読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

最近読んだ本(2)

2012年01月25日 | 読書

◇ 『不正侵入』 著者:笹本 稜平 2006.11 光文社

   

  警視庁組織犯罪対策部第四課に「ハイテク組織犯罪特別捜査室」が設けられた。第四課
 の係長秋川は管理官としてハイテク犯罪に取り組むことになる。部下は3人。ネットカジノ
 に進出した暴力団の動きに食らいついた秋川らは、企業内秘密を種に脅迫に動く奇妙な
 動きに気付く。どうやらそこには東京地検特捜部の副部長が噛んでいるらしい。
 室員の一人清崎はUCLAを卒業後米国FBIの委託で政府機関のシステム監査に従事した
 というつわもの。バハマの銀行にハッキングし企業脅迫秘密情報のデータバンクを探り出す。
 企業恐喝の餌食となった友人の妻やその友人の息子(ハッカー)などが複雑に絡み合うが、
 暴力団と東京地検特捜部の手兵と戦いながらついに政界に及ぶ悪の連鎖を暴く。
 「疑似記憶」が事件展開の重要なキーポイントになっているところが面白い。

◇ 『ママ、死体を発見す(MOTHER FIND A BODY)』 
                                                        著者: クレイグ・リコ(Craig Rice)
                                                                     訳者: 水野 恵
                                       2006.4 論創社

   

  著者はアメリカ女流作家を代表する存在。1941年の作品。今はNYブロードウェイ
 の人気女優だが元ストリッパーのジプシー・ローズが、船内結婚を果たしたものの、ど
 うしたわけか新婚旅行のトレーラーには母はもとより、元同僚の花嫁、花婿の友人まで
 が乗り込みとんでもない新婚旅行に。かてて加えてなんとトレーラーには次々と死体が
 発見され地元の保安官の追及を受けるのだが…。舞台はメキシコとの国境イスレタ。
 ローズの母親や取り巻きの男女が繰り広げるドタバタが奇妙な面白さを醸し出す。

◇ 『すれ違う背中を 著者: 乃南 アサ  2010.4 新潮社

   

  『自分のつま先ばかりを見下ろしながら、ゆるいS字形に曲がっている急な坂道を下り
 て、ふと顔を上げると、・・・』
  女性らしい表現だ。乃南アサはサスペンス調の作品が優れている。この作品は二人
 の歳を足すと70を超えるという二人の元受刑者が主人公。なんとか過去を隠して娑婆
  を生き延びようと苦労している。どんな展開になるのか楽しみに読み進んだ。
    DVの夫を殺した女と、ホストに貢ぐ金を作るのに業務上横領した女二人の苦労話が
 続いて、気が付くと本の3分の2くらいまで進んだ。なんだこりゃと思っているところ、やっ
 とサスペンスっぽい状況が出て来たが、結局親しくなりかかった女性がDVの被害を受
  けているらしいと気付き、早く抜け出させようと心を砕いているうちに、くだんの女性が
  美人局で逮捕されたの報道に接し、「私たちはちゃんと懲りる性格でよかったね」など
 と言ってこたつでカレーを食べるシーンで終わり拍子抜けした。
 『yom yom』という雑誌に発表されて、加筆訂正の上単行本化されたと知って納得し
 た。
                                       (以上この項終わり)

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雪が降って…

2012年01月24日 | その他

◇ 今冬初めての積雪

            
   
  珍しく天気予報が当たって、昨夜9時ころから降り始めた雪がおよそ5センチほど積もった。
 東京都心でも同じくらい積もったようだ。
  雪になったのは初めてではなく2・3日前にも雪が降ったが、これは積もらなかった。
 雪国育ちの吾輩は多少の雪には驚くことはなく、むしろ犬ころと同じように雪景色に心騒ぐ。
 かつてスキー場で朝を迎えて、朝日にきらめく雪景色に身も心も舞い上がっていたころが懐
 かしい。

  生まれ故郷の新潟では5センチくらいの雪では驚かない。一晩かかって1メートルくらい積
 もることもある。寝ていると屋根がみしみしと音を立てることもあった。雪掻きをして落とした
 雪が二階まで届くほどになると、道路に落とし穴を作って、杉の葉をかぶせ、その上の雪を
 置いて、長靴の裏に泥を付けたので足跡を作りカムフラージュし、人が通るのをわくわくして
 待っていたりした(落とし穴にほんとに落としたのかどうか記憶がない。都合の悪い記憶は
 自動的に消えるのかも)。
  ふるさとの家(市町村合併でいまや新潟市秋葉区)よりもさらに山深い魚沼市小出に住む
 舎弟は友人と共同で須原スキー場にロッジを持っているが、雪掻きには往生している様子
 である。山やなので、安全のため手持ちのザイルで身柄を確保しながら1メートルもの雪を
 かき落としているようだが、過疎地の老人たちにとっては実に大変な労働のようだ。慣れた
 仕事のようでも毎年屋根から落ちて亡くなる人が何人も出る。

  千葉県の5センチくらいの雪は放っておいても構わない。そのうちすぐに溶ける。それでも
 雪の朝は6時ころから道路を掻く音がする。勤めに出る人が車を出すために家の前を雪掻
 きする音である。そのうちにだんだん各家でも道路の雪を掻き始める。「放っておいても溶け
 るのに」と思ってはいても、隣近所が家の前をきれいにすると我が家だけが目立ってしまう
 ので、仕方なく雪掻きをする。我が家はかど地のためご近所の倍は雪掻きの面積がある。
 陽のあたる東側はともかく、北側の道路は車が2・3台通るとすぐに雪がふみかたまって凍
 り、通学する子供が転んだりする恐れがあるので、早めに雪を掻かなければならない。

  雪掻きは中腰になって作業するため、腰痛持ちにとっては危険このうえない。前にえらい
 目に遭っているので、腰をかがめないように、なるべく汗を掻かないように、注意しながら
 雪を掻く(少ない雪の際は雪を押す)。毎年のことだからと軽いアルミ製のスコップを買って、
 自慢げに使っていたら接触面がすぐに丸まってしまって使い物にならなくなった。安っぽい
 がプラスチックのものがよいかもしれない。

   さて今年はあと何回くらい雪掻きをすることになるのか。

                                            (以上この項終わり)

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お正月に赤い実と水仙を描く

2012年01月21日 | 水彩画

◇ サンキライ水仙
  先週の金曜日は水彩画教室。
  お正月らしく赤い実と季節ものの花、スイセンを描いた。
  昨年は南天だった。
  サンキライはユリ科の植物で、毒消しの効用があり、毒消しの必要があった時に山に行って
 採取してくるので「山帰来(サンキライ)」と呼ばれる。実は黄色から最後は赤くなる。自然乾燥
 でドライフラワー化するので、生け花の素材やクリスマスリースなどに使われる。
  今回は赤いサンキライを際立たせるためにいまどきの花スイセンの緑を添えた。

  白い花は背景を重くして浮き上がらせるが、コントラストの程度が難しい。
  サンキライの赤い実も、全部同じトーンでは締まらないので、2~3個所だけくっきりと描いて
 メリハリをつける。
  籐でできた籠は丁寧に描いていると主客転倒しかねないので、端役らしくあっさりと描く。

          
            CLESTER F4

                                                    (以上この項終わり)

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新春描き初め

2012年01月08日 | 水彩画

◇ シンゴニウムを描き初め
  小学校では書き初めという行事があった。習字の紙も半紙ではなく長い紙に書いた。
 当時は紙は値段も高く、書き損じると大変なので新聞紙で何回も練習した。K町の小
 学校で書初め大会があって、入賞したことがある。中学校の机で書を書いている姿が
 写真に残っている。制服の肘のところに継接ぎがあたっている。

  昨年の正月には鉢植えのシクラメンと籠に入ったミカンを描いた。
  今年は妻が三女から手に入れた「シンゴニウム」という観葉植物とゾウさんの置き
 台を描いた。ゾウさんの置き台は家を30年前に家を建て替えた時にある知人から頂い
 たもの。
  シンゴニウムは小さいうちは濃い色であるが、大きくなると葉が薄淡い緑になる。
 こうした柔らかい色には硬質の陶器などが合うだろうと思って組み合わせた。
  シンゴニウムは葉脈がくっきりしていて、右から差し込む陽の光を受けて微妙な陰
 影を作るところが特徴なので、それをきれいに表現しようと思ったが意外に難しい。
  ゾウさんの置き台は描き上げてから良く見たら背中に乗った荷台部分が少しいびつ
 になっていた。ゴッホやセザンヌも結構こんな絵を描いているのだから、ま、いいかと
 そのままにすることにした。 
  いつも迷う背景色は明るい色の葉っぱと陶器の器質感をだすためにインディゴとペ
 インズグレイを主体にしてみた。

  
   CLESTER 8号

                                          (以上この項終わり)

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最近読んだ本(1)

2012年01月05日 | 読書

◇ 欅しぐれ 著者:山本一力 2004.4 朝日新聞社

   

   賭場の貸元猪之吉と深川の履物の老舗桔梗屋のあるじ太兵衛が筆道稽古場で知合い、
   懇意な間柄に。そのうち詐欺集団が大掛かりな桔梗屋乗っ取りの企みを図りつつあるこ
   とが明るみに出る。重い病を患った太兵衛は後を猪之吉に託し息を引き取る。賭場の貸
   元と大店の主が懇意になるとはちょっと意外であるし、その貸元が大店の後見人として
   詐欺集団に立ち向かうというのもあまりない構図であるが、そこは時代小説のベテラン。
   なかなか読ませる。それにしてもこの人たちは江戸の町や、当時の下町庶民に詳しいで
   すな。当然だけど。

◇ 白日夢  著者:笹本稜平 2010.10 光文社

    

   この作家の作品には初めて接したが、警察ものとしては佐々木穣を凌ぐと言っても
   過言ではない。
   圧巻痛快一気読み。エンターテインメント警察小説。との宣伝文句に偽りはなかった。
   警視庁警務部人事一課監察係の監察官はいわば警察官の警察。内部の不正を暴く
   のが職務であるが、実態は組織の悪事を世間に知られる前にうまく処理するのが役割。 
   主人公の本郷監察官は、自殺した元潜入捜査官の遺骨を受け取りに山形に向かった
   が、元潜入調査官は実は警察組織に裏切られ自殺に追い込まれたことが明らかになる。
   本郷の上司入江首席監察官はキャリアだが高校同期生、私立探偵から入江に誘われ
   て監察官になった異色。相棒の北本は定年直前のベテラン。この面白い組み合わせで
   警察中枢の悪事に立ち向かう。
   エンターテイメントとはいえ、ほんとに警察はこんなに腐りきっているのかとあきれてしま
   うが、裏金作りに始まって、権力争い、縄張り争いなどにうつつを抜かしているらしいこと
   は何となくうなづけるし、こんなことでは初動捜査の手際は悪い、検挙率は悪いのは当
   たり前ではないかと思う。手配犯が出頭しても「うそ!」なんて対応しているのも警察官
   の程度を示すものだと思ってしまう。     

     
◇ 越境捜査 著者:笹本稜平 2007.9 双葉社 
 
   
   
   本書に登場する主要人物は、迷宮入りした事件担当の警視庁特別捜査班の刑事と
   神奈川県警警務部監査官室長。
   15年前の未公開株式の詐欺事件に絡む殺人事件と殺された犯人が持ち逃げした
   12億円の金はどこに消えたのか。警察の秘密資金かあるいは警視庁・警察庁幹部
   の手に渡ったのではないか。賄事件の捜査関係者と暴力団行など行方不明の金を
   めぐって事態はスリリングな展開を見せる。
   主人公の一人特捜刑事鷺沼の縦横無尽の行動はまるで日本版ダーティーハリーだ。
   「監察という仕事は、社会正義を実現するためにあるんじゃない。警察と言う利益集
    団の存続のためにあるんだよ。」警視庁警務部人事第一課監察係長の川島の言
   葉を聞くと実に空しいというか情けなくなる。
   [発売4日でたちまち重版]とは本書の帯の惹句。とにかく面白い。

   (以上この項終わり)
      

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