読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

リー・チャイルドの『最重要容疑者(上・下)』

2015年02月27日 | 読書

◇『最重要容疑者(上・下) (原題:A WANTED MAN)
                  著者:リー・チャイルド(Lee Child)
                  訳者:小林 宏明   2014.9 講談社 刊 (講談社文庫)


      

  作者はリー・チャイルド。
  1997年『キリング・フロアー』がアンソニー賞最優秀処女長編賞を受賞し作家デビュー。
 ジャック・リーチャーを主人公とするシリーズ作品が19作に及び、本作は17作目。
  リーチャ―は身長195センチ体重110キロの巨漢。シリーズの映画化が何度か検討され
 たがリーチャー役が決まらなくてようやく9作目の『アウトロー(One Shot)』だけがトム・
 クルーズ主演で2012年に映画化された。

  リーチャ―は元アメリカ陸軍警察少佐。除隊してから格別の仕事はしていないが事件に巻
 き込まれると冷徹な推理力、決断力で抜群の行動力を発揮する。
  ヒッチハイクでヴァージニアへ行こうとしていたリーチャ―を、ネブラスカの田舎道で93分
 待ってようやく拾ってくれたのは、指名手配逃亡犯と人質になった女性の乗った車だった。

  郡保安官、ハイウェイ・パトロール、CIA、FBI、国土安全保障省、テロリスト集団が入り乱
 れて攻防が続く。北米のど真ん中、ネブラスカ州とカンザス州、ミズーリー州、アイオワ州とい
 う農業が主体の田舎町の碁盤の目のような退屈な道路の、うんざりするような描写が続く。
 何しろ何百キロという直線道路が農地の中を走る。GSとGSの間が30キロという地なのだ。

  結局リーチャ―はFBIの女性特別捜査官2人と、テロ集団に加わった潜入捜査官救出の
 ために敢然と敵地に挑む。そしてほとんど一人で15人ほど殺し、無事に潜入捜査官の救出
 に成功する。しかし一人の優秀な女性特別捜査官を失ってしまう。

  元MPという異色のハードボイルド。20人ほど死者が出るが楽しめる。

                                           (以上この項終わり)

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水郷佐原で撮った写真を透明水彩で描く

2015年02月22日 | 水彩画

水郷佐原・小野川の光景
  1月の教室では、自分の気にいった風景写真を題材に絵を描くことになった。
  旅行などしても人と一緒だったりすると、絵になりそうな気にいった情景に巡り合っても
 なかなか描く時間はとれない。手早くスケッチをして後で彩色し絵にするのが精いっぱい
 である。しかし現場での感動は持ち帰りが難しい。カメラのレンズは人間の目とは違うし、
 そのときの感動も完全に映してはくれない。
 
  この佐原の小野川は伝統的建築物保存地区の一角で、川沿いに古い民家・商家が立
 ち並んでいて、雰囲気が絵になるのであるが、如何せん人通りが少なくい。多くの船が行
 き交った往時の姿は望めないまでも何とか雰囲気は出せそうな気がしたのだが・・・。

  
   CLESTER  F6
                                                 (以上この項終わり)

 

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ヘニング・マンケル『北京から来た男(上/下)』を読む

2015年02月12日 | 読書

◇ 『北京から来た男(上/下)』 著者: ヘニング・マンケル(Henning Mankell)
                     訳者: 柳沢 由実子 2014.7 東京創元社 刊

  

   アメリカ大陸横断鉄道建設が始まったのは1863年。僅か6年でアメリカ大陸が鉄道で結ばれた。大西洋側
 
からはウニオン・パシフィック鉄道が、太平洋側からはセントラル・パシフィック鉄道が敷設を開始した。この間
 工事には多くのアジア系移民とりわけ中国人が携わった。その多くは移民業者の手によって半ば拉致のよう
 に連れてこられた貧窮難民だった。
  この物語は3年間は働けば自由の身になれるという約束を頼りに、奴隷のような扱いを受け死と向き合いな
 がら困難な工事を成し遂げた中国人兄弟の死の記録から始まる。

  主人公はビルギッタ・ロスリンというスウェーデンの地方裁判所の女性裁判官。鉄道車掌の夫と一男三女の
 子供がいる。
  スウェーデンの寒村で17人もの残虐な大量殺人事件が起きた。ビルギッタはその村が今は亡き母がかつて
 養子として育ったところだと気付き、母の養父母が被害者だったことを知る。持ち前の探究心から事件を探って
 いくうちに事件の前夜、不審な中国人が現れていたことを知る。
  しかし地元の警察は見当違いの自供者を犯人と決めつけて、ビルギッタの情報に取り合おうとしない。

  ビルギッタにはカーリンという中国文化史を専門とする大学教授の友人がいる。過労からくる高血圧の治療の
 ため休暇を貰ったビルギッタは学会で中国に渡るカーリンの誘いで北京を訪れる。実はビルギッタとカーリンは
 中国文化大革命の頃学生運動の活動家の一員として毛沢東信仰に染まった時期があった。
  そこでビルギッタは殺人事件の前夜、犯人と思しい中国人が泊まった宿で入手した監視カメラの写真を手に
 動き回ったためか、なぜかハンドバックを奪われ、官憲に執拗な取り調べを受けることになる。
  
  この背景には150年前の昔に、中国広東から拉致されアメリカ大陸横断鉄道敷設に携わったワン・サンとい
 う兄弟の苦難の記録がある。その末裔の一人であるヤ・ルーという成功した企業家はこの記録を読んで復讐
 を誓う。そして
鉄道建設当時ワン・サン等を家畜のごとく扱ったスウェーデン人の工事監督ヤン・アウグスト・ア
 ンドレン(A・J
)に対する復讐として、スウェーデンに住むA・Jの家族と親族を虐殺したのであった。

  ビルギッタはハンドバック強奪事件がきっかけでホンクィという中国政府の要人と知り合う。彼女はなんとヤ・
 ルーの姉だった。しかしホンクィは野心家で冷酷な弟の復讐心と相容れず、中国経済の支配から政治の支配
 まで手を伸ばそうとする弟をいさめようとするがヤ・ルーは復讐劇に邪魔な姉を殺す。
  ビルギッタを危険な存在と知ったヤ・ルーは再びスウェーデンに渡り、ビルギッタを殺そうとするが、姉ホンクェ
 の息子に射殺される。

  150年前のアメリカ大陸横断鉄道敷設工事に端を発する復讐劇。この間、中国という共産党一党支配の実態、
 党幹部と企業家の汚職と腐敗、都市と農村の格差拡大からくる暴動多発の実態、この圧力をかわすためにアフ
 リカ大陸諸国に援助を持ちかけながら中国農民の大量移民をさせようとする新植民地主義のたくらみ等々、中国
 の最近の動きまでおおりこんだめずらしい作品である。 舞台は北欧のスウェーデン・デンマーク、ロンドン、アメ
 リカ、北京、アフリカと目まぐるしいが、語り口も明快で飽きさせない。劇作家であり舞台監督も手掛けるという多
 才の人。
   
                                                          (以上この項終わり)
  

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ポール・アードマンの『無法投機(THE SET-UP)』を読む

2015年02月07日 | 読書

◇ 『無法投機』 原題:THE SET-UP
          著者:ポール・アードマン(Paul Erdman)
          訳者:森 英明  
 
  

  那須温泉への旅行に携えた文庫本は『警視の週末』。バックアップ用に借りたのがこの本
 『無法投機』である。
  原書発行が1997年、翻訳されたのが1999年(平成11年)といささか古い作品であるが、
 1997年に起きた有名なデリバティブ取引に起因する英ベアリング銀行の破綻があり、三
 菱銀行の事件もあった。
  この間金融システムが大きく変わったということもない。金融取引の詳細を勉強しながら究
 極のインサイダー取引の展開とそれに伴うスリリングで軽快なテンポの活劇が楽しめる。

  著者はカナダ生まれであるが、米ジョージタウン大学卒業後スイス・バーゼル大学で博士号
 を取得している。37歳でスイス・ユナイテッド・カリフォルニアの初代社長となるがココア投機
 の失敗で下獄。獄中での作品『十億ドルの賭け』で米探偵作家クラブ最優秀新人賞を受賞し
 ている。自身の実体験を踏まえたマネーゲームのリアルな語り口などから日本の金融実務
 者の研修に作品が使われたこともあるとか。

  主な舞台は国際金融の元締め、スイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)。日・米・英・独・
 仏・伊・加・オランダ・ベルギー・スウェーデン・スイスの11カ国の中央銀行総裁が集まる。
 このBISのメンバーの一人スイス国立銀行の総裁が高校の同級生の弁護士と結託し、イン
 サイダー取引の企みに加担し、その罪を米・連邦準備制度理事会(FRB)の前議長になす
 りつけるという奇想天外な筋立てである。
  BISで明かされた情報を元に、金利先物の取引で莫大な利益をあげ、資金を西インド諸
 島の銀行に逃避させる。最初の取引の証拠金の影の出し手・黒幕は闇社会の資産家。

  スイスの厳格な銀行取引の秘密保持は有名で、1934年の銀行秘密保持法で厳格な守
 秘義務が課せられているため、律儀なスイス人はこれを楯に顧客情報を明らかにしなかっ
 た。このため世界の王侯貴族や独裁政治家、政党幹部、マフィアの親玉、有名芸能人など
 の秘密資産がスイスに流れ込んだとされている。
  しかし近年スイスの頑固な守秘が、犯罪に絡むマネーローンダリングの温床との批判が
 高まり1992年スイス銀行協会は銀行守秘性に制約を加える合意書を取り交わし、1998
 年にはついに「マネーローンダリング法」が成立、口座が不正資金の操作に使われている
 と疑わしい時には、銀行に通報義務が課せられることになった。 

  FRB前議長ブラックは厳しいスイス官憲の追及にめげず、妻と懸命な脱出を試み(実は
 黒幕の策略)アラスカにおいて叛逆に出る。この先は読んでのお楽しみ。
  アラスカ半島イリアムナ湖でのマス釣りのシーンも楽しい。
  
  小説にはめずらしく38ページに及ぶ金融関連用語の解説付きである。
  SET-UPとは「八百長・仕組まれた罠」

 (以上この項終わり)

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冬の華「シクラメン」を透明水彩で描く

2015年02月04日 | 水彩画

◇ 赤いシクラメン
   昨年暮れに知人から頂いたシクラメン。真綿色ではなくて真っ赤だった。
  初めのころは花も少なかったが沢山の蕾をもっていて先が楽しみだった。
  新年を迎えるとがぜん元気を出して、花が溢れるような姿になった。
  頃合いを見て描こうと思っていたが、やっと時間が出来て筆をとった。

  洋間の東側においた花鉢は春の光を受けてキラキラ耀いている。
  とても全部を丁寧に描いてはいられない。丁寧な観察と大胆な省略。
  省略といえば前面の花をいくつか丁寧に描いて、その後ろにあるその他大
  勢は雰囲気だけで我慢してもらう。
  色はオペラが中心色であるが、これにローズマーダーを加えて感じを出した。
  シクラメンは葉っぱの文様に特徴があるのだが、あまりに説明的になってし
  まうので省略した。果たして特徴点を省略してよかったものかどうか。
  さて、背景。あまり騒がしくすると肝心のシクラメンの華やかさを損なうので
  薄いブルー系の色にした。

   
   
     CRESTER F6

   (以上この項終わり)
    

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