
ところで、この舞踊のシナリオを書き、作詞も担当したのが中内蝶二(なかうちちょうじ)という、明治・大正・昭和にかけて活躍した演劇評論家・劇作家・小説家・作詞家とあるが、多才で日本舞踊のシナリオから西欧ものの翻訳まで幅広い活躍をした人だという。歌舞伎舞踊ではほかに「十返りの松」という作品もある。新派の名女優、初代水谷八重子の代表作の一つ「大尉の娘」もこの人の作品のようだ。国立国会図書館デジタルコレクションの中に明治38年に出版された「乙女十種」などという著作も残されているが、この長唄「菊」もそうであるように、どうも女性を描くのが得意な人だったようだ。
前述の「にっぽんの芸能」は放送時も見たが、もう一度、今回のくるみさんの舞台と見比べてみようと思って録画を探したのだが、どうも誤って消去してしまったらしく見当たらない。残念だ。