読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ミッシェル・アダムズの『邪魔者』

2018年07月28日 | 読書

邪魔者』(原題:My Sister)  著者:ミッシェル・アダムズ(Michelle Adams)    
                 訳者: 中谷友紀子    2017.9 小学館 刊

  

 イングランドのクイーンズカレッジ病院の麻酔科医であるアイリーニ(リーニ)・ハリン
グフォードは、自分は両親にとって常に「邪魔者」だったのではないかという思いに悩まさ
れ続けてきた。
 そこに姉のエレナー(エル)から母親の死を告げる電話が来た。二度と郷里など行くもの
かと思っていたが常に疎外されてきたという疑惑を解明する最後の機会かも知れないと、29
年ぶりに生家に向かう。

 何故か3歳で母親の姉夫婦に預けられて両親と姉から遠ざけられていたリーニ。リーニは
腰に痛みを伴う不可解な傷を持っている。
 幼いころ両親は姉妹の接触を禁じたが、エルはいつも唐突にリーニの前に現れ奇矯な振る
舞いでリーニを困惑させた。しかし頼るものとていないリーニは姉妹であるエルをつい受け
入れてしまう。

 実家の家政婦や居酒屋、学校の教師などリーニの家の事情を知っているに違いない人々は
なぜか本当のことを語ろうとしない。
 真実を知るはずの父親は、何かを話そうとする度にエルが現れ、ついには「お前は来るべ
きではなかった」という残酷で不可解な言葉を残し自殺を遂げてしまう。
 長女のエルを差し置いて父親の遺産は家屋も含めて全てリーニに残すという遺言書があっ
た。一体エルはどんな存在なのか。

 不可解な家族関係に潜む謎はリーニの懸命な聞き取りなどで次第に解きほぐされていく。
しかし突然明らかになった真相にリーニは愕然とする。

 本書の主題はリーニが悩む邪魔者意識ではなくて、原題『My Sister』を見るとわかるよ
うに、エルの存在である。一連のことの起こりの発端はリーニの姉、エルにある。エルの

すべてを支配したのである。


本書はミステリーであるが、リーニの深層心理の襞を克明になぞるような展開をたどると
一種のサイコ・スリラーでもある。

                              (以上この項終わり)

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「モネの睡蓮の池のような景色」を水彩画で

2018年07月25日 | 水彩画

◇ 「モネの睡蓮の池のような景色」寸景を描く

  写真には納めましたが、現地で何枚かスケッチし簡単な彩色もしました。
   家に帰ってから多少丁寧に彩色しましたが、まさに印象だけを頼りにした彩色で不満、
   もっと時間をかけて丁寧に観察し細部もきちっと描きたかったポイントでした。

   3枚目の、対岸を歩くバックパックを背負った青年は、われわれが行く前に訪れた家族の父親。子供の
   水呑みをここの岸辺に置き忘れてしまったようです。
   「あなた、早く取ってきて!」奥さんに命じられて急いで取りに戻ったらしく、ほっとした様子で家族の下
   へと急いでいる姿です。 


   


   


   

   いずれも [ maruman s51A]

                                                            (以上この項終わり)

 



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「庭のトマト」近況

2018年07月23日 | 畑の作物

露地栽培・樹熟トマトの今

 我が家の小さな家庭菜園。文字通りのキッチンガーデンでは今トマトが収穫の最盛期。
毎日のように10個以上採れる。熟し具合を見ながら収穫し、そのまま食卓に上がるので
新鮮で甘いトマトを食べられるのは自家栽培の特権である。
 トマトの木は1畝に5本で3畝=15本、1本の木に4から5段、1段に4から5個成るので、
1本に20個くらい、全体でかれこれ300個は収穫できる。ご近所などにもずいぶん差し上
げて喜ばれている。

 

 

 

 

 
  これは「彩りミニトマト」 

                   (以上この項終わり)

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眠れる森の「モネの睡蓮の池」発見

2018年07月21日 | 国内旅行

 ◇ 新しい発見「モネの睡蓮の池」
  米国から来た孫たちが帰って、お相手した我々祖父母の「お疲れ休み」と、草津温泉
 に出かけた。折しも各地は記録的な猛暑。草津は海抜1200mのために日中も27・8度
 と下界のいつもの夏の暑さ程度でまだしのぎ易かった。
  宿泊のホテルは2回目であるが、温泉街からはちょっと離れた山裾にあり、森林浴が
 できる散策路(1時間)があってその終点に何と「モネの睡蓮の池」があった。

  前回来たときは秋で、天皇陛下御静養明けでお帰りの準備にかち合ってしまったが、
 森林浴コースはこのホテルご滞在時は天皇陛下ご夫婦もよく歩かれるということで試
 しに歩いてみたものの、この「睡蓮の池」は迂闊にも見落としていた(というより時
 間的余裕がなかった)。
  今回はいい場所があったら是非絵を描いてみたいとスケッチブックを用意していった
 のでこの場所も何点か描いた。
  ホテル構内の施設の一角ではあるがあまり手が入れられていなくて、ベンチも何もな
 い。ただモネの描いた池の橋そっくりの緑色の橋があって、池の睡蓮とうまくマッチし
 ていた。ただ残念ながら柳の木は植えられていなかった。

  モネの睡蓮は有名で、岐阜県関市の根道神社や高知県北川村などモネの睡蓮の池を彷
 彿とさせるという地はいくつかあるようではあるが、ここも隠れたひとつかもしれない。
(残念ながらホテル構内)
  パリのオランジェリー美術館では晩年の大壁画「睡蓮」に圧倒されたが、睡蓮の池の
 一瞬・一瞬をとらえ続けたモネに倣い、せめて真夏の緑の
色濃い今はもちろん、晩秋の
 頃などにも訪れてみたい一角であった。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   モネ 睡蓮     モネの睡蓮の池・太鼓橋

                        (以上この項終わり)

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トマス・H・クック『死の記憶』

2018年07月15日 | 読書

死の記憶』(原題:MORTAL MEMORY)
          著 者:トマス・H・クック(Thomas H. Cook)
          訳 者:佐藤 和彦   1999.3 文芸春秋社 刊

   

 トマス・クックの長編小説11作目。ここの作品の3年後の『緋色の記憶』で人気を博した。記憶三部作
(死の記憶、緋色の記憶、夏草の記憶)が有名である。『緋色の記憶』は結末が切ない物語であるが、こ
の死の記憶も暗く切ない物語である。一人称で語る私(スティーブ・ファリス)がうじうじした男で、後
ろから蹴飛ばしてやりたいほどのこともあるが、クック特有の緻密な心理描写で次第に高まっていく不穏
な雰囲気が魅力ではある。衝撃的な結末であるが、真実を知った時の衝撃を思うとスティーブは知らなか
った方がよかったかもしれない。途中で登場した作家のレベッカ・ソルテロは結果的に罪な女である。

 私(スティーブ・ファリス)は9歳の時、母ドロシーと兄ジェイミー、姉のローラを殺人事件で亡くし
ている。犯人は父親ウィリアム・ファリスと目されており、事件直後逃亡した。私は母の姉に引き取られ
て育ち、今は建築士として妻マリー、息子ピーターと幸せな家庭を築いているが、事件の真相、犯人は
本当に父なのか、なぜ家族を殺したのか、ほかに女でもいたのだろうか、自分が殺しの対象にならなかっ
たのは何故なのか等々いつも暗い記憶と疑問が頭をよぎる。殺人の動機は現状に対する不安・不満にあっ
て、それは今自分が漠然とながら感じている焦燥感に通じている、ということは自分は父の血を引いてい
て…ということなのだろうか。クックはこうした心理状態の叙述が実にうまい。

 そんなある日作家と称するレベッカという女性が現れる。自分の家族を殺した人たちのことを調べてい
るという。私の父の事件を担当していた刑事を初め関係者からも事情を聴いているらしい。私はレベッカ
の調査結果を通じて新しい情報を得て再び黒い疑念が沸き上がってきた。何度もレベッカと会っているう
ちに彼女に惹かれていく自分を発見し戸惑う。なぜレベッカの調査に応じていることを妻のマリーに話さ
ないのか。マリーはスティーブが仕事と偽りレベッカと会っていることを薄々知っていた。マリーは不実
な私に絶望しピーターと共に自動車事故を装い自殺したのだった。

 レベッカとの調査は終わった。事件を担当した刑事の示唆で私は父親探しに出かけ、ついにアントニオ
・ディアスと名を変えた父が、スペインの片田舎で自転車店を営んでいることを突き止める。
そこで父親から事の真相を聞いた私の驚きといったら…。

 この先はお読みいただくしかない。

                               (以上この項終わり)
 

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