知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

機能クレームを実施例に沿って解釈して新規事項の追加ではないとした事例

2012-05-20 23:02:48 | 特許法17条の2
事件番号 平成23(行ケ)10272
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月09日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

2 取消事由1(本件補正の補正要件に係る判断の誤り)について
(1) 原告は,当初明細書には,マッサージ機の座面部,フットレスト及び足裏支持ステップの寸法を使用者の太ももから足裏の寸法に合うように設計するという本件構成により特定される技術的事項の記載がないから,本件補正は,新規事項の追加に該当し,補正要件を満たさないものであるなどと主張する

 しかし,本件構成は,本件発明1に係る椅子型マッサージ機について
「フットレストを垂下させて足裏支持ステップが水平となっている状態で,座面部に座っている使用者が,お尻から太ももの範囲を座面部に接触させたまま,膝を曲げて足裏支持ステップに足裏を載せたときに,フットレストの座面部よりの端部において対向内側面と分離丘との間に脚が位置して,ふくらはぎ用マッサージ駆動部によってふくらはぎへのマッサージが行える」
という機能によってその構成を特定したものであるところ,本件明細書(甲10)では,このような構成については,・・・などと記載されているほかは,図8において,フットレストを垂下させて足裏支持ステップが水平となっている状態で,・・・,足裏支持ステップに足裏を載せたときに,・・・,ふくらはぎ用マッサージ駆動部によってふくらはぎへのマッサージが行えるように構成されていることが示されているだけであって,椅子型マッサージ機の各部分の寸法等の具体的な構成は記載されていない
 本件明細書のかかる記載内容からすると,本件構成は,あらかじめ設定されているフットレスト等の寸法に適合する体形の使用者に限って上記機能が発揮されるものであって,あらゆる体形の使用者に対して上記機能が発揮されることがその技術的事項に含まれるということはできない

 したがって,原告の主張は,その前提において誤りであり,これを採用することはできない。

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