旅限無(りょげむ)

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また斉南事件? 其の壱

2011-07-11 16:07:57 | 外交・情勢(アジア)
■諸事情が重なりブログが開店休業状態になっておりましたが、大病を患ったり、情報が遮断されているチベットに極秘に潜入したり、あるいは放射能汚染に怯えて遠い南の島に避難していた……などということは一切ございません。大震災以来、とても大きな疑問が頭から離れず、もっぱら雑誌類を買い集めて読み漁り、膨大なネット・ニュースを覗いては少しでの役立つ情報を探したり、偶にブログの下書きをすることもありましたが、どれも真相からは遠く隔たった瑣事ばかりと思われると途中で投げ出してしまうこともしばしばでありました。

■原発事故で国民の信頼を失った新聞・テレビの大手マスコミは不毛で不愉快な「菅降ろし」の寸劇を熱心に報道しているようですが、これまた重要な問題から国民の目を逸らしてしまう結果になりそうな気がしますなあ。菅アルイミ内閣が下手なコメディを演じる度に永田町周辺では時代遅れの三文芝居や田舎芝居が演じられ、震災からの復興も原発事故の収束も、まったく未来の光が見えない絶望的に政治は停滞しての堂々巡りが続いておりますが、アフリカには54番目の国家が分離独立し、IMFの専務理事も交代、南シナ海の波は荒くなる一方だし、チャイナは2隻目の航空母艦を「国産」兵器として建造中との情報も入っておりますが、日本政府の影は何処にも見当たらないのであります。少なくとも外交分野に関しては政権交代はしなかった方がよかったのかも?また、野に下った自由民主党こそが怪しげな原子力行政を強引に推し進めて来た責任をすべて追わねばならない立場なのですから、政権交代は原発事故の後に起こった方がよかったのかも知れません。そんな事を思う今日この頃なのでありますが……。


2011年7月10日、開業したばかりの北京・上海間高速鉄道で事故が発生した。北京発上海行きのG151は山東省済南市付近で2時間以上にわたり立ち往生。計19本に遅れが出た。人民網が伝えた。以下はその抄訳。
G151は午後3時半に北京南駅を出発。時刻表通りならば午後9時に上海駅に到着する予定だった。ところが午後5時ごろ、山東省済南市付近に到達した際、雷雨の影響で電線が故障。立ち往生してしまった。北京・上海間高速鉄道に採用された新型車両は密閉性の高さが売りだが、これがあだとなり乗客は2時間以上もの間、蒸し風呂のような車内に閉じ込められることとなった。総工費2200億元(約2兆7400億円)を投じ、「世界で最も安全な高速鉄道」とうたわれた「夢の超特急」が開業わずか11日目にして故障したことは大きな話題となっている。
2011年7月11日(月) Record China 

■技術を供与したJR東日本と川崎重工が「厳重注意」を申し入れたそうですが、菅アルイミ政権はいつもの「柳腰外交」を展開中?らしく、目立った動きは見られないようです。「現役」の総理大臣として訪中を熱烈歓迎するよ、と甘い声を掛けてくれる国内ばかりか国際的にも四面楚歌状態の菅アルイミ首相にとっては政権延命の切り札になるかも?と藁をも縋る思いでしょうから、東京電力の本社に怒鳴り込んだ勢いで北京・上海に乗り込むことなど金輪際ないのでしょうなあ。「柳腰外交」を反省したらいよいよ政権が押し潰されると怯えている菅アルイミ政権の弱みと足元を見て、どんどん尖閣諸島周辺を我が物顔でチャイナの船が跋扈しているとか……。

■さてさて、「パクリだ!」「偽物だ!」と悪評高いチャイナ新幹線のお話であります。巨大地震が起こったわけでもなく、大雨や大雪、あるいは大嵐で突風竜巻が発生したのでもないのに雷の影響で事故が起こって2時間も停止とは、一体、どんな電気配線をしているのでしょうなあ?!中国共産党創立90周年を祝うとて、鳴り物入りで強引に開業したチャイナ新幹線が停止した場所が山東省「済南市」付近というのは出来すぎた歴史パズルみたいな話であります。教科書問題・歴史問題にも深く関わる斉南事件が起こったのは1928年(昭和3)の5月3日でした。国民党軍が北上して共産党軍を攻撃した「北伐」の中で起こったおぞましい虐殺事件でありました。男10人と女2人の12人が殺害され、負傷後死亡は男2人、暴行侮辱被害は30余人、陵辱2人、掠奪被害戸数136戸等々、被害人員は約400との記録があるそうです。実質的に蒋介石に騙されて油断し、事態の急変に慌てて対応した日本の守備隊も死者26名、負傷者157名の被害を受けております。

■国民党軍と日本軍との間に起こった痛ましい事件ですから、北京政府は第三者の立場で好き放題に政治宣伝の材料に利用して真相がなかなか分かり辛くなってしまったようですが、地道な研究が実って最近では事件の経緯の全貌がほぼ明らかになっているようです。蒋介石自ら「略奪許可」をした事実があり、何せ「良い鉄は釘にならず、良い人は兵にならない」お国柄ですから凄まじい略奪行為が起こったのは当然で、殺害された人達の検死記録は文字を読むだけでも目を背けたくなるような有様で……。日本では雷様は菅原道真公の怨霊として畏れられ、大宰府を筆頭に日本中に天神様が祭られておりますが、チャイナの「国産」新幹線を止めたという異常な?雷雨も何かの祟りなのかもしれませんぞ。クワバラ、クワバラ。


……中国の鉄道車両メーカー、南車集団が中国版新幹線の車両「CRH380A」の技術特許を米国で申請する方針……。南車集団は独自開発を主張しているが、実際は川崎重工業など日本企業が開発した新幹線「はやて」の技術供与を受けて改造した。中国版新幹線には手抜き工事などの指摘もあり、北京-上海線の7月1日開業は“見切り発車”だとの声が高まっている。
中国鉄道省は23日、北京と上海を最短4時間48分で結ぶ高速鉄道「京滬(けいこ)線」を中国共産党の創立90周年記念日の7月1日に正式開業させると発表した。南車集団が特許の申請を予定している「CRH380A」型車両も採用されている。同社は、営業運転時の最高時速を引き上げるため車両の車台部分やロングノーズ(先端部)などが、中国の独自技術で作られたなどと主張して特許申請する。しかし、中国鉄道省の元幹部、周翊民氏が証言したとして21日付の中国紙、21世紀経済報道が報じたところによると、中国の高速鉄道車両は日本やドイツからの導入技術がほとんど。欧州系メーカーから「技術供与はあくまで中国国内での使用に限定している」として、車両輸出は契約違反と警告されているという。川崎重工は「どのような技術が特許申請されるか確認が取れないので、回答を差し控えたい」としているが、欧州も含めた特許紛争に発展する可能性もある。…… 

■今の菅アルイミ政権が日本のメーカーの後ろ盾となって外交的に解決する姿勢を見せる可能性はゼロですから、川崎重工も涙を呑んで「静観」するしかありますまい。経済危機に直面している欧州と上手に手を組んでチャイナに抗議するような大きなシナリオを描ける人材も見当たりませんから、チャイナは大手を振って特許申請をどんどん進めて行くことでしょう。こちらの方は雷雨ぐらいでは止まりそうもありませんなあ。

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