読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

春を告げる花・モクレンを描く

2017年03月30日 | 水彩画

◇ 白もくれんの花

  
         clester  F6

  今日の水彩画教室のテーマは「季節の花ーⅠ」。幹事のKさんはご自宅のもくれん
 (白もくれんと紫もくれん)とさんしゅの枝を持参された。紫もくれんはともかく他
 は少し盛りの時期を過ぎていた。
  それにしても白もくれんなどは普段大量に花をつけたゴージャスな大木のものしか
 見ていないので、花瓶に差したもくれんを目の前にして描くのは初めてであった。

  花弁は少し茶色がかったのもあったが、やや開き過ぎ気味の花弁を丁寧にスケッチ
 した。花弁の基部はやや紫がかっている。枝との付け根は緑色。花弁は優雅なふくら
 みを見せているので、これを強調することにしてランプブラックを薄めたもので陰影
 をつける。

                             (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タイラー・ディルツの『悪い夢さえ見なければ』(ロングビーチ市警殺人課)

2017年03月28日 | 読書

◇ 『悪い夢さえ見なければ』(原題:A KING OF INFINITE SPACE)
               著者:タイラー・ディルツ(Tyer Dilts)
               訳者:足立 真弓 訳   
                      2016.12 東京創元社 刊 
(創元推理文庫) 

  

 
   ロサンゼルス市の西南部港湾都市ロングビーチ市はアメリカ有数の高級住宅地と貧困住宅地が併存し、
全米最凶のギャング集団の本拠地でもある。作者タイラー・ディルツはそんなロングビーチ市警殺人課
に最高最恐の刑事コンビを生み出した。情に厚いダニーと殺人課切ってのタフなジェン。≪ロングビー
チ市殺人課シリーズ≫第1作の邦訳が誕生した。すでに第4作まで上梓されている(The Pain Scale
(2012),A Cold and Broken Halleujah(2014),Come Twilight(2016))。第2作の『The Cold Scale』
は本年中に邦訳が出版される見込みだという。

ロングビーチ市のダウンタウンにあるハイスクールので女性の教師が惨殺された。LB市警殺人課の刑事
ダニー・ベケットと相棒の女性刑事ジェンは殺人課長のルイス(警部補)、マーティー、デイブ、パッ
トら同僚とともに捜査に当たるが、目撃者も、有力な物証も得られず膠着状態になる。交際相手の二人
の男ワクスラーとロジャー、ワクスラーの息子、ロシア・マフィアのトロポフ、険悪な関係にあった父
親などが容疑者の俎上に上がるがいずれも決め手がなく捜査は膠着状態になる。
 これまで読んだ米国の警察小説では普通このような惨殺事件となると、すぐに市長あたりからしつこ
く捜査進展状況の報告を求められ、早く犯人を挙げろと尻を叩かれるものだが、此処ではそんなシーン
は出てこない。

そのうちに第二の惨殺死体が発見される。胴部・陰部のめった刺し、左手が手首から切り離され現場か
ら消えているところなど第一の現場と酷似している。被害者の手帳にはワクスラーの名を発見。直ちに
身柄を拘束、早速尋問にかかるが意外とあっさりと白状する。ほんとに犯人なのか?読者は誰でも疑っ
てしまうだろう。案の定…。
その先は明かしません。

 この小説は事件そのものも警察署の人間関係も、とりたててユニークさはない。シリーズもの特有の
主人公タッグの人物像の設定、殺人課のスタッフのキャラクター、チームワークの姿などがいかに鮮や
かに描かれているかでシリーズものの成否が問われる。その点ではこのシリーズもまずは成功かもしれ
ない。
 ダニーとジェンは互いに支え合う名コンビであるが、妻を亡くし5年経ったダニーは相棒のジェンに
同僚以上の感情を抱き始めている。第2作以降どう発展するのか。

  この題名は少しわかりにくい。主人公の刑事ダニー・ベケットは交通事故で妻を亡くした。妻身ごも
っていた。ダニーはつらい記憶からいつも悪夢を見る。原題の A KING OF INFINITE SPACE
の意味は「無窮(無限の空間)の王者」? これではわかりにくいけど「悪い夢さえ見なければ」とは
少し凝った題を付けたものだ。

(以上この項終わり)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

早春の手賀沼を描く

2017年03月24日 | 水彩画

◇ 手賀沼公園の小舟
  
  
    clester F8

      このところ寒々しかった陽気も3月17日は風も弱くあたたかな天気でした。
 今年初めての写生会は我孫子駅から徒歩10分ほどの手賀沼公園。幼稚園や保育園
 に入っていない幼児を連れたヤングママが沢山いました。

  折角水のある風景なので被写体にはぜひ水を、そして雑魚などをとるのか小舟
 が蝟集している船溜まりを取り入れてみました。対岸には柏市の病院・介護施設
 などが見えます。
  少し風が出たりすると船は動きます。手際よくスケッチしないと。
 空には絵にかいたような雲が浮かんでいます。それを手早く絵にします。

  水面の表情はむつかしいですが、時間の推移と風で表情が変わります。ある一
 瞬を捉えて切り取って雰囲気を表します。
                             (以上この項終わり)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハンナ・ケントの『凍える墓』

2017年03月20日 | 読書

◇『凍える墓』(原題:Burial Rites)
            著者: ハンナ・ケント(Hannah Kent)
             訳者: 加藤 洋子   2015.1 集英社 刊

  

 
 オーストラリア生まれの女性作家がイギリスで出版したアイスランドを舞台にした作品。
 
 アイスランドかつてはノルウェー、デンマークの支配下にあったが、1818年アイスランド
王国となり、1944年共和国として独立を果たした。文化的には9世紀ころキリスト教が伝わ
り、古来
の伝承が記録されるようになり、散文物語「サガ」や、神話や伝説に由来する抒
情詩や
叙事詩などが生まれた。


 1829年北アイスランドのある農場でナタン・ケイテルソンとピエトル・ヨウンソンが殺害され
た。この作品の主人公アグネス・マグノスドウティルは、フルドリク・シグルドソンと殺害の共
犯として裁判にかけられ、1830年に犯行があった地で処刑された。アグネスはアイスランド
における最後の死刑囚の一人となった。

 作者はこの作品で、主人公アグネスの引き起こした殺人事件を、アイスランドの
散文物
語「サガ」のひとつ「ラックス谷の人々のサガ」のヒロイン・グドゥルンと重ね合わせ、すれ
違う男女の心情や欲望、裏切りが巻き起こした悲劇としてとらえ、フィクションとして再構
築している。

 そもそも当時のアイスランドといえば、まさに辺境の地で、溶岩の大地では大きな木が
育たず、芝草がほとんどで家も屋根も壁も芝草でつくられた。燃料は家畜の糞、泥炭。
明かりは獣脂、鯨油など。部屋も一つか二つで、その中に2世代の家族や使用人が住
んでいた。しかも妻妾同居状態でもさして不自然に感じていない節がある。

 ある日アグネスは農場主で薬草商として知られたナタン・ケイテルソンを識り、次第に心
を通わせ身体を許する仲となる。やがて妻として処遇されるという夢を持たされて、ナタン
の家に連れてこられる。しかしそこにはシッガという年若い愛人がおり、妻はおろか家政
婦以下の扱いを強いられる。
 愛人との同居も我慢し、一途にナタンの愛を信じて過ごしていたが結局
ナタンはシッガ
を選んだ。アグネスは喧嘩の末ナタンに家を追い出される。

 極寒の中行き場もないアグネスは何とかナタンの許しを得たいと家に戻ったところ、シ
ッガに思いを寄せ結婚を願っていた年若い男フリドリクがナタンを金槌で殺す現場に遭
遇する。アグネスは瀕死のナタンにとどめを刺す。フリドリクは言う「アグネス、あんたが
彼を殺した」。

 アグネスは幼いころ母親に捨てられた。父親は誰かわからない。いくつもの農場を転々
としながら育った。頭が良かった。それだけに人々からは敬遠された。誰かにやさしくさ
れたかったアグネスは、知性があって会話が成り立ったナタンに惹かれ、幸せな家庭を
夢見ることになる。それが悲劇の始まりだった。


 アグネスは処刑を前にコルンサルという農場に預けられる。そこで行政官も兼ねるヨウ
ンとその妻マルグリット、二人の娘たちと8カ月間過ごすことになる。もちろん仕事をさせ
られながら。アグネスはマルグリットと心を通わせ、ことの真相を語る。
 年若い教誨師トゥティ牧師捕もアグネスの心を開く努力をしたものの結局アグネスは処
刑直前まで現世に未練を残したまま斧で首を刎ねられる。

 19世紀初頭とはいえ、想像を絶する極寒と住環境のなかで貧窮の青春を送り、処刑前
にようやくマルグリットのやさしさに出合ったつアグネスの生涯はいったい何だったのか。
 14歳の堅信礼では「優れた知力を持ち、キリスト教をよくしり、理解している」との評価を
受けていたのであるが、ついに神の救済を信じなかったアグネスは、一方的とはいえ愛し
続けたナタンの死で自分の人生と世間に絶望したまま世を去ったのである。

                                      (以上この項終わり)




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エリザベス・ヘインズの『もっとも暗い場所へ』

2017年03月13日 | 読書

◇ 『もっとも暗い場所へ』(原題:In to the Darkest Corner)
             著者: エリザベス・ヘインズ(Elizabeth Haynes)
             訳者:小田川佳子       2013.5 早川書房 刊
                        (ハヤカワ・ミステリー文庫)

   

        怖い本である。が、ホラーではない。何が怖いかというと主人公の元恋人の所業、本性の
   怖さ。
   DV の実態と被害者に及ぼす後遺症の恐ろしさがひしひしと伝わる。主人公が後遺症をど
   う乗り越え、見えない敵とどう戦うのかが本書の読みどころの一つ。
   
   舞台はイギリスはロンドンのカムデン。
   結構奔放な生活を送っていたキャサリン(キャシー)・ベイリーは、ある日さるクラブの
   青い目を持つハンサムなドアマン・リー・ブライトマンと出会う。まもなく二人は熱烈
   な恋に落ちる。
   ところがこの二人の行き着く先には…。

   本書は冒頭と終段はランカスター州とロンドンの高等法院の刑事法廷における審理場面
   であり、ここでミステリーの核心部分が提示される。

   リーはおとり捜査に携わる警官であるが、独占欲が強くキャサリンの行動を逐一把握し、
   拘束しようとする。
   「おまえは俺のものだ。俺の売女(ばいた)だ。俺の言うとおりにすればいいんだ。わか
   ったか?」

   次第に恒常的な言葉による暴力、暴力的性行為から監禁、瀕死の重傷を負わせるところま
   でエスカレートし、ついにリーは逮捕されるが、裁判では加えられた傷はキャシーの自傷
   行為の結果などと巧みな弁舌で切り抜け、3年余りの服役で再び娑婆に戻ってきた。
    キャシーは再びリーに居所を知られ、かつての地獄に立ち戻るのではと強迫神経症状に
   陥る。

   ストーリーはキャシーとリーの出会いがあった2001年6月21日以降の二人の関係の進行と
   リーのDV(家庭内暴力)の結果極度の強迫神経症、PTSD(外傷後ストレス障害)に捉わ
   れ、新しい恋人チャールズの協力でつらい記憶と病から立ち直ろうと努力する2007年7月
   1日からの生活の二つの流れが交互に語られる。わずらわしさもあるが、終盤では一気に
   事態が急変しサスペンスが盛り上がる。

   普通の関係であったキャシーとリーの仲が、次第に異常な独占欲と暴力性を示し始めたリ
   ーの本性の怖さと、これに抵抗しようとしながらも、ついすがっていくキャシーの姿が腹
   立たしくも痛々しい。なぜ逃げないのか。
   暴力の後に、「ごめん。なぜこんなことをするか。君を愛しているからだ」と反省するそ
   ぶり。
   つい許してしまうDVの実態が赤裸々に表わされる。

   新しい恋人チャールズの協力でつらい記憶と病から立ち直ろうと努力する生活、そこに1本
   の電話が。カムデン警察署公衆安全課から「リーが出所しました」。

   キャシーは再び悪夢に苛まれる。だが今はチャールズの助けなどあってリーに果敢に立ち
   向かう覚悟もできつつある。また警察の担当刑事サムも心強い味方となっている。
   案の定リーはキャシーの新しい住まいを嗅ぎ当て、襲ってきた。そしてリーはキャシーと
   の激しい立ち回りの末ついに逮捕された。

   ようやく悪夢から逃れチャールズとの結婚も控えたキャシーに獄中のリーから手紙が届く。 
   
   「親愛なるキャサリン、いつもおまえのことばかり考えている。会って、何もかも済まな
   かったと言いたい。せめてものお詫びの印に、おまえに贈り物がある・・・」

   そこにあった贈り物とは。そして手紙の2枚目には驚愕のメッセージが。
   それは本書を読んでのお楽しみ。
  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする