読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

今野敏 『道標=東京湾臨海警察署安積班』

2018年04月28日 | 読書

◇ 『道標=東京湾臨海署安積班』著者: 今野 敏 
                 2017.12 角川春樹事務所 刊 

  

 おなじみの東京湾臨海署安積班シリーズ短編集で10篇を収録。初出は大半が雑誌「ランティェ」
であるが最後の「家族」は書下ろし。
 最初は「初任教養」。安積剛志が警察学校に入り、6か月間の初任教養という警官教育を受けると
ころから始まる。
(「初任教養」、「捕り物」、「熾火」、「最優先」、「視野」、「消失」、「みぎわ」、「不屈」、「係長代理」、
「家族」)

自分は、強行犯係の刑事を志しております」と入校の動機を言い切った安積の志と刑事魂、徹底
した正義感、部下への思いやりなど安積の人となりがいくつかの事件への対応ぶりから綴られる。
 そして5人安積班のメンバーの性格や特質などが事件捜査を通じて次第に明らかになっていく。
 ナンバー2の村雨秋彦(巡査部長)、須田三郎(同)、水野真帆(同)、黒木和也(巡査長)、桜井太
一郎(同)。

 互いにチームとして深く理解し合いながら捜査活動に当たることの大切さが「家族」で語られる。せ
めて小説の世界の中だけであってもこうした「強行班」があってほしいと思わせる。また「不屈」では事
件捜査における冤罪発生のメカニズムの一端が取り上げられる。捜査班のストーリーが出来上がり、
それに合わせて捜査が進み、外れた証拠・証言などから目をそらそうとする習性が
冤罪を生み出す
リスクをはらむ。
                                                 (以上この項終わり)

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トマトを植える

2018年04月25日 | 畑の作物

◇ 庭の畑にトマトを植える

 借りていた畑が地主さんの都合でアパートになって早や2年。
 仕方なく庭の一画を畑にして1坪庭園にして、昨年はきゅうりとトマトをつくったが
 今年はトマト専用にして、昨日苗を植え付けた。

 1畝6に6本、3畝で18本。1本はミニトマト、あとはすべて「ホーム桃太郎」。
 3月中に苦土石灰を鋤き込んで土壌を中和、4月に入って元肥として堆肥と配合肥料
 を施して畝を整えた。例年だと連休前に苗を植えるのであるが、今年はやけに気温が
 高いので早めに植えた。

 そして昨夜の雨。風も強くまだか弱い苗が倒れたりしていないかと心配したが、無事
 な姿で安心した。

 さて、無事に育って大きなトマトが収穫できるか。あと4か月が楽しみである。

   

   

   

   

                      (以上この項終わり)

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マーク・グリーニーの『機密奪還』(上・下)

2018年04月24日 | 読書

 

 ◇ 『機密奪還』(原題:TOM CLANCY'S SUPPORT AND DEFEND(Vol.Ⅱ))
                       著者: マーク・グリーニー(Mark Greaney)
           訳者: 田村 源二
           2014.4 新潮社 刊 (新潮文庫)

  

  トム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズ外伝。本書は対テロ極秘民間
 情報組織(ザ・キャンパス)工作員のひとりドミニク・カルーソー(通称ドム)の
 単独冒険譚になっている。
  ドムはFBIの特別捜査官の肩書を有しながら秘密裏に特別工作に携わっている。

  今回のストーリーのあらすじといえば「アメリカのNSC(国家安全保障会議)
 事務局職員が自己の信条から軽い気持ちで機密情報を外部に漏らし、その情報が
 暗殺に利用された。自分の身を守るために更に高度の機密情報を漏らすという深
 みにはまっていく。そこに外国の諜報機関や組織が絡んで情報奪取に動く。ドミ
 ニクは殺された恩師の敵に復讐を誓って多数の命がかかった機密情報の奪取に命
 を懸ける。」

  著名な大学教授の両親を持ち、ハーバードを出て、国家機関でエリートコースを
 歩む筈であったイーサン・ロスは、自分の超絶能力が認められずいまだに不遇なポ
 ストに置かれていることに不満を持ち、内部告発機関:国際透明性計画(ITP)に
 アクセスし、機密情報を流すことを何度か繰り返すことに。
  こうした内部告発啓発機関が匿名性を厳密に保持しながら隠された情報を暴露し、
 社会的正義を実現していくシステムの設定はいかにもアメリカらしいが、所詮は組
 織。組織のほころびから秘密が漏れて対象者の名前・住所が明らかになり、極端な
 場合報復殺人が起こることもある。

  ドミニクはインドでヤコブ(元イスラエル海軍特殊別部隊大佐)から家庭に寄宿
 し個人的に対テロ訓練を受けていた。
  ある日テロ集団がヤコブ宅を襲いヤコブの家族全員が殺され、ドム自身も大怪我
 を負った。実行犯はパレスチナ解放戦士とイェーメンの聖戦士混合チームと目され
 た。
  実はヤコブ元大佐は4年前ガザ沖で起きた貨物船襲撃事件、トルコ船籍の貨物船
 に潜む9人のパレスチナのイスラム原理主義ハマスの軍事部門の兵士を襲撃し殺害
 したチームの指揮者であった。 
  このトルコ船籍貨物船の襲撃にはアメリカCIAからの情報 や関与が記されており、
 機密情報とされていたが、NSCの機密情報アクセス権限を持つロスはこの情報をIT
 P経由で流し、どこかでその中のヤコブの名前・住所が漏れてしまったのである。
  当然のことながらFBI国家保安部防諜課・管理監督特別捜査官が出動。アメリカ
 情報機関・極秘イントラネット(Intelink-TS)取り扱い資格を持つ人に「ポリグ
 ラフ(嘘発見器)」にかけられることになり、ロスは真っ青になる。連邦公職守秘
 法違反容疑である。 

  FBIからロスが濃厚な容疑者との情報を得たドムは復讐に向けてロスの尾行を始
 め、イスラエルのモサドの加助を借りながら、ITPの手引きでベネズエラへ高飛び
 しようとするロスを確保しようとするがロスは巧みにすり抜けて・・・。
  
  ロスはITPの勧めに従って、もし罪がばれた場合、取引材料にするために、JWICS
(アメリカ政府機関インテ
リジェンス・コミュニケーション・システム)の重要機密フ
 ァイルをダウンロードする。このファイルにロシア特殊部隊やイラン・クドス部隊な
 どが群がり争奪戦となる。下巻はロスを抱え込んだ
イスラム革命防衛隊少佐のモハマ
 ドとドムとの攻防戦で、臨場感あふれる活劇が繰り広げられる。

  振り返ってみればこの小説はこの数年で話題になったアメリカのスノーデン事件や
 ウィーキリークスを想起させる内容で、情報機関における内部告発の怖さと、国際諜
 報機関同士の駆け引きを巧みに盛り込んだインテリジェンス活劇である。
 

 本書『機密奪還』の前に『米朝開戦』という誠に時宜に適した著作がある。邦訳は
 『機密奪還』より後の出版されている(2016.3)。

                             (以上この項終わり)

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逢坂 剛の『恩はあだで返せ』

2018年04月18日 | 読書

◇『恩はあだで返せ』 著者:逢坂 剛  2004.5 集英社 刊

  

  「小説すばる」に掲載された5篇の連作もの。
  登場人物は割と少なくて警視庁御茶ノ水署生活安全課保安係の斉木斉主任と部下の梢田威
 と五本松小百合。斉木主任と梢田は小学校の同級生だが、どういうわけかいまは上司(警部
   補)と部下(巡査長)の関係。凸凹迷走コンビのやり取りが軽快で面白い。特に婦人刑事の
 五本松小百合は柔術に長け、口八丁手八丁の女丈夫。自分のことを「わたくし」などと一人
 称で呼ばず、「五本松は」などと三人称で呼び客観視するのが特徴。

  今回の3人をめぐる事件はいくつかあるが、メインの事件は「恩はあだで返せ」。
  斉木主任が、かつて上司であった尾関という先輩刑事から頼みごとをされる。4年先輩の尾
 関は麻薬所持容疑で松山という男を逮捕したが彼は麻薬を持っていなかった。尾関は誤認逮捕
 を避けるために松山の靴に麻薬袋を入れて麻薬所持をでっち上げ、幸い前科があったので3年
 の刑で刑務所に送った。その松山が近頃出所した。彼はその後尾関を訪ね、どういうわけか尾
 関の情報屋になって尾関に協力し始めた。ところがその松山が突然死んだ。ところがその姉が
 「松山の遺した日記がある」と言って口止め料払えと言ってきた。松山は日頃から日記をつ
 けており「でっちあげ」の証拠があるというのだ。斉木はかつて尾関にミスをカバーしてもら
 ったという借りがあり、このゆすり対応にひと肌脱がざるを得ない。梢田にも手助けをしろと
 いう。
  日記の手帳と引き換えに500万円払うという取引。うまくいかなくて手帳が取り戻せなかっ
 たら出口に隠れていた斉木らが松山の姉とその相棒を取り押さえて手帳を奪うのが作戦である。
 携帯に尾関から取引不調の知らせが届いた。二人は姉とその男を取り押さえてバッグを探った
 が、手帳などない。彼らは「手帳など知らない」というのだ。

  そこに電話が入る。二人が走った先に尾関が倒れ転がっている。その傍らには五本松小百合
 の姿があり梢田は驚く。尾関の傍らのバッグには500万円の札束と白い粉の袋。なんと斉木は
 100万円を抜くとポケットに入れる。白い粉の袋は破れて大半がどぶに流れてしまった。尾関
 は五本松刑事に空手打ちを食らって気を失っているらしい。
  以下は斉木の謎解き。「尾関は相当な悪だ。松山は尾関の手先となってクスリの取引に係わ
 り、その一部をくすねていた。彼の姉は遺品のヤクを捌こうと尾関に接触してきた。尾関はう
 まく出し抜いてやろうと一計を案じ、ヤクと口止め料を一挙にせしめようとひと芝居打ったの
 だ。まさかの時の保険に俺をかませて共犯者にしようと、昔の貸しを口実に協力させたのだ。
 それに気づいた俺は五本松に尾関の後をつけさせたのだが、まさか…」
  斉木はバッグの500万円から100万円取り上げる。
 「50万円は俺が出した分。残りは手数料だ」

                                (以上この項終わり)
  

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最近気になる一言

2018年04月15日 | その他

どうでもいいことではあるけれども

  最近というか、このところというか、この2・3年というか、気になっていることがある。
 昨日新聞でイラっと来て、ついにこのブログに書くことに。
  何かというと、「生きざま」。なに、なにが問題?どうってことないことじゃないのと
 おっしゃる方がほとんどだと思う。しかるに吾輩はイラっと来る。極少数派でこんなこと
 に目くじらを立てているのは絶滅危惧種だと思うが。

  きっかけは何かというと2018.4.12日付け日本経済新聞「文化往来」。「オーネット・
 コールマンと並ぶフリージャズ先駆者でピアニストのセシル・テイラーが5日89歳で死去
 した。ダンサー、詩人でもあったその演奏、アーティストとしての生きざまはまさに孤高
 のと呼ぶべきものでジャズ以外の芸術にも大きな影響を及ぼした。…」
  小生はこの短文の「生きざま」にカチンときた。個人的な反発で過剰反応だと思うが、
 故人に失礼ではないかとまで思った。死にざまを曝すとはいうが、生きざまを曝すとは言
 わない。せめて「生き方」とか言って欲しい。
  たしかに「死にざま」という言葉はあります。この言葉には不快感を伴います。例えば
 「ざまあみろ」と通じていい印象がありません。それと対語、対義語だからと言って「生
 きざま」はないでしょうというのが小生の考えです。単なる語感の問題かもしれないけれ
 どもせめて「生き様」は「生きよう」と読んでほしい。「ざま」はやめよう。
  ちなみに広辞苑には「しにざま」は①死ぬ時のありさま、死に臨んでの(人としての)
 あり方、しによう②まさに死のうとする時、しにぎわ、とあります。「いきざま」は辞書
 にはありません。
  最近は重複(ちょうふく)とか発足(ほっそく)とか厳密な使い方は薄れてきたのは確
 かですが、「生きざま」だけはやめてほしい。
  過日新聞連載小説で「米でおにぎりを握る」とあったので、新聞社に「米でおにぎりを
 握れるわけがない。編集者が注意した方がよかったのではないか」とかみついたら「いい
 んじゃないですか。それでも」とあしらわれた。物書きのプロにいちゃもんをつけるんじ
   ゃないよ、素人が、というニュアンスの対応でカチンときた。物書きを生業としている人
 はもっと言葉に真剣であってほしい。 

                              (以上この項終わり)

  

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