読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

堂場瞬一の『零れた明日』<刑事の挑戦・一之瀬拓真>

2019年10月30日 | 読書

◇ 『零れた明日』<刑事の挑戦・一之瀬拓真>

        著者:堂場瞬一   2018.4 中央公論新社 刊 (中公文庫)

  

  一之瀬拓真シリーズ第6作目。警視庁千代田署の刑事で登場してから5年目。
 当時25歳だった拓真も今や刑事部捜査一課の中堅刑事である。
  愛妻深雪との間に子供が生まれる。

  身重の妻を気遣う毎日の拓真は、某芸能事務所の社員が殺された事件の被疑
 者に逃げられるというヘマを犯した隣の係の尻拭いを任される。生真面目な拓
 真は一から事件を洗い直す。芸能事務所の社長、会長など関係者の複雑な人間
 関係を洗い出していくうちに、真犯人は逃亡した被疑者ではなかったことが明
 らかになった。

  このシリーズの中心人物は当然のことながら一之瀬であるが、彼の同僚、上
   司、家族らもそれぞれ人間像がしっかりと描かれており、スートリーだけでな
 く面白く読ませる。

  影の首謀者と目されるTは、任意聴取を受け、温厚なやりとりで終始していた
 が、一之瀬がぎりぎり押していくとついに忍耐が切れたか「手柄を欲張ってはい
 けない。月夜の晩ばかりじゃないぞ。背中に気をつけな」とすごむ。これではま
 んまと拓真の術中にはまったとしか言いようがない。

  しかし結局拓真はこの人物を追い込むことはできなかった。
                           (以上この項終わり)


  
 


 

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深木章子の『極上の罠をあなたに』

2019年10月26日 | 読書

◇ 『極上の罠をあなたに
            
             著者:深木 章子   2019.9 角川書店 刊

  
  この作品は4話の独立した掌編が並ぶ。
 <便利屋><動かぬ証拠><死体が入用><悪化繚乱>
  一見オムニバスを思わせるが、各篇必ず「便利屋」という正体不明の人物が登場す
 るし、いずれの事件にも特定の悪徳刑事や刑事部長、悪徳政治家(と言っても市会議
 員だが)などが互いに関連しながら登場する。
 
<便利屋>
  市議の権田の息子が誘拐された。身代金は5千万円。妻は警察に届けてというが権田
 は反対する。秘書の木戸が5千万円を用意したところでその金を強奪され殺される。
  然し子供は無事に帰ってきた。用意した金は建設会社からの賄賂だった。
<動かぬ証拠>
  老舗会社の長男綱島圭介。妻が弟の昭彦と不倫関係にあるという証拠写真を手にする。
 動かぬ証拠を手に入れようと昭彦の部屋に入ると昭彦の死体があった。第一容疑者とな
 った圭介には父の遺産独り占めの魂胆があった。実は妻の麻利絵の不倫相手は別の男だ
 ったのだが、圭介が犯人になっては相続欠格で麻利絵に遺産が渡らなくなってしまう。
 便利屋登場。
<死体が入用>
  中堅商河北工業営業部長奥田。背任・詐欺・強請・業務上横領…悪事の限りでのし上
 がった。刑事・民事の追及の手が伸びてきた。一度死んで生まれ変わろう。そのために
 悪行ネットワークを使って身代わり死体と死亡診断書・火葬許可書を手配する。一体
 死ぬのは誰なのか。
<悪花繚乱>
  
P県槻津市という地方都市。葬儀屋や病院の院長・医師、建設会社、市会議員弁
 護士などみんなワル。しかもこのワルどもは類は友を呼ぶの倣い、互いに助け合う悪
 徳ネットワークが出来上がっている。通して読めばこの街がとんでもく不正・背徳に
 まみれた地方都市だということがわかる。
  片倉憲太は苦労知らずのぼんぼん。裕福な母親にたかるドラ息子である。女に目が
 ない憲太は、まんまと美人局に引っかかり脅されたあげく、あろうことかその男を殺
 してしまったと母親に泣きつく。しかも死体が消えて5千万円の口止め料を払えとい
 う強請付き。母親は藤代という悪徳弁護士に依頼する。藤代は都築という悪徳刑事に相
 談する。都築は憲太を締め上げてからくりを暴き出す。そして便利屋は…。


 <便利屋>とは。
  どういう手づるで知ることになったのか、悩み事を抱えた人物(高等犯罪予備群)に
 一枚のDMが舞い込む。
  そこには「人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと…そんな問題でお悩みのあ
 なた 便利屋を利用してはいかがですか 簡単な雑用から重大な任務まで、何でもお引
 き受けいたします。アリバイ確保、物品投棄についてもご相談ください なお、ご依頼
 事項の処理は先着順となっておりますので、その旨ご了承ください」とあるだけ。住所
 もなく、メルアドもない。携帯の電話番号だけ。

  悪事を企む連中は、ちょっと懸念はするが、やがて便利屋に電話することに…。 
 
  とにかく著者は元弁護士という仕事柄いろんな事件に出会い、いろんなタイプの被害
 者、被疑者、刑事、検察官などを識り尽くしたはずで題材に不足はない。それにしても
 事件の展開に正体不明の「便利屋」を介在させて、面白みを倍加させている手法には感
 嘆する。文章は歯切れがよく話はテンポよく進んでいく。小気味よい皮肉や警句めいた
 言葉もありすいすい読める。どんでん返しもあって、読んでいて楽しい。
                              (以上この項終わり)

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今村昌弘の『魔眼の匣』

2019年10月20日 | 読書

◇ 『魔眼の匣

                著者:今村昌弘 2019.2 東京創元社 刊

  

  『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。
   もちろん主人公は神紅大学ミステリー愛好会会長葉村譲と唯一の会員剣崎比留子。
  (最も会員は2名しかいない)前会長の明智恭介は前作の「娑可安湖集団感染テロ事件」
  で亡くなっている。
   葉村と剣崎は名コンビであるが、葉村は剣崎比留子の推理力には遠く及ばない。

   葉村と剣崎の二人は、前作の事件で影の策動団体と目されたM機関がかつて支署のひ
  とつで超能力の研究を行っていたらしいとの情報誌記事があり、W県〇郡の好見村に向
  けて旅立つ。

   二人は村に向かうバスで一組の高校生カップル(十色と茎村)に出会う。十色冴子は
  超能力者。出来事の直前に情景が脳裏に浮かび、それを絵に表現する異能を持つ。茎村
  はその擁護者。
   そこに情報誌の記者臼井、道に迷ったイケメンのサラリーマン王寺、車のガス欠で
  ガソリンを探す親子連れ師々田厳雄・純それに好見村の旧住民の一人朱鷺野が加わる。

   橋終点からの山道のはずれに地上1階地下1階、2階建ての建物が現れた。これがM機
  関の研究施設だったところ。
   現在はサキミという研究被験者だった一人の老婆と介助者の神服泰子が住んでいる。
   サキミは未来を見通す預言者。「今月の終わり2日間にこの村で男女4人の死者が出
  る」と予言しているという。

   そんな中、この建物「魔眼の匣(はこ)」に行き着く唯一の橋が何者かによって焼か
  れ、この建物はクローズドサークルと化す。取り残された9人のうちだれが死ぬのか。
   また誰が犯人なのか。
   剣崎らはサキミからテロ事件へのM機関の関与を聞き出すのが目的だったのであるが
  予告殺人の渦中に入ることになった。  

   予知能力者とクローズドサークルを組み合わせた傑作。デリケートな時間差を操る犯
  行。剣崎比留子の推理が冴えわたる。
                               (以上この項終わり)
  

   

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伊東 潤の『男たちの船出』

2019年10月15日 | 読書

◇『男たちの船出

                   著者:伊東 潤    2018.10 光文社 刊 

  

  多分18世紀中ごろ、江戸元禄時代後期の船大工の男たちの人生を描いた時代小説。
 表表紙裏に当時の和船「弁財船」の構造図が描かれている。作品文中当時の弁財船
 の構造と部材についての記述が頻繁に出てくる。読みながら何度も参照した貴重な図。
 石井謙治氏の作品『和船Ⅰ』作成の図とのことである。

  当時の帆を備えた大型和船は500石か750石積みがせいぜいで、海運業者の千石の
 米を積める千石船への要請は大きかったものの、技術的には相当困難を極めたようで
 ある。この小説は瀬戸内の塩飽(しわく)諸島で船造りに携わる男たちの千石船造り
 への挑戦を描いた壮大なロマンである。

  この小説の中心人物は、塩飽の海運業丸尾屋の造船部門に働く船大工弥八郎とその
 父親嘉右衛門である。弥八郎はまだ一人前ではないが、叔父の市蔵(嘉右衛門の弟。
 海難事故で亡くなっている)とともに密かに千石船の研究を重ね、模型まで作ってい
 たが、頑迷な嘉右衛門に提案を一蹴されて家を出る。弥八郎は幕府お蔵米輸送の事業
 を担う河村屋七兵衛に千石船を作りたいという壮大な夢に邁進する熱意を買われ、大
 阪や佐渡で技術的な研鑽を重ね、ついに念願の千石船を作り上げものの、佐渡海流に
 おける試験操船で遭難し敢え無く死ぬ。

  勘当同然の別れをしながらも息子の塩飽への帰りを待っていた嘉右衛門は「弥八郎
 の思いを成就させる。佐渡海流への敵討ちだ」と、老骨を鞭打って新たな設計思想を
 持って千石船造船に挑戦し、見事佐渡の荒海を乗り切る。めでたしめでたしの大ロマ
 ン。
 
   作者は割と淡々と物語を進めるが、人物造形が巧みで自然に登場人物に惹き込まれ
 る。
   また、多くの文献を閲し、弁財船の構造、造作技術、操船技術などを丁寧に作品に
 織り込み想像力を掻き立て、冬場の佐渡海流での操船の展開なども読者の緊張感を反
 らさない。見事なエンターテイメントである。
                             (以上この項終わり)
  

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能登半島の観光名所を巡って

2019年10月12日 | 国内旅行

◇ 初秋の能登半島を巡る
   
  
かねてから願っていた新潟県村上市の瀬波温泉から望む日本海の夕陽。ようやく実現しました。

<村上市・瀬波温泉>
 
村上市 瀬波温泉から臨む日本海

 
村上市 瀬波温泉から 日本海の夕陽(17:25)

<氷見市・輪島市>
 その足で能登半島一周の旅。(珠洲までは足を伸ばさなかったのでやや中途半端)
先ずは氷見の九殿浜温泉の宿で宿泊。豪華な夕食に満足。立山連峰は雲に紛れて見えなかったものの、雲間の朝日を垣間見ました。
次いで輪島温泉へ。総湯は気持ちの良い湯でした。

 
氷見市・九殿浜の宿から日の出(あいにく雲あり)              輪島温泉・総湯
  
輪島温泉・総湯                                                                    道の駅・輪島ふらっと訪夢


道の駅・輪島ふらっと訪夢

<輪島の朝市>
そして輪島の朝市。すでに11時を回っていて大半の露天は店をたたんでいました。

 
既に11時で生もの店はほとんどなし(撤収後か)         乾物の店

  
輪島朝市 建物は旧銀行?        輪島塗中心の店

<輪島市・千枚田>
能登半島の観光スポットの目玉の一つ白米千枚田。実際小さな棚田が1000枚以上あるそうです。
 
 白米(しらよね)千枚田


 
 ヤセの断崖から

 

 
猪の鼻                          巌門・遊覧船乗り場
 
巌門への道                         巌門

 
巌門

<千里浜なぎさドライブウェイ>
 全長8キロという砂浜ドライブウェイを走りました。平日と会ってかは知っている車も少なく、浜風の中の疾走を満喫。

 
 千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ 全長8000m

この車、スバル・インプレッサ・スポーツワゴン1.5L(四駆)時速100キロでおよそ2.6キロ走りました。



 
金沢城への紺屋坂                         石川橋

 
金沢城・河北門(金沢城の事実上の正門)                       金沢城・河北門から菱櫓

 
金沢城・河北門内部の結構                   金沢城・橋爪門続門
 
金沢城・石川門(重文)                   霞ケ池 徽軫灯(ことじ)灯篭
 

兼六園・唐崎松                       兼六園・瓢池

 
ひがし茶屋街                        ひがし茶屋街

ひがし茶屋街
                                               (以上この項終わり)

コメント (2)
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