読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

リーガルサスペンス『ジェイコブを守るため』

2013年08月17日 | 読書

◇ 『ジェイコブを守るため』 原題: 『DEFENDING JACOB』 
                    著者: ウィリアム・ランディ (William Landay) 
                    訳者: 東野 さやか    
                    早川書房 2013.7.15刊(ハヤカワ・ミステリー)  

  


  日経の書評で5ツ星の推薦だったので早速市の図書館にリクエストし、割と早い順番で回ってきた。
  2段組み523ページで結構ボリュームがあるが3日間で読了した。3日もかかったが気分的には一気
 読みである。
  リーガルサスペンスの巨匠、スコット・トゥローやジョン・グリlシャムなどの最高傑作に匹敵する作品と
 太鼓判を押されただけあって読み応えがある。

  著者は地区検察官補の経験がある。しかし真っ向勝負のリーガルサスペンスは書いて来なかったとい
 う。しかし今回は法廷シーンも過不足なく楽しませる。とはいうものの振り返ると単純なリーガルサスペン
 スではなく、ある種の愛情物語である。特に主人公のアンディ(地区検察官補)が息子(ジェイコブ)の無
 実をひたすら信じて立ち向かう姿や、一抹の不安を抱えながら苦悶する母ローリーの姿がいじらしい。
  最終章(第四部)で意外な展開があって2度驚く(読んでのお楽しみ)。

   子供を持つあなたへ。
  ある日突然我が子が殺人事件の容疑者として指弾されたらどうする。
  まさか、うちの子が、このところ口数が少なくなっってとっつき悪くなったとはいえ、小さい頃から優し
  かったこの子が、殺人を犯したなどと信じられない。絶対何かの間違いだ。警察は一体何をやってい
  るのだ。

   ボストン郊外の小さな町で地元中学の生徒が殺された。有力容疑者となったのは地区主席検事補
 を務めるアンディ・バーバーの一人息子ジェイコブ。
  ジェイコブは殺されたベン・リフキンからいじめを受けていて殺人の動機があり、しかも被害者のパ
 ーカーにはジェイコブの指紋が残っていた。加えてアンディが息子の部屋を探すと凶器とみなされて
 いるナイフと同じようなナイフが見つかった。状況証拠も物証もジェイコブ犯人説を裏付けるものばか
 り。
  それでもアンディと母親のローリーは息子の無実を信じる。
  
  実はアンディの曽祖父、祖父、父共に殺人罪で刑を受けているという殺人の系譜。それまでそのこ
 とを妻には告げていなかったことで二人の間に不協和音が生じる。ローリーはジェイコブにも凶暴な
 性情が潜んでいるのではと疑い始める。裁判に備えて精神鑑定分析を受けてみると専門家からは
 ジェイコブは「自己愛性人格障害」と「反応性愛着障害」の疑いが濃厚と告げられる。 
  殺人遺伝子の系譜を指摘され有罪となる危険がある。そんなこともあってアンディは終身刑で刑務
 所に囚われている父を訪ねる。40年存在自体を拒否してきた父にDNA鑑定に使う唾液組織をもら
 うために。

  実はこの中学校殺人事件では最初に一人の容疑者がいた。保釈中の常習的性犯罪者レナード・
 パッツ。ジェイコブの容疑を完全に晴らすには真犯人を挙げるしかないと休職中の身分をいいことに
 独自で真相究明に奔走する。そして、どうやら真犯人はパッツらしいというところまでいったのだが・・・。 
 
  やがて半年近く経ってから裁判が始まった。凶器など物証の乏しい裁判では状況証拠を巡って検察
 と弁護側で丁々発止の闘いが始まるのであるが、証人尋問を巡る陪審のジェイコブに対する心象は必
 ずしもいいものとはなりそうにもない。 

  ところが、突然レナード・パッツが殺人の告白を綴った遺書と共に首吊り自殺をするという劇的な出来
 ごとが。ジェイコブは起訴取り下げで自由な身になる。
  さて、話はこれで大団円なのか。いやいやそんなことではリーガルサスペンスにはならない。
 本当のこの本の凄さはこれからだと思った方がよい。 

  本書はアメリカで2013年のハメット賞、バリー賞最優秀長編部門、国際スリラー賞最優秀長編部門
 などにノミネートされているとのこと。    

                                                    (以上この項終わり)

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