日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「イタリアの小さな町 暮らしと風景 ー 地方が元気になるまちづくり」(井口勝文著/水曜社)を読みました

2024年01月10日 | イタリアの本・絵本・雑誌

「イタリアの小さな町 暮らしと風景 ー 地方が元気になるまちづくり」(井口勝文著/水曜社)を読みました

 

メルカテッロという町の名は この本で知りました

トスカーナに住もうと考えていたものの 最終的にメルカテッロ・スル・メタウロというマルケ州の小さな町に 古い石造りの家を買った建築家である著者の この町への愛情あふれる思いの伝わる本でした 

また町の人々へのインタビューからも メルカテッロ名誉市民の称号を得た著者の 町の人々への思いが伝わってきました 

読んでいる間ずうっと 大好きな番組『小さな村の物語 イタリア』のあのメロディー 「L'Appuntamento」(Ornella VANONI)が響いてきて 幸せな時間を過ごしました😊

 

観光客に媚びない美しい生活風景が見られる町 メルカテッロ・スル・メタウロ(Mercatello sul Metauro  メタウロ川のほとりのメルカテッロ

その地名の由来は 756年にローマ教皇の保護下に入った際に 大きな市(メルカート)を作り栄えたからとのこと 

成長を続け疲弊してゆく大都市にはない魅力は何か 

旧市街の外に無料の駐車場があり 不便だが景観を大切にしており 便利さ最優先ではない

人口は約1,400人で まるでひとつの家族のようだ 

スクールバスで生まれる恋 週1回やってくる移動魚屋 土曜午前の中央広場の市場のにぎわい 

イタリアなどヨーロッパでは 道路などの公共空間の使用が市民の権利として認識されており 様々な使い方ができて町が賑わう 日本はハードルが高い

7月には一番大きな祭り パリオ・デル・ソマーロ(地区対抗ロバの競馬)が3日間行われる そしてまた音楽祭やパスタ打ち競争 ステーキ祭りなどが繰り広げられる

 

メルカテッロの地域経済について  

それぞれの生活圏で成り立つ地域経済と グローバル経済の両方で成り立っているのがイタリアだ 

日本はグローバル経済を中心に 例外的に町おこし・村おこしの地域経済(ソーシャル・エコノミー)があるが 補助金頼みのイベント型町おこしであり 自立した地域型経済圏を目指していない 

大都市の豊かさは地方を搾取することで成り立つという構造を変えなければ 地方再生には限界がある との言葉に頷いた 

また イタリアは大量生産・大量消費型の社会ではなく ものを大切に長く使う社会であり それが地域に密着した中小企業を支えており 町の人々は必ず町のファーレニャーメ(指物師)とかムラトーリ(大工)に仕事を頼んでいるとのこと

辺鄙なメルカテッロには大きなホテルも観光資源も特にないが そのことこそが観光資源であり イタリア観光協会から「オレンジ・フラッグの町(Bandiera arancione)」の称号を得て また2018年には「イタリアで一番美しい町協会 (l’Associazione de I Borghi più belli d’Italia)」へも参加となった

家族経営型のアグリツーリズムが盛んで 有機農業も大変盛ん...というよりほぼ100%だという (イタリアの有機農業は約15% 日本は約0.2%)

戦後のイタリアでは 伝統的なメッツァドゥーリア(折半小作農業)という形態が続いていたことも この本で初めて知った

 

イタリア共和国憲法第9条には 「国の風景そして歴史的 芸術的な資産を守る」という条文が書かれている それを守ることは大変だが それはイタリア人の生活の基本的な価値観なのだという

日本に比べて 人口5千人未満の自治体に住む人がイタリアでは多く18% それらの小さな町は自立している 

1985年に定められた「ガラッソ法(legge Galasso)」により 景観計画(都市基本計画)ができない限り開発は行えないとのこと

日本の景観法は 景観への考慮を促しているのみで 2018年に「イタリア景観憲章」を制定したイタリアとは大きく異なる ここメルカテッロにも「メルカテッロ憲章」がある

地方分権を選んだイタリア人は グローバリズムよりもカンパニリスモ(郷土愛)を選んだ マンミズモ(母親主義)という言葉もある 

 

最後は 著者の買った古いメルカテッロの石造りの大きな歴史的な家を修復する様子が克明に綴られており圧巻!!

16年がかりで 530年余り前に作られた家を修復して住んでいるという 町に住む職人さんに仕事を頼み みんなで作り上げたその執念と愛と情熱に感服しました!

著者の メルカテッロ愛のこもったすばらしい一冊を堪能させていただきました

 

本は こちら

 


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