知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

明細書の記載に係る補正に旧特許法17条の2第4項の適用はないとした事例

2012-07-01 21:40:36 | 特許法17条の2
事件番号 平成23(行ケ)10299
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年06月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文

 審決は,本件補正は,特許請求の範囲の減縮に当たらない上,請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないから,旧特許法17条の2第4項1号ないし4号のいずれにも該当しないとして,これを却下した。
 しかし,審決の上記判断には誤りがある。すなわち,旧特許法17条の2第4項は,特許請求の範囲についてする補正に係る規定であるところ,本件補正は,前記第2の3記載のとおり,明細書の段落【0011】の「追跡する」の後に,英語で追跡を意味する語である「track」を付け加えるものであって,特許請求の範囲についてする補正に当たらない。これに対し,被告は,本件補正は,実質的に特許請求の範囲についてする補正であり,旧特許法17条の2第4項が適用される旨主張するが,明細書の記載に係る補正に同条同項の適用があると解することはできず,主張自体失当である。

(筆者メモ)
cf.
「1.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内(特§126⑤、平15特§126③)について
   ・・・
   特許請求の範囲に記載された請求項について、その内容、殊に目的、範囲、性質などを実質上拡張又は変更するものである。その具体例を以下①~⑨に示す。
   ・・・
  ⑨ 請求項の記載そのものは訂正しない場合であっても、発明の詳細な説明又は図面を訂正することによって、上記①~⑧に実質上該当するに至った場合。」(審判便覧54-10第7頁)

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