ゆっくり急ぐ

産経新聞論説委員の清湖口敏氏が「ゆっくり急げ世の中の道」と題した一文を書かれていました。戦後の日本は、ヨーロッパ諸国とは比べ物にならないくらい短期間に経済成長を遂げましたが、その成長があまりにも速かったため、それにふさわしい精神の鍛錬を身につける時間がなかった…というような苦言を呈しておられました。

何にせよ、特殊なある一分野だけの技術を手にして、それこそがマイスターであるかのような錯覚に陥るべきではないと思います。プロと称されるべき人は、その特殊な一分野の技術だけでなく、あらゆる方面に人間としてバランスが取れていなくてはならないし…それこそが「プロ」であると私は思っています。ですから、パソコンはパソコンさえできればそれで良いのではない…と言う風な理論に発展するのです。「分からない」とはき捨てるように口にされている間は、パソコンに近づく入口が分からなくて当たり前だし、技術を習得していく過程と言うものがどのようにあるべきかを棚に上げての技術習得はあり得ないと私は思っています。

ともすれば、パソコンの技術を求める方は、パソコンさえできればそれでよいと思われている場合があります。と言うか、パソコンの技術といった世界に、それ以外のものが入り込む余地などあるはずがないと思っておられるのでしょう。とにかく「手っ取り早く」「効率よく」、使えさえすればそれで良い、そんな風に短絡したくなることも良く分かります。

でも清湖口敏氏が言われるように、時間をかけてゆっくりと上昇していくにつれ、それにふさわしい精神をゆっくり鍛錬し身につけていくことができるのだと思います。氏は大リコール問題に揺れたトヨタにも、政権を奪取した民主党にも、同様の奢りや破綻の兆しを指摘されます。

幼い頃より、とにもかくにも合理性ばかりを追求して、走り続けているような今の日本に、精神を高めようとする視点が抜けているのは確かです。


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