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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

江上剛の企業小説『人生に七味あり』

2012年03月08日 | 読書

◇『人生に七味あり』 著者: 江上 剛  2011.12 徳間書店刊

  

   
  著者は元第一勧業銀行出身。築地支店長時代に『非情銀行』で作家デビューした。
 第一勧銀(現みずほ銀行)総会屋事件では混乱収拾の当事者であり、高杉良の『金融腐蝕
 列島 呪縛』のモデルとなった。
  本書は「問題小説」に連載された「人生、七味とうがらし」を加筆訂正したもの。
  「うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ」この七味が人生に深みを与
 えるのだ、というのが新宿のビルの谷間で聞いた占い婆さんのことば。

  主人公の樫村は44歳。東大経済学部の出ながら、就職した中位銀行が合併を繰り返し、
 同期にも追い越され、ついに系列のカード会社の部長に飛ばされる。先が見えてきた樫村
 は知合いの投資ファンドの社長にある飲食系フランチャイズ会社の副社長を勧められ転職
 する。
  そこには銀行からの腰かけ社長がふんぞり返っていて…。隠れ負債140億円の処理を巡
 って社長にさせられた樫村は、融資先を求めているうちに妖艶な女社長から誘惑されたり、
 借入先のやくざな社長に差し押さえをかけられたり散々な目に遭いながらも、生え抜きの経
 理部長や直営店の頑張り屋の社員などと立て直しに奔走する。

  銀行員経験者だけに銀行経営陣や融資担当者の実態、貸し付けを受けた経営者とのやり
 取りや取り立ての機微などくわしい。同期入行者の対抗心、出世競争、サラリーマンの出処
 進退に臨んだ折りの心の動きなどもよく捉えており、文章のテンポも軽快。
 
  (以上この項終わり)