犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>新基準の規定「ピーク流量群の最大値を基本高水流量にする」に関して

2017年12月14日 | 辰巳ダム
(山好人の10日の投稿から)
 辰巳ダムだけの経験の範囲ですが、
 引き伸ばしの便法、そしてピーク流量群の最大値を基本高水流量にするという「新基準」が、異常に大きい基本高水ピーク流量になった原因と思っています。
 山好人さんの10日の投稿のうち、以下のところに当方の関心があります。
「(4) 雨量確率手法の引き伸ばし法は、降雨波形の発生シミュレータとしての手法を採用していることになり、その意味では引き伸ばし率を2倍程度にする、時間的・空間的に発生がしにくい降雨は棄却するなどの便法は採用すべきではない。現に国交省は利根川では31降雨を採用している。更に総合確率法の検証の計算では、62降雨を採用している。国交省は総合確率法では引き伸ばし率の制限、降雨の棄却は採用していないのである。あくまで降雨波形の発生シミュレータとしての位置づけである。従来の引き伸ばし法で引き伸ばし率を2倍程度にする、時間的・空間的に発生がしにくい降雨は棄却するなどの便法は、残されたピーク流量群の最大値を基本高水流量にするための伏線であるとする考えは捨てきれない。」との投稿のうち、

①雨量確率手法の引き伸ばし法は、降雨波形の発生シミュレータとしての手法を採用していることになり、その意味では引き伸ばし率を2倍程度にする、時間的・空間的に発生がしにくい降雨は棄却するなどの便法は採用すべきではない。

について、言い換えると、
 降雨波形の発生シミュレータとして採用する場合は、引き伸ばし法は可で、
(辰巳ダム計画のように)そうでない場合は、引き伸ばし法は不可と理解しました。
 引き伸ばして架空の降雨パターンをつくるのは、科学的な(気象学的な)根拠のない方法だと思いますが、統計学的な考えを導入することで、科学的に根拠のある方法になるということでしょう。

②従来の引き伸ばし法で引き伸ばし率を2倍程度にする、時間的・空間的に発生がしにくい降雨は棄却するなどの便法は、残されたピーク流量群の最大値を基本高水流量にするための伏線である。

については、
 辰巳ダム計画で真値の2倍ほどの基本高水ピーク流量にすることにできた根拠で、「新基準」の誤った規定と考えます。
 引き伸ばし法は、架空の降雨をつくる便法です。
「新基準」では、棄却という手法をとり、一見、科学的な合理性があるように見えますが、(辰巳ダム計画では)棄却の判断の目安に、統計の考え方を装った、かなり怪しい手心を加える余地がありました。
 科学的を装っていますが、恣意的な要素があり、科学的な態度ではないものでした。
少なくとも、この便法を採用するにしても、架空の降雨群に手心を加えるのではなく、統計的手法のみで(科学的根拠のもとに)処理するべきでしょう。
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3 コメント

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中さんの見解に対するコメント (山好人)
2017-12-15 11:46:41
中さんの見解に対するコメント
山好人

以下の見解に対してコメントいたします。
1. 降雨波形の発生シミュレータとして採用する場合は、引き伸ばし法は可で、(辰巳ダム計画のように)そうでない場合は、引き伸ばし法は不可と理解しました。引き伸ばして架空の降雨パターンをつくるのは、科学的な(気象学的な)根拠のない方法だと思いますが、統計学的な考えを導入することで、科学的に根拠のある方法になるということでしょう。

辰巳ダム計画のようにそうでない場合の表現から、犀川の場合には降雨波形(類型的な降雨波形をまとめて降雨パターンとも言う)の発生シミュレータとして採用はしていないと判断されているようです。しかし引き伸ばし法を採用して流出解析したピーク流量を求める場合には、降雨波形の代用特性としてピーク流量を採用しているので、犀川の場合でも降雨波形の発生シミュレータとしての採用はしているのです。降雨波形の代用特性としてピーク流量を選択することは吉見先生も行っていることです。雨量が同一でも降雨波形の影響でピーク流量が確率分布することは立証するまでもないことです。もちろん地表の湿潤状態もピーク流量の大小に影響を与えますが、その影響は小さいものとして無視します。この前提は流出解析を手掛けた実務家とは十分受け入れられます。
国交省のオリジナルな総合確率法では、雨量と降雨波形の影響でピーク流量が決定されるとの理論的背景で、降雨波形の影響は知り得ないので降雨波形の発生は等確率との想定から、一定流量における雨量群の年超過確率の平均値はその流量の年超過確率に等しいとする間違った計算法を提示しています。
吉見先生は降雨波形のピーク流量に及ぼす影響を考慮して、一定流量を発生させる雨量の年超過確率にその流量(降雨波形ではない)の超過確率を乗じ、すべての雨量にわたってその積を加算して、その流量の年超過確率を求める方法を提言しています。そしてその計算法は陸先生の方法と同じです。ただし陸先生は降雨波形の発生シミュレータを自作し1000個の降雨波形を求めています。
そして旧基準の計画雨量で発生するピーク流量群の平均値を採用する方法は、吉見先生・陸先生の計算方法で、計画雨量の雨量で発生するピーク流量群の平均値は、吉見先生・陸先生の計算式の計画雨量で発生する流量の超過確率にその雨量の年超過確率を乗じた値の和を求める計算法からの値に一致します。全雨量にわたる計算をしないで計画雨量の雨量についてだけ計算を実施します。
私は犀川の状況は詳しくはありませんが、発生が極めて起こりにくい短時間の過大な雨量を棄却したとか、過大な洪水は起こりえないとして棄却したとか聞きました。本来この様な恣意性を伴う操作はすべきでないと主張しています。そして旧基準の計算法を改良してピーク流量群の平均値が最尤値であるとすべきと主張しています。
引き伸ばし法を採用する限り、降雨波形の発生シミュレータとしての機能を暗黙に利用することをご理解ください。
なお大同大学の鷲見先生は、雨量確率手法で治水安全度に見合う基本高水流量の決定に、できるものなら降雨波形の発生シミュレータが欲しいとホームページで述懐していました。

2.辰巳ダム計画で真値の2倍ほどの基本高水ピーク流量にすることにできた根拠で、「新基準」の誤った規定と考えます。引き伸ばし法は、架空の降雨をつくる便法です。

辰巳ダム計画で過大な基本高水流量が求められた背景は、新基準で引き伸ばし法を悪用したからで、引き伸ばし法は架空の降雨をつくる便法だとするのは、前述のコメントを読まれれば誤解だと思われるはずです。
残されたピーク流量群の最大値を基本高水流量に決定したことが過大の原因です。そして基本高水流量の治水安全度が1/100である保証はありません。
計画雨量において発生する降雨波形群が分からないと、治水安全度に見合う基本高水流量は決定できません。犀川の例では雨量確率1/100の降雨で発生する考えられる最大の洪水のピーク流量はこの値であるとしか言えません。治水安全度は不明のままです。
本来発生する降雨波形群が予想できたら、計画雨量では発生するピーク流量群を統計的に処理して治水安全度に見合う基本高水流量が決定でます。しかし現実的に降雨波形の発生シミュレータは開発されていません。開発されたとしてもデジタルな数値は得られないので、ハイエトグラフのごときアナログ数値となり、そのまま流出解析されハイドログラフになるだけです。
悪用の原因は、時・空間的に発生が困難な降雨を棄却して残ったピーク流量群の最大値を治水安全度1/100の基本高水流量に決定したからで、引き伸ばし法は架空の降雨をつくる便法が原因ではありません。
現状では手数がかかってもよいのなら、吉見先生・陸先生の計算式を採用すべきです。両先生は棄却操作をしていません。より手数がかからない方法として、旧基準でできるだけたくさんの計画雨量の雨量群を引き伸ばし法で作り出し、得られたピーク流量群の平均値を治水安全度に見合う基本高水流量に決定することです。徐々に引き伸ばし率を上げて基本高水流量が収斂するまで引き伸ばし操作をする方法を提案したことがあります。利根川の事例から30個程度のピーク流量は必要でしょう。
現状では降雨波形の影響は引き伸ばし法でピーク流量群の確率分布を統計学的に正しく解析する以外に実用的な方法はないと思っています。
以上
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コメントにひとこと (中 登史紀)
2017-12-29 16:27:38
正直なところ、引き伸ばし法はどうも胡散臭い。
 辰巳ダムの例では、対象降雨に対する降雨波形群を時間分布が、空間分布がどうのこうの異常だからと棄却して残ったものは発生可能性があるから、これを捨てるわけにはいかない。安全を考えて最大値を取らざるをえないというもです。
 引き伸ばしをしない、つまり、観測された雨量記録を加工しないで流出量計算で求めた流量群から基本高水流量を求める方法も捨てがたいと思っています。観測流量記録は不足しても、観測雨量記録は蓄積されていると思いますので。
返信する
コメントへのひとことについて (山好人)
2018-01-03 15:30:28
コメントへのひとことについて

新基準の引き伸ばし法が胡散臭いとされる理由として、引き伸ばし法自体が元の降雨波形の特性を維持しないと思われるなら、降雨波形の発生シミュレータの完成を待つしかありません。胡散臭いとされる理由が、引き伸ばし率を2倍程度にして時空間的に発生が起きにくい降雨を棄却し、残ったピーク流量群の最大値を基本高水流量にすることにあるとするなら私も同意します。最大値の年超過確率が治水安全度に同じになることはありません。

問題は国交省の新基準による基本高水流量が過大であることを立証することにあり、必ずしも治水安全度に見合う真の基本高水流量を求めることではないと考えれば、国交省の新基準の問題点を明らかにすれば十分と考えます。

お説の通り、年最大雨量から流出解析して求めた年最大流量より流量確率を求める方法に実用性があることはすでに報告されています(例えば武庫川流域委員会 奥西先生)。年最大雨量でなくとも降雨波形の影響で年最大流量を与えることは考慮する必要があります。

浅川でも1976年より2015年の40年間の年最大雨量から貯留関数法で年最大流量を求め、流量確率から流量の年超過確率0.01のピーク流量を求めました。SLSC(99%)が0.04以下の7確率分布の平均値は281.6m3/sでした。またJackknife法の推定誤差の最小はGumbelで248m3/sでした。引き伸ばし率が2.0倍までの主要10降雨からのピーク流量群の平均値は272.9m3/sで整合性がありました。ただしこの再現流量からの流量確率による基本高水流量の検証は関東地整の利根川でも採用されていません。辰巳ダムに関して、貯留関数法での流出解析が可能なら犀川での検討をお勧めします。
以上
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