知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

サポート要件及び実施可能要件を否定した審決を支持した事例

2013-05-06 21:16:53 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10052
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平,裁判官 池下朗,古谷健二郎

2 本件発明2の特許請求の範囲において,昇温結晶化温度が128度以上,かつ,結晶化熱量が20mJ/mg以上という数値範囲は,いずれもシート層,すなわち,容器成形前の状態における物性値を規定したものと認められる。これに対し,本件明細書においては,上記1で認定したとおり,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の数値は,いずれも容器成形後の容器切り出し片を対象として測定されたものであり,明細書において,特許請求の範囲に記載された容器成形前のシート層に関する記載は認められない

 このように,本件明細書には,昇温結晶化温度及び結晶化熱量について,特許請求の範囲に記載された「シート層」の数値範囲を満たすことによって課題の解決が可能であることを示す直接的な実施例等の記載がなく,これとは異なる測定対象に係る数値しか記載されていないところ,本件明細書の比較例2(・・・)には,容器成形後の容器切り出し片について,昇温結晶化温度が127度,結晶化熱量が19mJ/mgの場合であっても容器側面の光沢がないと記載されている。すなわち,特許請求の範囲で構成する数値範囲から,容器成形によって,昇温結晶化温度が 1 度,結晶化熱量が1mJ/mg外れただけでも課題が解決できないことになるのであるから,本件発明2が本件明細書に記載されている,あるいは,本件発明2の「光沢」黒色系容器が本件明細書に実施可能に記載されているというためには,昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値について,容器成形前のシート層と容器成形後の容器切り出し片との間で,当業者が通常採用する条件であればこれらの物性値が不変であるか,当業者が通常なし得る操作によりこれらの物性値の変化を正確に制御し得るか,あるいは,これらの物性値が変化しないような成形方法や条件が本件明細書に記載される必要があるというべきである。

 そこで検討するに・・・これに対し,原告提出に係る実験結果報告書・・・,被告提出に係る実験結果報告書・・・に照らすと,成形温度のみならず,成形時間や延伸の程度によっても,上記の物性値は変化するものと認められるのであって,当業者であっても,それらの物性値の変化を正確に予測したり,制御したりすることは容易ではないと認められる。さらに,上記の物性値が変化しないような成形方法や条件について,本件明細書には記載も示唆も認めない

 以上のとおりであるから,本件発明2は,技術常識を参酌しても,発明の詳細な説明によりサポートされているとは認められず,特許法36条6項1号の要件を満たさない。 また,本件明細書に,成形条件による上記の物性値の制御について記載や示唆がないことからすると,当業者といえども,本件発明2に係る光沢黒色系の包装用容器を製造することは容易ではないというべきであるから,本件発明2は,平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項の要件を満たさない。

明確性要件を満たしていないとした事例

2013-02-17 21:54:12 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10158
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 井上泰人,荒井章光

 そして,本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,主界面について,「・・・」ものとしており,本願発明が備える「主界面」について,他の構成である「素子」との位置関係及びそれ自体の形状について明確に特定しているものといえる。したがって,本願発明における「主界面」の構成は,本願発明1の特許請求の範囲の記載において明確にされているということができる。
 また,本願発明9に係る特許請求の範囲の記載は,2次界面について,「・・・」ものとしており,本願発明9ないし11が備える「2次界面」について,それ自体の形状について明確に特定しているものといえる。

イ しかしながら,本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,「主界面」と「2次界面」とは,同一の形状で特定されているばかりか,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,「主界面」と「2次界面」との位置関係が記載されていないため,両者を区別することができず,また,本願発明の属する技術分野における技術常識を参酌しても,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,一義的に明らかであるとはいえない

 そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると,そこには,本願発明における「界面」について,・・・とする旨の記載がある(【0018】前記(1)オ)が,当該記載は,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を説明するものではない。また,本願明細書の発明の詳細な説明には,素子の面取りされた側部や素子の端部エッジにもテクスチャ形成を施すことが望ましいとの記載がある(【0034】。前記1キ)が,これらのテクスチャ形成が施される箇所が,本願発明における「主界面」と「2次界面」のいずれに相当するかを特定する記載はない
 さらに,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明9ないし11について記載した箇所もある(【0051】~【0053】。前記1(1)ケないしサ)が,ここには,本願発明9ないし11の特許請求の範囲の記載と同じ内容が記載されているにすぎず,本願発明の「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を明らかにするものとはいえない

ウ 以上によれば,本願発明にいう「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかではなく,両者を区別することはできないというほかない。
・・・
(3) 小括
 以上によれば,本願発明における「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,不明であり,両者を区別することはできないから,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,本願発明9ないし11の構成が明確に記載されていないというほかない。
 よって,本件出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

明確性要件を満たさないとした事例

2013-02-10 20:11:07 | 特許法36条6項
事件番号 平成23(行ケ)10418
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月25日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、八木貴美子,小田真治

3 取消事由3(明確性要件についての判断の誤り)について
(1) 「表面ヘイズ値hs」及び「内部ヘイズ値hi」の測定方法について
ア 本件特許発明は,防眩フィルムを構成する「透明基材フィルム」,「透光性拡散剤」,「透光性樹脂」の構造等によって特定されるのではなく,主として,防眩フィルムの「表面ヘイズ値hs」及び「内部ヘイズ値hi」の数値範囲によって特定される発明である。したがって,特許請求の範囲の記載が明確であるためには,少なくとも,「表面ヘイズ値hs」及び「内部ヘイズ値hi」の数値の測定方法(求め方)が一義的に確定されることが必須である

イ 「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩層」における内部ヘイズ値hiの測定方法は,発明の詳細な説明の記載を参照し,かつ出願時における技術常識によっても,明らかとはいえない。その理由は,以下のとおりである。
・・・
 そうすると,「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩層」の内部ヘイズ値を測定する方法は,発明の詳細な説明の記載,及び本件特許の出願当時の技術常識によって,明らかであるとはいえない。内部ヘイズ値が一義的に定まらない以上,総ヘイズ値から内部ヘイズ値を減じた値である表面ヘイズ値も一義的には定まることはない。内部ヘイズ値・表面ヘイズ値を一義的に定める方法が明確ではないから,本件特許発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号の「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件を充足しないというべきである。

特許法法36条5項2号の要件を満たすとした事例

2012-12-16 22:54:57 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10007
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子,小田真治
特許法法36条5項2号

当裁判所は,本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,法36条5項2号の要件を満たすと判断する。その理由は以下のとおりである。

ア 「せき止め空間」について
(ア) 「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」は,本件発明1の技術分野である流体力学の分野における学術用語ではない(・・・)。一般に,「せきとめる」には,「さえぎりとめる。さえぎる。」の意味があり,流体力学の分野では「せき」とは,「水路を板又は壁でせき止め,これを越えて水が流れる場合」を意味するが・・・,これらを前提としても,特許請求範囲の記載のみから「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」の意義を一義的に確定することは困難である。

(イ) そこで,本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載事項を参照することとする。発明の詳細な説明には,「せき止め空間」あるいは「せき止め空間のない」に関し,①・・・,②・・・,③・・・,④・・・との記載がある。
 上記①ないし④のとおりの発明の詳細な説明の記載を参照すると,「せき止め空間」(液体せき止め空間)とは,同空間において液体が静止するために,透過するレーザービームにより温度が上昇し,これによって発生した熱レンズによってレーザービームの焦点がずれ,ノズル壁の損傷を引き起こす空間を意味すると解すべきであり,「せき止め空間のない」とは,上記の意味での空間がないとの意味に解するのが相当である。もっとも,流体空間が一つの連通空間である場合,空間内で流速は連続的に変化し,流速が完全に零になることはないと認められるから,ここでの「静止」とは,流速が完全に零であることを意味するものではなく,ほぼ零を含むと解すべきである。
 原告は,液体供給空間の高さが特定されない限り「せき止め空間」の有無を判断できないとも主張するが,「せき止め空間」は前記のとおりと理解されるものであって,液体供給空間の高さが特定されない限り「せき止め空間」の有無を判断できないものではない。

イ 「流体の速度が,十分に高く」について
 特許請求の範囲には「十分に高」いとされる液体の速度については特段の数値限定等はされておらず,その意義を特許請求の範囲の記載から,一義的に確定することは困難である。そこで,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると,液体の流速については,・・・との記載がある。
 これらの記載からすると,「液体の流速が,十分に高く」することは,液体がレーザービームによって加熱される時間を短くすることで熱レンズの発生を防止しようとするものであるから,「液体の流速が,十分に高く」とは,「フォーカス円錐先端範囲(56)において,レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで,熱レンズの形成が抑圧される」程度に流速が高いことを意味するものと解される

ウ 小括
 以上のとおり,「せき止め空間」及び「液体の速度が,十分に高く」のいずれについても,その意義は明確であり,本件特許に係る特許請求の範囲の記載には,法36条5項2号の規定に反する不備はない。

サポート要件と実施可要件の使い分け

2012-11-04 10:32:54 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10076
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法36条6項1号

(3) 被告は,本件出願時の技術常識を考慮すると,0~10ppm のトリ-tert-ブチルフェノールの混入物を含むDTBP単量体,すなわち本願発明の原料成分を入手することは困難なものであったから,該DTBP単量体の具体的入手手段について何ら明らかにされていない発明の詳細な説明の記載に基づいて,本願発明の組成物を具体的に製造できるとは到底いえないとか,本願発明の組成物の具体的な製造を確認した例は記載されておらず,これらが技術常識により当然に予想できるとする技術的根拠も記載されていないのであるから,「特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明」であるということはできないと主張する。

 しかし,発明の詳細な説明の記載と出願時の技術常識からは本願発明に係る組成物を製造することはできないというのであれば,これは特許法36条4項1号(実施可能要件)の問題として扱うべきものである。審決は,本件出願が特許法36条6項1号(サポート要件)に規定する要件を満たしていないことを根拠に拒絶の査定を維持し,請求不成立との結論を出したものであるから,被告の上記主張は,審決の判断を是認するものとしては採用することができない。

 なお,被告は本願発明の具体的な製造を確認した例の記載はないと主張するが,サポート要件が充足されるには,具体的な製造の確認例が発明の詳細な説明に記載されていることまでの必要はない。

サポート要件-明細書に記載の複数の課題がすべて解決されることを要するか

2012-11-04 10:26:01 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10076
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法36条6項1号
 
(2) 被告は,発明の詳細な説明には,向上した酸化安定性及び低い生物蓄積性という課題を達成し得ることの技術的裏付けが記載されておらず,また,向上した酸化安定性及び低い生物蓄積性の課題を達成し得ることが技術常識により当然に予想できるとする技術的根拠も記載されていないと主張する。

 しかし,技術常識を参酌して発明の詳細な説明の記載をみた当業者が,本願発明の構成を採用することにより,向上した酸化安定性という本願発明の課題が解決できると認識できることは前記のとおりである。

 また,発明の詳細な説明には,生物蓄積性についての課題が解決できることを示す記載はない。しかし,発明の詳細な説明の記載から,本願発明についての複数の課題を把握することができる場合,当該発明におけるその課題の重要性を問わず,発明の詳細な説明の記載から把握できる複数の課題のすべてが解決されると認識できなければ,サポート要件を満たさないとするのは相当でない

明確性の判断時に明細書の誤った説明記載よりも技術常識を優先した事例

2012-10-29 03:29:24 | 特許法36条6項
事件番号  平成24(行ケ)10040
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月15日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子,田邉実
特許法36条6項2号 (明細書の誤った説明記載よりも技術常識を優先)

2 ・・・
 段落【0040】には「“反り”の定義」として,「中心に対するロール縁部の放物線状直径増大」であるとの記載があるが,その「反らされている」の意味を,段落【0040】の「“反り”の定義」のとおり,中心に対してロール縁部が放物線状に直径が増大すると解したとすると,ロールが湾曲した状態では,ロールギャップ内の形状は下記の【図1】に示すように線状とはならないため,フィルムの中央部分の厚さが大きくなり,全幅にわたって均一な厚さ分布とすることができず,ロールが「フィルムの全幅にわたって均一な厚さ分布とするために」反らされていることと矛盾するよって,「反らされている」の意味を,段落【0040】の「“反り”の定義」のとおり解することは,不自然である。一方,「反らされている」の意味を,上記技術常識のとおり,ロールの縁から中央に向かって放物線状に直径が増加すると解したとすると,ロールが湾曲した状態では,ロールギャップ内の形状は下記の【図2】に示すように線状となり,フィルムの全幅にわたって均一な厚さ分布とすることができ,上記のような矛盾を生じることがない。
zumen.jpg

3 発明の詳細な説明を理解するに際しては,特定の段落の表現のみにこだわるべきではなく,全体を通読して吟味する必要がある。「反らされている」との請求項の文言において,これが技術的意味においてどのような限定をしているのかを特定するに際しても,同様である。
 上記2で分析したところによれば,請求項5における「ロール(110)が反らされている」について,特許請求の範囲の記載のみでは,具体的にどのように反らされているのか明らかでないものの,発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すれば,その意味は明確である
というべきである。発明の詳細な説明に記載された「“反り”の定義」が誤りであるとしても,当業者は,上記「“反り”の定義」が誤りであることを理解し,その上で,本願発明5における「ロール(110)が反らされている」の意味を正しく理解すると解することができるというべきである。上記「“反り”の定義」が誤りであるからといって,請求項5が明確でないということはできない。

(所感)
 一見したところでは、当業者でも最終クレームの用語の意味するところを裁判なしには確信を持って確定できない事例のように感じる。
 裁判なしに独占権の境界を明確にして競業他社の萎縮効果を排除することで、低コストで産業の発展に資する特許を生み出すというのが法36条6項2号の使命であるはず。
 この事例に類する難解なクレームを適法とすると、出願人は救済されるというメリットはあるが、裁判なしでどこまでが権利侵害か確信をもてない競業会社、特許庁の審査・審判、に萎縮効果が生じる。結果、このような「難解なクレーム」が量産され、萎縮効果がじわじわと拡大し、特許制度のコストがますます高くなっていくのではないかと懸念する。
 顕在化している出願人の救済が優先され、潜在的なコスト高のデメリットは問題とされていないということかも知れない。

具体的実施例がなくとも他の発泡剤と同様であるとしてサポート要件を認めた事例

2012-10-28 21:09:48 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10016
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
特許法36条6項1号

 ・・・本願明細書に記載された発明は,発泡剤として成分a)HFC-365mfcを低沸点の脂肪族炭化水素等である成分b)と組み合わせて用いることを特徴とするポリウレタン硬質フォームを製造する方法で,そのような発泡剤を用いることにより,低温において熱伝導率が低く,熱遮断能を有するポリウレタン硬質フォームが得られるという効果を有することが判明したというものである。
 成分b)としては,低沸点の脂肪族炭化水素等である具体的化合物が多数列挙され,本願発明のHFC-245faは,ひとまとまりの一定の発泡剤の中で有利なものとして記載され,実施例においても,HFC-152aを用いた場合(例1a),HFC-32を用いた場合(例1b),及びHFC-152a及びCO2を用いた場合(例1c)が記載されており,それらを同等に扱うことができないとする事情は見いだせないから,HFC-245faを用いた実施例の記載がなくとも,これを成分b)として使用することができると解すべきである。

 そうすると,特許法36条6項1号の「サポート要件」の判断にあたっては,本願明細書において,成分b)としてHFC-245faを選択することの技術的意味や作用効果について,更なる記載を求めるべき理由はなく,また,成分b),特にHFC-245faが発泡剤として使用できると認識できない事情も見いだせないので,発泡の機構などに関して,更なる説明を求めるべき理由もない。

発明の要旨の認定事例

2012-07-10 23:04:52 | 特許法36条6項
事件番号 平成23(行ケ)10283
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年06月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

 本願発明の特許請求の範囲に「(10)前記駆動系統に前述した全て又は一部の機能を有し,」と記載されていることに照らすならば,本願発明は,エンジン動力により負荷を直接に駆動できる他,駆動系統に構成(1)ないし(9)に係る全て又は一部の機能を有することで,エンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善することを特徴とする直列・並列二動力混合方式の駆動系統を採用した発明であると理解できる。
 したがって,エンジンの低いパワーと低速稼働における,効率低下と高い汚染課題を改善するために,駆動系統に構成(1)ないし(9)に係る機能を選択的に備えることで足りる

明確性を否定した事例

2012-06-03 23:30:24 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10021
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

2 取消事由2(明確性の要件に係る判断の誤り)について
(1) 本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13の明確性について
・・・
 本件審決は,本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13が前の請求項を引用していないため,これらの請求項に記載された「真円ロータリーエンジン」がどのような構造を有しているか不明確である旨を説示している

 そこで検討すると,本件出願日当時の技術常識によれば,「真円ロータリーエンジン」とは,・・・いわゆる「ロータリーエンジン」のうち,ロータ室の形状が繭型ではなく真円であるもの」を指すものと解されるが,それ以上に,何らかの特定の構成を備えており,あるいは上記の各構成が特定の形状に限定されていることを積極的に意味するものとは認められない。

 以上の本件出願日当時の技術常識から明らかとされる真円ロータリーエンジンを前提として本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13に記載をみると,そこに記載の「真円ロータリーエンジン」は,それぞれ燃焼室,排気弁室及び排微出入(請求項2),前微出入及び吸弦前部(請求項3),後微出入及び吸弦後部(請求項4),吸微出入,通気部及び袖部(請求項5),前微出入及び排弦前部(請求項6),後微出入及び排弦後部(請求項7),排微出入,通気部及び袖部(請求項8),燃焼室及び前微出入(請求項9),吸入回転弁枠,燃焼室及び混合ガスを送り込む手段(請求項11)並びにプラグ濡れ防止枠(請求項13)との構成が,何らかの基本的な構成に付加されたものと理解できる。
 そして,これらの付加された構成の意義は,一義的に明らかではないから,本件補正明細書等の発明の詳細な説明及び図面を参酌すると,これらの構成は,いずれも本件補正発明1という特定の構成を備えた「真円ロータリーエンジン」を前提としたうえで,これに付加された構成であることが明らかであって,本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13が請求項1を引用していない以上,単に本件出願日当時の技術常識から明らかとされる,上記認定の,ロータ室の形状が繭型ではなく真円であるもの以上に,何らかの特定の構成を備えており,あるいはエンジン内部の各構成が特定の形状に限定されていることを積極的に意味するものとは認められない真円ロータリーエンジンにそのまま適用できるものではない

 したがって,本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13において「真円ロータリーエンジン」に付加される各構成は,これらの請求項が請求項1を引用していない以上,それ自体では意義が明らかであるとはいえず,本件出願日当時の技術常識から明らかとされる上記真円ロータリーエンジンにそのような構成を適用することもできないから,本件補正発明の請求項2ないし9,11及び13は,いずれも,そこに記載の発明が明確ではないというほかない。

サポート要件違反を認定した事例

2012-04-07 23:51:52 | 特許法36条6項
事件番号 平成22(ワ)30777
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年03月29日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

 しかるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,・・・,プロテイナーゼKと共に,コラーゲン分解酵素である「コラゲナーゼ」及びDNA分解酵素である「DNアーゼ」が用いられており,これらのコラーゲン分解酵素及びDNA分解酵素を用いることなく,プロテイナーゼKのみを用いて分解処理を行った実施例の記載はない
 また,本件明細書には,・・・との記載がある。これらの記載は,「プロテアーゼを含む分解酵素」を用いることにより,目的物である病原性プリオン蛋白質を十分に取り出すことができること,「プロテアーゼを含む分解酵素」におけるプロテアーゼ以外の分解酵素の組合せとしてコラゲナーゼ及びDNアーゼを用いることが望ましいことを開示するものといえる。

 一方で,本件明細書の発明の詳細な説明には,プロテイナーゼKを用いる場合に,コラーゲン分解酵素及びDNA分解酵素を用いることを省略することができることについての記載も示唆もない。かえって,本件明細書には,・・・との記載がある。上記記載は,プロテアーゼとして,・・・,「プロテイナーゼK」を用いて所望の検出感度を得るには,「プロテイナーゼK」,「コラゲナーゼ」及び「DNアナーゼ」の3種類の酵素を用いることが必要であることを示唆するものといえる。

 さらに,本件原々出願当時,可溶化された非特異的物質の分解処理工程において,「プロテイナーゼK」のみを用いることによって,中枢神経組織に蓄積される病原性プリオン蛋白質の蓄積濃度が比較的小さくても,病原性プリオン蛋白質由来蛋白質を十分に濃縮させる効果を奏することが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。

 以上を総合すると,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件原々出願当時の技術常識に照らし,第2次訂正発明の構成要件C'' の「前記可溶化された非特異的物質をコラーゲン分解酵素及びDNA分解酵素を用いることなくプロテイナーゼKを用いて分解処理する」構成を採用した場合に,中枢神経組織に蓄積される病原性プリオン蛋白質の蓄積濃度が比較的小さくても,病原性プリオン蛋白質由来蛋白質を十分に濃縮させる効果を奏し,高感度で組織特異的に病原性プリオン蛋白質を検出できるとする本件発明の課題を解決できることを認識できるものと認めることはできない

 したがって,第2次訂正発明は,サポート要件に適合しないというべきであるから,第2次訂正発明には,サポート要件違反の無効理由があるものと認められる。

明確性(法36条6項2号)が争われた場合の用語の意義の確定事例

2012-03-11 22:04:51 | 特許法36条6項
事件番号 平成23(行ケ)10108
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年02月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

(ア) 本件審決は,本件発明1ないし3における水などのプロトン性物質の量に関して,「4-ADPA中間体の選択性を維持するために必要な程度に有意な量」の「反応に関与できる状態にあるプロトン性物質の存在」を必要とするものであるから,プロトン性物質については,ゼロではなく,有意な量が必要であるとする
 しかしながら,本件明細書では,「調節された量」について,・・・,下限値がゼロであってはならないとの記載はなく,むしろ,無水条件下で行うことができるかもしれないことが記載されているのである。
 しかも,実施例において,反応系に水は添加されていない。むしろ,無水条件化の方が,収量が最大となることが示されているものである
。・・・。

(イ) したがって,プロトン性物質の「調節された量」について,プロトン性物質として水を使用した場合には,無水条件,すなわち,当該水の量がゼロの場合が含まれるものということができる。

(ウ) この点について,被告は,本件発明1において,水などのプロトン性物質が存在することを前提として,その「調節された量」について,「4-ADPA中間体の選択性を維持するために必要な程度に有意な量」を意味するものであると主張するが,以上認定の限度では,その前提自体が誤りであるといわなければならない。被告の主張は採用することができない。

エ 小括
 以上からすると,「調節された量のプロトン性物質」には,プロトン性物質として水を使用した場合であるが,無水条件が含まれるのであるから,プロトン性物質が存在しない状態が含まれるものといわざるを得ない。
 したがって,「調節された量のプロトン性物質」について,「4-ADPA中間体の選択性を維持するために必要な程度に有意な量」として,「アニリンとニトロベンの反応に関与できる状態」で反応物中に存在している必要があるとした本件審決の判断は,無水条件を含まないという趣旨であるならば,誤りであるというほかない。

 もっとも,「調節された量のプロトン性物質」について,上記のとおり,プロトン性物質が存在しない状態が含まれるものと解し得る以上,「調節された量のプロトン性物質」の意義それ自体が不明確であるというわけではなく,明確性の要件に違反するということはできない

サポート要件の判断事例

2012-01-29 10:43:46 | 特許法36条6項
事件番号 平成22(行ケ)10097
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年12月22日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

(1) サポート要件について
 本件特許は,平成7年12月1日出願に係るものであるから,法36条6項1号が適用されるところ,同号には,特許請求の範囲の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」でなければならない旨が規定されている(サポート要件)。
 特許制度は,発明を公開させることを前提に,当該発明に特許を付与して,一定期間その発明を業として独占的,排他的に実施することを保障し,もって,発明を奨励し,産業の発達に寄与することを趣旨とするものである。そして,ある発明について特許を受けようとする者が願書に添付すべき明細書は,本来,当該発明の技術内容を一般に開示するとともに,特許権として成立した後にその効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきである。法36条6項1号の規定する明細書のサポート要件が,特許請求の範囲の記載を上記規定のように限定したのは,発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると,公開されていない発明について独占的,排他的な権利が発生することになり,一般公衆からその自由利用の利益を奪い,ひいては産業の発達を阻害するおそれを生じ,上記の特許制度の趣旨に反することになるからである
 そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2) 本件明細書のサポート要件の充足性について
 これを本件発明についてみると,本件発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件出願日当時,そこに記載の本件各化合物の製造方法が当業者に周知の技術であったことは,前記1(3)に認定のとおりである。
 また,前記1(2)エ(エ)に認定のとおり,本件明細書には,BF灰に,水と本件化合物2の塩を0.4ないし0.8重量%加え,混練したものから重金属の溶出が抑制されていることが記載されている(重金属固定化能試験)。したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件各化合物が飛灰中の重金属の固定化処理剤として使用できる旨の記載があるといえる。そして,前記1(2)ウに認定のとおり,本件発明の目的は,飛灰中に含まれる重金属を安定性の高いキレート剤を用いることにより簡便に固定化できる方法を提供することであり,上記のとおり,重金属固定化能試験に関する発明の詳細な説明の記載により,当業者は,本件発明の課題を解決できると認識できるものといえる。

 以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。よって,本件発明の特許請求の範囲の記載は,法36条6項1号に違反せず,本件審決の判断に誤りはない。

(3) 原告の主張について
 以上に対して,原告は,本件各化合物が,その合成方法により硫化水素及び二硫化炭素の発生源であるチオ炭酸塩を含有したりしなかったりするならば,本件発明の特許請求の範囲の記載には硫化水素が発生する場合が含まれることになるばかりか,本件明細書には二硫化炭素を発生させないという効果についても記載がないから,本件明細書がサポート要件を満たさない旨を主張する。
 しかしながら,本件発明の特許請求の範囲の記載には,本件各化合物からなる飛灰中の重金属固定化処理剤との記載があるのみであり,本件発明が本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであることは,前記のとおりであって,本件各化合物が,その合成方法によっては副生成物としてチオ炭酸塩を含有することがあるとしても,そのことは,本件各化合物及びそれが飛灰中の重金属固定化処理剤として使用できることについての開示を欠くことにはならない

出願後に補充した実験結果等を参酌できないとされた事例

2012-01-22 21:35:23 | 特許法36条6項
事件番号 平成22(行ケ)10402
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

 ・・・本願の当初明細書には,「抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物に用いられる(A)は,触媒機能を有する金属イオン化合物で,一般式は,M+aX-bで,Mは,ニッケル(Ni),コバルト(Co),・・・クロム(Cr),・・・鉄(Fe),銅(Cu),チタン(Ti),・・・白金(Pt),バラジウム(Pd),…からなる群から選択された金属元素・・・である・・・」(段落【0005】)と記載されているものの,M+aX-bで表される成分(A)のMとして「銅」以外の金属を使用する組成物については,発明の詳細な説明に具体的データの記載がなく,また,本願の組成物が脂肪酸やDNAを分解するメカニズムを説明する記載もなく,脂肪酸やDNAの分解において組成物中の各成分が果たす役割を実証する記載もない
・・・

(エ) さらに,原告は,「銅」以外の各種金属イオン,すなわち,「ニッケル」,「コバルト」,「クロム」,「鉄」,「チタン」,「白金」及び「パラジウム」などの金属イオン化合物が触媒機能を発揮することを立証するため,「銅」以外の各種金属イオンを含有する抗菌,抗ウィルス,及び抗真菌組成物を本願明細書の実施例1と同じ手順で調製し,実験例1及び2で述べた手法で検証したところ,金属イオン化合物が本願補正発明において触媒機能を発揮し,これらの化合物を使用して組成物を調製した場合においても所望の抗菌,抗ウィルス及び抗真菌作用を奏することが示されたと主張する。

 しかし,明細書等に記載されていなかった事項について,出願後に補充した実験結果等を参酌することは,特段の事情がない限り,許されないというべきところ,原告が主張する上記実験結果は本願の当初明細書に記載されておらず,それがいつ,どこで行われた実験であるか明らかでないばかりか,同主張が平成23年8月26日付け「技術説明書」と題する書面により初めて主張されていることからすれば,上記実験は本件訴訟提起後に行われたと推認されるし,本願の当初明細書又は出願時の技術常識から上記実験の結果が示唆ないし推認されるような特段の事情も認められないから,そもそも上記実験結果を参酌することはできないというべきである。

課題を解決するための手段が一切記載されていないとされた事例

2011-11-20 10:40:11 | 特許法36条6項
事件番号 平成23(行ケ)10097
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年11月15日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

 請求項1は,
「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」
というもの
であるが,その文言や内容に照らすと,「歯科治療を行う時上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが,」の部分は,「手早く調整すること」がいかなる場面で行われるかという前提事項を説明したものと解される。また,「其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分も,上記1で認定した,「時間と精密度を大きく改善出来る」や「下顎位を変えたいときなど手短に行なうことが出来る」などの記載と同趣旨であって,本願明細書に記載された発明の効果に対応する記載であると解される。
 そうすると,請求項1には,前提事項と発明の効果に対応する記載がされるのみで,いかなる装置又は方法によって「手早く調整すること」を実現するか,すなわち課題を解決するための手段が一切記載されていないことになるから,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない
 また、,請求項1の「…手早く調整すること。」という記載からは,請求項1に記載された発明が方法の発明であるのか物の発明であるのかも明らかではない。
 ・・・請求項1の記載は,特許を受けようとする発明が明確でなく,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない・・・。

原告は,本願明細書及び図面の記載を考慮すれば,請求項1の「其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分は,本願図面の【図2】にあるような装置を用いて歯牙模型をマウンティングプレートに付着させる構成を指すことが理解できる旨主張する。
 しかしながら,請求項1の「其のとき上下,左右,前後の位置,又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分は,上記2で説示したように,発明の効果に対応する記載と解されるのであって,本願明細書及び図面の記載を参酌したとしても,上記部分が原告主張の具体的な構成を指すものとは認め難い