知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

法29条2項による拒絶査定中で「なお書き」で指摘した不明瞭な記載に対する釈明

2012-04-07 10:16:15 | 特許法17条の2
事件番号 平成23(行ケ)10226
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年03月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は,平成13年12月7日,・・・特許を出願したが(・・・),平成20年12月10日付けで拒絶査定を受けたので(甲5),平成21年3月16日,これに対する不服の審判を請求し,同年4月15日,手続補正をした(甲3。以下「本件補正」という。)。
(2) 特許庁は,前記請求を不服2009-5748号事件として審理し,平成23年3月7日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その謄本は,同月18日,原告に送達された。
 ・・・

第4 当裁判所の判断
 ・・・
イ 本件補正のうち,本願発明の特許請求の範囲の記載にある「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めた点についてみると,原告は,被告が平成20年12月10日付け拒絶理由通知(甲5)において
「なお,本願発明は,店頭等での商品の「配列」(「物」か「方法」か必ずしも明確ではない。)そのものを発明としている。これは,顧客への商品の訴求効果の増大を目的とする商業上の取り決めにすぎないともいえ,本願発明は,特許法が対象とする発明,即ち自然法則を利用した技術的思想の創作であるのかに疑義が残る。」
と指摘したことから,これを受けて,出願に係る発明を物の発明として特定する趣旨で,「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めたものと認められる(乙1)。
 ところで,「配列」とは,一般に,「ならべつらねること。順序よくならべること。また,そのならび。」(乙2。広辞苑第4版)を意味するものの,本願発明においては,上記拒絶理由通知も指摘するとおり,その技術的意義が必ずしも明らかであるとはいい難い。

ウ そこで,本件明細書の記載を参酌すると,・・・。
 このように,本願発明における「配列」との文言は,依然としてそれ自体が特許法2条3項にいう「物」であるのか「方法」であるのかが必ずしも一義的に明らかではないという点が残り,・・・。

 このことを前提として,本件補正後の請求項1ないし56をみると,これらの発明は,いずれも「販売ディスプレーシステム」を発明の対象としている・・・。

 以上によれば,本件補正のうち,「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めた点は,前記イの平成20年12月10日付け拒絶理由通知(甲5)が「配列」との文言について示した事項について原告による釈明を目的としたものであり(法17条の2第4項4号),併せて,店舗におけるディスプレー(製品の配列)及び選択装置(しるしの配列)の双方を包含していた本願発明の特許請求の範囲を減縮するため,店舗におけるディスプレー(製品の配列)に限定することを目的としたもの(同項2号)とみることができる
 したがって,本件補正が結果として明瞭でない記載について釈明の目的を達したか否かはしばらく措くとしても,本件補正のうち上記の点は,法17条の2第4項2号及び4号に該当するものというべきであって,少なくとも,上記の点が同条に違反するとの本件審決の判断は,誤りであるというほかない。

<筆者メモ追記>
・ 不明りょうな記載の釈明が結果責任であることについて、
  平成18(行ケ)10547 平成19年10月31日 知財高裁 三村良一裁判長 過去ブログはここ
  平成22(行ケ)10325 平成23年05月23日 知財高裁 中野哲弘裁判長 過去ブログはここ

・ 進歩性を理由とする拒絶査定等に拒絶理由を構成しないと記載した後に記載不備を指摘した場合
  平成18(行ケ)10055 平成19年09月12日 知財高裁 飯村敏明裁判長 過去ブログはここ

・ 独立特許要件違背による補正却下の際に記載不備を指摘した場合
  平成22(行ケ)10188 平成22年12月15日 知財高裁 滝澤孝臣裁判長 過去ブログはここ

  

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