読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

透明水彩で描く静物・お茶の時間です

2013年07月20日 | 水彩画

ハイティーの準備
  この我が家のティーセットには何度登場してもらっただろうか。
  ティーポットにスプーン添えカップとソーサー。シュガーポットとミルクジャグ。それに普段は余り使わない
 ストレーナー(茶こし)。
  添え物は毎度おなじみのシンゴニウム。

  これまでは割といい加減(いま反省すれば、ポットやカップの絵柄なども花柄があるということが分かる
 程度にさっさと描いて終わりにしていた)に描いていたが、少し反省して細部にこだわって精度を高めよう
 と、ティーポットやカップの絵柄なども慎重に、しかも気合を入れて描いた。
  一番逡巡したのはやはり背景。色合いをもっと暗くすれば磁器の静物を引きたてるのであるが、テーブル
 面と調和する色に悩む。結局同じような色合いになってしまったが、色面構成からすると左手の背景に第
 三の色を配した方がよかったかもしれない。

    
          VIFART F8

     (以上この項終わり)

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久々の高村薫の単行本大作『冷血(上/下)』

2013年07月19日 | 読書

 冷血(上/下) 著者: 高村 薫  2012.11 毎日新聞社 刊

   

   
高村薫の作品からは久しく遠ざかっていたが、この度大作『冷血(上/下)』を図書館から借りて
  読んだ。
   普段週刊誌など読むことがないので
目にとまらなかったが、初出は「サンデー毎日」2010.4.18号
 ~2011.10.30号とのことである。

  高村薫の作品は表現方法が独特で(高村節とでもいうか)、ありていに言えば難解である。思考
 回路が我ら凡人とは少し違っていて、文脈を追っていくのにいささか苦労する。
 例えばこうである。

 「この身も蓋もない世界は、何ものかがあるという以上の理解を拒絶して、とにかく在るのだ、と。
  おれたちはその一部だ、と。・・・」(上巻p179) 

  『マークスの山』はまだ良かった。しかし日本経済新聞の朝刊に連載した『リア王』は正直言って
 読むのに疲れた。日経購読者は概ね企業サラリーマン。朝からこのようなしんどい新聞小説を読
 まされて鬱な気分になったのではと余計な心配したほどである。大反響を読んだ渡辺淳一の『失
 楽園』を朝から読まされるのもどうかと思うが、『新リア王』は結局連載中に日経新聞社と掲載を
 争うことになり1年ちょっとで掲載打ち切りとなった。

  それはさておき、この本の主題は何だろうか。通り魔的に悲劇に襲われた幸せな家族を見ての
 人生無常観か。人から物を盗み、壊し、せつな的に人殺しをしても、何となくむしゃくしゃして衝動
 で殺してしまったとうそぶく若者。「特に意味はない」、「その時のことはよく覚えていない」。そんな
 人間が、自分だけの世界を生きて、裁かれる前に勝手に死んでいくという不条理を訴えているの
 か。克明に犯人らの心理状態を述べる手法で読者に求めていることは何なのか。よく分からない。 
  『レディジョーカー』登場の合田刑事が準主役で登場するということで合田シリーズにカウントされ
 ている。

  東京郊外に住む歯科医家族4人(うち二人の子供は小学生)が二人の30歳前後の青年に惨殺
 される。
  歯痛持ちの戸田は「タッグを組んで荒稼ぎしよう」というインターネットでの誘いに乗って、井上
 というパチンコ趣味の青年と車を駆って強盗に走る。とりあえず建機で郵便局のATMを壊しトラック
 で持ち去ろうとしたが失敗、次いでコンビニ強盗をと2軒のコンビニで刃ものと根切りで脅し数万円
 を手にする。しかしまだ気分が収まらず空き巣に入ろうとするが失敗、たまたま目に入った歯科医
 の自宅を狙い空き巣を働こうとする。家族はディズニーシーに出掛けホテルで2泊するということを
 知ったことから、空き巣狙いで侵入したところ、家族はまだ自宅に居た。主人に見とがめられた二
 人は根切りで頭を撲殺、次いで二階から降りて来た妻からキャッシュカードの番号を聞き出したう
 えでやはり撲殺。さらに就寝中の二人の幼い姉弟を根切りで撲殺し逃走した。

  この強盗殺人犯の二人は、インターネットで識り合うまでは赤の他人であったが、別に気が合っ
 ているわけでもなく、プロでもないのに次々と車を盗みながら巧みに逃走、6か所ものATMで
 1,200万円ほど現金化に成功する。
  ところが素人の浅はかさ、ATMとコンビニの防犯カメラには二人を探せるに十分な画像情報
 が残っていて、盗んだ車の情報もありほどなく二人は逮捕される。大体が事件発生から逮捕ま
 での事情が上巻で説明される。
 
  さて下巻は逮捕した二人の犯人から供述をとり、強盗殺人事件として立件する警察・検察の
 捜査固め、さらには公判の話になるのであるが、二人の犯人の殺意と動機がなかなか明らか
 に出来ない。そもそも凶器の根切りやナイフ、挙句は盗んだ宝石類はすべて海に投げ込んだ
 ため探しても出てこない。物証がないために状況証拠と本人の供述しかない事件なのである
 が、確とした強盗意図、殺意があって臨んだ犯行でないために「分からない」、「思いだせない」
 「ただ何となく」といった問答が繰り返され、殺意も動機も曖昧模糊。果ては井上の躁鬱病の
 発現時期が浮上したりして延々と調書固めが続く。やっと起訴にこぎつけたのが事件から130
 日目。
  歯髄炎を病んでいた戸田は手術してもらったが敗血症で重体に陥り、やがて歯肉癌で死ぬ。
 事件から1年経っていた。井上は後悔はするが反省はしないなどとうそぶく。(しかし捜査に当
 たった合田とは死刑執行の直前まで、頻繁に手紙をやり取りしていた。)
 小菅の拘置所に収監された井上は事件を起こした日から2年半後に死刑を執行された。

  さて、件の合田刑事の立ち位置は?捜査本部の庶務担当のような役割で、供述をとり調書
 作成する立場でもない。だが個人的に二人に興味があって、時折尋問の様子を見に行ったり、
 戸田を病院に見舞ったりしている。
  二人の犯行動機と殺意が明快にならない背景を、自分なりに考えたり犯人と交流することで
 一体何があったのか明らかにしたいという気持ちはわかるのだが、捜査陣の中で求められて
 いない行動をしていることは明らか。作者はこの合田の考えと行動に自分考えを投影してい
 るのかもしれない。何の関係もない家族4人が、金がありそうだと、格別の理由もなく二人に
 目を付けられ、目があったというだけで惨殺される。子供に至っては犯人を目撃したわけでも
 ないのに殺された。なぜ殺したのかと問われても「分からない」。こうした不条理に満ちた状況
 を特異な事件としてではなく、人間が生きていく上で遭遇しうる当たり前のエピソードとして位
 置づけているのか。

  公判維持のために、筋書き通りの供述をとろうとする検察官。「顔を見るとこう言って欲しいよ
 うな目をしていたから、俺はどうでもいいから希望どおりに話してやった」と検察官におもねる
 供述をこしらえる容疑者。
  作者は、法執行現場の当事者が標準の事件処理手順としてそんないい加減なやり取りで人
 の命や人生が決まっていくことを告発しようとしているのか。その辺がどうもはっきりとは伝わ
 ってこない。

                                            (以上この項終わり)
   

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透明水彩で描く夏の果物

2013年07月18日 | 水彩画

夏の果物桃・プラムとマスクメロン・パインアップルを描く
  先週の作品展示会を終えて今週は夏の果物を描く。
 担当幹事が奮発し、マスクメロンやパインアップルに加えて桃やプラムも買ってきた。
 これだけあると何とか画面が埋まる。ということは背景色も入れて考えると多様な色面
 構成が得られるということだ。
  
  果物を容れた金属皿が質感を出す難しさもあって時間を費やした。もちろんマスク
 メロンのネットをどんな手法で描くかという難しさもある。今回はべた塗りの緑は乾い
 てからナイロン質の平筆を水で湿し、色を抜く方法で挑戦。ネットはそれらしさが出れ
 ば成功。
  桃は皮がにこ毛で覆われていて、リンゴのようなハイライトは出ない。別のボカシ手
 法で桃らしさを出す。
  パインアップルは独特の果皮を持つので、大きさ形が違いながらもほぼ規則的に並
 ぶ果皮を、さまざまな色を使いながらパインアップルらしさを出す。

   
     VIFART F8

   (以上この項終わり)

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透明水彩でジャーマンアイリスを描く

2013年07月16日 | 水彩画

ゴージャスなジャーマンアイリス
  家の北側にあったジャーマンアイリス。ゴージャスな花なので陽のあたる場所に
 出してやらねばと、庭の東側に植え替えたらどんどん増えた。5月初めに見事な花
 を咲かせて、この時期の花なので1枚は描かなければと、半ば義務感で描いたも
 のの、何となく気に入らなくて放っておいたが、このほど水彩画グループの暑気払い
 の前に作品の合評会をやるというので少し手を入れてみた。

  アヤメやカキツバタよりも背が高く(70センチくらい。)幅広・分厚い感じの葉が持ち
 味で、ゴージャスな花を引き立てる。旧い女優で例えればイングリットバーグマンか。
  遠近や葉同士の重なり合いで微妙に色合いが違うのを何とか表現しようとする。
  花は二段構えで、羽成葉は6枚。内側の3枚(内花被)が花心を包み込むように立
 ち、外花被の3枚はだらりと下がる。内花被と外花被の間に黄色いひげがある。
  品種は「トロピカルテンポ」

   
      VIFART F8

   (以上この項終わり)

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夏向き?米ソ諜報活劇『雪の狼(上/下)』

2013年07月11日 | 読書

◇『雪の狼(上/下(SNOW WOLF)) 著者: グレン・ミード(Glenn Meade)
                           訳: 戸田 裕之 

                              1997.10 二見文庫 刊
  
   

スターリン暗殺はあったのか
 スターリンは史実としては1953年3月脳溢血で死亡したことになっている。血も涙もない偏執的
独裁者であったスターリンのこと、KGB(国家保安委員会)頭領ベリアによる毒殺説、自殺説、暗
殺説など諸説紛々。クレムリンの公式発表などだれも信用していないから「これぞ真相」と好き勝手
にぶち上げることが出来る。
 
 本書は世界的指導者暗殺の企てを扱った数多くの名作の仲間入りをした。・・・これは知識豊かな
記憶に残る物語である。(Publishers Weekly)世界十数カ国で出版され映画化されたらしい(未
確認)。
 史実を踏まえたスパイ活劇もので、ともかく読み出したら止められない。第二次世界大戦後の東
西冷戦下、水素爆弾開発の米ソの熾烈な競争が素地になって、水爆開発で一歩先を進んでいた
ソ連の指導者スターリンが世界戦を目論んでいる。偏執性精神分裂症のスターリンから世界・人類
に滅亡をもたらす危険を避けるにはスターリンの暗殺しかないと決断したアメリカの指導部は、希代
の暗殺者スランスキーに暗殺を命じる。作戦コードは「スノー・ウルフ」。

 スランスキーはロシア人で両親をKGBに虐殺され、弟・妹も孤児院に拉致されるという過去を持ち
ソ連に対しゆるぎない怨念をもつ。作戦上夫婦を装ってロシアに潜入するアンナはやはり夫を銃殺さ
れ娘のサーシャを孤児院に拉致され、当人は収容所から逃亡しフィンランド経由米国に亡命するとい
う過酷な過去を持つ。
 この二人はCIA活動者、友人・反ソグループ組織、モサド(イスラエル情報組織)などの助けを借り
つつ幾多の危機を乗り越えながらついにスターリンのダーチャ(別荘)に潜り込むことに成功する。

 アメリカで暗殺請負人となったスランスキーの弟ルーキンはあろうことか孤児院でKGB幹部に教育
され今は少佐の地位にある。米国のスターリン暗殺の企てを察知したクレムリンはこのルーキンに
暗殺者スランスキーとアンナの捕獲を命じる。ルーキンはスターリン暗殺者が生き別れになった兄で
あるとは露知らず、必死になって潜入した二人を追うのだが…。

ボリシェヴィキとメンシェヴィキの争い、独裁者スターリンの対富農戦争、粛清、ナチを上回るユダヤ人
虐殺など、ごく大雑把な知識しかなかった戦後ソ連の実情が少し明らかになり興味深かった。

酷寒の地スターリングラード、モスクワを舞台にしたスパイ活劇。夏の読み物としては最適?

(以上この項終わり)

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