読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

夏の果物(巨峰と桃)を描く

2017年08月31日 | 水彩画

◇ 巨峰と桃

  
  clester  F6


  栃木県在住の妻の友達が、今頃毎年のように大平山麓の果樹園からブドウの贈り物を下
 さる。果物は新鮮なうちに絵にしなければいけない。と言って強迫観念があるわけではな
 いがほとんど例年の習慣になってしまった。
      今年は長雨のせいか果物は出来が良くないらしい。
  頂いたのは巨峰と天秀という品種であるが、天秀(薄緑色)は少し酸っぱかった。
 
  巨峰も天秀もたっぷりと色を作って置き始めるがどうしても足りなくなる。そうすると色
 にばらつきが出る。
  天秀はサップグリーンとグリーングレーを使った。巨峰はウルトラマリンブルー+ローズ
 マーダー+フタロブルー+パーマネントマゼンタである。

  桃は先週教室で描き終わって競売したものを1個だけ皿に乗せた。桃は色が微妙で苦労する
 が、カドミレッドをベースにジョーンブリアン+バーミリオン+マゼンタなどある。
  
  脇役はマグカップ。
 
  背景色はコンポーズブルー+ビリジヤンである。影はペインズグレーとインディゴである。

                                 (以上この項終わり)

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浜田文人の『禁忌ーtabooー』

2017年08月26日 | 読書

◇ 『禁忌-taboo-
                著者:浜田文人  2015.4 幻冬舎 刊


  

    本書の帯に「直木賞作家黒川博行氏劇賞!!」とある。この作家の作品は初めてであるが、
書下ろしの本書はタッチが細やかでリズム感がよく正統派ハードボイルドの評価に間違い
はない。

 舞台は銀座の夜の世界。我々小市民が立ち入ることがない世界の話で、高級クラブの実
態やホステスの日常など一応興味は尽きないが、それに加えてこうした世界の闇にうごめ
く人々の、色と欲と駆け引きと悲哀がないまぜになって事件が展開し読者を引きずり込ん
で行く。

   主人公は警視庁元刑事で、勤務中に競輪をしている事がばれて所轄に飛ばされ結局辞め
ることになった。今は人材派遣会社SLNの調査員として働いている星村真一48歳。結
婚前提で同棲していた女もいたが振られた。今は吉川八重子というバー蓮華のママといい
仲である。
 星村はある日社長の有吉から派遣先のクラブ「ゴールド」から損害賠償の請求があった
ので交渉して取り下げさせろと指示される。派遣したトップクラスのホステス大西玲子が
自殺した。精神を病んでいた女性を派遣した責任は派遣会社にあるというわけである。

 星村はかつて警視庁愛宕署で風俗担当だったことがある。
 そうこうしているうちにかつてゴールドにいて競合するクラブ「イレブン」に移った坂
本由美子が殺害された。自殺した大西礼子とはホステス同士の因縁がある。礼子の自殺と
由美子の殺しに関連はあるのか。両者の有力な客であった栗田、ゴールドの経営者山本、
出資者の福井、付き合いがあったタレントの高山、指定暴力団銀友会の松村などいろんな
人物が登場する。星村は誰が現れても物おじしない。
 警察官の業者との癒着、同僚や元警察官同士、暴力団幹部との情報の貸し借りなどアン
ダーグランドの世界でのうごめきはすざまじい。

 星村はホステスのスカウトを副業とする八田を手足に、元部下だった現職刑事らを使っ
て情報を得る。その過程で警視庁捜査一課の四角警部補を知る。これがまた星村といい勝
負で互いに丁々発止とやり合う。

 結局礼子の自殺は、別れた夫と娘に対する仕送りと病身の父・妹の学資の面倒を見切れ
なくなって追い詰められての結果と分かった。また由美の殺人事件は金に汚なく阿漕な由
美子が欲張って…。覚せい剤に毒された警視庁柳原がヤクの供給元である福井の依頼で由
美を殺したのだった。
                              (以上この項終わり)
 

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ケント・ギルバートの『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』

2017年08月25日 | 読書

◇『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇
                   著者:ケント・ギルバート(Kent Sindney Gilbert)
                   2017.2 講談社 刊 (講談社+α新書)

  

 著者はアメリカ・カリフォルニア州弁護士にして日本人・日本文化に関する評論等をものし、
かつTV等でコメンテーターなどを務めているマルチ人間。かねてから著作題名から見て並の日
本人以上に日本を愛していて、反射的に日本につらく当たる外国、主として韓国、中国、北朝
鮮などにきつい言葉を突き付けている御仁ではないかと推測していたが、この度『儒教に支配
された中国人と韓国人の悲劇』を読みほぼその推測は確信となった。

 確かに日本はかつて儒教を受け入れて寺子屋などで孔子の『論語』、『四書五経』の素読な
どで儒教の中核となる「仁・義・礼・智・信」といった道徳心や倫理観を身に着けて来たけれ
ども、中国では孔子以前から祖先崇拝の念が強く家族愛やその信義が論語にまとめられた。
中国では公よりも家族愛を上位に置き、「私」や「一族」の利益のためなら法を犯すことも良
しとする風潮へと変化し、文化大革命でこれが決定的となり、社会道徳や公共心は育たない社
会となったと断定している。確かに韓国や中国では一族の結束が固く、コミュニテイやグルー
プでの活動や協力といったことは不得手のようで、これは儒教の特徴かもしれない。

 一方日本では罪人も死ねばその罪から解放されると考えるのに中国・韓国では罪人は永遠に
罪人だそうだ。なぜ韓国人や中国人が慰安婦と靖国神社参拝にこんなにもこだわるのか。その
原因が儒教にあるとする著者の解釈も理解できる気がする。
 また著者は世界的に見て日本人の行動原理で分かりにくいものとして「和」を挙げている。
聖徳太子の「和をもって貴しと為す」。話し合いでまとまればどんな原理であっても差し支え
ない。無原則のようでも和が優先という考えは論理性を重んじる西洋人には理解しがたいこと
かもしれない。

 要はこんな風に日本と同じ儒教の流れを汲む中国、韓国は完全に出口を間違えて「自己中心」
の中国人、韓国人が出来上がったというわけである。こうした日本人の「和」の価値観からす
ると「自己中」の中国・韓国とは永遠に交わることができないのかもしれない。

 著者は本書あとがきの中で、「儒教の呪いに支配された国々からの、いわれなき誹謗中傷に
臆することなく、もっと自信と誇りを持ってください。」と言っている。本書の核心は、日本
人は中国や韓国からの理不尽な言いがかりに対しもっと自国の文化・歴史に自信を持って反論
しなさいという叱咤激励にある。


   総合的印象としては日本礼讃、中韓誹謗的内容であるが、いちいち納得できる裏付けがあっ
て、標準的日本人である私としては、本のタイトルから右傾的バイアスのかかった内容ではな
いかと幾分気にかかったものの、一安心であった。

 著者は今度『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』を出版した(2017.8)。


                                  (以上この項終わり)

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加治将一の『龍馬を守った新撰組ー禁断の幕末維新史』

2017年08月18日 | 読書

◇『龍馬を守った新撰組 禁断の幕末維新史
        著者:加治 将一  2017.7 水王社 刊

  

  「禁断の幕末維新史」、センセーショナルな副題である。禁断とは広辞苑では
「ある行為を差し止めること」とある。幕末維新について語ってはならないこと
に手を付けたということだろうか。なるほどこれまで常識的に語られてきた幕末
維新の肝心な部分に、新たな解釈を下したという点では新鮮さがあり興味をひか
れる。
 時代小説の名手吉村昭は、仮令小説ではあれ、間隙を想像で埋めることはあっ
ても勝手に付け加えるようなことはあってはならないと戒めているのであるが、
著者も「数ある歴史本が脚色されたヒーロー像をそのまんま史実の領域に引っ張
り込んだ」と嘆いている。ということはよもや著者自身はこうした愚を犯しては
いまいと思うが、固定化されたイメージを覆すわずかとはいえ史料をもとに、史
実の空隙を埋める作業は楽しいことだろう。
 本書の構成を見ると論点がある程度想像がつく。

 第1章 新選組は尊王攘夷の組織だった!?
 第2章 新選組大量粛清は会津との共謀
 第3章 新選組初代局長芹沢は水戸藩のゲバラだった
 第4章 幕末を支配した英国情報網
 第5章 龍馬と近藤勇は同志だった
 第6章 脚本英国、メインキャスト勝海舟、徳川慶喜の明治維新

 本書は歴史書ではないし時代小説でもない。講釈師まがいに「白マメ」、「薩摩
イモ」、「デンガク会津」、「フグ侍」、「土佐カツオ」、「エイリアン海舟」な
どなどあだ名をつけて読者サービスをしているが、差し詰め歴史講談か。

 京都守護職の会津藩に属して動いていた新選組の近藤勇は、大政奉還派の坂本龍
馬の敵という単純な図式ではなくて、薩長土の武力倒幕派を抑えるという立場から
新選組、近藤勇は龍馬の命を守ったというのが著者の解釈である。そして明治維新
について言いたいことは、最終章にあるように英国の描いたシナリオで勝海舟と徳
川慶喜が巧みに踊った。本来大政奉還で終わったはずの幕末維新が「天皇すり替え」
の証拠隠滅のために薩長土が強引に戊辰戦争という大量殺りくを演じたのだという
のが著者が到達した幕末維新観なのである。

                           (以上この項終わり)

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加藤秀行の『キャピタル』を読む

2017年08月15日 | 読書

◇『キャピタル』 著者: 加藤 秀行  2017.3 文芸春秋 刊

  

        著者加藤秀行は2015年に『サバイブ』で文学界新人賞を受賞した。2016年『シェア』が
  芥川賞候補作品となった。
   題名『キャピタル』(資本)のネーミング意図が不明。資本と個人の適切な距離って何だ
  ろう?という単行本帯の問いも本文を読んでも判然としない。

   とにかく不必要に過剰な横文字。漢字に横文字が振ってある(ルビ)。例えば文中の不自
  由さ、教え、前提、環境という漢字に「パラダイム」というルビを振っている。漢字は使っ
  たがニュアンスとしては英語のパラダイムのほうが合っているということだろうか。
   才気が横溢していて、いかにも芥川賞候補作の作家という感じである。例えば「外部目的
  の存在を所与のものとした一続きの言語体系に置き換える過程である種の転換期的混乱があ
  ったのかもしれない」(52p)。 

   プロットは、コンサルティングファームで7年間勤め、タイで1年間の一時休養を取ってい
  る主人公の須藤(30歳)に先輩から依頼があった。彼の会社に採用が決まった女性(アリサ)
  が交通事故に遭ったので突然入社をやめたいといってきた。真意を確かめて、できれば翻意
  させて欲しいというのだ。アリサは親の遺産を引き継ぐ裕福な資産家だった。結局就職はや
  めて家業のデータセンター業を継ぐということで翻意はしなかった。実は先輩が付き合って
  いたアリサが急に彼から離れていったので、引き戻したくて須藤に真意を探ってほしかった
  という陳腐なストーリー。
  
   経験した戦略コンサルティングファームの世界をベースに、タイ・バンコクの風物を背景
  とし自分の哲学的な心象を語るという得体のしれない小説という印象である。

                                 (以上この項終わり)

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