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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

激動の年を越せば

2011年12月31日 | その他

新年に希望を託して
 2011年(平成23年)も、あと余すところ十数時間で終わり、2012年に変わる。
 外見的には今日と明日がとりわけ変わるわけでもないのに、新しい年を迎えて「おめでとう」などというのは、
 悠久の時の流れに区切りを入れて、節目の始まりに当たり「よし!今年こそやるぞ!」と言って気合を入れる
 、というか嫌だったことや辛かったことは一旦押入れかどこかに仕舞って、仕切り直しで頑張るぞという気持ち
 がこもっているのだろう。へそ曲がりは「この大変な世の中、何がおめでたいもんか」と言うかも知れないが、
 「さあ今日から、今から新規蒔き直しで行こう。気持ちを入れ替えて、前向きで行こうよ」という気持ちが「おめ
 でとう」にこもっていると考えればいい。
  
  今年は激動の年だったと思う。70年も生きてくると激動と呼べる事件は多々あった。思い返してみると、真の
 激動と言えば、一つは先の大戦で大負けして虚脱に陥ったこと。そして今年の大地震・大津波・原発事故。こ
 れにくらぶればそのほかの記憶に残る大きな事件などは泡沫のごときものだ(阪神淡路大地震は別かも)。
 この二つが真の未曽有の出来事だと思う。二度とあってほしくないし、まずないだろう。
  東日本大震災・原発事故の被災者は、いまだに33万5千人の人たちが自宅外で越年することになるという。
 地震や台風など自然災害にしょっちゅう見舞われる日本人には、自然の営みへの畏怖と諦観が染みついてい
 る。東北の人たちだけが我慢強いわけではないだろう。だれの責任にも出来ない部分は黙って享受する姿勢
 が我々の遺伝子に組み込まれているのだ。だが地震や津波を甘く見て、起こさなくてもよい事故を引き起こし
 た人災の部分に対する憤りは強い。
  激動の余波は年が改まったからといって消えるわけではない。記憶は何十年と残るし、後始末と再発防止
 の努力も新しい年に引き継がれる。事に当たっている人たちを、やり方がまずいの、やることが遅いのと非難
 する声も絶えない。だがその場にある人たちはみんな一生懸命だと思う。やたらに人を非難ばかりしてもこと
 は進まない。文句を言う前に自分がそれにどう参画したかを問い返してみた方が良い。多分多くの人が忸怩
 たる思いに至るだろう。

  新しい年2012年は今年よりいい年であってほしい。先ず我が身をよりよいものにするために努める。周り
 がより良くなるように努力する。一人ひとりがこのように努めれば少しはよくなるのではないか。合成の誤謬
 などという現象もあるが、こうした姿勢に関しては先ず起きまい。

  今年は時間を見つけてはこのブログをのぞいていただきありがとうございました。
  明年もよろしくご愛顧のほど、お願いします。
  どうぞ佳い年をお迎えください。


佐々木譲の『警官の条件』

2011年12月24日 | 読書

◇ 久々に佐々木譲『警官の条件』 2011.7 新潮社刊

   

  佐々木譲と言えば北海道を舞台にした作品が多い。『笑う警官』、『警察庁から来た男』、
 『警官の紋章』、『巡査の休日』、先ごろ出版された『密売人』などいわゆる道警シリーズは
 当然のことながら舞台は北海道。
 『制服捜査』、『暴説圏』など川久保篤シリーズも道警ものである。昨年直木賞をとった
 『廃墟に乞う』もやはり北海道が舞台となっている。

  今回の『警官の条件』は舞台は東京。警視庁しかも本庁犯罪捜査課の刑事が主人公で
 ある。キャリアはともかくノンキャリ警察官にとってはエリート集団の一員と言ってよい。
  本書は三代にわたる警察官の物語『警官の血 (上/下)』の続編である。
  主人公は安城和也。祖父は安城清二、父は民雄。祖父の清二は復員後上野警察署天王
 寺派出所に勤務、火災の後跨線橋から転落死、事故死扱いとなる。その子民雄はやはり警
 官の道をたどる。民雄は成績が良かったために公安に配属され、過激派の舞台である北大
 に入学、潜入捜査を命じられる。しかし捜査過程のストレスでボロボロになる。最後に配属
 された天王寺派出所勤務時に拉致の少女の解放に当たり暴力団員に撃たれ殉職を遂げる。
  清二の孫に当たる和也は後年酒乱になった父民雄を見返すつもりで警官への道を進む。
 あこがれの警視庁本庁勤務となるが、四課(組織暴力担当)勤務となり、警務部から敏腕
 ではあるが一匹狼的存在で何かと噂が絶えない加賀谷係長の監視を命ぜられる。
 (ここまでが『警官の血』のあらすじ)

  さて、安城和也は上司の加賀谷が大量の覚せい剤を持って、自宅に帰った日、警務部に
 所持・使用の確信ありと告げる。しかも加賀谷の車に同乗していたのは、かつて自分の恋
 人であった永見由香。上司の加賀谷に紹介したらそちらと仲良くなったのだ。一緒に逮捕
 されるわけで、警務からは「私情は挟んでないね?」と念を押される。「私情はない」という
 ものの、ほんとにないか?と自問する。これはつらいね。疑念を持ちながらも、抜群の捜査
 能力に敬意を持ち始めていた上司に恋人を取られるという立場は。私情が混じっていない
 とは言い切れないだろう。
  しかし逮捕された加賀谷は、所持は認めたものの覚せい剤は捜査上の物と主張。使用
 反応も陰性で、結局依願退職で解放されるが即捜査四課(薬物対策)に逮捕される。
 裁判では所持の指示を出した上司、情報元の暴力団組員などの名前は黙秘で通し無罪に。
 警視庁という組織、情報源を守り通した警官の鑑と伝説的存在となる。
 
  上司を失った和也は組織犯罪対策部第一課情報分析二係長に栄進する。しかし上司を
 差した和也への傍の目はきつい。その中でなんとか失地回復をしたい和也は潜入捜査と
 いう危険な手法も使い、販売ルートが定かでない新しい組織の解明と一網打尽を狙うが、
 潜入捜査が見破られ捜査員原口は拷問に会い、しかも同様に潜入捜査をしていた薬物対
 策課の警官(寺脇)が撃たれ死亡するという大失策を犯してしまう。
 
  そんな中で薬物対策の失地回復を願う警視庁上層部は、加賀谷に復職を懇願する。最
 初渋っていた加賀谷も、かつての部下寺脇の殉死もあって元の肩書で復帰する。退職か
 ら9年。
  独特の捜査手法でかつての情報源に接近するが、その動きは「加賀谷はやはり暴力団
 に内通しているのでは」との疑念を持たれ始め・・・。

  その後状況はスリリングな展開で、最後はお涙ちょうだい的なエンディングであるが、世
 の中の正義を守り、悪を懲らしめる組織が、あくどい裏金作りやむだな縄張り争いにうつつ
 をぬかしている姿は、外野から書いている小説ではあるが、真相の一端を示してはいるだ
 ろう。見苦しいがどこの組織にも多かれ少なかれこのような濁ったり、澱んだ部分があり、
 警察だけに純真なものを求めても無理かもしれない。
  
   (以上この項終わり)  


港ヨコハマ・山下公園の氷川丸を水彩で

2011年12月22日 | 水彩画

山下公園の氷川丸
  我がボランティアグループ恒例の一泊懇親旅行。いつもは10月か遅くても11月だったのに、
 今年はいろんな事情で12月にずれ込んだ。
  この時期北の国は敬遠されて伊豆方面に足が向いてしまう。
  今年は熱海の「起雲閣」を見学して湯河原に一泊。アワビのなど海の幸を堪能し翌日は港
 ヨコハマに移動、桜木町から汽車道を散策しながら観光スポットの「赤レンガ倉庫」へ。既に
 X’masの飾り付けが始まっていた。
  きれいに整備された横浜港大桟橋周辺から山下公園へ。そして「中華街」で中華料理と生
 ビール紹興酒で身動きが苦しいほど満腹になって夕刻柏に帰ってきた。
  朝方柏駅前西口では「柏レイソル」のJリーグ初優勝の祝勝会でバス停も機能停止で沸い
 ていたが、さすがに夕刻には一段落。

  さて、横浜では赤レンガ倉庫と山下公園とどちらを絵にするか迷った。汽車道の遠方にランド
 マークタワーを入れる構図も捨てがたかったが、山下公園に繋留する氷川丸の遠景、巨木と
 思い思いに散策する観光客の姿を描くことにした。
  当日は小春日和どころか初夏を思わせる日差し。松を初め、名前もよく知らない常緑樹(マテ
 バシイかモチノキ)の葉っぱは陽に当たる部分はキラキラと緑が反射し、港内の海面は凪いで
 これまた白々と反射している。公園のアスファルトももちろん白く反射。常緑樹の巨木が覆いか
 ぶさる部分だけは黒々と強いコントラストを示す。左の松が異様に明るく画面全体の調子を狂
 わせている感じだが、色調を少し抑えた方が良かったかもしれない。
  氷川丸はここまで離れると船体の細部は不分明であるが、またぞろGoogle Earthの助けを
 借りて、3D画像で細部を確認して真実の姿に近づけた。
  樹の葉っぱは樹種が分かる程度に特徴を出さないといけない(と思っている)。全体ではなく
 一部でよい。それでも樹木の葉を描くときは結構時間がかかる。

   
    Clester 10号

                                                           (以上この項終わり) 


硝子の暗殺者

2011年12月18日 | 読書

ジョー・ゴアズのハードボイルド 『Glass Tiger
  『硝子の暗殺者』(原題:Glass Tiger)著者:Joe Gores 訳者:坂本憲一 2011.6 扶桑社刊

  2006年に本書を著した作者ジョー・ゴアズは、2011.1亡くなった。享年79。種々の職業を転々と
 した。12年にわたって私立探偵をやったこともある。
  本書は長編ミステリーとされるが、吾輩はむしろ活劇ものとして楽しんだ。

  大統領の暗殺ものは結構多いが、本書も元CIAのスナイパー(狙撃手)だったブレンダン・ソーンが
 隠棲したアフリカから密猟容疑で強引にアメリカに連れ戻され、現職大統領を付け狙う狙撃犯を見つ
 け出し始末するよう命ぜられる。この犯人と目されるハルデン・コーウィンも元ヴェトナム従軍の狙撃
 の名手。妻子を酒酔い運転で轢き逃げされ亡くしているという似た境遇をもつ。
  大統領側近(首席補佐官、FBI特別捜査官など)の権力亡者たちは、大統領暗殺の背景も良く知
 らないままコーウィンを追いかけ、ソーンをこき使うのだが、取り巻きどもの不可解な動きに気付いた
 ソーンが背景を探っていくと意外な事実が浮かび上がってくる。実は大統領には隠さなければならな
 いいまわしい過去があった。
  似た過去を持つ二人のスナイパーはほとんど不死身の身体を持つ。死んだと思っていても実は生
 き延びている。結構スリリングな展開であり、単なるハードボイルドではなく活劇ものであるとみた。

  ミステリーでもあるので肝心なところは差し控えるが、結局大統領は狙撃されなかった。生き延び
 た二人の狙撃手が巡り会い、語り合う。ソーンは再び懐かしのアフリカに戻る。事件で知り合った
 ジャネットというアメリカネイティブの女性と共に。

  ところで話は変わるが、最近外国の本を読むときは、舞台となっている土地をGoogle Earthで
 開いて探す。本書のようにワシントンDCのほか、カリフォルニアや中西部が舞台になっていても、
 道路や地形が手に取るように現れて臨場感が数倍高まる。これまではLAで手に入れた全米道路
 地図を探しながら現れる土地を想像していたが、グーグルさんのおかげで読書が一段と楽しくなっ
 た。


  

   (以上この項終わり)


静物画:里芋

2011年12月12日 | 水彩画

  ◇ サトイモの野性味
  本日のモチーフは秋の野菜、サトイモ。
  畑から掘り起こし、泥を落としたばかりの野性味満々のサトイモを描く。
  サトイモも器のざるも丸い。
  構図的にも色面構成上からも右上が空きすぎるのでペットボトルを置いた。
  しかしペットボトルも丸い。
  丸があったら四角が欲しい。
  家で新聞紙をくしゃくしゃにして背景に入れて、何とか落ち着いた。
  お茶のペットボトルはあくまでも添え役と割り切ってあっさり描いたが、あっさ
  りしすぎかもしれない。

   
    Clester F4

   (以上この項終わり)