読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

久々のジョン・グリシャム第25作目の作品『巨大訴訟』

2014年06月29日 | 読書

◇ 『巨大訴訟(上・下)』(原題:THE LITIGATORS)
                            著者:ジョン・グリシャム(John Grisham)
                             訳者:白石 朗     2014.3 新潮社 刊 (新潮文庫)

   


 J・グリシャムは言わずと知れたリーガル・サスペンスの第一人者。第25作目の作品は、いまや
アメリカでは当たり前のような「集合訴訟」がテーマで(原題のLITIGATORSは訴訟人たちの意)
ある。

 主人公はデイヴィット・ジンク。シカゴで1・2を争う巨大法律事務所に勤めて5年目にして奴隷の
如き使われ方に切れて辞職。ひょんなことから弱小法律事務所(フィンリー&フィッグ法律事務所)
に勤めることになる。弁護士はオスカーとウォリーの二人、そして受付から調査まで一切をこなす
事務員のロシェルで3人。その一員として加わったデイヴィットは初めて弁護士らしい仕事に出会
い元気はつらつと飛びまわる。

 そんな中、一攫千金を狙うウォリーが巨大製薬会社を相手に薬害被害訴訟を起こす手掛かりを
つかみ、大規模不法行為訴訟を起こす。これまで離婚訴訟や傷害事故・遺言作成など中心で、法
廷での陪審審理などまるで経験したことのない弁護士たちが、クレイオックスというコレステロール
低下剤の副作用による健康被害を取り上げて大規模不法行為訴訟に取組むのだ。果たしてもの
になるのだろうか。実は彼らが狙っているのは大手法律事務所と組んで、事実審理に入る前に和
解に持ち込んで、莫大な和解金を山分けしようという魂胆だったのだが・・・。

 相手の製薬会社が選んだ主任弁護士は、なんとかつてデイヴィットが勤めていた法律事務所の
辣腕女性弁護士キャロスだった。キャロスは和解の可能性をちらつかせながら相手の負担を積み
重ねさせ、最後に事実審理に持ち込み専門家証言などで一気に勝訴に持ち込む作戦だった。

  ところが・・・。
 死亡例7人、非死亡例471人という原告人候補者を集めた挙句、薬害を明らかにした学者が研究
の過ちを認め、クレイオックスに薬害はないと発表するという羽目になってしまった。タッグを組んで
いた大手法律事務所は早々と撤退してしまう。梯子を外されたウォリーたちは窮地に立たされる。

 そして、とうとう3人の弱小法律事務所は初めて陪審裁判に臨むことになる。シニアパートナーの
オスカーは冒頭陳述に立った途端に心臓病で倒れ、アル中で折角1年以上禁酒が続いていたウィリ
ーは緊張の極に立たされまたもアルコールに逃れて失踪。若輩弁護士のデイヴィットは一人で訴
訟に臨むことになってしまう。目の前には名の知られた専門証人が続々と立ちはだかる。

 開き直ったデイヴィットは意表をついた作戦で、一時被告製薬会社側を窮地に立たせたものの、
陪審は被告側の言い分を認めF&F法律事務所は敗訴してしまう。多額の負債を背負ったまま。
 ところがデイヴィットは、別途個人的に調査を進めていた幼児の鉛含有玩具による中毒障害の事
案で650万ドルの和解交渉に成功した。150万ドルの弁護士報酬でF&F法律事務所の苦境を救う
ことが出来たデイヴィットはパートナーに昇格し、事務所名に名を連ねることになった。
 「フィンリー・フォッグ&ジンク法律事務所」は今後真っ当な法律事務所として仕事をすることにな
るはずであったが…。

本書の真の狙いは「訴訟裁判における正義の不在」にあるという。しかし半人前の若き弁護士デイ
ヴィットが、巨大法律事務所の歯車から逃れ、街場の法曹の一員として成長していく姿も、もう一本
の主流として読む人の心をとらえる。

(以上この項終わり)
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京芸大の煉瓦造の校舎

2014年06月26日 | 水彩画

日暮里・谷中から東京芸大へ
  水彩画グループの写生会。7人が参加し日暮里から谷中銀座・墓地周辺を歩き、
 写生地を物色して歩いたが、適当な対象素材がみつからず、結局東京芸大まで歩
 いて、煉瓦造の校舎を描いた。画板を開く適当な場所がなく、美術学部の法面にあ
 るライトアップ用のライトの上を借用した。
  煉瓦の色と様々な緑の対比が絵心を誘った。

  ところどころに光を受けた緑葉があり、それらをもっとうまく表現できれば、初夏の
 キラキラした空気感が出たと思うので残念。窓の鎧戸が複雑で苦労した。
 目の前にバス停があり、常にバスを待つ人があった。平日なのに上野公園周辺は
 大変な人出で驚いた。

  
   VIFART F8

  (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローレンス・ブロック『殺し屋 最後の仕事』

2014年06月23日 | 読書

◇ 『殺し屋 最後の仕事』(原題:HIT AND RUN)
                              著者:ローレンス・ブロック(Lawrence Block)
                              訳者:田口 俊樹  2011.10 二見書房 刊

       


久しぶりに面白い本を読んだ。
いつものように夜中に目が覚めて、なかなか眠れないので、いっそのことと1時間ほど
この本を読んでいるうちに、面白くてまた眠れなくなったほどだ。

 ローレンス・ブロックはこれまで何冊も読んでいる。登場人物の対話のセリフ回しがすっ
きりとしていて、かつ独特のエスプリが効いていて面白い。
 ジョン・ポール・ケラーは殺し屋。ドット(ドロシー)というケラーより年上の女性が請負
の元締めで、依頼人との契約をつないでいる。親父さんと呼ぶじいさんも仕事を請け負
っていたが耄碌して亡くなって、今はケラー一人が殺しを引き受けている。
(殺し屋ケラー・シリーズの1冊)

 ある殺しの仕事でターゲットを確認しているうちにオハイオ州知事が殺された。そして
あろうことかTVにはケラーの顔写真が写った。指名手配犯人として。
 「俺のことはアルと呼んでくれ」としか知らない依頼人に嵌められたのだと悟ったケラー
はひたすら逃げる。
 ペンシルベニア州のある町でケリーはドットの家が全焼し女性の焼死体が発見された
という記事を読む。「俺のことはアルと…」の仕業であることは明らかである。ケラーは警
察と元依頼人と双方から狙われることになった。

  NYからテネシーへ、そしてミシシッピーに。ある日の夕暮れにニューオーリンズの公園
で連続殺人犯に襲われている女性を助ける。殺人犯を得意技の「頸折り」で犯人は死ん
だ。
 助けられた女性ジュリアは病床の父と住む家に命の恩人ケラーを住まわせる。
流浪の生活から逃れたケラーは、身分を変え建築業の手伝いをしながら次第に地域に
溶け込んでいく。

 ところがある日かつてケラーが切手収集に熱中していたことを聞いていたジョナサンが
持ってきた切手収集家向け週刊誌にいわくありげな広告を見つける。暗号化された公式
を解いたケラーが電話をした先から聞こえて来たのは、なんと死んだはずのトッドの声。
ケラーが嵌められたことで身の危険を察したトッドは、殺し屋家業のすべての痕跡を消し、
身代わりの死体まで作ってアリゾナ州フラッグスタッフに身を潜めたのだという。 
再会した二人は「俺のことはアルと呼んでくれ」への復讐を誓いあう。

この先の復讐劇はどうってことのない展開をするのであるが解説は割愛。
久々のエンターテイメント小説に満足。

(以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

無残!畑のトマト

2014年06月17日 | 畑の作物

赤くなったトマトが突然

  連休前に植えた畑のトマトが赤くなってきて、いつ採り入れようかと思っていた矢先、
 街に出掛ける道すがらカラスの小隊(10羽前後)がトマトの周囲をうろついているの
 を見かけ、心配になったものの、電車の時間もあるのでとりあえず石を投げて追い
 払ったのだが、およそ5時間後、様子を見によったら、見事に赤いトマトは食べられ、
 あろうことか青いこれからという大きくなったものまで食い散らかされていた。
  怒り心頭に発し、地団太を踏んだものの後の祭り。すでに6時を回っていたが急遽
 ネットを掛けて今後の被害を防御した。


      

 
    落花生

     連休明けの5月11日に播種した落花生は、順調に成育中。間もなく黄色の花を咲かせる。

      

   ◇ ジャガイモ
     
     3月8日に種イモを植えて、4月20日に土寄せを行ったジャガイモ(男爵)は、先日孫のM
    とイモ掘りを実行。まずまずの出来で、ポテトコロッケで賞味した。

        

  ◇ きゅうり
  
     庭の胡瓜は4月26日に植えたものであるが、やたら雄花ばかり多く、どうなることかと思って
    いたら、けっこう日に3本くらい採れて(6株)2人所帯では十分な出来。

        

     
      ミニトマト
     
     (以上この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

群馬県・吹割の滝を描く

2014年06月10日 | 水彩画

◇ 新緑の吹割の滝
  ふきわれのたき?ふきわりのたき?結論は、どちらでもいいようです。地元のパンフでは
 ふきわれの滝ですが。
  26年度の水彩画教室の一泊写生旅行は群馬県沼田市・吹き割の滝。ここは昔利根町で
 したが合併して今は沼田市。尾瀬ヶ原への玄関口です。
   「吹割の滝」は国指定の天然記念物です。また、日本の滝百選にも選ばれており、国指
 定名勝のひとつです。
  片品川の流れにできた巨大な岩の割れ目(熔結凝灰岩)におち込む姿が、あただかも地
 の割れ目から水が噴き出しているかのように見えるからか。
  ほとんど常にしぶきがあがり、オゾンが満ち満ちている感じです。

  この時期(5月14日)新緑が眩いばかり。その緑も濃淡とりどり、いずれもまだ柔らかい色
 で、空気もみどり色でした。

  そんな緑の中で滝を描くと、水も緑のような、しかし川底の岩の色も映して茶色に見えたり、
 空の色を映して薄紫だったり…。
  滝のしぶきも表現が難しい。
  たたずむ二人連れはどの程度ぼかすのか。
  課題の多い題材でした。

   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする