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知の体力

2018年08月15日 | レビュー
知の体力 (新潮新書)
永田和宏
新潮社


現在の大学は、学生の自学自習に任せるのではなく、教員が手取り足取りていねいに学生に教え、その成果を目に見える形にしなければならないこととされています。そのため、多くの学生は大学のサービスに頼りがちになり、自主的に学ぶという場が確実に失われています。それは当たり前で、人間というのは厳しい環境に置かれ、失敗の中から自ら学ぶという状況と、失敗しないように指導を受けられる状況では同じ人でも学ぶ姿勢は一変するものです。成長というのは人それぞれですから、大学の成績などたいした物差しにはならず、成績には現れずともヒトとしての多面的な成長を果たし、実社会にぶつかっていける力を養うというのが、一昔前の大学4年間の学びだったと思います。この場合の力というのは知力でもあり体力でもあり胆力でもあったと思います。しかし少なくとも今は、大学で学ぶ「知」はかなり骨細になっている気がします。私は高校までは基礎的な知識をがっちり身に着けてきて、大学ではそれを足掛かりに個々人が自由に思考を深め、新しいことを見つけてほしいと思っていますが、まずその足掛かりとなるべき基礎的知識が大幅に足りず、自由な学問に至らずじまいというのが現状で、大変残念に思っています。この本の著者は、多くの大学の教員が残念に思っていることに大胆に切り込んでその解決について述べています。大学教員が読めば皆「そうそう」とうなづくことでしょう。しかし現実はそう簡単ではありません。大学教育は、これからますます型にはまっていくのではないかと私は危惧します。さて、私は大学で分子生物学や細胞生物学を教えていますが、その際にいつも学生に紹介する本があります。それが以下の本ですが、偶然にも同じ著者でした。

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)
永田和宏
岩波書店


私も、日々あきらめず挑戦し続けなければと思います。今年のお盆はあんまり休めず、明日も大学で学生の実験を手伝います。書かなければならないものもたくさんあり、読まなければならないものもたくさんあるので、時間を無駄にしないよう強い気持ちでやっていきたいです。

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