◇2013The Best Mysteries(ザ・ベストミストリーズ:推理小説年鑑)
日本推理作家協会 編 2013.4 講談社 刊
2012年に国内で発表された数百の短編から日本推理作家協会が選び抜いた
短編推理の決定版である。
巻末には日本推理作家協会の前身「探偵作家クラブ」、「日本探偵作家クラブ」
を含め「日本推理作家協会賞」受賞リストのほか、「江戸川乱歩賞」、「横溝正史
ミステリー大賞」、「オール読物推理小説新人賞」、「小説推理新人賞」、「小説
現代推理新人賞」、「サントリーミステリー大賞」、「日本推理サスペンス大賞」、
「鮎川哲也賞」、「日本ミステリ文学大賞」、「アガサ・クリスティー賞」受賞リ
ストが掲載されている。
面白かったのは「青い絹の人形」と「探偵・竹花と命の電話」、「機巧のイヴ」。
有栖川有栖の「本と謎の日々」は有栖川有栖からかけ離れた作品でがっかりした。
「青い絹の人形」はプローグに墳墓盗掘の布石がある。多額の遺産を相続した後
に失踪した友人の後釜に座った女性が、最後に手痛いしっぺ返しを受ける。ミイ
ラとりがミイラになった話。
「探偵・竹花と命の電話」はトリック話ではない。突然見知らぬ男から電話があ
った。どうやら自殺願望があるらし彼が探し回ったという本や電話からの周辺環
境音から犯人(?)を推理する探偵竹花の話。
導入部の若い女性の失踪案件の女性と件の男性が偶然出会っていたという設定
は出来過ぎであるが、最後に本人と巡り合い就職の世話までするというオチはほ
んわかとしていて良い。
「機巧のイヴ」は江戸時代らしい時代設定の中で、完璧に人に似せた機巧人形
(ロボット)を作る職人に、廓の思い人「羽鳥」を身請けし、思いのままにする
相手として機巧製作を求めるという異常者の話。最後はロボットと人間の区別が
つかなくなった悲劇が待っているという設定が面白い。
掲載作品は以下の通り。
天称 涼 <父の葬式>
有栖川有栖 <ほんと謎の日々>
乾 緑郎 <機巧のイブ>
岸田るり子 <青い絹の人形>
貴志 祐介 <ゆるやかな自殺>
曽根 圭介 <妄執>
永田 永一 <宗像くんと万年筆事件>
七河 迦南 <悲しみの子>
藤田 宜永 <探偵・竹花と命の電話>
宮内 悠介 <青葉の盤>
柚月 裕子 <心を掬う>
若竹 七海 <暗い越流>
佳多山 大地 <推理小説・二〇一二年>
(以上この項終わり)