人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

読み飛ばし企画・・・たいした根拠は無いけれど、計算だけしてみた。

2011-04-30 09:26:00 | 福島原発事故
 

これも風評程度に読み飛ばしてください



■ 内部被曝におけるICRPモデルの意味するもの? ■



上の図は反原発派が内部被曝の危険性を強調する時に用いる図表です。

ヘリウム原子核が高い運動エネルギーを伴って発射されるアルファー(α)線では、周囲の原子間に働く「近くて強い相互作用」を破壊していく訳なので、周囲の水を電離してホットスポットが生まれる事は分かります。

一方、電子が高速で射出されるベータ(β)線の場合は、浸透力がα線よりも高く、自由電子が高密度で存在する金属は透過しませんが、体組織などはある程度の距離は透過してゆきます。上の図のα線とγ線の中間がβ線と考えれば良いでしょう。

甲状腺に蓄積された放射性ヨウ素から放出されるβ線は、ほぼ甲状腺内とその極周辺部に影響を及ぼします。

β線は吸収された組織周辺の細胞の原子を電離したり、電子を励起したり(電子軌道が高い起動に上がる)します。

励起状態の電子が下の起動に落ちてくる過程で、そのエネルギーに応じた光を放射します。この光がX線です。X線は透過力が強いので、吸収組織外まで到達してます。

γ線やX線はエネルギーの高い「光」です。紫外線のもっと強烈なやつだと思えば分かり易いかと思います。γ線やX線は透過力が強く、体を貫通します。その間に電子軌道と干渉し、電子を励起して、活性酸素を作り出します。


■ 「甲状腺は20gだから内部被曝の影響は50倍にしなければならない」という間違い ■

ICRPモデルが1Kgを単位にしているので、内部被曝の影響が軽視されているという批判もあります。甲状腺の重さが20g程度だから内部被曝の影響は50倍にする必要があるという理論です。

「1Kg当たり」というのは、単位系であって、甲状腺の被曝量は1Kg当たりに換算される事で実被曝量の50倍に増えるのではないでしょうか?

各臓器に重さによる被曝量の違いを、同じテーブルで比較する為の1Kg当たり(/Kg)という単位系を、勘違いするとこの様な論議が生まれてきます。

要はICRPの内部被曝評価は、実際の臓器の重さが1Kgに満たなければ、水増しして見えるのではないかと考えています。


物理の目で見ると、世の中の放射線の通説が実は「勘違い」によって生じているのかもしれないと思えてきます。

■ でも甲状腺は内部被曝にさらされる ■


摂取されて吸収された(過剰摂取分は排出される)ヨウ素ははぼ甲状腺に集まって来るので、吸収された放射性ヨウ素(安定化ヨウ素が多ければ比率的に減少)の量に応じた内部被曝が甲状腺で発生します。ベーター線と細胞内の原子の相互作用が確率的に発生するとしても、甲状腺周辺細胞の被曝確立が高くなるのは理解出来ます。

ですから、チェルノブイリで甲状腺ガンが多発したのです。
これは紛れも無い事実です。

一方、放射性セシウムや放射性ストロンチウムは天然由来の放射性カリウムと同様に体内に分散して放射線を発生しますから、内部被曝の危険性と外部被曝の危険性に大きな差が出るとは思えません。

細胞直近から発射されようが、10km先からやってこようが、宇宙の果てからやって来ようが、細胞とベータ線の相互作用は同じはずです。ただ、被曝箇所が体表に近いか、体の真なのかの違いです。

天然由来の放射性カリウムで深刻な被曝をするのなら、人類はもっと進化しているかもしれません。

■ ちょっと数字のトリックを ■

ベクレルー質量換算ソフトがネットにあったので使ってみました。
http://www.softculture.com/radiation/


放射線ヨウ素 I131の1(Bq)の質量は、2.20x10_-16乗となります。
放射性ヨウ素 I131を一日1000(bq)摂取したとして、その質量は2.2x10_-13乗(g)となります。


一日に必要とされるヨウ素は0.1(mg)として、割合をを計算すると、2.2x10_-9乗となります。

これは0.0000022%となります。

日本人が一日に摂取する平均的なヨウ素の質量は0.4(mg)とされるので、甲状腺が吸収するヨウ素は1/4になると考えられます・

これは0.00000055%となります。

たったこれだけ・・とお思いでしょうが、一日0.4(mg)の安定ヨウ素を摂取する人が、一日1000(Bq)の放射性ヨウ素を摂取したとすると、甲状腺が吸収する放射性ヨウ素は250(bq/日)
に低減したに過ぎません。

これが一日1(mg)の安定ヨウ素を摂取すると、100(bq/日)の放射性ヨウ素が甲状腺に吸収されます。

■ 内部被曝量に換算してみよう ■

ベクレル-シーベルト 換算ソフトがネットにアップされていましたので、正しいとして使用してみます。
http://testpage.jp/m/tool/bq_sv.php?guid=ON
実効線量係数(Sv/Bq)(経口摂取の場合)は以下の値を使用しています。
ヨウ素131 は 2.2×10^-8

これには吸入による内部被曝は含まれていません。



1000(Bq)の放射性ヨウ素を1年間摂取した時の内部被曝量は8.03(mSv/50年)となりました。報謝性ヨウ素の場合、半減期が短いので被曝した年内に照射線を放出してしまったという強引な仮定をすると、8.03(mSc/年)という内部被曝量になります。

日本人の日常的なヨウ素の摂取量は0.4(mg)、一日に必要とされるヨウ素を0.1(mg)とすると上の数値の1/4に被曝量は低減します。約2.01(mSv/年)
この数字が高いか、低いかという論議は専門家にお任せします。判断基準はLNT仮説を支持すするか、支持しないかという点に集約されます。

ただ放射性ヨウ素131の半減期は8日程度なので、大気中への大量放出が事故後1週間程度であるならば、これからその濃度は次第に薄れてゆきます。水や野菜や牛乳の汚染レベルは日に日に下がっていくはずです。1年間毎日1000(Bq)の放射性ヨウ素を摂取するという事は現時的には起こりえないと思います。

東京周辺では既に水道水の放射性ヨウ素の量は2o(Bq/ℓ)を下回っています。これは保守的なWHOの基準知の2倍程度です。WHOの基準は1生飲み続けても平気なレベルです。

単純に考えて、健康に害の無いレベルでの安定ヨウ素の摂取増加は、その量に応じて比例的に甲状腺に吸収される放射性ヨウ素の量を低減する働きがあります。

安定ヨウ素剤の服用は、この理論を応用したもので、但し、一回に100mgもの安定ヨウ素を摂取するとヨウ素過多による健康障害が出るので、安定ヨウ素剤は連続服用が出来ません。安定ヨウ素が体外に排出される前に、放射性ヨウ素の濃度の低い地域に避難する事が重要になります。

いずれにしても、水、食べ物、空気中の浮遊といった経緯から体内に入ってくるヨウ素はなるべく少ないに越した事はありません。子供や妊産婦、女児や適齢期の女性は、安定ヨウ素が取れる食生活を心がけましょう。


単なる素朴な疑問点を書いてみました。

オタクな連休の過ごし方・・・「新房昭之」を一気に見る

2011-04-30 06:34:00 | アニメ
 

■ ゴールデン・ウィークはアニメ三昧 ■

ゴールデン・ウィークが始まりました。低迷する日本の景気を、目が廻る程ブン回しましょう!!。

・・・といっても先立つ物が無いあたな、やはり一番リーズナブルなのは自宅でレンタルDVDを見る事でしょうか?昨日TSUTAYAに行ったら、見たい新作映画は殆ど貸し出されてタナはスカスカ。イヤー、皆さんスタートダッシュが早い。

ところで、今日は連休中やる事の無いアナタにお勧めアニメを3本。
こんな時代だから、笑えるやつがいいな。
どうせ見るなら、「今の空気」が感じられる作品がいいいな・・・

そう思って3作品選んでみました。
「それでも町は廻っている」
「化物語」
「荒川アンダー ザ ブリッジ」

・・・んん?図らずも全て「新房昭之」が関わっている作品で、全てシャフトの作品になってしまいました。

■ こんなメイド見たこと無い ■

先ず最初は「それでも町は廻っている」。いわしゅる「ソレマチ」と呼ばれるアニメです。

「客に良し悪しなどない、問題なのは常に店の良し悪しだ・・・マーチン・ビー・ストーン」・・という思わせぶりなオープニングで始まるこのアニメ、実はこの世のものとは思えない最低最悪なメイド喫茶「シーサイド」を取り巻く普通で可笑しな人達の物語です。

潰れかけた喫茶店を切り盛りする婆さんが考え出したのが、「メイド喫茶」。でも看板に、ガムテープで「メイド喫茶」と付け加えただけのいい加減さ。看板娘のメイドは近所の下町女子高生の「嵐山歩鳥」。ちゃきちゃきで、いい加減な「歩鳥」のメイドぶりにあきれた同級生の「辰野俊子」がメイド指導として仲間に加わります。最も「俊子」の目的は「歩鳥」目当てに店に通う同級生の「真田クン」。

そんないい加減なメイド喫茶に集うのは、魚屋、八百屋、クリーニング屋といった近所の常連さん。「歩鳥」が子供の頃から知っている人々が、彼女のいい加減さに振り回されながらも、温かく見守っています。

とまあ、結構どこかにありそうなストーリーですが、とにかくこんなアニメ見たこと無い。
何がって、ストレートな笑いネタなのに、手元で微妙に変化します。ミットに収まる時には、心の中が「ほっこり」しています。
日本のホームドラマが得意とするコメディーを、スーパースタイリッシュにすると「ソレマチ」になります。

まあ、この笑いの解説は不可能なので、とにかく見てみて下さい。

オープニングは今風に言えば「神」。「坂本真綾」が歌うシュガーベイブの名曲「DOWN TOWN」に載せて動き廻るメイドの姿は、音楽とのシンクロといい、構図といい、もうホレボレしてしまいます。

エンディングのサエキ・けんぞうの手になる「メイズ参上」も、これまたスゴイ。ブンブン唸るベースが誰かと思いきや、バカボン鈴木でした。菅野よう子御用達ですね。

原作は石黒正数のマンガで、ビレッジバンガードに置いてあります。
石黒正数は大阪芸大デザイン学科卒で同期にアシアンカンフー・ジェネレーションのジャケットを描いている売れっ子イラストレータの中村佑介がいます。
原作も一気買いしたくなる面白さですが、我慢しています。


■ 京極堂がライトノベルになっちゃった?!「化物語」 ■



進学校に通う高校3年生の「阿良々木暦(あららぎ・こよみ)」は、「戦場ヶ原ひたぎ」の秘密を知ってしまいます。彼女には「重さ」がほとんど無かったのです・・・。

戦場ヶ原ひたぎは、暦の口の内外をホッチキスで挟んで脅します。「『口が裂けてもも喋らない』と、阿良々木くんに誓ってもらうためには、どうやって『口を封じれば』いいかしら。」・・・パッチン!!・・・・うわぁー!! 全く容赦ありません。こんなヒロイン見た事ありません。

一瞬、悶絶した後の阿良々木くんは、「この程度なら、僕は大丈夫・・・」な人なのです。ホッチキスの針は引き抜いた傷たたちどころい治癒します・・・エー、何で!?
阿良々木くんは、春先に吸血鬼に血を吸われてから、再生能力が高まっているです。

阿良々木君は、体重を失った戦場ヶ原を「忍野メメ」に紹介します。忍野は名前に似合わぬアロファシャツ姿の怪しいオヤジです。彼は戦場ヶ原の体重を奪ったのは、「重し蟹」だと言います。「思い蟹」とも呼ばれる「怪異」で「神」の一種であると。

「怪異」とは普通にそこら辺に存在していて、普段は人に仇なすものでは無いのだと。そして、ある時、偶然人に影響を与えるのだと・・・。戦場ヶ原にとりついた蟹は、彼女の辛い過去と関係があり、「自分で勝手に救われる」しか「怪異」を祓う方法は無いのだと・・。

「おいおい、君は「京極堂」かぁー」と突っ込みを入れたくなるような展開ですが、とにかくスタイリッシュとは正にこの事と言わんばかりの映像と、演出に、そんな事なんてどうでも良くなっています。

「あなたのような生物の頭蓋骨に脳ミソが入っているというのは、それはもう奇跡の様な出来事なのよ」
「いいじゃないい、納得しなさいよ。私が阿良々木くんを殺すという事は、つまり阿良々木くんの臨終の際、一番そばにいるのがこの私ということになるのよ?ロマンチックじゃない」

もう言葉の暴力を通り越して、言葉の弄り殺し状態ですが、これが愛情表現なのだから、ツンデレここに極まれりです。

現在まで存在するオタクの萌え要素を、蒸留に蒸留を重ねて、純度99.9%にした様な、究極の萌えキャラが次々に登場します。そして、それぞれが軽妙な会話を阿良々木くんと交わしてゆきます。

涼宮ハルヒと対極の、究極のオタクアニメです。

原作はライトノベルの旗手、西尾維新。アニメの会話は、ほぼ原作通りです。
私は西尾維新は立ち読みする限り、言葉の羅列の様で好きではありませんでしたが、アニメで一旦会話のリズムを掴んでしまうと、これはこれで読んでいても非常に面白い。
使い捨てられる「会話の洪水」の底に、心の機微がうっすらと揺らぐ様は、今までどの作家も到達し得なかった、言葉の悦楽です。


■ 不条理なんと不条理なんだろう。「荒川アンダーブリッジ」 ■



荒川の河川敷に住むのは、金星人、かっぱ、超能力兄弟、星の被り物のロックシンガー、傭兵崩れの男のシスター、美女の傭兵、ちょんまげの床屋、白線を引き続ける渋い中年・・。

もうこれだけで、不条理だ・・・。

河川敷に住む彼らは、変態ですが、河川敷のルールでは立派な住人達です。そこに現れたのは金持ちの青年実業家。彼は、自称金星人のニノに恋をして、河川敷の住人に。本来なら河川敷の住人以外の視点から見た河川敷の住人は、ほとんど在りえない程普通では無いのに、いつの間にやら、青年実業家も河川敷の住人に・・・。

そして、ニノは本当に金星人で、皆でニノを金星に送りだしたのに・・・・・。

原作は「中村光」による同名マンガ。
息子が買っているのは、こっそり読んだら、もう可笑しくて可笑しくて。
でも何処が可笑しいのか全然理解出来なくて、でも可笑しくて可笑しくて・・・。

アニメはマンガの持つトホホ感が減退しているので、原作を読まれた方がより楽しく連休を過ごせるでしょう。

エー?全然評論になってないって?、
googoleで検索してみてください。多分、色々な評論が載っていますよ。

デモね、この笑いには評論なんて無意味。

■ 新房昭之 って誰? ■

これらの作品の監督は「新房昭之」。製作は「シャフト」

オタク向けアニメでは定評のあったこの組み合わせですが、昨年ヒットしたこの3作品は一皮もふた皮も剥けています。

オタク文化は模倣を繰り返すうちに、遥かな地平にまで到達してしまったようです。
このアニメについていけないアナタ・・・あなたは旧時代を生きているのかもしれません。

■ おっと、忘れていた 「相対性理論」 を宜しく ■

そうそう、忘れていました。「荒川アンダー ザ ブリッジ」のオープニングを歌う「相対性理論」は現在最注目のバンドです。

「やくしまるえつこ」のアンニュイなボーカルと、意味不明だけれどもキャッチーな歌詞に、良く聞くと結構エゲツない事をやっている演奏が絡み合う「相対性理論」は、渋谷系のアングラ(渋谷系にアングラがあるのかは?だけど)の最先端。

「ピチカートファイブ」の進化系でもあるし、菊池成吼の「第二期スパンクハッピー」の分かりやすい解説版の様でもあります。

こちらも高校生の息子の部屋からベース音だけが聞こえていて、思わず息子に、「こいつら何てバンド?」って詰め寄っちゃいました。息子、グッ・ジョブです。


今日は、オタクアニメの最新世界を、オタクたっぷりに語ってしまいました。
老人問題と原発問題で疲れた脳みそのリフレッシュに如何でしょうか?

相互扶助の社会・・・ル・グィンの「所有せざる人々」

2011-04-29 05:12:00 | 
 



■ ジェンダー・フリーの旗手、アーシュラ・クラクス・ル・グィン ■

アーシュラ・クラクス・ル・グィンという女性作家をご存知でしょうか?多分ほとんどの方が「誰?それ?」という反応かと思います。

「ゲド戦記」の作者と言えば、お分かりになるかと思います。ゲド戦記はファンタジーの大作なので、ル・グィンをファンタジー系の作家とお思いの方も多いと思います。

実はル・グィンは1970年代に大活躍した女性SF作家です。
彼女はアメリカにおける女性の台頭の時代の時代に、ジェンダー・フリーの旗手として数々の名作を残しています。

ジェンダー問題を正面から扱ったのは「闇の左手」です。

両性具有の人類の住む「冬」の惑星ゲセンで惑星連合エクーメンの使節ゲンリー・アイは逮捕・投獄されてしまいます。ゲンリーは彼を支持したために失脚した宰相エストラーベンに救出され、厳冬の、ブリザードが吹きすさぶ氷原を二人は旅をします。

ただ、それだけのストイックの話なのですが、一つだけ違うのは、「冬」の惑星ゲセンの人類は「両性具有」なのです。エンリーを助けた時のエストラーベンは男性でしたが、周期的に男性と女性を繰り返すゲセン人のエストラーベンはやがて女性になります。

氷原のテントに閉じ込められた男女の逃避行・・・なにやら怪しい雰囲気が立ちこめます。

しかし、二人の間には何事も起きません。二人は男女とも引かれ合いながらも、一人の人間として互いを尊敬し、一線を越える事は決してありません。

「女性を男性と対等な一人の人間として見て欲しい」という女性解放家達の叫びが、文学として結晶した珠玉の名作です。

■ 「共産主義」とル・グィン ■

ル・グィンの名作をもう一つ挙げるとすれば、「所有せざる人々」でしょう。

双子惑星アナレスとウラスではオドーに導かれて革命を起こした者たちがウラスからアナレスへ移住してから170年が経過しています。オドー主義に沿った「無政府主義的・相互扶助社会」が築かれています。

ウラスは地球に良く似た社会(西側諸国)です。それに対するオドー主義者達のアナレスは究極の社会主義体制(東側諸国)です。

アナレスでは全ての「所有」が禁じられ、子供は生まれた時から親元を離れてて集団で生活します。社会の基本は「相互扶助」で、水も乏しいアナレスで人々は貧しいながらも支え合って生きています。アナレスでは政府は否定され、人々は自分の意思で社会に参画し貢献しています。

そのアナレスからウラスに亡命した物理学者の目を通して、二つの対照的な社会が対比されてゆきます。

「所有せざる人々」は、ル・グィンや当時のアメリカの共産主義者達の求めた理想郷であると同時に、共産主義の限界や問題点にも極めて自覚的な作品です。

ル・グィンのSFの緒作は、派手な展開は一切無く、ひたすら一つの架空の世界を構築する事で、文学による社会実験をする場となっています。

私はSF界のトルストイだと思っています。

■ 今だから「共産主義」をもう一度問う ■

「所有せざる人々」は「共産主義」の崩壊した現在読んだとしても、決して色あせる事はありません。かつて「共産主義」者達が求めたユートピアが、この本に中には息づいています。

何故、突然ル・グィンを持ち出したいうと、昨日来話題としている地方の再生に、ル・グィンの「所有せざる人々」が大きなヒントを与えてくれるからです。

① 所有を禁じている
② 貨幣が存在しない
③ 家族を否定している
④ 共同参画と相互扶助が社会の基本

「現物経済」と「老人の社会参画」という私の考える地方の姿に似ていませんか?

■ 流出した若年人口を補うもの ■

高度経済成長時には日本の地方は、労働力の供給地でした。

① 大都市周辺に工場が沢山出来る
② 地方の若年労働力が現金収入に引かれて都会に集まる
③ 若者達はやがて大都市に定住する
④ 大都市の高齢化が進行する

現在の日本は④のフェーズに移行しています。
これを地方の視点で見ると次の様になります。

① 若者が地方に流出する
② 若い老人が生産の担い手となる
③ 若い老人が、年を取った老人の世話をする
④ 若年層が少ないので、やがて若い老人が不足し、「超高齢社会」が出現

日本ではかつて、「田舎から都会」へという人口に大移動が発生しました。
ところが、都会に出た人達は田舎に帰る事はありませんでした。
「物と情報」に溢れた都会の生活に慣れた人達は、田舎は退屈な場所でしかありません。

■ 財政破綻と都会での生活 ■

過程の話ですが、このまま日本の財政が逼迫して増税もままならなければ、財務省はインフレ政策に舵を切ります。

① 財政の継続性に決定的な疑いが生じる
② 日本国債が暴落する
③ 日銀が金融機関の国債を購入し、大量の円が一気に市場に放出される
④ 物価が高騰を始める
⑤ 金利を上げても悪性のインフレは制御不能なので、インフレのポジティブ・フィードバックが発生。
⑥ 制御できないインフレで通貨価値が暴落
⑦ 物価が10倍で(1000%のインフレで)日本の国債負担が1/10程度に軽減する

さて、お年寄りの方には大変申し訳ありませんが、これは皆さんの預金の価値が1/10
になり、需給する年金の価値も1/10になる事を意味します。

そんなバカなとお思いでしょうが、ロシアでもアルゼンチンでも実際に起きた事です。

日本は世界最大の債権国だから・・とお思いでしょうが、政府の保有するアメリカ国債は事実上売却できません。そして、日本の財政が破綻する時は、ドルは終焉を迎えています。

さて、お金の無い老人達は、都会で生活できるでしょうか?
答えはNOです。

ロシアでは年金が破綻した後、老人達は郊外で自給自足の生活をしました。ロシアには昔から週末を郊外の自家菜園で過ごすという習慣がありました。彼らは自給自足に慣れていたのです。

■ 政府を介さない直接的な相互扶助 ■

財政が破綻すれば、年金福祉政策も破綻します。

インフレで年金が事実上減額した老人達はどうするでしょう。
とりあえず食べる事が優先しますから、食料が自給できる地方に流出するのでは無いかと私は考えています。

団塊の世代の多くが地方出身者です。彼らは地元に何らかの繋がりを持つ人達です。
彼らは昔のつてを頼って、あるいは親族を頼って地方に戻っていきます。

彼らが地域に受け入れられる条件は、地域社会の相互扶助に貢献する事です。
今までは政府の福祉政策に頼っていた地方でも、政府に頼らない福祉の確立が急務となります。

■ 家族制度から、自己参画型の社会へ ■

地方に知り合いが居ない人達は、縁の無い土地にも流れてゆくでしょう。
この方達は、従来の家族制度にる介護の枠を離れた存在になります。

移住した地域で、その社会の福祉に自己参画する形で、将来の自分の福祉を担保します。

■ 70歳まで人は働けるのか? ■

東北大震災の結果、日本の財政破綻の危険性は格段に高まりました。
景気が低迷する中で安易な増税策も採用できません。

その様な中で「定年70歳制」が論議されています。
「あなたは70歳まで働かなければ、生活出来ません」と言われているのです。

ところで、一般企業で70歳の老人は戦力になるでしょうか?
一部の方達を除けば、ほばお荷物です。
だいたい、70歳の方だって、そんな年齢まで満員電車で会社に通いたくはありません。

高齢者の雇用を維持すれば、若年労働者2人の雇用が抑制され、企業の生産性は大幅に減退します。これは、若者にも企業にも不幸な状況です。

製造業はこんな国を離れて海外にどんどん流出してしまいます。

■ 若者に職を譲る韓国人 ■

知り合いの韓国人の話では、労働市場の小さな韓国では、若者の雇用の為に、55歳くらいで皆さん退職されて地方に戻るそうです。

「地方」から「都会」そして「地方」へという労働力の循環が完成されているのです。
「地方」に戻った高齢者も55歳程度なら充分に若く、地方で再就職したり農業に付ける年齢です。地方の社会に充分貢献した後で、そこで老後を向かえます。


■ 「所有する都会」と「所有せざる田舎」 ■

都会の魅力は何と言っても「現金収入」です。お金は「所有を可能」にします。
田舎の魅力は「食料」と「環境」と「人の繋がり」です。

「70歳定年制」や「福祉崩壊」が起きるまえに、「所有せざる幸せ」に気付いた人から田舎に入植できるシステムを作りだせば、政府の負担は軽減するはずです。

後は高齢者の比率が増加する地方での、医療負担の軽減の問題があります。
私はこれは「哲学」の問題だと考えます。
生命は期限付きですが、現代医学はこの期限を延ばしています。

しかし、高度医療で伸ばされた余生がベットで寝たきりというのが、果たして正しいかどうか私には分かりません。

これからの社会はこの問題を積極的に論議する必要があります。
有限の命を、精一杯生きる事は美しい事です。

人間は年を取ると判断力が低下し、生きる事に固執する様です。
この問題は若い時期に、自分の中にしっかりと基準なり哲学を持つべきだと思います。

惑星アナレス的社会は理想であり、絵空事です。
しかし、社会主義国の失敗は国全体が社会主義・共産主義だった事です。

若い時は「資本主義」に貢献し、ある程度の年齢からは「共産主義」に貢献する。
これもグローバル化の一つの姿かもしれません。

「所有せざる人々」を20年振りに再読してみようかと思うこの今日この頃です。

地方の再生・・地域通貨の可能性

2011-04-28 03:54:00 | 時事/金融危機
 



昨日、鍛冶屋さんから頂いたコメントはアイデアが沢山詰まっています。

<コメント>

-前略-

福島の現状は予断を許さないとは言え、やはり人力さんが仰るとおり将来の事も考えて行かなくてはならないと思います。
自分は、以前の人力さんの(予測)50mSv線量率以内への住人の帰宅解除と言う意見に賛同、または同じく新規入植者の受け入れを検討して頂けないものかと考えます。
しかし、やはり"福島~"と言う風評被害は避けられないでしょうし、先の自主避難推進地域のように外部からの物流が途絶えたり阻害される可能性もあります。
そこで、いっそ近隣地域の耕作可能な極低線量率地域を含めての、地産地消・独立経済圏モデル地区化なんてどうでしょうか?。言うなれば大規模な「ダッシュ村」構想・・・また低俗と言われそうですが、もし出来るのなら自分は入植を希望します。
当面の現金収入は、これから何年も掛かるであろう復興支援事業と、何十年も掛かるであろう原発の管理・廃棄事業に外部から来る方々の生活支援をすることで賄います。常定住可能のなのは45歳以上の成人に限定し、原発に直接関わる仕事は不可(定住可能被曝線量を超えないために・・・)。当然おっちゃん・おばちゃん、じじ・ばばばかりの街になりますが、低線量率放射線を浴びて皆免疫系が活性化され元気になりますから大丈夫でしょう。10年・20年単位で経過観察し、人体に多大な悪影響が無いと証明できれば徐々に人々も戻って来るのでは。

そして高線量居住不適合地は、復興事業の一環とし更地にしたうえで一面の向日葵畑にしましょう。人工衛星から見えるお花畑として、日本の新たなる日の出の象徴として、世界中に見せ付けてやりましょう!!。

・・・あぁ妄想が...。

<終了>

■ 復興する東北、衰退する地方 ■

東北は今後、復興という巨大な公共事業がが発生し、他地域に比べ、雇用も資金循環も回復します。

しかし、問題は日本の他の地域で、限られた財政の中で他に地域までは予算が回りません。
ここに金融危機や財政破綻が追い討ちを掛ける様な事があれば、地方経済は深刻な状況に陥ります。

■ 地方の問題はユーロ危機に似ている ■

ユーロの問題は、税金と公共事業という財政の統合無しに通貨だけ統合した事で、不況になれば経済力の弱い国の資金が枯渇し、さりとて強いユーロを通貨として採用しているので、輸出や観光で資金を調達する事も出来なくなる事です。

これは、今後そのまま日本の地方にも当てはまる問題です。グローバル化とは日本の中に先進国と途上国が発生する事と同義です。この二者の間で、共通通貨の「円」を使用する限り、一旦景気が後退すると地方の資金は枯渇します。これを補ってきたのが公共事業です。

■ 「お金」が地方の富を吸い上げる ■

誰もが欲しがる「お金」ですが、地方は本来「実物経済」が可能な地域です。ここに「お金」が流入するとどうなるでしょうか?

① 物や労働が一度、「貨幣」に変換される
② 「貨幣」はストックされる事もある
③ 「ストックされた貨幣=預金」はより高い利潤を求める
④ グローバル社会では、より投資効率の高い国に資金が移動する
⑤ 一見利率の良いように見える、海外の金融商品に投資される

あれ、あれ?公共事業によって地域に還元された「お金」が、どんどん国外に流出しています。高齢者が多く、消費性向が低い地方のお金は、海外に流出し易いとも言えます。
(現在の日本では、日本国債購入に使用されますので、税金に近い使途になります)

■ 「マイクロファイナンス」の破綻 ■

途上国の貧困の解消の為に一時期話題になったのが「マイクロファイナンス」です。

① 貨幣経済が発達していない地域に資金を供給する
② 村単位の保証人制度で、所得の低い人でも「お金」が借りられる
③ 本来「お金」を稼ぐ手段が無いので、返済出来なくなる
④ 村単位で保障人になっているので、村の人間関係が破壊される
⑤ 結果的に「マイクロファイナンス」によって村の将来の収入が吸い上げられる

「マイクロファイナンス」で融資を受けた物が成功すれば、村に居ながら多額の現金収入を得られますが、ビジネスの大半は失敗するのが世の常です。

この様に、本来「物々交換」と「労働の相互供与」で成り立っていた地域経済に「お金」が入り込むと、既存のコミニュイティーが破壊されたりします。

日本の地方が昔より豊かになって、皆が少しずつ「お金持ち」になったのは、返済する必要の無い大量の公共投資が投下されたからであり、それを支えていたのが都会の高い生産性でした。

勿論、安い労働力が豊富にある地方に、企業の製造部門が進出した影響は無視出来ませんが。

■ もし公共投資という資金循環が絶たれたら ■

もし、国家財政破綻や恐慌の発生で、公共投資という資金循環が絶たれたらどうなるでしょうか?

実は小泉改革によってこの現象は既に起きています。
それが昨今の地方経済の衰退に現れています。

① 公共投資は国の財政赤字を拡大する
② 公共投資は非効率な投資である
③ 小さな政府を目指し、減税を先行する
④ 庶民の貯蓄が増える
⑤ 国内より「利率」お高い海外に資金が流出する
⑥ 景気が後退して税収が落ちる
⑦ 公共投資がさらに縮小する

■ リフレ派の間違いと政府通貨 ■

リフレ派の「円の増刷」は、グローバル経済の下では、安い資金を海外に供給する事と同義になります。そのオコボレとして国内経済は若干上向くかもしれませんが、その効率は極めて低いといえます。

「円の増刷」は「将来的な税負担」となって私達に跳ね返ってきます。
問題はいかに海外の流出しないお金で、国内経済を活性化するかです。
これが「政府紙幣」の発行です。


ただ、政府通貨は国際金融資本家が忌み嫌います。
何故なら、グローバルな通貨システムこそが、彼らの富の吸収装置だからです。
「ドル」や「円」や「ユーロ」こそが、田舎のささやかな富までをも吸収する装置です。
政府通貨はこのグローバルな資金循環を阻害します。

途上国の通貨は、「ドルにペック」する事で、信用を裏打ちされ、グローバル通貨の枠組みに組み込まれます。

世界的な資金循環は、「金利差」によって生み出され、それは各国の「中央銀行」によって操作されます。これは陰謀というよりも、「世界経営」と呼ぶべきものなのかもしれません。

・・・だんだん、日本の長期不況の原因が見えてきましたね。

池田信夫氏の主張する様に、「有効需要」が無い中でのマネタリーベースの増加は、国内需要を喚起する事が難しいのです。

■ 地域通貨という発想 ■

地域通貨という発想は、政府通貨と同根の発想です。
地方で発生した富を、地方の中で再循環するシステムです。

しかし、現状は地方は都会から流入する「円」の投資で成り立っていますから、「地域通貨」は普及するはずがありません。

「地域通貨」が見直されるときが来るならば、それは「円」の信用が無くなる時か、「円」の供給が絶たれる時です。

■ アメリカで始まった州単位での地域通貨 ■

アメリカではドルの信認が揺らいでいます。
狂った様にFRBが発行するドルに、州政府が恐怖を抱き初めています。

ユタ、コロラド・ジョージア・モンタナ・ミズーリー・インディアナ・アイオワ・ニューハンプシャー・オクラホマ・サウスキャロライナ・テネシー・バーモント・ワシントンなどの州が、金や銀に裏打ちされた独自の通貨の発行を計画しています。

これは一見ドルの信認の低下と見えます。
しかし、グローバル通貨のドルは流動性が高いので、現在の様にアメリカの地域経済の衰退が激しいと、地域の富がもの凄い勢いで流出する事を意味します。

① リーマンショック後、有効需要が低迷する
② 消費から貯蓄というトレンドが発生
③ 地方銀行の衰退で、貯蓄は地域内で有効に再投資されない
④ 地域内の預金が、金利を求めて流出する
⑤ 流出先は「あぶない金融商品」であったり「新興国」であったりする

実はアメリカは日本と同じ罠にはまっているのかもしれません。
ただ、アメリカ人の消費好きは日本人の比較にならないので、景気がちょっとでも回復すれば、アメリカの経済は又回り始めるかもしれません。

■ ドルの終焉 ■

しかし、現状FRBの緩和策を有効需要を作り出してはいません。
このままではアメリカの財政破綻の方が先に訪れるかもしれません。

こんな筋書きが濃厚になってきました。

① 中東危機が高まる
② 原油価格が高騰する
③ 原油の高騰が物価を上昇させる(スタグフレーションの発生)
④ 不本意な金利引き上げを行う
⑤ 経済が失速し、税収が落ち込む
⑥ 金利負担と税収減から、財政が破綻
⑦ アメリカのデフォルト宣言
⑧ ドルの切り下げが行われる
⑨ あるいは「新通貨」発行

こんな流れを予測しての、州単位での「兌換通過」の発行なのかもしれません。

アメリカの憲法は通貨として「金兌換通貨」しか認めていません。
ドルは最初から、「FRB債券」であって、ニクソンショック後は通貨では無かったのです。
ドル紙幣にはしっかり「中央銀行債券」と書いてあります。

話が大分それてしまいました。
参考までに過去の記事を紹介しておきます。
私は経済も素人なので、多分妄想です。

このブログは私の日々の気になる事のメモみたいなものです。
思考の過程を文章にすると、なんとなく何が分からないのかが自分で分かってきます。
ですから、このブログは私の未熟さの記録だとも思っています。
そんな物を人様にお見せしてもいいのか、疑問ではありますが、
多分、皆さんも似たような疑問を抱かれていると思いますので、
色々とアドバイスを頂きながら、一緒に考えていければと思っています。


「マイクロファイナンス危機・・・貨幣経済の罠」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/305.html


「自給型経済」の持つ豊かさ・・・・「かみちゅ」再放送」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/341.html


「高齢者パワーが日本を救う」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/93.html

「価値の保存」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/253.html

「農業ファンド」は成立するのか? 」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/254.html

「金は天下の回りもの」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/267.html   




この国には神風が吹く・・・汚染マップ公開

2011-04-27 08:44:00 | 福島原発事故
 



■ 文部科学省が「汚染マップ」を公開 ■

文部科学省が汚染マップを公開しました。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/26/1305519_042618.pdf

「平成24年3月11日までの推定積算線量」というタイトルにあるように、事故後1年間の推定積算線量となっています。


① 赤線で示されるのは20(mSv/年)の地域
② 20(mSv/年)はICRPの推奨する子供の暫定的な年間被曝許容量(内部被曝含む?)
③ 文部科学省の汚染マップは外部被曝の積算値と推定される
④ 測定高さが不明だが、地上1mと推定される
⑥ 文部科学省の被曝率の計算は40%
⑦ 内部被曝と被曝率を考慮する為には、この数値を5倍する必要がある(武田説)
⑧ 補正した後の数字では、20(mSv/年)は100(mSV/年)となる。
⑨ LNT仮説が正しいならば、赤線は大人の緊急時の暫定被曝基準に相当する
⑩ LNT仮説が正しいならば、子供や妊婦には問題のある環境である

⑪ 汚染地域は原発の北西方向に帯状に広がっている。
⑫ 浪江町、飯館村の一部で150(mSv/年)を越える地域がある。

⑬ 地形や降水の影響から、少し離れた地域にも10(mSv/年)程度の微量汚染地域が点在

■ LNT仮説を考慮してこのデータを見ると ■

ニュースでこの分布図をご覧になられた方達は、暫定年間被曝量の限界20(mSv/年)が広く分布する飯館村や、浪江町の町民の事を思って胸を痛めるでしょう。

しかし、LNT仮説に疑いを持つ目で見ると、20Km圏内の多くの地域で危険は少なそうですが、赤線の中は大人の暫定的な年間被曝基準の100(mSv/年)に近い被曝を受けます。

LNT仮説が間違いだったとしても、子供や妊婦の閾値は大人のそれと比べて低いはずです。20Km圏の避難指示は現時点では妥当なのかもしれません。


■ 大気放出放射性物質は2~4% ■

http://www.ustream.tv/recorded/14168194?lang=ja_JP
上のURLは4月20日の議員達の勉強会に原子力安全保安院と原子力安全委員会が呼ばれて事故の実態を説明しているビデオです。

① レベル7の根拠となる放射性物質は大気放出量である
② 海洋放出は人体に直接影響が無いので、IAEAの選定基準で考慮しなくても良い

③ 原子力安全保安院の算出値37万テラベクレル
④ この数字は、原子炉内に当時生成したいたI131の2%、Cs137の1%が大気放出と過程

④ 原子力安全委員会の算出値は63万テラベクレル
⑤ この数字は文部科学省から運用を移管したシミュレーションシステムで算出
⑥ 16日~19日は風向が海に向かっていたので、正確な測定は出来ていない
⑦ 12日に遡ってのデータは文部科学省の千葉と東海村の放射性物質量の測定器のデータを使用
⑧ 風向と天候によるシミュレート結果に千葉と東海村の測定値をフィッティングして放出量を推定

⑨ 放出放射性物質の多くは原子炉を冷却した水の漏洩により海洋と地下水に流れ込んだ

長いビデオですが、編集されていない映像は、担当者や議員達の雰囲気を良く伝えます。
鳩山元首相は理系だけあって、穏やかな口調ながら、海洋汚染について鋭い突っ込みをしています。

■ 15日、16日の最大放出時の放出量が大半を占める ■

ビデオの中で放出量の日別の対比がされています。

① 現在でも1日に10_14乗(100兆)ベクレルの放出がある(100テラベクレル)
② 最大放出は16日で10_17乗(10京)ベクレルの放出があった(10万テラベクレル)

■ 15日、16日の放出は4号機から ■

今回観測された大気中に放出した放射性物質の大半は15日、16日に放出されています。

① 12日 15:36 ・・・1号機水素爆発
② 14日 11:01 ・・・・3号機水素爆発
③ 15日  9:38 ・・・・4号機火災発生

一般的に考えれば、1号機と3号機の水素爆発時に最大の放射性物質の放出がありそうですが、それではありませんでした。私は15、16日の放射線放出量が最大なのはフランスのデータで知っていまいたので、この点は不思議に思っていまいた。

考えられる仮説は・・・

① 4号機の燃料棒損傷と火災が、最大の放射性物質の放出元だった
② 3号機か1号機の圧力容器の蓋が開いていて、部分的再臨界物質が放出された
③ 1~3号機の強制ベンチで大量の放射性物質の放出があった

自衛隊のヘリを投入した消火活動や、米の80kM圏非難勧告、フランス人の国非難などを鑑みると、あの時期、最も危険だったのは、4号機の使用済みプールの火災だったのかも知れません。

使用済み燃料はプルトニウムと反応後の汚染物質を大量に含みます。そして、圧力容器内に比べても圧倒的に大量の使用済燃料(放射性物質)が保管されています。

この使用済燃料棒のルコニウム被服が溶融して、内部のペレットが露出していたならば、4号機の使用済プールの火災こそが、大量の放射性物質の飛散に繋がったのかも知れません。

■ 神風が吹いた ■

15日、16日の風向きは陸から海でした。
この両日の風向が内陸に向いていれば、今回の汚染マップは全然異なるものになっていたでしょう。


まさに、日本に神風が吹いたのです。

・・・しかし、その神風に吹き流された放射性物質は海上から関東地方に吹き戻されてきます。東京は15日、16日に比較的高濃度の放射性物質に覆われています。



この放射性物質が20日頃の雨で水道水に混入しました。
その後、大量の放射性物質の飛来はありませんので、首都圏の水道水は現在は安心して飲めます。I131の半減期は8日ですから、レベルも下がっています。


■ 現在は20Km圏の避難が妥当 ■



上の図は東京都心に原発があった場合の半径20Km圏を示しています。
唖然とされるでしょう。

福島ではこんなにも広大な地域で、そしてその外の30Km圏の人々が避難されているのです。

今回公開された「汚染マップ」を見ると、避難されている方の大半が帰宅しても問題無さそうです。

しかし、原発は未だ冷温停止状態に至っておりません。
再循環系を再構築して、安定した冷却を確保するまでは、いつ又、大量の放射線を大気中に撒き散らすか分かりません。(確率は下がっています)

その時、又「神風」が吹くとは限りません。むしろこれからは南風のシーズンです。

■ 「LNT仮説」問題と、「原発事故」は別物 ■

「LNT仮説」が人々を苦しめるのは、原発が冷温停止になてからです。
帰還を希望しても、放射線の規制値に阻まれて家に帰れない事態が生じます。
又、原発周辺地域では、農作物を長期に渡って作れなかったり、漁業が出来なかったりするかもしれません。

一方、現在の最大の危機は、依然、原発の大規模爆発による大量の放射性物質の大気放出です。

これは、今後放出されるかもしれない「閾値以上の放射線」を想定する必要があります。
風向きと放出量によっては、東京とて無関係ではいられません。

私達は、常に「最悪」を想定しつつも、「危機」が過ぎ去った後の準備もしなければなりません。「危機」の後に問題になるのは、放射線被曝の規制値です。今から充分な議論と研究を始める必要があるのです。

だからこそ、「LNT仮説」について、皆さんで議論を深めてゆきましょう。


この記事は「人力」の勝手な思い込みで書かれています。正確な数値の判断は皆様自身で行い、「LNT仮説」が正しいとされる間は、安全マージンを充分に取って行動して頂くよう、お願いいたします。