読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

大沢在昌『影絵の騎士』

2018年07月13日 | 読書

◇『影絵の騎士』 著者:大沢 在昌 2007.6 集英社 刊

  

  紛う方なき大沢在昌の世界。異色のハードボイルドヨヨギ・ケン。2002年から2005年にわた
 って「小説すばる」に連載されたとあるが、かれこれ15.6年前の作品とは思えない現実味のある
 世界(つまりあまり変わっていない世界)が展開されている作品。

  近未来小説。時代は2060年ころ?昔B・D・T(BOIL DOWN TOWN)で私立探偵(調査員)
 をしていたホープレス・チャイルド出身の俺(ヨヨギ・ケン)は、愛するエミィを死なせてオガ
 サワラに移住し失意に沈む毎日だったが、ある日友人のヨシオ・石丸の依頼で、ヨシオのワイフ
 映画界のスーパースター、アマンダ・李の身辺警護をすることになり東京湾にあるムービー・ア
 イランドにやってきた。

  ムービー・アイランドは千代田区に匹敵するサイズの新興地、一時低迷しながらも復活した映
 画産業のメッカとなって久しい。スタジオ・カンパニーをはじめ、コンテンツがらみの脚本家・
 監督・俳優・スタッフなどがしのぎを削っている。
  しかしこのムービーアイランドもロシア人・チチェン人などマフィアグループに牛耳られてい
 る。アマンダはスタジオ・カンパニーをめぐる保険金詐欺の横行に批判を加えたところ脅迫され
 た。また視聴率稼ぎのためにTVのクライムチャンネルで流される、やらせの犯罪実写のエスカレ
 ートも目に余るようになってきた。
  
  ケンは絶世の美女アマンダの依頼でもあり、警察の旧友亀岡や池谷らと連絡を取り合って保険
 金詐欺の実態を探るうちにムービー・アイランドでの主導権を争うグループのボスと接したり、
 アマンダの父でありアイランドの帝王とも称されるワン・コングと会い次第に争いに取り込まれ
 て行く。しかし彼らの抗争の背景にはもっと複雑な支配構図が隠されていた。

  理解しあえていたかに見えたアマンダも所詮ムービーという異世界の女王だった。道化と化し
 たケンを支えたものと言えば人の信頼だろうか。すべての真相を知るケンに託された使命は、こ
 れまでスタジオ・カンパニーにいいように使われてきた監督、脚本家、特殊効果、アクション・
 コーディネータ、スタントマンなどの主権回復であった。

 「俺はしばらくオガサワラに帰り、しばらくエミィのそばで過ごすことにした。」

                                  (以上この項終わり)

 

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柚木裕子『孤狼の血』を読む

2018年07月11日 | 読書

◇『孤狼の血』著者:柚木裕 子  2017.8 ㈱KADOKAWA (角川文庫)

  

     親しい知人からいただいた文庫本。映画化された評判の1冊を手に孫との箱根旅行。
 電車や休憩時に読みふけって結局一気読みとなった。
  最初は単純な警察と暴力団の抗争が中心のストーリーと思っていたが、読み進むに
 したがって登場人物の姿がだんだん明瞭になってきてストーリーに引き込まれた。
 中心人物大上と日岡の人物造形が巧みである。

 
   警察の仕組みはなじみがあるが暴力団の組織やしきたりには疎い。警察と暴力団の
 リアルなやり取りにぐいぐい引き込まれる。よほどの取材力がなけれこれだけの迫真
 力で読者に迫ることはできまい。とても女性作家の筆力とは思えない。

  本書はヤクザ小説と警察小説を融合させた稀有な作品と言ってよいだろう。舞台は
 昭和63年の広島呉原市。実在の呉市をモデルにしている。時期的には暴対法が成立す
 る前の最後の暴力団の姿を垣間見ることになる。作者にとって深作欣二監督の映画
 「仁義なき戦い」が本書に取り組むに当たって苗床になっているらしい。

  仕事の性質上ミイラ取りがミイラになるケースはままあるが、大上巡査部長の暴力
 団という存在に対する確信犯的な理解はなぜかうなずけるところがあって、足場を法
 治国家維持という枠組みから少し外して眺めると案外的を得ていると言わざるを得な
 い。

  もちろん大上という、超はみだし刑事の魅力もさることながら、次第にその魅力・
 魔力に同化・傾倒していく生真面目な正義漢日岡巡査の、人間としての行動規範と警
 官としての規範とのはざまで揺れ動く心理的葛藤が見事に描かれている。

  暴力団間の抗争とこれを納めようとする警察組織の攻防。その中で特異な存在であ
 る暴対班大上主任の独特な立ち回り、予期された最期も含めて最高のエンターテイメ
 ントであろう。

                          (以上この項終わり)
 

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典雅な容姿・カサブランカを描く

2018年07月09日 | 水彩画

◇ 題材に不足はないのに
  毎年庭に咲くカサブランカを描かずにおくものかと満を持して描くのであるが、毎年満足
 な出来の絵に仕上がったことがない。
  なぜか。題材が典雅過ぎるのか。白い花弁はかつてマスキング液をつかったこともあった
 が、肌荒れすることがあるので今は画用紙の白を生かし塗り残し。
  陰影はランプブラックを薄めて使った。
 何故か締まらない・インパクトに乏しいのは、背景色のせいだろうか。以前を使ったことも
 あるが少し暗すぎるので今回はインディゴにしたのであるが。
  葉の色も多少変化を持たせたつもりであるが、なぜか締まらない。
 3年前に描いたものと比較してみると全然進歩していないことを確認してしまい愕然とする。
  折角年1回しか咲かないのにうまく表現してあげられなくて申し訳ない気持ちである。


  
   THE  LANGTON F8

  (2016.7の作品)

      
       clester F8

                                                 (以上この項終わり)

 


  

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「茨城県自然博物館」を訪ねて

2018年07月01日 | その他

◇「茨城県自然博物館」に遊ぶ
  夏休みが早いアメリカ(カリフォルニア州)の孫が6月初めに遊びに来る。日本を
 しんで帰ってもらおうと、
毎年目新しい遊び場を探すのに腐心する。二人とも男の子な
 ので体を動かしていれば大満足ということで、清水公園とかアンデルセン公園とかアス
 レチック施設があるところに連れて行ったが、今回「子どもにはもってこい」という知
 人の推薦もあって、初めて茨城県坂東市にある「茨城県自然博物館」に連れて行った。

  茨城県というと人気ランクはさして高くないが、なかなかどうして、こうした体験型
 を含む児童教育施設がつくられていることは高く評価してよい。
  難をいえば車利用者はともかく、公共交通機関利用者にとってはアクセスが余りよく
 ないということ。電車ではTX守谷駅からバスで向かうか、東武野田線愛宕駅からバスで
 向かう方法があるが、いずれも日に何本もない路線バス利用ということで不便である。

  我々は愛宕駅から茨城急行バスという路線バスで博物館に向かった。利根川に架かる
 芽吹大橋という橋を渡ると茨城県。所要時間はおよそ15分。そこから15分ほど歩く。
 最後の100mほどケヤキ並木を歩くと立派な博物館本館につく。
  広大な敷地に自然林のほか池を設け、自然と鳥や動植物の観察ができるうえ、本館に
 は茨城県の自然構造・特質、棲息する動植物、宇宙と地球のなりたちなどを標本、ジオ
 ラマなどを使いって展示しており、結構見ごたえがある。とくに恐竜の骨格が見事。
  水の広場が子供らの人気スポットと聞いていたが、就学前の幼児向けかもしれない。

   月曜日は休館。料金は通常期(企画展が開催されていないとき,市民コレクション展を含む)

 
本館・野外施設 大人 530円(430円) 
70歳以上 260円(210円)*要証明資料
高校・大学生 330円(210円)
小・中学生 100円(50円)



   

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

                       (以上この項終わり)
  
  
 

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