奥井みさき、旅の記録と徒然日記

仕事の合間に旅行、旅行の合間に仕事。
フリーライター・奥井みさきの旅日記と、日々思うこと。
札幌からです。

放牧のまち足寄から…前

2009-06-18 08:31:59 | 農業を考える
明治乳業ではこの度、
足寄町で放牧された乳牛から搾乳した生乳を使った牛乳を発売します。

その名も、“明治北海道十勝牛乳 放牧のまち足寄から”(1000ml)。

販売地域は関東甲信越地区で牧草の生育が旺盛な6月~9月の期間限定、
希望小売価格は250円(税別)です。
実売価格はどれくらいになるのでしょうね?

北海道は広大な農地があり、それを生かした農業が盛んなのはご存知の通りです。
酪農でいえばかつては、夏は広大な牧草地に乳牛を放牧し
朝晩の2回だけ牛舎で搾乳するというスタイルが一般的でした。

冬は放牧ができないので牛舎の中で飼育、
夏の間に貯蔵していた干草やサイレージ(醗酵させたデントコーンなど。サイレージの貯蔵庫がサイロ)と、
それで足りない分を業者から買った配合飼料で補っていました。

つまりかつての酪農では乳牛の餌に関してはかなり自給できていたのですね。

ところが最近は大規模化に伴い北海道でも放牧せずに牛舎で飼育し餌は輸入した配合飼料、
というところが多くなってきました。

この方法の利点は、搾乳量が多くなること。
配合飼料は栄養価が高いので乳量が増え、それに伴い酪農家の収入も増えます。

欠点はコストがかかること。
世界的な穀物不足により飼料価格が上昇、
農家の経営を圧迫したというニュースを覚えている方も多いでしょう。
穀物メジャーに支配されている飼料価格は様々な要因で世界的に値動きすることも多いのですね。
また狭い牛舎の中に居続けるため乳牛にもストレスがかかります。

放牧の利点は、コストが安いこと。
北海道の酪農家の生乳販売高に対する飼料費の割合は一般的には3~4割と言われていますが、
放牧を中心とした酪農をしている農家では2割前後。
機械作業も少ないため燃料費もメンテナンス費用も少なく済み、労働時間も短くできます。

欠点は、搾乳量が少ないこと。

結果として酪農業は規模や搾乳量を追及するほど配合飼料を多用することになりがちで、
コストも上昇する傾向にあります。
そうするとますます効率化を目指し、大規模化へ進むことに。
この飼育方法では乳牛にもストレスがかかり、病気にもかかりやすくなり乳質も落ちるという報告もあります。

それに対して放牧を中心とした酪農は、
乳牛の頭数は牧草地の広さで決まるため規模を追求できません。

ですが無理にコストをかける必要もないために借金も少なく農業所得も増え、
経営的にはかえって安定することがあります。
当たり前のことですが自然のまま牧草地で育ち天然の牧草を食べた乳牛は健康で乳質もいい。
このあたりのことについては、
“マイペース酪農ー風土に生かされた適正規模の実現ー”(著者:三友盛行、出版:農文協)などに詳しく出ています。


後半に続きます
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする