知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

法17条の2第3項中の「第1項の規定」の解釈

2012-06-03 23:18:30 | 特許法17条の2
事件番号 平成24(行ケ)10021
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

第3 当事者の主張
1 取消事由1(新規事項の追加に係る判断の誤り)について
原告の主張
(1) 本件審決は,本件補正が当初明細書等に記載されていない事項(新規事項)を追加する手続補正を含むことが明らかである旨を説示する。
(2) しかしながら,法17条の2第3項は,
「第1項の規定により明細書又は図面について補正をするときは,…願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」
と定めている(新規事項追加の禁止)ところ,ここにいう「規定」に該当するのは,同条第1項の
「特許出願人は,特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては,願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる。ただし,第50条の規定による通知を受けた後は,次に掲げる場合に限り,補正をすることができる。」
との文言のうち,ただし書の「第50条の規定」しかない。したがって,同条第3項の新規事項の追加の禁止は,「第50条の規定による通知」(拒絶査定通知)を受けた後にのみ妥当するものと解される。

 そして,拒絶査定通知は,平成22年3月23日付けである一方,本件補正の最後のもの(手続補正書13)は,それに先立つ同年1月15日に提出されているから,原告は,拒絶査定通知前の本件補正において任意の補正が可能であると解される。

・・・

第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(新規事項の追加に係る判断の誤り)について
・・・
(2) 新規事項の追加の有無について
ア 法17条の2第1項は,「特許出願人は,特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし,第50条の規定による通知を受けた後は,次に掲げる場合に限り,補正をすることができる。」と規定して,拒絶理由通知を受けた後の補正ができる時期について,指定された期間又は拒絶査定不服審判の請求と同時に限定している。また,同条第3項は,「第1項の規定により明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をするときは,誤訳訂正書を提出してする場合を除き,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した範囲内においてしなければならない。」と規定しているが,同条第1項ただし書は,上記のとおり,拒絶理由通知を受けた後の補正ができる時期を限定しているにとどまるから,ここで「第1項の規定」とは,同条第1項の本文及びただし書の全てを包含していることが文言上明らかであり,同条第3項の規律が同条第1項ただし書に限定して適用されると解すべき理由はない
 したがって,特許出願人は,拒絶理由通知を受ける前後を通じて,常に補正に当たって法17条の2第3項の規律を受け,誤訳訂正書を提出してする場合を除き,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしなければならないというべきである(新規事項追加の禁止)。

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