◇ おおみそかのご挨拶
月並みな言い方であるが、年をとると年毎に一年が早くなるような気がする。
この間暑気払いをやったばかりなのに、あっという間に秋が来て、まだ暑いの
少し冷えて来たのと言っているうちに年の暮れ。ひやっとしたこともあったけれ
ども、何とか息災に過ごして迎えた年の暮れ。
この一年このブログにつきあって下さってありがとうございました。
テロや地域紛争など世界各地の動向にも、消費税を巡る我が国の政治にも
アベエノミクスと称する経済の運営にも、自分なりの考えがあっていろいろ言い
たいこともあるが、すべて年寄りの愚痴や浅知恵になってしまうので言わない。
最近はこの頃の若者はなどとも言わない。やはり年寄りの繰り言だし、言って
も始まらない。もう彼らの時代なのだから。なんだかんだ言ってもそんな若者を
育てたのも自分たちなのだから。結婚して子供を産んで育てたいという気持ち
になれない社会構造をそのままにして、保育所がどうのこうの子供手当がどう
のこうのといっても始まらない。将来に夢を持てない構造に手を付けず、一歩
踏み込んだ安保体制、憲法改正に執着する安倍政権。いつか来た道を歩き
始めた岸信介の孫は交代させた方が良いのではないだろうか。・・・やはり愚
痴になってしまった。
毎日感謝の気持ちを忘れず、謙虚で明るく過ごすのが一番健康に良い。
明年ももっと良い年でありますように。
(以上この項終わり)
◇『抱く女』 著者: 桐野 夏生 2015.6新潮社 刊
「抱かれる女から抱く女へ」ウーマンリブがひときわ声高に叫ばれた時代を描いた、いかに
も桐野夏生らしい作品。1970年代という、連合赤軍事件が起き、学生運動が凋落した不穏
な時代に青春時代を生きたこの主人公直子は、まさに著者自身なのだろう。
20歳の女子大生直子は、抱かれる女から抱く女へと、自立した女として主体性を持った行
動に走る女かというと、そうでもない。社会と因習、学生運動にもウーマンリブにも違和感と
いうか疑問を持っている。かといってこうしたものに強烈に反感を示すわけでもなく、個人個
人には人間として共感を覚えることもある。両親に反抗することもあるが、親の気持ちを慮っ
て「ごめん」と謝ることもある、やさしい女でもある。言ってしまえば平凡なただの迷える子羊
なのである。
実家はさっぱり売れない酒屋。大阪でサラリーマンをしている長兄と、優しくて仲の良い次
兄がいる。次兄は早稲田の学生であるが革マル派セクトの幹部で警察と対立する中核派か
逃げ回っている。直子自身も大学にはほとんど出ないで、マージャンと酒とジャズ喫茶のバ
イトなどでただ漫然と過ごしており、自分の居場所が見当たらず、漠然とした不安を感じてい
る。
雀荘に集まる若者たちの間を、誰彼となく渡り歩いた感じの直子は、ひょんなことで深田
健一郎というジャズバンドの使い走りをしているドラマーと知り合う。生まれて初めて恋を
知った直子はその甘美な世界にのめりこむ。
やがて次兄の和樹は中核派の襲撃を受け、瀕死の重傷を負いばらばらの家族が集まる。
兄が生死の境をさまよっているというのに、旅回りしている深田を追い駆ける自分が、ひ
どく冷酷で身勝手な女だとだと感じたりする。ただ漫然と大学に入って、特にやりたいこと
もなくて、時折り聞きかじりの言葉を使ってわかった気になっているが、自分の現在も将来
も見通せない不安感だけが支配している青春。いろんな人と事件に逢いながら徐々に大
人になって汚れていく、そんな若い女の一時期と世相を切りとった作品である。
(以上この項終わり)
☆初出は小説新潮2013.1月号~2014.6月号
◇ 『冤罪の死刑』 著者: 緒川 怜 2013.1 講談社 刊
初めて読む作家。共同通信の記者出身である。2008年『霧のソレア』で第11回日本ミステリー
文学大賞新人賞を受賞している。本作は書き下ろし作品。
主人公は通信社の敏腕記者であるが、そのほかにも多くの登場人物がいて、事件・人物が錯綜
しそれなりに面白いが、「それではあまりに都合が良すぎるのでは」といったつくりすぎの感も否め
ない。
少女営利誘拐殺人事件が起きた。死刑囚は殺害を自供しているが、実は冤罪ではないかという
疑問を巡って敏腕記者が真実解明に奔走する中で、真の犯人にいいように翻弄されながら、しか
し最後は追いつめて真相を白状させる。同時期の発生した幼児性犯罪で死刑が確定した死刑囚
が絡み話はどんどん複雑な様相を呈する。死刑執行の細部が克明に語られる。実見していない
とここまでは書けないかもしれない。しかしこの死刑執行の過程がストーリー展開の重要なカギと
なっているところが面白い。また拘置所の看守とその上司などの職務上の違背行為(本当にあり
うるかどうか疑問だが)も重要なポイントである。
推理を複雑に作り上げているが、エンターテイメントとしては楽しめる。
(以上この項終わり)
◇ シュトーレンを食べた
孫のM家のお誘いでX'masパーティーに出掛けた。既報(12/11)手作りのシュトーレンを
携えて。
N家もすっかりX'masの装いが整っていた。
恒例の鶏の丸焼き。その他とりどりの料理。ケーキ。そしてシュトーレン。
長時間かけてつくった割に量が少なくて、一切れずつ分けるとあっという間に半分に。
ナポレオンの味はよく分からないが、しっとりとしたフルーツとナッツの味がそれらしく、一安
心した。店で売っているシュトーレンはあまりナッツやドライフルーツが入っていないが、250g
も入れたわが家のシュトーレンはたっぷり。写真左右両側の丸い部分はマジおパンです。
(以上この項終わり)
◇ 水彩で描くサンファンキャピストラーノの駅
今年3回目の写真から描く教室での写生。写真から描くのでほんとの写生にはならないが、
旅先などで感動したシーンを思い出しながら描く。
一昨年南カリフォルニアに住む次女の家に3週間ほど滞在した。その間サンフランシスコや
ラスベガスなどでも遊んだが、歩いて40分くらいのところにあるアメリカの鉄道アムトラックの
「サンファン・キャピストラーノ」の駅周辺で孫たちと遊んだ。駅舎は柵も何もなく、自由に出入
りできる。駅の近くには、スペイン人がキリスト教伝道のために派遣したミッションの拠点であ
った歴史的建造物がある。ホームには日本のような駅舎や事務室らしいものも蔭に隠れてい
て、レストランなどが幅を利かせている。
ホームを駆ける二人の少年は私の孫。陽が傾き、子供やヤシの木の影が長い。電車はた
まにしか来ない。子供らは自由に駆け回っている。ホームに立っている木はブーゲンビリア。
赤い花がささやかなコントラストとなった。空には白い雲。いつもは「カリフォルニア・スカイ」
と形容される、抜けるような青空なのだが、白い雲もまたいい。
The Langton F8
(以上この項終わり)