読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

レアード・ハントの『Neverhome(ネバーホーム)』

2018年03月30日 | 読書

◇ 『Neverhome ネバーホーム
                 著者: レアード・ハント(Laird Hunt)

                 訳者: 柴田 元幸                               2017.120 朝日新聞出版 刊

  

 これは男のふりをしてアメリカ南北戦争に参加した女性の物語である。

 「わたしはつよくてあのひとはつよくなかったから、わたしが国をまもりに戦争にいった。」
 愛する夫バーソロミューを故郷においてインディアナ州ダーク郡アッシュ・トムソンと名乗って男に成
りすまして反乱軍(南軍)との戦場に出向いた農婦コンスタンス。
 訥々とした語り口で、運命に果敢に立ち向かい、信念を貫いたかと思えば状況に屈し折れたりし、最後
には夫を殺す羽目にもなった「わたし」の、稀有な人生の一コマを余すところなく伝える。

 夫と二人で2か月も話し合ったがらちが明かず「わたし」は考えに考え抜いたすえに家を出た。死んだ
母さんに話したら
「行っといで。行ってあんたをためしておいで。」と言ったのだ。
 そして再び家に戻るまでの兵士としての2年間。波乱万丈の日々が始まった。


 アメリカ南北戦争時に、稀有な存在であった女性兵士(とはいうものの実際には400とも1000人とも
いたと言われている)を物語の柱にしているが、多くの事例の一つ男性兵士ライオンズ・ウェイクマン
として戦った女性が夫に宛てた30通余りの手紙、南北戦争時代に書かれた膨大な量の日記や書簡を読み
漁ったのが本書の土台となっているという。
 
  何しろ男勝りの女丈夫であった母親譲りのコンスタンス、そこいらの若造には力でも射撃でも負けない。
とりわけ射撃は誰よりも優秀で連隊長の大佐は狙撃手に推そうとしたほどである。彼女にちょっかいを出
した男はコテンパンにやられて、誰しも彼女を敬遠するようになった。
 それにしても身体には晒を巻いたり、夜陰に乗じて川で水浴したり女性を隠すことに苦労しているが、
トイレの時はどうしたのだろうと心配になるが、その辺の話は出ていない。

 ある日女性の民間人に礼儀正しく応対したところから「伊達男アッシュ」の異名を得た。南軍もどきの
賞金稼ぎのならず者に捕まったりしたが、一計を案じ女装して逃走に成功する。
 北軍と南軍の戦闘は日増しに激しくなり、死人がたくさん出た。「わたし」も砲撃による倒木の下で身
動きができない状態になったが、傍らの老兵の言うとおりに指で土を掘って抜け出し辛うじて脱出に成功
したが、左腕を怪我しさ迷っているうちにニーヴァという看護婦に助けられしばらく一緒に住むことにな
る。ところが土地を貸してあげるから一緒に過ごそうという提案を拒み、再び連隊に戻りたいと言ったと
ころ南軍のスパイとして密告されて囚われの身になってしまった。

 スパイとして捕虜収容所に収監され、反抗しては殴られ、蹴られ、独房に入れられて言語に絶する扱い
を受ける。「わたし」を理解していると思われる大佐(この時には将軍に昇進)に無実を訴えたが、助け
にはならなかった。
 しかし「わたし」は驚いたことにまたも策を講じ監視役と衣服を交換し、まんまと出し抜いて脱走した。
意地悪をした連中に仕返しをし、
スパイと密告したニーヴァの家に寄って、彼女が大事にしていた叔母か
ら受け継いだ磁器のポットを粉々にして恨みの気持ちを伝えた。

 家に帰りついたら夫は何人ものあくどい男らにいいように食い物にされていた。「わたし」はこれらの
男どもや悪辣な保安官らを銃で撃って殺した。そして間違って夫のバーソロミューまで殺してしまった。

  文法的に怪しいが、素朴で意識の流れやイメージを重視しているような文体。時折ハッとするようなユ
ニークな比喩があったりして不思議な魅力がある。翻訳が巧みであるせいかもしれない。

 表題の『Neverhome』には最初怪訝に思えた。名詞に副詞がついて,しかもhomeのhは小文字。この
作者の造語「Neverhome」には、home(家、故郷)という場所はどこまで確かなものなのか、という
問いかけが聞き取れると訳者は言っている。 

                                    (以上この項終わり) 

 

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川辺に見つけた小さな春

2018年03月26日 | 里歩き

大津川河畔の春

 毎年作っている野生のからし菜浸けをつくろうと大津川の土手を探し回ったが今年は全くといいほど
からし菜が見つからなかった。

 田起こしが終わった田んぼのあぜ道や川の土手には可憐なオオイヌフグリが咲いている。ほんの5ミリ
ほどの花弁が健気で愛らしい。
 この春は土筆も負けずと胸を張り。

 そして川辺には珍しい大島桜を発見。まだソメイヨシノはちらほら咲き始めたばかりなのに、八分咲
き。小さな春でした。



大津川の土手

川辺に咲いた大島桜








土手一面にオオイヌフグリ


 つくしも負けずに自己主張

                                    (以上この項終わり)




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クライブ・カッスラー&ダークカッスラーの『カリブ深海の陰謀を阻止せよ(上・下)』

2018年03月21日 | 読書

◇ 『カリブ深海の陰謀を阻止せよ(上・下)』(原題:HAVANA STORM)
           著者:クライブ・カッスラー&ダークカッスラー
             (CLIVE CUSSLER And DIRK CUSSLER)
                                訳者:中山 善之          2017.10 新潮社 刊


   


 
海洋冒険小説の雄クライブ・カッスラーおなじみのNUMAシリーズ最新作。今回の作品はカリブ海が舞台。主人公
のダーク・ピットはNUMA(国立海中海洋機関)長官。

 このところジャマイカ近海の3か所でメチル水銀を含む謎の海水汚染が観測された。
 ダーク・ピットと僚友ジョルディーノは自動潜水艇を駆使し、熱水鉱床周辺を掘削しウランや希少金属を含む
鉱石を採掘している証拠を探り出す。しかもそのウラン鉱石は核弾頭ミサイルと交換に北朝鮮に渡されるという
取引となっていることが分かった。
 一方ダークの娘サマーと息子ダーク・ジュニア(双子)はメキシコ東部の沿岸の洞窟でアステカの財宝の在り
かを示す2枚の石板の存在を示す写本を発見した。
 物語はこの二つの出来事が並行して進み、やがてこの二つの流れは交錯し意外な展開を見せる。例によって息
詰まる潜水艇の救護活動、船艇での激しい戦闘、カーチェイスなどふんだんに活劇が用意されている。

 やがて熱水鉱床のウラン掘削はキューバ政府高官と軍部の一部が絡んでいることが判明した。ダーク・ピット
親子は掘削船に発見され拘束される。多勢に無勢、助けに行ったジョルディーノらも拿捕されてしまう。ここで
二つのラインは初めて合流し敵対者も明確になる。

 大立ち回りの末にピットは辛うじて脱出することができたが、サマーは拿捕されたNUMAの潜水艇に閉じ込めら
れ、熱水鉱床の爆発地点に置き去りにされてしまった。サマーの運命や如何に…。


 キューバのラウル・カストロ議長に敵対する一派は後継者と目される外相をも殺しグティエル内務相を議長に
据えようと画策していた。彼らは
ケイマン諸島滞在中のラウル議長を爆破で暗殺、その罪をピットにかぶせよう
と図る。しかしピットは危うく殺されかけたラウル議長を救い出し、市場経済移行を支援するアメリカ副大統領
との会見をおぜん立
てをし、会見は成功する。そして最も大規模な熱水噴出孔爆破計画はすんでのところで阻止
できた。

さて、ダークとサマーが探し求めていた石板と財宝はどうなったか。巻末の「エピローグ・偉大なる港」を読ま
れたい。
 
米西戦争後アメリカとメキシコ・キューバとの関係など歴史的背景を絡めて、財宝の封印が守られてきた経緯
を物語展開に取り込んだ手際が憎い。

                                      (以上この項終わり)



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自宅で習作「アフタヌーンティー」

2018年03月16日 | 水彩画

「アフタヌーンティー」はひっそりと

  
       clester F8


  今日は雨、昨日は風が強かったものの4月上旬の陽気だった。水彩グループの常連7人が集まって
 北柏ふるさと公園で風景を写生した。
  余り出来がよくないので改めて書き直すことにして今日は食卓の光景を写生。
  アメリカの親戚から頂いたキャンディーボックスを入れて、中身はこれまた親戚からいただいた
 バレンタインディーのチョコレート。そしてハーブティーの箱と、色面構成のためにデコポンを1個。
  本当はケーキも添えて本格ハイティーと行きたかったが…。
  紅茶は未だ淹れていません。

 

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野菜を透明水彩で描く

2018年03月10日 | 水彩画

白菜・聖護院大根などを透明水彩で描く

  
   clester F6

      今日の水彩画教室では野菜を描いた。本当は今どきの果物を描く予定になっていたが幹事のS氏が野菜と勘違い
 をし野菜を買ってきてしまった。本人は「歳で…」と言訳していたが、誰しも勘違いはある。今日はK氏の庭に育
 った甘夏(葉がついている)かなと思っていただけに少し残念だった。

  野菜と言えば今年は白菜もキャベツもほうれん草もやたらと高くて食卓を預かる主夫としては往生した。未だに
 大根も、白菜も高い。
  今日の大根は京都の「聖護院大根」、白菜の1個物は400円くらいしてとても買えない。そこに人参と椎茸。
 いつもこじんまりと描く癖があるので今回は絵の対象物がはみ出すくらいに大きく描いた。それでようやく空白部
 分が半分を下回った。色面構成としては左の人参と右下の椎茸がバランスよく収まった。
  白菜の茎はほとんど白であるがランプブラックを薄く溶いて翳にした。大根の葉は独特でしっかりと描かないと
 大根らしさが出ないので時間をかけた。

                                           (以上この項終わり)
 

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