Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

最後のマイウェイ

2013年08月08日 | 2010年代 欧州

最後のマイウェイ(原題:Cloclo)

2012年 フランス
監督:フローラン=エミリオ・シリ
製作:シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン
脚本:ジュリアン・ラプノー、フローラン=エミリオ・シリ
出演:ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル、マルク・バルベ、モニカ・スカッティーニ、ジョセフィーヌ・ジャピ、
ロバート・ネッパー、モード・ジュレ、サブリナ・セブク、アナ・ジラルド

1960年代~70年代にかけて活躍したフランスのポップスター、クロード・フランソワの生涯を綴る。



通算で6700万枚以上ものレコードを売りあげたフランスのスーパースター。
彼の代表曲のひとつ「Comme d'Habitude」は、新たな英語の歌詞をつけてフランク・シナトラが歌い、
「マイ・ウェイ」として世界的に知られている。



クロード・フランソワを演じたのは、実力派俳優ジェレミー・レニエ。画像をみると、ばっちり似せてきてる!
17歳頃~39歳までを熱演しているのですが、青年時代はどうしても無理がある・・・な。
が、その後のあまりの成りきりぶりに、ぐいぐい惹き込まれる。

クロード・フランソワは、1939年エジプトでスエズ運河の運行管理に関わる実業家の息子として生誕。
裕福な子ども時代を送ったが、スエズ運河国営化によって職を失った一家は、モナコに移住を余儀無くさせられる。
家計を助けるために、クロードは楽団にドラマーとして雇われることになった。

その楽団で唄い始めたクロードは、パリに進出し、レコード会社フィリップスと契約。
ファーストシングルは失敗に終わったものの、セカンド・シングル「ベル!べル!べル!」は200万枚のセールスを記録した。
一躍トップスターの座を獲得し、敏腕マネージャーがつくようになる。

このマネージャー役のブノワ・マジメルも、圧倒的な存在感があった。
ほぼムッとした表情を変えないのだけど、その中に喜びも哀しみも驚きも詰まっていて
小さな目の動きで、何を考えてるかが伝わってくる。

絶好調のクロードが恋に落ちたのは、フレンチポップ界のアイドルであるフランス・ギャル!
うわあ、彼女がクロード・フランソワと熱愛関係にあったなんて、全然知らなかった。
この頃のフランス・ギャルといえば、15、16歳。デビューしたばっかりじゃないですか。
うーむ、したたかだわ。女としての強さもみえ、彼女のイメージがちょっと変わったなぁ。

ギャルとの破局後は、家庭的なイザベルと結婚し、二児の子どもにも恵まれたクロード。
(ちなみにギャルの本名もイザベル・・・)
マネージャーとの決別後は、自らのプロデュースを細部にわたり拘り抜いて行い、世界ではじめて
ファンクラブを立ち上げ、出版社やモデル事務所を経営するなど実業家としての才能も発揮した。
アメリカ、イギリスのヒット曲を自在にカヴァーし、自らの作詞・作曲ナンバーも多数。勢力的に
公演を行い、39歳までの生涯を一気に駆け抜けた・・・。

見終わって感じたのは、この傲慢で独善的で革新的なエンターティナーは、フランス国民に深く深く愛されたのだという事。
なんだろう、この創り手のなみなみならぬ愛は。
もちろん愛がなきゃ、その人の映画なんて創らないだろうけど。それだけじゃない、違和感があった。
そこでもう一度、映画のチラシを読み返して、納得。クロード・フロンソワの息子たちが「世界デビューする直前に、39歳で
夭逝した父を世界に伝えるチャンスを与えてやりたかった」と全面協力しているのだ。
ひとつとして描き漏らしたくないというようなエピソードの詳細さや、心の傷までをもみせるようなプライベートシーンの多さに
それが現れていると思う。
当時の華やかなエンターテイメント界を上っ面で再現するのではなく、リアリティをも感じることのできる作品だ。