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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

便利な国家・・・北朝鮮

2010-11-24 08:16:00 | 時事/金融危機



■ なぜこの時期に・・・ ■

北朝鮮が又やってくれました。新聞やTVはしばらくこの話題で持ちきりでしょう。

しかし「なぜこの時期に?」という疑問にまともに答えるメディアはありませんね。

① 金・ジョンウン体制に移行する為に軍部に対するアピール
② アメリカを交渉の場に引き出す為のアピール
③ 一部軍部の独走

だいたい、このような理由が語られています。

■ 金融市場を注視すべき ■

欧州もアメリカも、今回の砲撃事件で株価と債権価格が下げています。
又、有事のドル買いで、ドルが値を上げています。

長期金利上昇とファンドの決算でドル高に振れていましたが、北朝鮮の砲撃事件でドル高基調はもうしばらく延期されるでしょう。

日本株は当然下げますから、有り余るドル資金が日本株を買うには絶好の好機です。

韓国哨戒艇「天安」の沈没事件の時もそうでしたが、危機感は1ヶ月程しか持続しません。年末にかけてドル安の撒き戻しが訪れた時、日本株や欧州株を売却して大儲けする手合いが現れるのでしょう。

■ 便利な北朝鮮 ■

北朝鮮はアメリカや金融資本家達にとって、大変便利な存在です。

「ならずもの国家」なので、何をやらかしても誰も不思議に思いません。
今回は韓国軍の定期的な訓練に過剰反応したという事にしておけば、双方理由が立ちます。

北朝鮮を利用すれば、中国や日本にイヤガラセをする事も、金融市場を混乱させて荒稼ぎする事も容易です。

■ ソウルの軍事的脆弱性 ■

今回の事件で韓国国民の世論は一時的に北朝鮮に対して硬化します。しかし哨戒艇沈没事件の時と同様、韓国国民は戦争を望みませんから、マスコミに現れる世論以外は実際には冷静に状況を見つめている事でしょう。

ソウルは北朝鮮国境に近く、北朝鮮がダムを決壊させるだけで甚大な被害を被ります。10万の地上部隊が38度線を越えて南下すれば、ソウルを占拠する事は容易だと言われています。非武装地帯から40Kmしか離れていないソウルは、長距離砲の射程内とも言われています。

韓国の歴代政権は余程のお人好しか、あるいは北朝鮮の南進はあり得ないと確信しているのか、首都の軍事的脆弱性を改善する事はありませんでした。(遷都の計画はある様ですが実現していません)

韓国国民は「軍事的脆弱性」と「徴兵」という自分達の生命を人質に取られたままで、北朝鮮という「ならずもの国家」と向き合わされています。

極論すれば、韓国から北朝鮮に本格的な攻撃は仕掛けられない歯止めが掛けられているのです。

「ならずもの国家」とアメリカは、それを良い事に、都合の良い時にいつでも「おいた」をする事が出来ます。・・・なんと都合の良くできている事でしょうか・・・。

常識を疑うこと・・・「りんごが教えてくれたこと」

2010-11-22 07:27:00 | 



■ 「窒素」「燐酸」「カリ」 ■

「窒素・燐酸・カリ」と聞いてピンと来る方は、園芸好きな方でしょう。植物が生長するにあたり、「窒素は葉を茂らせ、燐酸は花を咲かせ、カリは根を育てる」と言われててきました。

化学肥料は、「窒素・燐酸・カリ」を成分とし、現代農業は化学肥料と農薬の使用によって、収量を劇的に増大させてきました。

これが現代農業の常識でした。

■ 非常識な科学 ■

今日紹介する「リンゴのが教えてくれたこと」の著者、木村秋則氏は青森のリンゴ農家です。

彼は化学肥料と農薬の恩恵という現代農業の常識に疑いを抱き、「自然農業」の実現にその半生を捧げた人物です。

近代合理主義の洗脳を受けた私達は、「科学は常識的」であると信じています。
たとえ科学の発展の結果、戦争や公害など人間に危害が加わっても、それは人間の倫理観や知識の不足が原因であって、科学そのものを否定はしません。

科学至上主義の反動としての、「自然主義」は存在しますが、それらは科学のアンチテーゼとして存在し、精神論的で夢見がちです。

ところが農業において科学の常識が「非常識」である事を、筆者は科学的に追及していきます。

■ 科学の目とは、常識に疑問を持つ事 ■

古来、有名な科学者は総じて奇人変人です。

浮力の発見に狂喜して、裸で飛び出したアルキメデス然り、教会と戦ったガリレオ然り、エジソン然りです。

彼らに共通するのは「常識」を徹底して疑う科学の目です。彼らの視線に「夢」などありません。あるのは「事物の原理を知ろう」とする冷徹な観察です。この本の著者も同様に「科学の目」で近代農業を見つめます。そして彼は近所から奇人として見られてきました。

■ 農薬を使用しないという事 ■

木村氏は非常に論理的な人物です。農家の次男として生まれ、中学の頃から数学や科学が得意で、暗算に夢中で電柱にぶつかったり、真空管アンプを自作して高校の体育館のスピーカーを壊したり、車のエンジンの改造に熱中するような青年でした。

彼は高校を卒業すると、東京の自動車部品メーカーで原価計算の仕事に就きますが、兄が体調を崩した事から、故郷の青森に戻ります。そして、リンゴ農家に婿養子に入ります。

当時のリンゴ農家は年13回農薬を散布していました。当時の農薬は現在は使用中止になったものも多く、農薬に触れた皮膚は水ぶくれになり、1日で皮がむける有様でした。

農家の人達は、農薬による健康被害に陥り、彼の妻も畑に出れない状況に陥ります。

木村氏は、減農薬を試す為、年13回の散布回数を年6回に減らします。ところが害虫被害は少なくリンゴは同じ様に実りました。そこで彼は年1回の農薬散布を試みます。それでもリンゴは実りました。

そこで彼は無農薬に挑戦します。・・・・しかし畑は病害虫の天国と化してしまします。食害と病害で夏には葉が枯れ落ち、リンゴの木は根元からグラグラとしてきます。

周囲の農家は、害虫を恐れ、彼の畑に勝手に農薬を撒いたり、農薬の袋を畑に置いていったりしました。当然、村の寄り合いや親戚の冠婚葬祭にも呼ばれなくなります。

■ 観察する事 ■

ところが木村氏は諦める事無く、リンゴを食い荒らす害虫を観察し始めます。

害虫の卵は2回に分けて発生し、最初のグループは成長するが、後から孵るグループは益虫の餌になる事。

益虫は害虫が発生しなければ現れない事。

蛾の幼虫の気門が足の付け根にあり、農薬散布の際、彼らは気門を閉じてそれをやり過ごす事・・・。

木村氏はどの本にも載っていない昆虫の生態を次々に見つけて行きます。

一方、リンゴは毎年花も咲かせずに、実もなりません。
彼の長女は学校の作文に「私の父はリンゴ農家です。でも、私は父のリンゴを食べた事がありません」とつづりました。子供達は1個の消しゴムを3つに分けて使い、生活は困窮を極めます。

■ 豆を植える ■

ある日、間違って買った本が豆の本でした。豆の根には根粒バクテリアが共生し、空気中の窒素を固定します。だから豆は痩せた土地にも育ちます。

そこで木村氏は、飼料用の大豆を畑に撒きます。すると大豆はどんどん育ち、近所に配り歩く程、豆が収穫できました。豆が畑に窒素分を供給したのです。

■ 死を覚悟して・・・ ■

しかしリンゴは一向に実りまません。ある日木村氏は死を覚悟して、荒縄を持って山奥に分け入ります。縄を枝に掛けようとした手が滑り、縄が飛んでいってしまいます。

縄を探す木村氏の目前に、月光に照らされたリンゴの木が浮かび上がります。誰も肥料も農薬も与えずに、こんな山奥でもリンゴは育っている・・・彼は我に返り、そして足元の土を観察します。

雑草が茂るその下の土は、ふかふかで甘い香りがします。彼は直感します。この土が出来ればリンゴはきっと実ると・・・。

■ 畑を自然に還す ■

彼は習慣として続けたきた草刈を止めます。

畑は背丈程の雑草に覆われ、そこに昆虫達が帰ってきます。野うさぎが、野ねずみが帰ってきます。

そこで又彼は観察します。
ミミズは一日にコップ一杯の糞をする事。
畑の表土が暫くのうちに、ミミズの糞に代わります。

豆はこぼれた種から雑草の間でも元気に育ち、実をつけます。
硬い豆の枝は、冬の間、雪の下で野鼠の食料になって春には消えています。

■ 花が咲き実が成る ■

完全無農薬から6年目の春、木村氏のリンゴ畑に花が咲きます。
実ったリンゴと糖度が20度を越え、地元のホテルのレストランが彼のリンゴに惚れ込みます。

それでも木村氏の観察は続きます。

豆の根粒バクテリアは、窒素が不足した土壌では一つの根に30粒程度ありますが、窒素が豊富になるとその数を10粒程度に減らします。この時点で豆を抜かないと、リンゴに甘みが乗りません。

リンゴが色付く前に下草を刈り取らないと、リンゴが寒さの到来を感知出来ず、リンゴに色が乗りません。

木村氏は、飽くこと無く観察を続け、試行錯誤を繰り返します。

■ 観察農業と自然農業の違い ■

木村氏は北海道で同じく無農薬栽培に取り組む農家の裁判に呼ばれます。

そこで彼は「観察農業」と「自然農業」の違いを指摘します。
「観察農業」とは、全てを自然に委ね、家の窓から畑を観察する行為。
「自然農業」とは、人間が最低限の手を下し、自然の力を最大限に発揮させる農業。近所とのコミニュケーションも「自然農業」には欠かせないと指摘します。

■ 畑作・稲作への応用 ■

木村氏はリンゴの「自然農法」を確立すると、今度は稲作の「自然農法」に挑戦します。

その方法は至って科学的です。
ワンカップの空き瓶に条件を変えた土壌と稲を植え、観察します。

そして彼は、田を荒く耕す事、田の土を一旦カラカラに乾かす事が稲の生育を促進する事を突き止めます。

「自然農法」による稲作は、化学肥料や農薬は元より、有機肥料も使用しません。草刈も分ケツ期前に数度行うだけです。それでも稲は育ちます。

■ 腐らないリンゴ・腐らない米 ■

「自然農法」は基本的に肥料も農薬も一切使用しません。
有機肥料も使用せず、雑草と豆や、前年のワラのみを使用します。

そうして作られたリンゴは放置しても腐りません。2年経っても、萎びて乾燥するだけで、良い臭いを保っています。
水に混ぜた米も、発酵して最後は酢になります。

ところが、有機栽培されたリンゴや野菜や米は直ぐに腐って、腐臭を放ちます。未成熟堆肥(5年未満)によって栽培された作物は、硝酸態窒素が多く残留しています。

硝酸態窒素は未成熟堆肥に多く含まれ、作物に残留し、その濃度が高い飼料を食べ続けた牛は死に至ります。農水省の指針に従って栽培された有機野菜は硝酸態窒素濃度が高い為に、人体に害を及ぼす可能性があり、また早く腐ります。

むしろスーパーの野菜の方が、有機野菜よりも硝酸態窒素濃度が低く腐り難いという実験結果を木村氏は確認しています。

■ 自然農法は農家の利益を向上させる ■

木村氏は経営者としての視点も忘れてはいません。

自然農法による稲作は、化学肥料や農薬を使用する農業の70%程度の収量です。しかし、農薬や肥料を購入するコストを計算すると、利益はむしろ「自然農法」のほうが高くなります。

草刈の回数も少ないので、高齢者でも負担は少なくて済みます。

さらに、稲が丈夫に育つので、冷害にも強く、台風でも稲が倒れない為、収量が安定しています。

■ 農家の後継者が興味を持ち出した ■

木村氏は数冊の本を出版され、TVにも出演され、年の半分程度を講演に出かけています。
今では農家の後継者達が彼の「自然農法」に興味を持ち、彼の元に教えを請いに訪れます。

彼らは、農薬や草刈など労多く利潤の少ない親達の農業に疑問を持ち、それを継ぐ事にためらいを感じていた若者達です。彼らの疑問に、木村氏の自然農法が答えたのでしょう。

■ 農業の未来・日本の未来 ■

日本は世界で一番化学肥料を投入する農業を営んでいます。化学肥料も、農薬も、そして機械を動かす灯油も石油から出来ています。

日本の農業は1の収穫を得るために5の石油を消費します。(カロリーベースだと思われます)アメリカではこの比率が1対1です。

日本の従来の農業は、エネルギー消費型の農業で、石油価格の高騰に対して脆弱です。

一般的には日本の農業の問題点は、兼業農家が多く規模が零細である事から、生産効率が低い事にあると考えられています。民主党も自民党も、やる気のある農家が大規模経営で収益性を高める事が日本の農業にとって重要だと考えています。

効率化した農業は、人を必要としません。後継者問題を抱える農家だけ見れば、たしかに集約化は避けて通れない道に思えます。

しかし、時代は前代未聞の高齢化と、高失業率の定常化へとシフトしています。年金制度が崩壊した後、国民はどのように生きていけば良いのでしょうか?就職のないまま歳を取り続ける若者達はどうしたら良いのでしょうか?

効率性を重視した農業は、10の面積で3の雇用しか生まないかもしれません。しかし、自然農法では10の面積で10の雇用を生み出すかもしれません。

化学肥料や農薬の購入費が無いという事は、現金収入に依存しない農業で、限りなく自給自足に近い農業です。

たとえ65歳以上の老人でも、生産性を確保する事が出来ます。

■ 「自然農法」という次世代の可能性 ■

これまで何度か、このブログでも自給自足型農業への回帰をテーマとして取り上げてきました。しかし、書いている私自信、農薬や肥料の購入という問題点に引っかかっていました。

「自然農法」はこの点をクリアーしつつ、労力を節約出来る一石二鳥の農法です。

■ 「実物経済」への回帰 ■

グローバリゼーションは世界が現在の日本やアメリカになる事と同義でありません。

中国やインドが発展するのと同様に、日本の中に中国の農村やインドのスラムが現れるのがグローバリゼーションです。

昨日のマイクロファイナンスの記事でも分かる通り、貨幣経済の浸透は、本来「実物経済」が機能していた地方や地域コミニュティーの破壊を意味します。

日本の高齢化による破綻は、未来予測ではありません。これは出生統計的に約束された未来です。さらに、世界的パラダイムシフトにより、日本国民の生産性は低下しています。年金維持の最低ラインである潜在成長率3%など、夢の又夢となっています。

今のままでは「インフレ」によって政府はその帳尻を合わせるしか方法を持ちえませんが、それはこれから老人となっていく私たちの世代も含めて、国民皆が不幸になる道でしかありません。

地方の農業とコミニュティーの再生による「実物経済」の復活は、将来的に過剰な福祉コストから財政を救う事になります。


マイクロファイナンス危機・・・貨幣経済の罠

2010-11-20 14:18:00 | 時事/金融危機

■ 現在の世界の異常性を端的に説明している ■

下のyoutubeは途上国のマイクロファイナンス危機を例に、金融資本家達が現在世界で行っている行為を端的に説明しています。

http://www.youtube.com/watch?v=nh5rjSpy_Qs


<引用>

17日、ドイツの有名経済紙「ハンデルスブラット」は一つの衝撃的な記事を掲載しまし­た。発展途上国で普及してきたいわゆる「マイクロクレジット」が破綻の危機に瀕してい­るというのです。2006年にはグラミン銀行の創始者ムハマド・ユヌスに対するノーベ­ル平和賞授与の理由ともなったこの「マイクロクレジット」。なぜ今、破綻の危機に瀕し­ているのか?これから何が私たちを待ちうけているのか?IISIA代表・原田武夫に聞­きます
実物経済と労働の相互供与で成り立つ途上国や地方経済を、貨幣経済に巻き込む事で、人々は不幸にこそなれ幸福にならない事は、現在の日本の地方や途上国の現状を見ても明らかです。

<引用終わり>

本来、実物経済と労働の相互供与で成り立っていた地方や途上国の経済や社会が何故崩壊に瀕しているのか?貨幣とは何か・・・我々はこの問題を真剣に考えなければ、何度でも同じ過ちを繰り返すのでしょう。








問題は米住宅市場・・・ゴールドマンの動きに注目

2010-11-18 11:26:00 | 時事/金融危機
ゴールドマンサックス 「妖精物語」 5月




ゴールドマンサックス 「妖精物語」 10月



■ 米大手銀行が支える米国市場 ■

先日、ロイターの記事にオバマ大統領のプロジェクト・チームがリーマンショック後に米大手銀行に資金を投入して、株式市場や債権市場を買い支えさせるオペレーションを行っていた事が載っていました。

皆さん薄々感付いている事なので、大して驚きもありませんでしたが、FRBがQE2で投入する6000億ドルも同じように使われるのでしょう。

■ ゴールドマンの投資信託を定点観測すると ■

ゴールドマンサックスが日本で老人達に販売している毎月分配型の投資信託に「妖精物語」という商品があります。国債投資とモゲージと社債を組み合わせてリスクヘッジした商品でリーマンショックによる損失が比較的少なかった商品です。

この商品のポートフォーリオを定点観測すると、何となく米国政府の思惑が透けて見えます。

5月には国債を中心に運用されていましたが、10月にはファニーメイやジニーメイのモゲージ証券が上位を占めています。

モゲージ証券がこれだけ上位を占めた事は今までには無く、資金が国債からモゲージ証券にシフトしている事が伺えます。

■ 一般人は損をする? ■

モゲージ証券市場が持ち直すから買われているのでは無く、モゲージ証券市場が崩壊寸前だからこそ買い支えていると考えるべきでしょう。

ゴールドマンは米証券取引委員会に提訴された件でも分かるように、上顧客にはインサイダーまがいの取引で利益を上げさせますが、一般人の資金はその為の撒き餌程度の扱いをする企業です。

サブプイライムローンも一般の商品に混入させておきながら、その一方では空売りのポジションを取って大儲けをしています。

日本人向けの投資信託の資金など、彼らにとっては撒き餌の材料でしか無いかもしれません。

■ モゲージ証券市場は支え切れるのか? ■

米国では10月の住宅着工件数が1年半ぶりの低調でした。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18226720101117
(ロイター記事)

リーマンショック後、FRBが銀行の所有するモゲージ証券を買い上げる事で生き延びてきた米住宅市場ですが、高止まりする失業率の影響で、住宅市場は全く回復していません。

事実上の破綻企業であるファニーメイやフレディーマックのモゲージ証券はハイリスク証券です。こんなジャンクには誰も手を出さないはずなのに、ゴールドマンの投資信託の運用先に不自然なまでに名を連ねています。

これは、政府・FRB・銀行が必死になって住宅債権市場を支えている姿以外の何者でもありません。QE2の資金6000億ドルと、日本人の老人の資金で、米国住宅市場を支えているのです。

■ 国債より緊急性の高い住宅市場 ■

アイルランドのGDPの6倍にも上るデリバティブ残高を見るまでも無く、世界の金融機関が積み上げた負の資産は全く解消されていまません。

得に米住宅債権市場は現在もメガトン級の核爆弾です。

国債消化も危急の課題ですが、住宅債権市場はもっと危機が高まっているのでしょう。

「米国債をFRBが直接買い入れ、供給されたドルで銀行が住宅市場を支える」というのが、今回のQE2の実態でしょう。

・・・・ところで、フレディーマックの名前が見当たらないのは何故?
ちょっとしたミステリーです。

国債バブル崩壊の足音?

2010-11-17 05:02:00 | 時事/金融危機


■ 各国の国債金利りが上昇している ■

上のグラフは米国・EU・日本の国債金利りのグラフです。10月以降、長期国債を中心に利回りが上昇に転じている事が分かります。国債利回りりの上昇は、市場での国債価格の下落と同義です。

日本人の目が尖閣問題に集中する中で、世界の金融市場では明らかな変化が起きています。

この傾向は日米欧に限った事では無く、世界全体で起きています。
http://globalmarketwatch.net/mt/2008/01/post-5.html


■ アメリカの量的緩和は効果が期待出来ない? ■

FRBは6000億ドルの米国債購入プログラム(QE2)を開始しましたが、買い入れによって下がるべき短期金利も上昇しています。

共和党を中心にQE2の効果を疑問視する発言も多く聞かれます。

① 需給ギャップが改善しない中で民間の資金需要は低い
② 量的緩和は実体経済の回復に寄与しない
③ 過剰流動性により金融が不安定化する
④ 量的緩和はFRBの米国債の直接買い入れ以外の何物でもない
⑤ QE2によってアメリカの財政赤字が膨らむだけ
⑥ 金持ちの減税政策が延期されても実体経済の改善は見られないであろう

⑦ 過剰に供給されたドルがアジアでバブルを助長する
⑧ 過剰に供給されてドルが資源価格を高騰させる

■ ヨーロッパで再発した国債危機 ■

一方、アイルルランドやポルトガルの国債リスクが顕在化して、ヨーロッパでも国債リスクを意識させられる状況が発生しています。

しかしアイルランドやポルトガルの財政規模は小さいので、EUの支援によって、1、2年は延命が可能です。実際にIMFを中心にアイルランドを支援する様です。

ヨーロッパの国債危機は現実問題ですが、過大に宣伝する事で、ユーロ安に誘導する効果が生じています。ヨーロッパのソブリン危機は、通貨安戦争の一端と見る事も出来ます。

■ 通貨安戦争はフェイク? ■

G20でも問題となった「通貨安戦争」ですが、実体経済が痛んでいるだけに、「通貨安政策」なのか、「本当に通貨安」なのか見極めが必要です。

もし「本当に通貨安」ならば、ペーパー・マネーの信用が失われている訳で、それを「通貨安戦争」という言葉で誤魔化している事になります。


■ ドル上昇の怪 ■

通貨安政策の一環と思われていたQE2の発動と同時にドルが上昇しています。

従来ですと、金利差からドルが買われると解釈すべきなのでしょうが、QE2が開始されれば米国債の金利は下落するかもしれません。市場はQE2の効果は薄く、米国債の金利上昇はしばらく続くと見ているのでしょうか?

■ ヘッジファンドの決算 ■

ヘッジファンドの決算は11月です。

彼らは決算を前に、債権と株を売り、ドルを買っている可能性があります。
短期的には、この影響は無視出来ません。

国債金利の上昇や、ドル高、株安などここ最近の変化が、長期的な傾向なのか、ヘッジファンドの影響なのかは、もしばらくの様子見が必要でしょう。

■ アメリカの住宅市場次第で世界の運命が決まる? ■

リーマンショック以降アメリカ政府が必死でテコ入れしてきたのは「住宅市場」です。

FRBがMBS(住宅担保証券)を買い支え、政府がフレディーマックとファニーメイを事実上国営化して、実際には崩壊している住宅市場を延命させてきました。

アメリカ人にとって、住宅価格の上昇こそが打ち出の小槌であり、住宅価格の下落は、借金地獄を意味します。

アメリカ経済全体が住宅バブルで支えられていたので、住宅市場のさらなる下落は、米国経済のさらなる悪化と同義です。

アメリカ経済はここに来て息切れ感が強く、職を失いつつある米国人が家を買おうなどという気にならないのは当然です。さらには、差し押さえられた中古住宅が在庫の山となり、住宅市場はさらなる下落を約束されています。

差し押さえ問題を抱えるバンカメの今後の動向によっては、金融危機の第二波がいつ発生してもおかしくありません。

■ 今度はソブリンショック ■

各国が財政赤字を限界まで膨らめている現在、金融危機の第二波の到来は、ソブリン・ショックという大津波を引き起こします。

事、ここに至って、日本国債の保有者だけが、そのリスクから目を背ける事が出来るでしょうか?邦銀や生保が国債を買い控えるだけで、日本国債の暴落が始まり、後は我先に売り抜けようとするのが人間の性です。

郵貯50兆円と年金を総動員して買い支えるのでしょうが、事そこに至れば、国民も郵貯から預金を引き上げるでしょう。一瞬にして郵貯は破綻します。

後は日銀の国債の直接引き受けから、通貨増刷によるインフレが発生し・・・。

悪夢が現実になる日が来るのでしょうか?