読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

梓 林太郎の『信州・善光寺殺人事件』

2019年07月18日 | 読書

◇ 『信州・善光寺殺人事件』 

     著者:梓 林太郎  2019.3光文社 刊(カッパノベルズ)

 

 この秋に元ボランティア仲間と信州・善光寺や小布施などに旅行することになっている。
 市の図書館の新刊紹介で『信州・善光寺殺人事件』を見つけ早速リクエストし、読んだ。
 山岳スリラーの第一人者とされる著者梓林太郎の作品を読むのは初めて。

 目次の次のページに長野市善光寺周辺の地図が載っている。まだ10代の頃住んでいた桜
枝町、箱清水などの地名を見つけ懐かしくなった。いずれも事件関係者が住んでいたこと
になっている。作品中箱清水にはマンションが建っていることになっているが、あそこは
そんな地形ではない。

 それはさておき、善光寺殺人事件とあるが、善光寺では人は死んでいない。むしろいく
つかの殺人事件の発端となるのは、35年前にあった不可解なある事件があった新潟県三条
市である。そこでは信越線東光寺駅近くで列車事故があり、線路には夥しい血痕がありな
がら何故か怪我人が見つからなかった。

 新潟県三条市の水田で松本在住の戸板紀之の刺殺体が発見され松本署の二人の刑事道原
伝吉と吉村夕輔が派遣される。遺体は確認したのは息子の輝治と弟の力造。その秋に娘の
久留美の恋人青沼が北穂高本谷で転落死したことが分かった。殺人事件の疑いが強い。

 青沼が所属しているコーラスグループの女性若林さやか。その夫竹中正友が愛人の浜本
緑の部屋から帰る途中轢き逃げされて重傷を負った。竹中は浜本緑から聞いた三条市の列
車事故に興味を示し、何度も現場に出かけ怪我人の聞き込みをしていた。

 時の首相が善光寺を参詣する際、警備に当たった機動隊員の警官有本静男がトイレに拳
銃を置き忘れ紛失した。
 実は有本は上田市の不良グループに巧みに取り込まれ、わざと拳銃を忘れるように指示
されのだ。有本は警察を辞め行方をくらます。 

 浜本緑は竹中と別れた後、木工所に努める石曾根正一と結婚し石曾根緑となり女児を
産んだ。
 ある日善光寺参道を歩いていた浜本緑は背後から拳銃で撃たれる。一命はとりとめた。
現場に残された拳銃は置き引きされた拳銃だった。

 浜本緑の夫石曾根も妻の緑から聞いた三条・東光寺の列車事故に興味を示し、3・4回
現場に出かけている。

  一方捜査で訪れた上田市では米国の宝くじで巨万の富を得た家で女児が誘拐された事件
があったことを知り、そこにも不良グループが関与し、有本も彼らに囚われているはず
と確信する。

 このように松本署の刑事は戸板紀之の殺人事件捜査の過程で浮かび上がった関係者を
愚直に手繰っていくうちに、いくつもの不審な出来事に出会い結局深層に横たわる事件
の真相にたどり着くという筋書きである。

  結末は読んでのお楽しみであるが、話を広げすぎて複雑な組み立てになってしまい読
者はやや疲れる。竹中や石曾根は関係もない三条市の列車事故になぜこんなに入れ込ん
だのか、また線路にそんなことで夥しい血痕が飛び散るのかなど不自然なことも多い。
                              (以上この項終わり)





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