
大寺の最後の思い出は「入山式」、御前さまが、この大寺の住職になったのだ、それまでは彼の兄が住職で、代役という体裁をとっていた、
「ブオー ブオー」
山伏のほら貝を先頭に駕籠に乗った御前さまが、しずしずと上ってくる、御前さまの夫人、あの大酒のみの夫人はたくさんのお客に囲まれ、肩をたたかれる、おかげで肩のところが、
「変色してしまった」
中学3年の私はだまって見ていた、さまざまの出来ごとが去来する、ある日、ひとりで山に登る、夕刻、向かいの巨大な山塊が、赤く染まっていく、一秒一秒、赤みが濃くなる、
「赤富士だ」
声が聞こえる、
一切有為の法は
夢の如く泡の如く影の如く幻の如し
よろしくこの観を なすべし
「あなたには ふたつの道があります」
「ひとつは
山の斜面に 少年が横たわっている
もう動かない もう苦しまない もう悩まない
少年は ちょっとほほえんでいるようだ」
「もうひとつは
♬ ミヤコのセイホク
ワセーダのモリに
そびゆるイラカは・・・ 」
「さあー どちらにしますか どちらでもいいのですよ」
「こっち」
「ふふふ」
ほらふきどんどんは、どうしているんだろう。