日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「アルテミジア・ジェンティレスキ ~バロック絵画における女性の解放 ~」に行ってきました(2020.12.13)@高円寺ピアッツアイタリア

2020年12月14日 | イタリアの美術館・博物館

「アルテミジア・ジェンティレスキ ~バロック絵画における女性の解放 ~」に参加しました(2020.12.13)@高円寺ピアッツアイタリア


アルテミジア・ジェンティレスキ/Artemisia Lomi Gentileschi  実はまだ知らない画家でしたので調べてみると...カラヴァッジョ派で あの「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」を描いた女性画家だったのですね!! 早速受けてきました💛

アルテミジア・ジェンティレスキ:
カラヴァッジオ派の画家で フィレンツェの美術アカデミーにおける初の女性会員
当時としては珍しい女性の画家であったこと その生涯においてレイプ事件の被害を訴訟した公文書が残ることなどから ジェンダー研究の対象としても知られる (Wikipedia)

彼女が若い頃に受けた傷が画風に強く影響して 彼女の描く女性像には彼女自身が投影されているようです
特にホロフェルネスには自分を騙して捨てた男を投影させ 冷たい表情でその首を切り落とすユーディットはもちろんアルテミジア自身です... 
そしてそれは師匠カラヴァッジョが同じテーマで描いた作品とも違っていたのでした 
だって男が描いたのではなく 弄ばれ棄てられた女自身が描いたのだものね...

自分が過去に受けた傷を 後世に残る素晴らしい作品へと昇華させていった画家なのですね 

   *     *     * 

1593年7月8日にローマで生まれた バロックの画家 アルテミジア・ジェンティレスキの生涯:

12才で母親を亡くしたアルテミジアは フィレンツェの画家でローマで活躍していた父オラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Gentileschi)の工房で めきめきと才能を開花させてゆくも 女性が自分の絵にサインをすることはまだ許されない時代でした

17才の処女作『水浴のスザンナと老人たち(Susanna e i vecchioni)』は素晴らしすぎて 父親が描いたのではないかと思われたそうです 

父Orazioの友人の アゴスティ―ノ・タッシ(Agostino Tassi)は彼女にフィレンツェ派の絵画を教えるため通ううちに 父親の不在のすきに結婚を餌にまだ17才だった彼女を弄び 結婚する気がないとわかった彼女が父に真実を告げると 父親は怒り 母親亡きあと妻の代わりに弟や妹の世話や家事一切も引き受けていたアルテミジアのために裁判(processo)を起こします 当時は泣き寝入りが普通の時代に異例のことでした

ところが男は尋問されず無傷 彼女ばかりが拷問(tortura)を受けた7か月間の裁判... 親指を押しつぶされた(schiacciare)されたのです!! あやうく絵が描けなくなるところでした!
友人に偽証させて罪を逃れようとしたTassiは 実は2回も結婚していたのでした 2番目の妻を娶りたいがために最初の妻は事故死とさせ...等の疑惑あり やがて有罪となるも法王の計らいで亡命を免れます

そしてアルテミジアの父Orazioは 娘をフィレンツェの画家 ピエルアントニオ・スティアテッシ(Pierantonio Stiattesi)と結婚させます そうするしかありませんでした

そして彼女の噂(pettegolezze)のたつローマを離れてフィレンツェへと引っ越して そこで新しい人生を切り開きます
フィレンツェの美術アカデミー(Accademia del Disegno di Firenze)の会員となり 晴れて自分の作品にサインをして 自分で契約ができるようになり 注文(comissione)が入るのですね

ミケランジェロのnipoteがCasa Buonarrotiのフレスコ画を依頼したり ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)と知り合って文通したり すごい活躍ですね!
彼女は 歴史画(pittura storica)を得意とし 旧約聖書の女傑(eroine bibliche)のシーンを描きますが その中に自分の姿を投影させます 
他の画家たちは静物画(nature morte)や肖像画(ritratti)を描いていた時代でした

そして フィレンツェの貴族Maringuiと愛人関係となり そのスキャンダルを握った父親が 沈黙と引き換えに貴族に金をゆするのですね...毎月払っていたそうで そうでもしなければ 働かない夫と子供たちの世話で 一家は経済的に立ち行きませんでした 
最初のスキャンダルでは裁判を起こした父は 今度はお金を無心...随分変わりますね...

そして夫に見切りをつけたアルテミジアは ローマに戻ります(1621年) 
ローマでカラヴァッジェスキと親しくなり 作品も次第に影響を受けてゆきます
1610年にカラヴァッジョは亡くなりますが(37才) カラヴァッジェスキ(caravaggeschi)のひとりとして キアロスクーロ(chiaroscuro/明暗法)を駆使してゆきます

さらに カラヴァッジョにはなかった 輝く(brillanti)色使い それが彼女の特徴でした
さらに肌の色も 父親の影響で白かった(pallido)のが 後期ではカラヴァッジョの影響をうけたピンク色(rosea)へと変わってゆくのですね~ (「水浴のスザンナと老人たち」)

絵画の特徴も画家の人間関係の移り変わりが見えてきて 色々と興味深いですね やはり画家の背景を知らないと絵の変化も見えてきませんね

そして さらにヴェネツィアへと そこではあまり成功せずにさらにナポリへと(1630~37) そこではベラスケス(Velazquez)と出会って共にマリア・テレジア (regina Maria d'Austria)のために仕事をしたり さらにはロンドンへ(1638) チャールズ1世の妻の元で天井画を描く父親の元を尋ねてゆき そこで父と共に絵画を描き 父親が翌年に亡くなったあともその作品を完成させたのちに またナポリに戻るのですね

そして 1654年のナポリで書かれた彼女の手紙を最後に 情報は途絶えるのです 
1656年前後におそらくはペスト(ナポリ市民の半分の命を奪ったという)に罹って亡くなったということです
彼女の墓はありますが 中に遺体はないのだそうです

     *     *     * 

次は それぞれの作品を見てゆきました

ホロフェルネスの首を斬るユーディット(Giuditta e Oloferne)」1620年

これはユーディットに彼女自身を投影させ 彼女を弄んだ男をホロフェルネスにたとえて復讐するシーンで 平静な顔つきで 死刑執行人(carnefice)のごとく迷いなく刀で首を切るその顔つきは 師匠カラヴァッジョの同テーマ作品のそれとはずいぶん違っていますね
カラヴァッジョの作品は殺されたホロフェルネスが主役ですが アルテミジアの作品はユディットが主役というわけですね

また黄色い(giallo)服の色は アルテミジアだけが使ったそうです 

また 他の作品も色々見てゆきましたが 若い頃に描かれた『水浴のスザンナと老人たち(Susanna e i vecchioni)』と 39年もたってから再び描いたものは 様々なな違いが見られますね 
若い頃の作品では若い男がスザンナに近づきますが この男こそがあのTassiを投影させているのでは...とのこと

熟年で描かれたものは 老人たちに言い寄られたスザンナはもはや戦う意志も喪失して疲れた表情で 若い頃のようなエネルギーはありませんね... わかるなぁ


また『マグダラのマリアの改宗/conversione della Maddalena』(1615,16)の絵の椅子の背もたれには「Artemisia Lomi」とサインがあります 
これは彼女の母親の姓ですが 噂の立ったローマからフィレンツェで新しい人生を切り開いた彼女は ジェンティレスキという名を使いたくなかったのですね 

そして晩年の自画像『Autoritratto come allegoria della Pittura』(1638) 絵を描く彼女自身の姿ですが 年月を経た彼女の逞しさと年輪が感じられて私はとても好きです💛

やっぱり対面レッスンはいいなぁ...zoomだとこうはいきません 力が入りますね!!

女性画家アルテミジア・ジェンティレスキ(1593~1653年頃)の絵画」 は こちら

    *     *     * 

講座のお知らせ:

《イタリア美術講座》L’emancipazione femminile nella pittura barocca ~ アルテミジア・ジェンティレスキ ~バロック絵画における女性の解放 ~

アルテミジア・ジェンティレスキArtemisia Lomi Gentileschi (Roma, 8 luglio 1593 – Napoli, circa 1656)はカラヴァッジョの影響を受けた、16~17世紀、バロック時代の女性画家でした。
ジェンティレスキは強く、勇気のある女性を題材として描きました。今回は彼女の生涯と数少ない女性画家の中でもよく知られるジェンティレスキの作品をみていきましょう。
マリア先生が皆さまを素敵なアートの世界へお連れします!

講座のお知らせは こちら

やっぱり美術セミナーはいいですね💛 2年前に買ったロッサーナ先生の"L'italiano dell'arte"のテキストも そろそろ読んでおかないと...



美術館・ギャラリーランキング

にほんブログ村 美術ブログへにほんブログ村


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チヴィタ・ディ・バーニョレ... | トップ | 「国立ベルリン・エジプト博... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

イタリアの美術館・博物館」カテゴリの最新記事