日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「カオス・シチリア物語」DVDを見ました&「イタリア文学(Letteratura Italiana)」セミナー(2016.3.20)@LCI

2016年01月05日 | イタリア映画・映画
イタリア映画「カオス・シチリア物語」(L.ピランデッロ原作)のDVDを見ました(2015年12月)&「イタリア文学(Letteratura Italiana)」セミナーのお知らせ(2016.3.20)@LCI(吉祥寺)

白崎容子先生の「名作短編で学ぶイタリア語」のラストに収録されていたのはピランデッロの「苦悶の家」
 そのピランデッロの原作「カオス・シチリア物語」の映画化された作品のDVDを つてをたよりにようやく見ることができました!!

原作も実はイタリア文化会館の図書館で見つけていたのですが 老眼の私には少々字が小さいので映画を見ることにしたのですが...これがエキゾチックでなかなかに面白かった!!

プロローグと5話のオムニバス形式(「もう一人の息子」」「月の病」「かめ」「レクイエム」「母との対話」)からなる大長編で シチリアに住む人々の人生と心の苦悩を壮大な構想の基に描いた一大抒情詩
タイトルの『カオス(Kaos)』はピランデッロの故郷の村の名前で“混沌”という意味です


プロローグで 卵を割られたあげくに首に鈴をつけられたカラスが 雄大なシチリアの空をゆうゆうと飛びながら 次々と展開してゆくストーリー...シチリア方言たっぷりで大自然の中で物語が進んでゆきます

以下は ネタバレありです:


第1話〈もう一人の息子〉

村からアメリカへ移民団が出発する
老いた母マラグラーツィアは 14年前に移民した2人の息子あてに手紙を若い女に代筆してもらうが 実はその手紙はただのいたずら書きだった

町の若い医師は 手紙の代筆をするかわりにマラグラーツィアの「もう一人の息子」の秘密を聞くのだった... 
それはガリバルディの「千人隊」のシチリア解放の時の 不幸な出来事だった

これは見ていて切ないですが 今まで代筆してもらっていた手紙がすべていたずら書きとわかり書き手の女を責めながらも 手紙が今まで届かなかったのだから息子たちは私を忘れていないと泣くシーンが そして あと3時間だけ家族一緒にいられるぞと 車輪のトラブルで別れ別れになる移民たちとその家族が最後の一緒の時を過ごすシーンが切ないですね


第2話〈月の病い〉

新婚の夫バタはある「病」を隠していた それを知った新妻のシドーラは美しい満月の夜に恐ろしい体験をする( ヒチコックの「鳥」に似たようなシーンも!)

彼は赤ん坊の時に草むらに置き去りにされ「月の病い」にかかったのだ 月に魅入られた赤ん坊
そして次の満月の夜 シドーラを守るために母とシドーラの従兄のサロが人里離れた家に泊まりに来た
だが母は恐がって納屋に逃げ サロとシドーラが家にこもるが...
雨がやみ満月が光ると外にいたバタが苦しみ出した 

いや~これはすごい バンパイアみたいでしたね サロが思わず取った行動もまた...妻を守るために呼んだことがかえって仇になり...この後の展開がこわいです


第3話 〈甕〉

大地主のドン・ロロのオリーブ園は大豊作 (妻の頬にオリーブを塗りたくりそれを舐めようとする仕草からこの男が傲慢極まりないことが伝わりますね)
彼は油を入れる巨大な甕(かめ)を特別に作らせた その甕が届いた日の夜 なぜか甕はまっ二つに割れていた

翌朝それを見た彼は シチリア一のニカワ職人ディーマに修理するように命じる(ここも高圧的)
しかし修理を終えたディーマは甕から出られなくなる (縫い目も注文したばかりに...なんてこと)ドン・ロロは職人ディーマを責めるも 甕を壊すことができないまま 甕に入ったままのディーマは小作人たちと満月の夜に大宴会を開く

(この 甕を取り巻く村人たちの踊りのシーンはすごいです 「ハウルの動く城」で火の精が踊りまわるシーン等思い出してしまいました)
そして怒ったドン・ロロは甕をけとばし...


第4話〈レクイエム〉

マルガリの人々は地主の男爵に村に墓地を造ることを禁止されている  村の長老が死にかけており とうとう村人たちが村に墓地を造ることを請願しにやって来たが 地主の男爵は受け付けない (娘には優しい父親だが 村人たちには...)

しかし瀕死の長老は自分の墓を村人たちに掘らせる (自分の墓を目の前で作らせて 十字架の位置を顎を使って決めるシーンがなんとなく可笑しい)
その作業をやめさせようとする憲兵隊 しかしその最中長老が亡くなったという知らせが...
作業を中断して帰ってゆく憲兵隊 だが棺の中の死んだはずの長老は 実は...
(この長老は自分の死と埋葬をもって 村人と土地を守ろうとしていたのですね なんというどんでん返し!)

エピローグ 〈母との対話〉

人生に疲れたルイジ・ビランデッロは故郷にやって来た 馬車で通る風景は彼が小説に書いてきた風景だ 
(この時の馬車を引く男が実はこの映画の中に出てきた...驚きです)

立派な屋敷には亡くなったはずの母が椅子に坐っている
彼女は息子に語る「見ることのできなくなった者の眼で ものを見るようにしてごらん」と...

母は 少女時代の思い出を語る
ブルボンの専制政治を逃れ亡命した父を追って 母親と兄妹とともに小さな船でマルタへと向かった日々……
ここの 砂山に駈けのぼり 一気に駈け降りて海に飛び込む5人の子供たちのシーンは幻想的でしたね~ DVDの表紙にも使われているシーンで見応えがあります

    *        *        *


原題 Kaos (1984年 イタリア)

監督 パオロ・タヴィアーニ 、 ヴィットリオ・タヴィアーニ
脚本 パオロ・タヴィアーニ 、 ヴィットリオ・タヴィアーニ
原作 ルイジ・ピランデルロ

映画は こちら


* 2016年3月20日(日)には LCI(吉祥寺)のセミナーで「イタリア文学(Letteratura Italiana)」(3/20)を開催予定です
第一回は ルイジ・ピランデッロ(シチリア出身)を取り上げる予定です
 


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