のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.298

2014-11-10 00:00:25 | 新しい子猫たち 
二郎の工作

一方、二郎もボーとしていたのではなかった。外資の化学の会社の事は二郎は知っていた、この化学の大手は、もっと大きな会社の子会社だった。その会社とは技術協力で話をした事もあった。

海外特許に詳しい悪徳を清太郎が使ったと云う事は、外資の化学が、特許狙っていると清太郎が考えたと、二郎は思った。

二郎は、神太郎オフィスのアイツと、加代子の会社の責任者とは友達になっていた。親会社のもっと大きな会社は上場していたので、ジブトラストとカヨコファイナンシャルに株式を持ってもらって、紡績としてもその株式を保有して、協力関係を築きたいと働きかけた。

神太郎オフィスのアイツは、自分がまだ統括している会社の利益にもなると思い、加代子の会社の責任者は、株価としても低い事に気が付いても乗り気になった。

ジブアメリカは、そのもっと大きな会社の最高責任者を呼んで話をした。話せずに株式を買うよりもましだと思った、市場で買う事の了解と、割り当て出資の話もしたが、紡績としての保有は最低限度にして欲しいと注文をつけられた。競合する可能性のある、他の国の会社に多く保有される事は避けたいと云うのが理由だった。

その最高責任者は会社に帰って、紡績の話が出た事の不自然さを感じていた、紡績は金ある会社だとは知っていたが、海外の会社をM&Aする事はなかった。ジブトラストもそれ程多くの株式を買うとは云ってなかった。

紡績の研究所が優秀な事は知っていたし、技術協力を進めた事もあったが、特許ロイヤリティーが高く、ビジネスとして利益が薄いので断念した事もあった。紡績の研究所と技術協力する事は、ロイヤリティを負けてくれるかもしれないと期待もあったが、今なんでそんな話が出てくるのだ、社内に紡績の技術に抵触する研究を進めているかと聞いたら、そんな研究はありませんけども、子会社の化学はわかりませんと云う答えだった。

子会社の化学に派遣している役員を呼んで詳しく聞いた。最高責任者はそうして、工場を手に入れて、特許を頂く計画を知った、しかも特許を手に入れたら、この特許だけを譲渡させ、工場は閉鎖して、土地は売却して、従業員は解雇して、会社は解散と云う計画だった。

この最高責任者はびっくりした。紡績を騙した積もりかもしれないが、紡績はジブトラストの本家筋の会社だった。ジブ金とまで云われだしていたジブトラストを敵に回す、アホを子会社とは言え、責任者にしている怖さを感じて即刻、この責任者をクビにした。

外資の化学の大手があっさりと入札に負けて、ナンダカンダと言わずに手を引いたのには、理由があったのだった。

二郎は、悪徳弁護士と今後も付き合う事は危険だと思って調べてみると、悪徳には息子がいて、親に似ず、真面目な性格らしい。親の因果が子に報い、真面目な弁護士なのにも仕事がこず苦労しているらしい。

清香に聞くと、

悪徳の倅ならば、鍛えてもいいよ、あいつは親に似ず、いい弁護士になるかもしれない。いや弁護士よりも会社の法務が似やっている男かもしれないよ、二郎君、アイツをその子会社の法務において、ウチの事務所との窓口にさせるのはいいアイディアかもしれないね。二郎君は悪徳にこれ以上、付き合うつもりはないけども、何か防御の方法を探しているね、息子を盾に使うのかね。考えたものだね。

と清香は答えた。

悪徳の息子は、この会社で法務部を作り、特許だけの知財関係以外にも、法務一般について担当させる事にした。親の悪徳も子供がお世話になって、追加の金を要求する事もなかった。



清太郎は、
こうした洋太郎と二郎の隠れた動きは少しは判った。それ程の馬鹿ではなかった。それに確かに丹羽は、有能な人と云うよりはいい人だった。心が洗われる人と云う人はこんな人かと、清太郎は感じ出していた。