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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

浅草寺の賑わい

2012年03月18日 | その他

きりたんぽ鍋浅草寺
   

  昔の同期生と浅草で食事会をした。少し北風が冷たかったが久しぶりの春の日差しを受けて楽しかった。
  食事の場所は浅草寺雷門にほど近い「無限堂」。昨年春にやはり別の職場の同期会で会食したところだ。
 ここは秋田の名物「なまはげ」が店先で出迎えるという凝った店。しかも店内をアンティックな絵や器物が飾
  り、なかなかに面白い。

                        
   
  やはり秋田名物「きりたんぽ鍋」ということで、併せて稲庭うどんもとった。酒は地元の銘酒、ビールのつまみ
 には「あぶりがっことクリームチーズ」と「燻りアラカルト(鰊・蛸・鮭・チーズ)」をとった。

                   
     

  昨年の浅草寺仲見世は、東日本大震災のあとで客足が落ちて寂しげであったが、今年は韓国・中国のお
 客さんも戻ってきて押すな押すなの賑わいでまともに歩けないほど。
  完成した高さ634mのスカイツリーと五重塔の対比が面白い。


           

  
         
                                 昨年の浅草寺

                                                                                        (以上この項終わり)

 


驚き・香納諒一の『ステップ』

2012年03月15日 | 読書

◇ 『ステップ』 著者: 香納 諒一   2008.3 双葉社 刊

   

  なぜ驚いたかと言えば、この主人公斉木章は前後8回死ぬ。そして死ぬ少し前の時点まで遡
 ってまた生き返る。だからやり直しが効く。こんな人生だったら、私でも今頃百万長者だ。買った
 株がその後どういう過程を経てさらに下がったか、上がったか知っているから、いかようにもなぞ
 れるから。
   それはともかく、この斉木先生はバーのオーナー・マスターだが、裏稼業は盗人。定年間近の刑
  事比村はしつこく付きまとってくる。

  ある朝、斉木の店にかつて孤児院時代から弟のように可愛がっていた悟が「匿ってくれ」と駆けこ
 んでくる。しかも敬子という女を連れて。やくざの幹部に連れ去られた敬子を救出しついでにヘロイ
 ンをくすねて逃げ出して来たのだという。
  さあそこからこの二人をめぐって、やくざや薬の卸先の中国系やくざ、なかなか見えてこない卸元
 の影の男などの一味と入り乱れての格闘、銃撃戦などが繰り返される。その中で主人公は何度も
 死ぬのだが、なぜか生き返る。それは彼が某所で手に入れ地下の酒蔵に保管していた「香水」の
 壜を割ってしまって、その強烈な香をしたたか吸い込んだことが原因ではないかと思われている。

    面白いのは、生き返って遡る時間がだんだん短くなっていくことだ。まるで香水の香りが時間の経
 過とともに薄らいでいくかのように。
  「STEP6」で、ついに目覚めた斉木の目の前に、自分の命よりも大事に思う、かつての相棒のひ
 とり杏の死体が転がっていてショックを受ける。そして斉木の頭に押し付けられた拳銃の引き金が
 引かれ、頭に鋭い衝撃が来て…。死ぬ。
  そしてまた生き返るのだが、杏が死ぬ羽目に陥るのだけは避けなければと必死に敵に立ち向か
 う。しかし別の状況になってもやはり杏は死んでしまった。絶望した斉木は自らの頭に拳銃を当て
 死の引き金を引くのだが…(STEP7)。

  最後に(LAST STEP)ついに杏を救うことに成功した。しかしよく考えてみると、どうも杏は潜入
 捜査官と考えるとつじつまが合う。それでも彼女は俺の願いを聞いてくれるだろうか。「おれと一緒
  にバーをやって、穏やかな余生を送ろうじゃないか」。
  どうやら斉木の願望が実現しそうに思える場面でこの小説は終わる。

  決して死なない主人公が活躍するハードボイルドだと思ったら、何度死んでも生き返る主人公の
 登場には大いに驚いた。
  
                                                 (以上この項終わり)
   


生命保険会社の破綻と連鎖へ

2012年03月12日 | 読書

◇ 『連鎖破綻―ダブルギアリング―』 著者: 香住 究  
                               2003.8 ダイアモンド社刊

   


  著者は元大手生保の課長と大手新聞社の記者の共著であるため共同ペンネームである。
 ダブルギアリングとは資本の持ち合い。生保と銀行は資金と株式の密接なもたれ合い関係に
 ある。どちらかが破綻すれば連鎖的に破綻の危機にさらされる。
  本書ではほとんどが仮名で語られているが、起こりうる連鎖破たんの危機が迫真のタッチ
 で語られる。
  事情に通じている人でないとなかなかここまで書けない。多分業界の事情を踏まえた構成
 全体は生保会社元課長が書き、小説的体裁とドレスアップは元記者が分担したのではない
 だろうか。
  アクチュアリー、デューデリ、クレデリなど専門用語なども多出するが、生保会社の会長、社
 長、社長室長、社長室次長、広報室長、広報室次長等々登場人物のキャラクター設定が見事
 で、企業小説にしては読ませる。また普段あまり知る機会のない生保商品の性格、生保業界
 の実態と銀行との関係、金融庁など監督官庁と政界との関係なども勉強になる。
  破綻への道を回避しようと必死に策を探る某生保会社の幹部関係者の努力にかかわらず、
 バブルの破綻と株式市場の低迷などで次第に蟻地獄のすり鉢の中にはまり込んでいく焦りと
 保険契約者との信頼確保への苦衷が痛いように伝わってくる。なんとか銀行の連鎖破綻を免
 れようとする金融庁の思惑や、腐肉に群がるハイエナのような外資の冷酷な魂胆に抵抗し、
 最後に彼らのシナリオ通りにはならずに起死回生の一矢を報いる姿に、漸くわずかな救いを
 見いだす。

                                               (以上この項終わり)


藤沢周平の異色作品『天保悪党伝』

2012年03月10日 | 読書

◇ 『天保悪党伝』 著者: 藤沢 周平   2001.11 新潮社 刊(新潮文庫) 

      

  『蝉しぐれ』や『たそがれ清兵衛』など、市井の庶民や下級武士の悲哀などを描く、独特の時代小説家
 のイメージを強く持っていたが、この作品は一風変わっていて、講談「天保六花撰」に題材をとった連作
 長編である。

  「六歌仙」とはそもそも紀貫之が「古今和歌集」の序で6人の名歌人(僧遍正、在原業平、文屋康秀、
 喜撰法師、小野小町、大友黒主)を挙げ、のちにこれを六歌仙と称したもの。
  江戸の講談師・松林伯円は、天保3年の御家人崩れの悪人、片岡直次郎が処刑されたことに目を付
 け、仲間の5人を加えて『天保六花撰』という講談に仕立てた。河内山宗俊、金子市之丞、、森田屋清蔵、
 くらやみの丑松、片岡直次郎の5人と、女性の小野小町に当たるのは遊女三千歳である。この6人にま
 つわる話を昭和60年から平成4年に渡って6編の作品として書き、平成4年に『天保悪党伝』として角川
 書店から出版された。

  確かに登場する5人の男らがやっていることは悪事であり、世間から見ればまさに「悪党」ではあるが、
 藤沢周平はこれらの悪人にもどこか憎めないところを滲ませ、人物の存在感を浮かび上がらせている。
 また、江戸の街の風景、四季の移り変わりなども丁寧に書きこみ、味わい深い時代小説となっている。 

                                                       (以上この項終わり)


江上剛の企業小説『人生に七味あり』

2012年03月08日 | 読書

◇『人生に七味あり』 著者: 江上 剛  2011.12 徳間書店刊

  

   
  著者は元第一勧業銀行出身。築地支店長時代に『非情銀行』で作家デビューした。
 第一勧銀(現みずほ銀行)総会屋事件では混乱収拾の当事者であり、高杉良の『金融腐蝕
 列島 呪縛』のモデルとなった。
  本書は「問題小説」に連載された「人生、七味とうがらし」を加筆訂正したもの。
  「うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ」この七味が人生に深みを与
 えるのだ、というのが新宿のビルの谷間で聞いた占い婆さんのことば。

  主人公の樫村は44歳。東大経済学部の出ながら、就職した中位銀行が合併を繰り返し、
 同期にも追い越され、ついに系列のカード会社の部長に飛ばされる。先が見えてきた樫村
 は知合いの投資ファンドの社長にある飲食系フランチャイズ会社の副社長を勧められ転職
 する。
  そこには銀行からの腰かけ社長がふんぞり返っていて…。隠れ負債140億円の処理を巡
 って社長にさせられた樫村は、融資先を求めているうちに妖艶な女社長から誘惑されたり、
 借入先のやくざな社長に差し押さえをかけられたり散々な目に遭いながらも、生え抜きの経
 理部長や直営店の頑張り屋の社員などと立て直しに奔走する。

  銀行員経験者だけに銀行経営陣や融資担当者の実態、貸し付けを受けた経営者とのやり
 取りや取り立ての機微などくわしい。同期入行者の対抗心、出世競争、サラリーマンの出処
 進退に臨んだ折りの心の動きなどもよく捉えており、文章のテンポも軽快。
 
  (以上この項終わり)