読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

人類は示準化石となる可能性が

2014年08月31日 | その他

◇ 示準化石とさりげない警句


   
(Wikipediaから)
  

  日本経済新聞では、日曜日朝刊の文化欄に『芸術と科学のあいだ』というコラムがあって、
 今日(8月31日)第29回の話題は「らせんの美しさ残す化石」と題して生物学者の福岡伸一氏
 がアンモナイトのらせんの優雅さについて書いている。

  「らせんの美しさを競うとき、アンモナイトの右に出るものはない」とある。アンモナイトは殻の
 真珠層が失われることなくそのまま化石化すると、オパールの如き鉱物的な光沢と色を揺ら
 めきたたせなあがら、らせん形の宝石となる。・・・
  ドキッとしたのはこの後。
  「示準石というものがある。それが見つかることによって地層の地質年代を特定することがで
 きる化石のことである。たとえば、ある種のアンモナイトはジュラ紀の、三葉虫はカンブリア紀
 の示準化石となりうる。
  示準化石には条件がある。現生しない生物であること、分布領域が広く、あまねく、容易に多
 数発見できること。短期間のみ栄えた生物であること。急速に拡大した種は、その急速さゆえに
 どこかで破綻を来たし、急速に滅びに向かう。何億年か先、人類は示準化石となる可能性が高
 い。
  
  生物学者の目で見ると地球上で最高の知性を誇る生物とおごり高ぶるヒトも、すべての示準
 化石要件を満たし、いずれ遠い将来においてより高度な生物(もしかして地球外生物かも)の
 手で化石として発見され運命にあるということである。

  何億年先ということであって、目先どうこうという話ではないが、宇宙・天文学などと同じように、
 たまには日常のあくせくした時間感覚から逃れて、こうしたロングスパンの時間軸の中に置かれ
 た自分を想像してみることも必要かもしれない。

 (以上この項終わり)

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グレアム・グリーン『情事の終わり』を読む

2014年08月26日 | 読書

◇ 『情事の終わり』(原題:THE END OF THE AFFAIR) 
                                               著者:グレアム・グリーン(Graham Greene)

                        訳者: 上岡 伸雄  2014.5 新潮社 刊(新潮文庫)

  

  小説の舞台は第二次世界大戦の初期から後半にかけてのロンドン。
  中年作家のベンドリックスは、小説の取材で出会った高級官吏のヘンリーとその妻サラと親し
 くなる。
   ベンドリックスはサラと情を通じ、5年に渡って秘かに情事を続ける。ある日ドイツのロケット攻
 撃の最中に逢引きをしていて爆撃に遭い怪我をして死にそこなう。その後サラは会わなくなる。
  1年半ほど経ったある日ロンドンの公園でヘンリーと出会う。誘われて寄ったヘンリーの家で
 サラに再会し、再びサラとの情事に心が動く。
  しかしサラは昔のようにはつき合おうとしない。彼女に何があったのか。
  その夜、なんとヘンリーからサラは浮気をしているらしいと悩みを打ち明けられる。ベンドリックス
 はヘンリーに替わって興信所を使って調べてみようと持ちかける。サラは今どんな男と愛し合って
 いるのか。
  しばらくサラの行動を内偵していたが証拠がつかめないまま過ぎた或る日、ヘンリーの家のパ
 ーティーに紛れ込んだ調査員がサラの日記を持ち出してくる。
  日記には夫ヘンリーに対する愛、ベンドリックスへの愛、神の存在に対する疑念、揺れ動く自分
 の心への不信と感情の移ろいなどが赤裸々に語られていた。こんな会話の内容まで日記に書く
 かというほど長々と綴られた日記を読んだベンドリックスは、・・・。

  『情事の終わり』は グレアム・グリーンの1951年の作品で、日本でも1952年に田中西二郎の
 翻訳で新潮社から出版された。遠藤周作がこの本を手にロンドンの街を歩き回り描写法を研究し
 たというのは有名(『冬の優しさ』)。
  「究極の愛と神の存在を問う永遠の名篇」というのが出版社の惹句であるが、一人称の語り手
 (主人公モーリス・ベンドリックス)の回想形式で、ベンドリックスが理屈っぽい作家のせいか描写
 が独特で、ストーリーの時間軸も行ったり来たりが多く、事の流れが理解しにくいところがある。
  いずれにしてもこの本は単なるエンターテイメントとしての不倫の物語ではなく、個人の心の裡
 に潜む神の存在に対する疑念と信仰への傾斜を述べたシーリアスな文学作品として評価したい。

  作者は英国人であるが26歳のときに英国教会信者からカソリックに改宗しており、かつその後
 共産党員となるなど思想的に稀有な存在である。また第一次世界大戦のときにドイツの対仏諜
 報活動、第二次世界大戦時には英国MI6の一員としてスパイ活動に携わっているという異色の
 作家である。 

  (以上この項終わり)

 

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夏のくだもの・ぶどうを透明水彩で描く

2014年08月16日 | 水彩画

栃木市のぶどう
  栃木県野木町在住の妻の友人Kさんから贈り物が届いた。果物の町栃木市大平町のブドウ。
  巨峰とピオーネ、そしてシャインマスカット。
  こうした果物は絵を描かねばと思う。早く描かないと食べられないので、早速筆をとった。
  巨峰とピオーネは外見では見分けがつかない。とにかくピオーネとシャインマスカットを描くこ
  とにした。(シャインマスカットは皮ごと食べられる)

  ぶどうは、特に巨峰やピオーネなどは色合いが一様でなく、しかも白い粉をまぶしたようなと
  ころが表現しにくい。手を触れたところはこの粉がとれて縞模様になっている。そこまで丁寧
  に描く必要もないのだが、いかにもピオーネらしくしようと思えばそうしたところも描いて見よ
  うという気になる。しかし思うようにいかないのが素人の悲しさ。

  器は白い磁器の平皿。
  緑と紫だけでは寂しいので、畑からとってきたフルーツトマトを2個添えてみた。果物と野菜
  という妙な組み合わせではあるが色面構成が締まった。

  およそ2時間の作品である。

     

       WATSON F4

     (以上この項終わり)

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夏の習作「童心に還る」

2014年08月11日 | 水彩画

昔のおもちゃを描く
  童心に還るをテーマに、昔のおもちゃを描いてみようという今回の水彩画教室。
  それぞれ家の棚の中をひっくり返して、手持ちのおもちゃを持ち寄った。
  すでに大方は孫も大学生や高校生。おもちゃをとっておく家は少ない。捨てるのには惜しいと
  取っておいたのは独楽やケン玉で、ケン玉は3個も集まった。

  これだけおもちゃが集まると、画面構成が重要であるが、教室の真ん中に描くおもちゃを置い
  てその周りを囲んで描くので、どこに座るかで構図が違ってくる。
  いい場所は重なって描くことになる。
  いつもながら天井からの蛍光灯の光が複雑な陰影を作るので、ハイライトがばらける。
  竹製の蛇が面白かった。
  
  今回は背景色は塗らなかった。

   
    White Watson F4


    (以上この項終わり)

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