏に金融資本家達の影が見え隠れします。

フランス革命の原因となったのは、フラン王朝の財政難でしたが、
それの発端となったのは、ミシシッピ会社を利用したジュン・ローの暗躍があります。
彼は王立銀行と造幣局まで手に入れて、バブルを拡大し、そしてそれは見事に破裂します。
ジョンローの後ろに誰が居たのか、だいたいの想像は付くはずです。

この様に世界の歴史の変換点は、バブルの崩壊から始まると言っても過言ではありません。
第二次世界大戦の原因は、ニューヨークの株式バブルの崩壊です。


そして、バブルの生成と崩壊に必ず関係しているのが中央銀行です。


たたして、日銀は誰の味方なのか・・・・。
中央銀行の独立性は、誰の為に保障されているのか・・・・。

確かに政府が通貨発行権を握れば、政治的な人気取りの為に通貨を増刷して、
結局は通貨の価値を損ないます。

中央銀行は通貨の番人として、通貨価値が安易に損なわれない様に見張っています。
しかし、それは国民の為と言うよりは、中央銀行制度事態が、
国際金融マフィア達の利益の源泉であり、
彼らは金利を巧みにあやつって、資金移動を促したり、
バブルを作り出して、そして崩壊させる事で、社会の姿すらも変える事が出来るのです。


ウィーン学派や、リバタリアン達はその問題に自覚的ですが、
彼らの意見に耳を傾ける人達は少数派です。


まさか、中央銀行に自分達が支配されているなどとは夢にも思いませんし、
教科書どころか、経済学の本にも書かれていません。


■ アベノミクスというプロレス ■

安倍政権は日銀に金融緩和を迫っています。
その理由は、「デフレを脱却する為」と説明されています。

多くの人達が、安倍首相が、日本を不景気に陥れている日銀と戦っていると思い込んでいます。

一方、この時期に「イヤイヤ」を装いながらも日銀が緩和を拡大する理由を邪推するのが陰謀論です。

世界は現在、返済出来ない借金を抱えています。
中央銀行の狂った様な資金供給無しには、世界経済は簡単に崩壊します。

そして、各国の政治システムを不安にさらすのは人々の力です。
それは、失業による不満を切欠に拡大し、燃え上がります。

ですから、リーマンショック後世界の国々は通貨安戦争に突入し、
輸出の振興によって、質量率の上昇を食い止める振りをしています。
しかし、その実体は、相手国よりも大胆な金融緩和によって、
大量の資金を市場に供給しうる事であり、
さらには、自国国債の直接、間接的な買上げでしかありません。

通貨安戦争とは、結果であって原因では無いのです。

そして、そんな事はいつまでもは続きません。
いつかは大崩壊を引き起こします。


その時、国債金融マフィア達が焼け野原からかき集めるのは、
中国やロシア、インドやブラジルの企業の株式、
あるいは、日本や韓国や台湾やタイの企業の株式では無いでしょうか?


世界の国々は生き残りの為のサバイバルをスタートさせています。
フランスやイギリスのアフリカ利権の争奪があからさまになっています。


はてさて、何処を見たら、アメリカ経済は復活するだのと、
明るい未来が予見できるのでしょうか?

アベノミクスは目下の所、良い結果を日本にもたらしている様に見えます。
しかし、その裏で世界で何が進行しているのかを冷静に見る必要があります。

「世界はバブルを膨らめている」・・・そしてその目的とは・・・・。

クルーグマンやステグリッツを信用すると痛い目に遭うのでは?














苦戦するソフトバンク・・・スプリントネクステルの買収を妨害する米国勢

2013-01-29 10:05:00 | 時事/金融危機
 

■ やはり妨害工作に出た米国 ■

ソフトバンクの米携帯電話第三位、スプリンとネクステルの買収は
アメリカの通信インフラを海外企業が手に入れるというデリケートなM&Aです。

私は、この買収は、米国の妨害で失敗するのでは無いかと予測していましたが、
案の定、様々な妨害工作に遭っている様です。

■ クリアワイアーの株主の妨害 ■

スプリントネクステルは全米5位のクリアワイアーの株を51%取得しています。
クリアワイアーは高速通信網を整備している為、
スプリントネクステルがiPone5で「LTE」通信網を構築する為に買収した会社です。

しかし、クリアワイアーの大株主のクレスト・フィナンシャルが
連邦通信委員会(FCC)に買収差し止めを求ています。

さらには、ソフトバンクのスプリントネクステルの買収も
クリアワイアーの資産を低く見積もり過ぎていて無効だとして
買収差し止めを求めています。

本来51%の株を保有するソフトバンクが有利なはずですが、
どうも、雲行きが怪しい用です。
そこら変は、アメリカの電波行政を巡る暗闘が反映されているのかも知れません。

■ 衛星放送第二位のディッシュ・ネットワークの妨害 ■

衛星放送で全米第二位のディッシュ・ネットワークがさらに状況を複雑ししています。
ディッシュはクリアワイア株について、3.30ドルで敵対買収を仕掛けて来ました。

さらに、スプリントによるクリアワイヤの未保有株取得はまだ結論が出ていないと指摘。
FCCに対し、「重大な未解決案件が解決するまで」審査手続きを停止するよう求ています。

ディッシュは法廷闘争によって事業を拡大してきた会社の様です。

■ スプリントネクステルはiPhioneを4年間で3050万台購入する契約 ■

スプリントネクステルはiPhoneの取り扱いが遅れて業績が悪化しました。
Appleとの契約は2014年までに3050万台のiPhoneを購入するというものでした。
金額にして、200億ドルの契約です。

iPhoneでの契約を延ばすためには、「LTE通信」が可能な高速通信網を整備する必要があります。
確かにアメリカ国内では、WiFiが普及しているので、
日本程の「LTE]の需要は無いのかも知れませんが、
それでも、他社との差別化にはなります。

ソフトバンクのスプリントネクステル買収の成功には
クリアワイアーの通信網が不可欠とも言えます。

■ TD-LETを巡る中国とアメリカの確執 ■

現在世界の高速通信規格は、iPhoneが採用するFDD-LTE規格と、
中国や韓国が採用し、新興国でのシェアを抑えるTD-LTE規格の二大陣営に分かれています。

中国はTD-LTEで高速通信網を整備し、
Appleに再三に渡りiPhoneにこの規格を採用する様に働き掛けましたが、
AppleはiPhone5でこの規格の採用を見送り、中国人を失望させました。

この高速通信の規格の争いは、スマートフォンのシェア争いと密接に関係しており、
昨今の世界的はiPhone5の販売不振の一因になっていると思われます。

SAMSUNGのギャラクシーなどTD-LTEを採用するスマートフォンは、
新興国市場で、LTE通信が利用可能な事でシュアを延ばしているはずです。
iPhone5の売り上げ減に悩むAppleとしてはTD-LTE規格の採用はシェア奪還には不可欠です。

一方、通信規格の戦いは、国家間闘争の様相を帯びています。
昨年、アメリカの議会は、世界最大の通信機器メーカーである
中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の製品にスパイ容疑があると指摘しました。

華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の機材を通して
アメリカの国家機密が漏洩しているとの疑いを掛けたのです。

大統領府はすぐにこの問題を調査し、スパイの疑惑は無いと発表しましたが、
アメリカの通信機器分野では、明らかに中国製品の排斥が起きています。

そして、クリアワイアーは華為技術の製品を基地局に利用していた指摘されています。
尤も、基幹機材の採用は無く、5%程度の使用だったみたいです。

■ TD-LTE規格を採用したソフトバンクの失敗 ■

ソフトバンクは日本国内の高速通信網をTD-LTEで整備していました。
当然機材は華為技術やサムソン製品が多く使用されています。
これには、低コストという理由があるのでしょう。

しかし、iPone5はソフトバンクの思惑に反してTD-LTE方式の採用を見送りました。

そこで、ソフトバンクはFDD-LTE方式を既に展開していたイーアクセスを急遽買収します。

■ スプリントネクステル買収の真意? ■

私は孫社長がスプリントネクステルを買収した背後には、
スプリントが買収したクリアワイアーが構築しようとしていた
TD-LTE通信網の存在があったのではないかと邪推します。

クリアワイアーはソフトバンク、ボーダフォン、チャイナモバイルなどと共に
TD-LTEを推進する「Global TD-LTE Initiative」のメンバーです。

ソフトバンクはアメリカ国内でスプリントネクステルのiPhoneのシェアを利用して、
iPhone5やその後継機に、TD-LTEを採用させようとしていたのではないでしょうか?

ところが、時を同じくしてアメリカ国内で華為技術の排斥が始まり、
ソフトバンクのスプリントネクステルの買収自体が意味の薄いものになってしまいました。

■ TD-LTE勢力にも挽回のチャンスはある ■

FDD-LTEとTD-LTEとの規格の争いは、AT&Tとその他勢力の争いとも言えます。

中国を初めとした新興国では、TD-LTEの高速通信に対応しないiPhoneは、
単なるデザインが美しいだけの「遅いスマホ」と化しているのです。

アップルの失速と、通信方式の争いを全く報道しないマスコミは、
この問題の本質を意図的に隠しているとしか思えません。

そして、この問題を抜きにして、アメリカでのソフトバンクの大型買収の意味も、
それを、妨害しようとしている勢力の思惑も見えて来ないのです。

Appaleも背に腹は変えられません。
このまま、新興国市場を失うか、TD-LTE規格を採用するかを迫られたら、
最終的にはTD-LTE規格の採用を決断するでしょう。

■ ソフトバンクユーザーは無駄金を使わされたのでは無いか? ■

ここで問題になるのが、ソフトバンクのスプリントネクステルの買収に意味があったかどうか。

仮にアップルがTD-LTE規格を採用したとしても、
スプリントネクステルも、クリアワイアーもソフトバンクも
FDD-LTE規格で高速回線を整備し始めていますから、
TD-LTE規格への再投資は、効率の悪いものとなってしまいます。

AppleはTD-LTE規格の採用で、新興国のシェアを回復するかも知れませんが、
ソフトバンクがアメリカや国内でのシェアを拡大する理由にはなり得ません。

まあ、今後ソフトバンクが高速通信網をTD-LTEで再構築すれば、
安い中国製や韓国製の通信機器を利用出来るので、
コストメリットはあるのでしょうが。

ただ、米議会が指摘した様な、中国機材の「スパイ疑惑」が付き纏います。

結局、ソフトバンクのスプリントネクステルへの2兆円の投資が成功する為には、
スプリントネクステル自身の、米国内でのシェア拡大が不可欠で、
既に巨額の赤字を抱えるスプリントネクステルは
ソフトバンクにとって高い買い物になりそうです。

■ 買収無効の起死回生に掛けるソフトバンク ■

ソフトバンクが大火傷を負わずに米携帯市場から撤退する為には、
連邦通信委員会(FCC)がソフトバンクのスプリントネクステルの買収を無効とする手が残されています。

この場合、スプリントネクステル自身がクリアワイアの評価を不当に低くしたという判断がされ、
買収無効の責任を、スプリントネクステル側に押し付ける事が出来ます。

実はソフトバンクのスプリントネクステルの買収契約には、
違約条項として、買収額の3倍の違約金が設定されている様です。

ですから、損をするからと言って、ソフトバンクが一方的に買収を破棄出来ないのです。
ですから、スプリント側の不備でFCCが買収を認めないという判断は、
実はソフトバンクにとっては、非常にありがたい事態なのかも知れません。

まあ、そう簡単にアメリカがソフトバンクを逃がしてくれるとも思えず、
孫氏の後ろにいる勢力の力が試されるとも言えるでしょう。

■ 携帯電話の世界は魑魅魍魎の世界 ■

電波行政や携帯電話の世界は、魑魅魍魎の世界に私には見えます。

日本の携帯電話のガラパゴス化や、ビジネスの失敗の一端は、
NTTDocomoやAUなど、半官企業のビジネス戦略の失敗とも言えます。

これは総務省の電波行政とも密接に関係していて、
通信規格一つ取っても、国内規格を国際規格にしようと画策した事が、
むしろ裏目に出て、海外の規格の傘下に入らざるを得なくなったとも言えます。

ただ、この規格間の戦いは、さらに上のレベルでは国家間闘争そのものであり、
日本の携帯電話各社も、その争いとは無縁ではいられないのでしょう。

スマートフォンがiPoneの一人勝ちから、ASMSUNGとの二勇時代に突入したのも、
両者の背後に、巨大な国際的なパワーゲームが存在しており、
この分野でも、アメリカの覇権が崩れようとしています。

ロイターなどの報道は、Appleの不調を大々的に報道する傾向も見られ、
「アメリカの保守本流陣営のApple VS 世界陣営のSAMUSUNG」という代理戦争にも見えます。

まあ、多分に陰謀論めいた見方になってしまいますが、
日本の官僚の方達や、携帯電話会社の幹部の方達は、
この様な化け物達を相手に苦戦している訳で、
その苦労は並々ならぬものがあるでしょう。

私などは、未だにガラケーですから、
ある意味、高見の見物ではあるのですが・・・・。



誰が株を買っているのか・・・動き出した老人マネー?

2013-01-28 09:23:00 | 時事/金融危機
 

■ イヤー、ちょと取り戻しちゃったよ ■

毎年恒例の大学時代の友人との新年会は今年は浅草で七福神巡り。

その行きがけの銀座線の車内での事。
上野からドヤドヤと乗り込んで来た、65歳くらいの男性達。
どうやら、日光に出かける様で、こちらも同窓会みたいです。

なかなか元気な方々で、なかなか賑やかです。
会話がそれとなく耳に入ってきます。

「イヤー、ここんとこ株で少し取り返したよ。」

「あれはどうした、オーストラリア・ドル?」

「あれは未だダメだ。俺120円で買ったからまだ赤字。」

「○○さんとこは輸入だから、大変だろう。円安が好い事ばかりじゃネーんあだよなぁ。」


まあ、ざっとこんな会話の内容です。

■ 動き出した「個人投資家」って・・・ ■

ここの所の円安・株高で、個人投資家が動き出したと言われています。
週刊誌の見出しも「株高バブルに乗り遅れるな!!」みないなノリです。

日本で資産を持っているのは高齢者です。
さすがに70歳以上の方々は慎重で貯蓄中心の運用だと思います。
あるいは、銀行や郵便局に騙されて、年金感覚で毎月分配型投資信託で運用する程度でしょう。

しかし、60歳代ともなると、もう少し攻撃的な資産運用をされているみたいです。
「外貨預金」や「株式投資」など、リスクの高い運用を「楽しんでいる」みたいです。

若い方でも「FX」や「ネットでの株式投資」や「外貨預金」をなさっている方は多いでしょう。

こういった「個人投資家」と言われる方々が、
アベノミクスによる円安・株高を背景に、俄然存在感を示し始めたのかも知れません。

■ 「株高バブル」って書くかぁ?? ■

経済などというものは、不思議なもので、
あんなに委縮していた個人投資家も、「儲かる」となれば活動を再開します。

「赤信号、皆で渡れば怖くない」とはまさにこういう状況を言うのでしょう。

アベノミクスは「期待」が先行して、未だ実績がありません。
日銀の「緩和政策」も、その中身はお寒い内容です。

しかし、「円安」「株高」という実績が示されれば、
射幸心の強い方々の心をくすぐるのでしょう。

しかし、週刊誌の見出しは既に「株高バブル」と書かれています。
今回の株価上昇が継続的で無い事を前提に、
いつ逃げれば損をしないかという特集なのかと思います。

実は株を買い上げている個人投資家の方々も、
その辺は良く分かっていらっしゃるのだと思います。
「下げ始めたら売る」気満々で、株に投資しているのでしょう。

結局、今回の日本株高は、外資に釣られて国内の個人投資家が動き始めましたが、
バブルの崩壊による株の大暴落を一度経験すれば人間はそんなに楽天的では居られません。

結局「株高バブル」と言っても、プチバブル程度で、
日経平均が、2万円台になるには、材料が不足しています。

■ 既に相場は実体経済を全く反映していない ■

政府が中小企業の金融支援を継続するのか?
円安で輸出企業の業績は、どのくらい改善するのか?
はたして、賃金が上昇して、国内消費が改善するのか?

まだまだ、不透明な状況です。
さらに、ヨーロッパや中国の景気減速が顕著になており、
ヨーロッパ向けの輸出が大きく落ち込んでいます。

国内企業の12月の四半期決算の内容はは、
あまり振るわないものとなると思われます。
しかし、株価は、単なるマネーゲームとして吊り上げられています。

■ マネーサプライが回復するかがカギ ■

日銀の発表した金融緩和は、「2%のインフレターゲット」こそ明記したものの、
その内容は、地味なものと言わざるを得ません。

日銀にしてみれば、「流動性の罠」が解消しない限り、
マネタリーベースをいくら上積みした所で、
マネーサプライは拡大しないと言いたいのでしょう。

「景気の回復=マネーサプライの拡大」です。

マネーサプライは、「借金」によって膨らみます。
企業や個人が「借金」をする事で、経済は拡大するのです。

しかし、デフレ下では「実質金利」が高くなります。
ですから、企業は一生懸命「借金」を返済します。
個人も同様に、マンションのローンを安い金利で借り換えたりして「謝金」を圧縮します。

■ 「借金しても儲かる」という確実性が希薄な時代 ■

人間とは欲深な存在で、「借金しても儲かる」と分かっていれば
「借金」しても「儲けよう」とします。

では、現在の日本の状況が、「借金をしても儲かる」状況かと言えば、
これは否定的にならざるを得ません。

■ 公共事業の効果 ■

安倍総理は選挙期間中、20兆円の公共事業を10年間発注すると言いました。
この年額20兆円で、人々が「借金をしても儲かる」と思えるでしょうか?

例えば、地方の土建業者がブルドーザーを借金して買うかどうか・・・。
あるいは、受注増が予想される地方の土建業者に、
信用金庫が、お金を貸すかどうか・・・。

地方の歓楽街の飲み屋さんが、借金してまで店を改装するかどうか?
建築業で働く人達が、借金してまで自宅を購入するかどうか?
そういう人達に、銀行が住宅ローンを貸し出すかどうか?

どうも私には、20兆円は地方経済を活性化させるというよりも、
瀕死の地方経済をどうにか維持する役目で終わる気がしてなりません。

■ 「好景気が来る」という幻想を持てるか? ■

バブルの崩壊で「右肩上がりの成長」の終焉を経験した日本人は、
「景気が良くなる」というイメージを持ちづらくなっています。

20年以上に渡る景気低迷で、「バラ色の明日」を想像出来なくなったのです。

現在の「株高」は、アベノミクスのイメージを外国人投資家が巧みに利用した結果です。
日本人の多くは、アベノミクスの効果が懐疑的ですし、
さらには、アベノミクスが自民党の公約通りに実行されるかどうかにも懐疑的です。

例えば、現在の日本に田中角栄が再登場したとします。
彼があの調子で、「列島を再改造する」と演説したとして、
世間はそれに熱狂するでしょうか?

「おととい来やがれ」と思うのではないでしょうか?

■ 株価がいつまで持つかで、自民党の支持率に影響する ■

安倍政権は非常に良い滑り出しを見せました。
出来れば、参議院選挙まで、円安・株高を維持して勢いを付けたい所です。

一方、日経平均は11000円で、利益確定売りが発生している様です。

多分、3月までは、一進一退を繰り返しながら、
リーマンショック前の水準にチャレンジするのでしょうが、
個人投資家も、逃げるタイミングを伺いながらの投資なので、
強気の相場にはなり難いのではないでしょうか?

「期待で買って、実績で売る」という相場の鉄則に従えば、
既に、美味しい所は、過ぎている感じもします。


■ アメリカに注目したい ■


アメリカの景気回復が本格化したならば、
ガラリと状況が変わるのでしょう。

国内よりは、アメリカに注目していた方が良さそうな感じです。
アメリカはシーリング問題の時期に、株価が不自然な動きをします。
ここら辺も、日本市場に影響があるかと・・・。


当たらないと言われる「人力でGO」の経済予測ですが、
はたして、日本と世界の景気はどうなるのか?



試し撮りシリーズ・・・夜景

2013-01-26 07:53:00 | カメラ・写真
 





本日の試し撮りは、ちょっと海外旅行へ。

・・・ウソです。

近所の東京ディズニーシーに出かけて来ました。



私は仕事柄夜景を撮る事が多いのですが、

OM-Dがどのくらい夜間撮影に使えるか試してみました。



本来、観光写真には広角から始まるの標準ズームが便利ですが、

今回は60mm F2.8 macroが、街中で常用レンズの代わりになるかを試してみます。

60mmとはいえ、マイクロフォーサーズなので35mm換算で120mmの中望遠です。

ポートレートなどは得意ですが、街中で風景を切り取るのにはちょっとコツがいりそう。



実際、風景を全体的に広く切り取る事は出来ないので

上の写真の様に、一部を注視した様な構図になります。

ただ、意外とそういう絵は面白みが無いので、

手前に街灯を入れて、奥行き感を出してみました。


F2.8の開放では後ろがボケ過ぎたのでF5.6まで絞ります。

多分、1/15くらいのシャッタースピードですが全然手ぶれしません。

ISOは常用の上限のISO1600ですが、暗部のノイズはPCで普通に見る分には問題ありません。





35mm換算で120mmという焦点距離だとロードサイドから建物の全景は狙えません。

そこで、窓のフレームを利用してみます。

いい加減に撮ったので、ちょっとズレテますね・・・。




望遠レンズのお決まりの構図の圧縮効果を利用した構図。

コントラストの強い、ローキー気味の写真ですが

ISO1600でも暗部のディテールが残っています。

コンデジや数年前のデジイチでは、ノイズだらけになりそうなシーンです。





開放での画質をチェックしてみます。

点光源の描写も悪くありません。

これ1/8くらいだったと思うのですが、しっかり構えればブレません。

OM-Dの手ぶれ補正は、シャッタースピードで5段程度を補正してしまう

縦横だけでなく、ロールやピッチなど回転方向やZ軸方向も補正してしまう5軸補正。

カメラもかるくいので、夜景で三脚を立てる必要もほとんど感じません。





再び、ローキーな絵作りに挑戦。

画面隅に配置した照明器具もシャープに描写されます。

60mmF2.8 macro なかなか侮れません。




でも、やはり中望遠は旅行には向かないですね。

マイクロフォーサーズの明るい標準ズームが出たら絶対買いなのに・・。





でも、やっぱりマクロレンズは物撮りで本領発揮。




ついでに、ディズニーの宣伝。



1月、2月はパークが比較的空いている時期です。

私のお勧めは、乗り物よりもショーを中心に楽しむ大人のプラン。

ブロードウェイシアターやハンガーステージのショーは大人向けです。

それと、タートルトーク、これ楽しいですよ。


子育てが一段落した皆さん、

ご夫婦二人で、恋人時代に戻って楽しむのはいかがでしょう。



そうそう、ディズニーシーの夜のショーは最高です。

見る位置としては、ホテル側からがお勧め。

ホテルのレストランの中でも、スピーカーからショーの音が流れていますので、

寒さが苦手なあなたは、ホテルのレストランを予約されるのも大人の贅沢。


皆さん、是非、わが街、浦安へ!!




<追記>

OM-Dの良い事ばかり書いていますが、マイクロフォーサーズの弱点が1つ。

それはフォーカシングが遅い事。



特に、照明器具の様に光っている物は苦手。ピントが迷います。

でも、ファンクションボタンにマニアルフォーカスを割り当てておけばある程度カバー出来ます。

フォーカスリングを回した瞬間に、ファインダー像が10倍に拡大され、

正確なフォーカシングが可能です。

シャッター半押しで、通常倍率に復帰します。


ちょっと慣れるまで戸惑いますが、

マニアルフォーカスの時代に、スプリットイメージでピント合わせしていた事に近いかも。

私達の様に、オールドユーザーはマニアルフォーカスに慣れているから、

手動でのピント合わせは、むしろ写真を撮っているって感じがして楽しい。


最近のミラーレス機はフォーカスの弱点を克服した機種が出始めています。

SONYのNEXはハーフミラーで位相差式の測距を実現しています。

撮像素子のC-MOSセンサーの中に、位相差式のセンサーを組み込む機種で出始めています。

オリンパスもこの特許を出願しているので、

次のOM-Dの上位機種は、きっと位相差式の測距を搭載してくるでしょう。

そうなったら、フォーサーズの竹レンズや松レンズがストレス無く使えるので、

それこそ、フォーサーズ機の後継機は不要になってしまいます。



オリンパスとしては、マイクロフォーサーズのレンズを売る為には、

フォーサーズ用のレンズとの100%互換は避けたい所ですが、

CANONなどは互換性が高い様なので、オリンパスも追随せざるを得ないでしょう。


オリンパスファンとして、松竹レンズが使えるマイクロフォーサーズは喉から手が出る程尾欲しい。





もう1つ、気が付いた点は、液晶ファインダーは露出補正が快適。

写真を撮る時、オートの露出でまともな露出を得る事は難しい。

特に、私は仕事上、照明器具を取る事が多いので、露出補正は常用します。

オリンパスはOM2の時代から、露出補正ダイアルが一番操作し易いカメラでした。

写真を撮るなら、露出補正は当たり前という発想です。

シャッター面の反射光を測光するOMシステムでは、

露出決定が平均的になる傾向があったので、それを補う為だったとも思われます。



液晶ファインダーのライブビューでは露出補正後の明るさで表示されます。

カラーバランスなど、各種効果もリアルタイムで確認出来ます。

もう、これに慣れてしまったら、絶対に光学ファインダーには戻れません。