読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

『夢の中へ』

2018年02月05日 | 読書

◇『夢の中へ』(原題:Dawn)
        著者:V.C.アンドリュース(V.C.Andrews)
        訳者:奥村 章子
         扶桑社 1997.4 刊

 

   変形シンデレラ物語。たまには純粋エンターテイメント小説もいいでしょう。
 ダーク・ファンタジーの巨匠と称せられている作者が贈る<ドーン・シリーズ>の第1作目。
 表紙の少女像を見てください。意志の強そうな14歳の少女。主人公ドーン・ロンシャン。

 町から町へと渡り歩き、かつかつの生活を送る4人家族。ドーンと兄のジミーは貧しい中で
も互いに助け合いながら楽しい生活を送っていた。引っ越し先でようやく落ち着き始めたこ
ろ母が女児を出産した。その名はファーン。父親が某私立学校の用務員に採用され、兄弟は
学費免除でその学校に通うことに。しかし裕福なお嬢様・お坊ちゃまが通う学校で二人はい
じめにあう。とりわけ町の創設者一族カトラーの娘クララは卑劣ないじめを繰り返す。しか
しその兄フィリップはドーンの魅力取りつかれてドーンも彼に惹かれていく。 もう引っ越
しをしないで済むと思ったのも束の間、病弱だった母が肺結核で亡くなってしまう。
 そして驚天動地の出来事が。

 葬式後のある朝警官が現れて父親が誘拐の罪で拘引された。生まれたばかりのドーンを誘
拐したというのだ。何と父親は「すまない」と罪を認めたのだ。混乱するドーン。
 そしてドーンはそのまま真の両親の元へと連れられて行く。そこは丘の上の大邸宅。何と
ドーンはカトラー家の一員で、あのクララが妹、フィリップが実の兄だったとは。

 そこでドーンは貧しい生活から一転お嬢様として何不自由ない暮らしをすることになった
かというとさにあらず、高級ホテルを営むカトラー家で客室係のメイドとしてこき使われる
ことになる。鬼のような厳しい祖母はドーンをまともなカトラー家の一員として扱わないの
だ。不思議なことに両親は祖母の扱いを正そうともしない。一体裏に何があるのか。
 祖母のドーンに対する不審な扱いの背景は知ってみればなるほどと思うのだが、ドーンに
対するあくなき冷遇とクララのしつこいいじめにまともな読者は腹が立ってくる。おまけに
兄弟の間柄と分かったのにフィリップはドーンにしつこく体の関係を迫るという分からず屋。
ドーンはしかし健気にこうした処遇を受け止め今は離れ離れになったジミーやファーン、そ
して捕らわれの身となった父を懐かしむ。

 そのうちドーンは自分が誘拐された当時ドーン担当の看護師であった女性を探し当て真相
をききだす。それはなんともおぞましい経緯で仕組まれた誘拐劇であった。
 ドーンは祖母の勧めでかねて憧れていた音楽の道へ進むためにニューヨークへ旅立つ。今
は血がつながらない間柄と分かったジミーとの愛を育みながらこの先ドーンはどう成長して
いくのか。
(第二部『愛の旅立ち』、第三部『黄昏れの彼方』、第四部『真夜中のささやき』、番外編
『悲しみの影』)

                                (以上この項終わり)

    

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