渡瀬さん(西九州大准教授)ドーピング検査で五輪へ 佐賀県内唯一のライセンス保持者
西九州大健康福祉学部准教授の渡瀬浩介さん(63)=佐賀市=が、東京五輪のドーピング検査員に委嘱された。フェアプレーに反し、選手の健康を害する恐れのある行為に目を光らせる重要な任務に「スポーツの価値を守るため、誇りと責任を持って大会を支えたい」と意欲を見せる。
元中学教諭の渡瀬さんは2004年に県体育協会(現県スポーツ協会)へ出向し、事業課長としてスポーツ医・科学委員会の中に「アンチ・ドーピング部会」を立ち上げた。研究や啓発活動に力を入れつつ、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)のドーピング・コントロール・オフィサー(DCO)の資格取得に医師らとともに勉強を重ね、08年に取得した。
禁止物質を使って競技能力を高めるドーピング。DCOは不正防止のため、選手の尿などの採取に立ち会う。県内では一時、渡瀬さんを含め、医師や薬剤師ら6人がDCOのライセンスを保持していたが、更新のため、試験が2年ごとに課されるなど継続の難しさから失効者が増加した。
現在、県内で実働するDCOは渡瀬さんだけとなったが、「部会を立ち上げた責任を果たすため、東京五輪を活動の集大成の場にしたい」と五輪を見据えた研修会などに参加してきた。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響でスポーツイベントが軒並み中止となり、渡瀬さんも検査実務から1年以上遠ざかった。五輪が延期となり、「潮時かな」とも考えたが、「24年に佐賀県で開かれる国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会でもドーピング検査が行われる。反ドーピングの精神や取り組みを佐賀のみなさんに知ってもらう機会になれば」と思い直した。大会組織委員会から協力依頼があり、このほど委嘱状が届いた。
「最高峰の大会で命がけでメダルに挑む選手もいる。現場の緊張感は相当なものだろう」と渡瀬さん。実務からしばらく離れており、不安もあるが、「公平、公正に競い合うスポーツの価値を守るため、大会までに検査スキルを高めて臨みたい」と話す。(古川公弥)
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